妄想開始――妄想具現化。
「むにゃむにゃ」
突然だがインデックスは寝相が悪い。
寝る前には東を向いていても、翌朝にはなぜかお風呂場の前で猫の様に丸まっているなんてのは、もはや日常茶飯事だ。
ひどい時には、部屋の主たる上嬢のおなかの上に激しくボディプレスをかまして来ることもある。
「ぐぅ、いたたたた」
そう、丁度今そんな感じ。
上嬢は自分の頬にぶち当たったインデックスの踵をゆっくりと跳ね除けた。
今回は寝ていたところに突然の踵落としだ。目覚ましにしては痛すぎるし、大体まだ起きるには早い。
早起きは三文の得と昔の人は言った。が、三文なんてはした金より上嬢としては睡眠時間が欲しいお年頃なのだ。
「今日もまた激しい寝相だな、インデックス」
くかー、と大口開けているインデックスからは寝息以外の反応は無い。
部屋の隅っこには、恐らくインデックスが蹴っ飛ばしたであろう青いタオルケットが転がっていた。
風邪をひかれても困るので上嬢は寝ぼけ眼をこすりながら、ずりずりとラクーンシティのゾンビの様にタオルケットめがけて進む。
程なくしてタオルケットを入手、アイテム欄からカーソルを引っ張り、インデックスにクリック。
「なんちて」
無論イメージの話だ。実際にはいたって普通にタオルケットをかけてあげるだけ。
「ふふふ、可愛い寝顔――」
「衝撃のはじめぱんち」
上嬢の瞼に星が飛んだ。
「追撃の二度目ぱんち」
腹部にマグマの感触が沸き立った。
「抹殺の終わりぱんち」
心臓の上を強打されて息が詰まった。
むにゃむにゃいいながら、上嬢さんのアゴやらボディやらに重たい一撃を叩きこむ睡眠拳の達人インデックス。
次々と逆マウントの体勢から攻撃が繰り出された。おまけに寝言付き。余計に腹が立つ。
「むにゃむにゃ、もう食べられない……、ううん、せめてこの三倍は欲しいんだよー」
「ふぎゃあ」
上嬢はそんな悲鳴をあげながら宙を舞い、狭苦しいワンルームマンションの天井を煌く星空に変えながら頭から落下。効果音はドサリの一点張り。
「く、くしょう、いきなりなんなんだ」
涙目になった上嬢の状況は驚きが50%、残りの50%はアゴに頭突きが入ったときに舌を噛んだ痛みによるものが50%。
うつぶせになって拳を握る上嬢の視界に影が差す。
おそるおそる背後を見ると、鼻提灯をぶら下げてゆらゆらと立っているインデックスの姿が目に入った。
柳の木に茂る葉の様な動き。上半身は大きく揺れているのだが、下半身、特に足元は微動だにしていない。
「こ、これはまさか! 柳のたいじゅ――」
「オムライスが良いって言ったじゃないかぁぁ! なんでちゃーっはんなんだよう!」
「ぎゃあああああ」
「冷麦に入ってる紅いやつは私が食べるんだよぉぉぉ! 明日は流し素麺ってんを希望なんだよう」
「むきゅ、へきゅ」
「聞いているの、聞いていたら返事をしないと、むにゃむにゃ」
「げぶっ」
「睡眠拳奥義、春眠暁を覚えずなんだよぉ! むにゃむにゃ」
「ぐぁぁぁぁっぁ」
「むにゃむにゃ」
突然だがインデックスは寝相が悪い。
寝る前には東を向いていても、翌朝にはなぜかお風呂場の前で猫の様に丸まっているなんてのは、もはや日常茶飯事だ。
ひどい時には、部屋の主たる上嬢のおなかの上に激しくボディプレスをかまして来ることもある。
「ぐぅ、いたたたた」
そう、丁度今そんな感じ。
上嬢は自分の頬にぶち当たったインデックスの踵をゆっくりと跳ね除けた。
今回は寝ていたところに突然の踵落としだ。目覚ましにしては痛すぎるし、大体まだ起きるには早い。
早起きは三文の得と昔の人は言った。が、三文なんてはした金より上嬢としては睡眠時間が欲しいお年頃なのだ。
「今日もまた激しい寝相だな、インデックス」
くかー、と大口開けているインデックスからは寝息以外の反応は無い。
部屋の隅っこには、恐らくインデックスが蹴っ飛ばしたであろう青いタオルケットが転がっていた。
風邪をひかれても困るので上嬢は寝ぼけ眼をこすりながら、ずりずりとラクーンシティのゾンビの様にタオルケットめがけて進む。
程なくしてタオルケットを入手、アイテム欄からカーソルを引っ張り、インデックスにクリック。
「なんちて」
無論イメージの話だ。実際にはいたって普通にタオルケットをかけてあげるだけ。
「ふふふ、可愛い寝顔――」
「衝撃のはじめぱんち」
上嬢の瞼に星が飛んだ。
「追撃の二度目ぱんち」
腹部にマグマの感触が沸き立った。
「抹殺の終わりぱんち」
心臓の上を強打されて息が詰まった。
むにゃむにゃいいながら、上嬢さんのアゴやらボディやらに重たい一撃を叩きこむ睡眠拳の達人インデックス。
次々と逆マウントの体勢から攻撃が繰り出された。おまけに寝言付き。余計に腹が立つ。
「むにゃむにゃ、もう食べられない……、ううん、せめてこの三倍は欲しいんだよー」
「ふぎゃあ」
上嬢はそんな悲鳴をあげながら宙を舞い、狭苦しいワンルームマンションの天井を煌く星空に変えながら頭から落下。効果音はドサリの一点張り。
「く、くしょう、いきなりなんなんだ」
涙目になった上嬢の状況は驚きが50%、残りの50%はアゴに頭突きが入ったときに舌を噛んだ痛みによるものが50%。
うつぶせになって拳を握る上嬢の視界に影が差す。
おそるおそる背後を見ると、鼻提灯をぶら下げてゆらゆらと立っているインデックスの姿が目に入った。
柳の木に茂る葉の様な動き。上半身は大きく揺れているのだが、下半身、特に足元は微動だにしていない。
「こ、これはまさか! 柳のたいじゅ――」
「オムライスが良いって言ったじゃないかぁぁ! なんでちゃーっはんなんだよう!」
「ぎゃあああああ」
「冷麦に入ってる紅いやつは私が食べるんだよぉぉぉ! 明日は流し素麺ってんを希望なんだよう」
「むきゅ、へきゅ」
「聞いているの、聞いていたら返事をしないと、むにゃむにゃ」
「げぶっ」
「睡眠拳奥義、春眠暁を覚えずなんだよぉ! むにゃむにゃ」
「ぐぁぁぁぁっぁ」
翌朝、頭部を失った白い悪魔の様、もしくは「わが生涯に一片の悔い無し」の人みたいに右の拳を天に向けて掲げ昇天ポーズのインデックスは、立ったまま寝るという荒技を披露した。
もっとも唯一の観客たる上嬢さんは、部屋の隅っこに力なく横たわっていたので、結局の所披露とは言わないのかも知れない。
「もっとご飯食べたい……」
スピー、スピーと幸せそうな寝息だけが部屋の中に響いた。
もっとも唯一の観客たる上嬢さんは、部屋の隅っこに力なく横たわっていたので、結局の所披露とは言わないのかも知れない。
「もっとご飯食べたい……」
スピー、スピーと幸せそうな寝息だけが部屋の中に響いた。