とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

TS 1-613

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匿名ユーザー

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「うう……もうお婿に行けない」
 やけに肌が潤っている冥土返しの横で、半裸の少女――天井――が啜り泣いている。
「その体では元々婿には行けないだろう。嫁ならまだしも」
「も、元に戻せ!」
 天井は懸命に腕を伸ばし冥土返しに拳を叩き込もうとする。
 しかし、130cmという低身長ではどれ程腕を伸ばそうと届かない。
 頭を抑えられているのならば尚更だ。
 傍目から見ると、まるで物を親に強請る子供のような、もの凄く微笑ましい光景になっている。
「しかし、いいのかな? 元に戻れば借金地獄。何をされるかわからないよ?」
「う、それは……」
 天井の脳裏に極貧時代の記憶が甦る。
 借金の取り立てに怯える日々。その日の食事すら危うい。
 天井はあの生活に戻るのはもう嫌だった。
「いっそのこと、その体で新しい人生を歩んでみたらどうかな? 新しいIDはこちらで用意するよ。それに、その外見じゃ君が天井亜雄だとは誰も思わないよ」
 それは甘美な誘いだった。
 それなりに聡明な天井が裏があるかどうか考えることをやめてしまうほどに。
「ほ、本当か?」
「ああ。保証しよう。……IDを新しくするのなら、名前も新しくしないといけないか。何かリクエストはあるかい? 無いなら適当に考えるけど」
「そう、だな……」
 しばらく考えて天井は新しい自分の名前を口にした。



「ああ、アレイスター? 新しくIDを発行してくれないかな」
『いきなり何だこの馬鹿医者。IDを新しく発行だと? 色々と手続きが面倒なんだ、私を使いっ走りにするのはやめてくれないか』
「作ってくれるなら、“彼”の情報。教えてあげても良いけど?」
 しばらくの間、コポコポと液体の動く音が聞こえる。
――悩んでる悩んでる。
 かなり長い間液体の動く音のみが伝わってきたが、とても小さな声で何かを言っているのが聞こえた。
『――た』
「ん? なんだって?」
『……わかった。すぐに用意しよう』
「ああ。データは送ってあるから。頼んだよ」
 唇を三日月形に歪めながら冥土返しはそう言って、電話を切ろうとする。
『情報の件。絶対、絶対だぞ! 前回のように下らない内容だったら……』
「まったく……。そう言う風に言うんだったら、少しは自分で動いたらどうなんだい? 実際に会ってみればフラグが立つかも知れないよ?」
『くっ……ソレが出来れば苦労はしない!』
 叫び声と共にブッっと電話の切れる音がした。
「本当に、素直じゃないなぁ……いつまでも穴蔵に籠もっていたら誰かに先を越されてしまうよ。例えば、そう、僕とかね」
 誰に言うでもなくそう呟いた冥土返しは次の企みを考える。
 あの子をどの学校に編入させるべきか。
 楽しいことになりそうだ。

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