第三話『愛猫家への道』
俺の両親はくだらない奴だった。まず、その職業からしてくだらないものだった。
俗に言う、咒師(まじないし)。
つまり、藁にもすがる思いで助けを求める者を相手とする詐欺師、だった。
俺はもちろん『まじない』なんてオカルトなど信じたことはなかった。物心が付いてからは、そんなことで金を稼ぐ親を、少なくとも『尊敬する両親』として認識したことなど無かった。そんなやつらに面倒をみてもらうことも耐えられなかった。両親も、そんな俺に対して必要以上のコミュニケーションをとろうとはしなかった。俺の、自分の家庭、生活に対する不満は日々募っていくばかりだった。
しかし、そうは思っていても所詮俺はただのガキだったわけで。家を飛び出して自分だけの力で生きていくことなど出来なかったわけで。しかも、両親は俺を虐待とかしていたわけでもなく、衣食住は十分に施されていたわけで―――。
それに、あいつらは咒(まじない)の中で1つだけ奇妙な芸が出来た。それはインチキだと信じて疑わない俺の目から見てもトリックの分からないものだった(まあ、トリックは分からずとも真似だけは簡単にできたので尊敬するに至ることはなかったのだが)。そのおかげで咒を信じてやってくるアホは後を絶たず、金銭的にはかなり恵まれる生活を送っていた。俺はその快適さを手放して生きる苦労を予想することが出来る程度に利口だった。そしてそれを分かっていても投げ出すことの出来る度胸も無かった。
俗に言う、咒師(まじないし)。
つまり、藁にもすがる思いで助けを求める者を相手とする詐欺師、だった。
俺はもちろん『まじない』なんてオカルトなど信じたことはなかった。物心が付いてからは、そんなことで金を稼ぐ親を、少なくとも『尊敬する両親』として認識したことなど無かった。そんなやつらに面倒をみてもらうことも耐えられなかった。両親も、そんな俺に対して必要以上のコミュニケーションをとろうとはしなかった。俺の、自分の家庭、生活に対する不満は日々募っていくばかりだった。
しかし、そうは思っていても所詮俺はただのガキだったわけで。家を飛び出して自分だけの力で生きていくことなど出来なかったわけで。しかも、両親は俺を虐待とかしていたわけでもなく、衣食住は十分に施されていたわけで―――。
それに、あいつらは咒(まじない)の中で1つだけ奇妙な芸が出来た。それはインチキだと信じて疑わない俺の目から見てもトリックの分からないものだった(まあ、トリックは分からずとも真似だけは簡単にできたので尊敬するに至ることはなかったのだが)。そのおかげで咒を信じてやってくるアホは後を絶たず、金銭的にはかなり恵まれる生活を送っていた。俺はその快適さを手放して生きる苦労を予想することが出来る程度に利口だった。そしてそれを分かっていても投げ出すことの出来る度胸も無かった。
「いつまでこんなことをしなければならないのですか、とミサカは目に涙をためて訴えます」
「まあまあ。全ては真の愛猫家になるための訓練だ。我慢して集中集中」
俺たちは座り込みながらそんなことを言い合った。
ここは病院の間近に隣接している公園だ。人目に付かないように林の茂みの中で行為に及んでいるのだが、ここだけは2メートル四方ほどの空間が出来ており、なかなか快適に過ごすことが出来る。木々の間を抜けてきたそよ風が頬を撫でて心地言い。午後の太陽の木漏れ日が、二人の体の表面を照らして揺れる。
「お前だってこんなことやあんなことをしたいんだろ?」
俺は そ れ に頬ずりしながら、不服げな表情を浮かべるミサカに言い聞かせた。
「……分かりました。すべては猫のためです、とミサカは訓練のために意識を再度集中させます」
ミサカは更に不服げな表情を浮かべたものの、渋々といった様子で言った。しかし新たなる追及点を認めてまた睨みを利かせてきた。
「しかしあなたはいったい何のためにそのようなことをしているのですか、とミサカは当然の疑問をあなたにぶつけます」
「え?こ、これ?いや、そりゃお前―――」
俺は彼女の凄まじき非難の視線から逃げるように、
「まあまあ。全ては真の愛猫家になるための訓練だ。我慢して集中集中」
俺たちは座り込みながらそんなことを言い合った。
ここは病院の間近に隣接している公園だ。人目に付かないように林の茂みの中で行為に及んでいるのだが、ここだけは2メートル四方ほどの空間が出来ており、なかなか快適に過ごすことが出来る。木々の間を抜けてきたそよ風が頬を撫でて心地言い。午後の太陽の木漏れ日が、二人の体の表面を照らして揺れる。
「お前だってこんなことやあんなことをしたいんだろ?」
俺は そ れ に頬ずりしながら、不服げな表情を浮かべるミサカに言い聞かせた。
「……分かりました。すべては猫のためです、とミサカは訓練のために意識を再度集中させます」
ミサカは更に不服げな表情を浮かべたものの、渋々といった様子で言った。しかし新たなる追及点を認めてまた睨みを利かせてきた。
「しかしあなたはいったい何のためにそのようなことをしているのですか、とミサカは当然の疑問をあなたにぶつけます」
「え?こ、これ?いや、そりゃお前―――」
俺は彼女の凄まじき非難の視線から逃げるように、
「だって俺猫好きなんだもん」
腕に抱える寅之助を見せ付けて、言った。
「猫に触ってないと3秒で死んじゃうの」
ついでにその状態から撫でまくった。
腕に抱える寅之助を見せ付けて、言った。
「猫に触ってないと3秒で死んじゃうの」
ついでにその状態から撫でまくった。
「………………………………………」
ミサカの非難の視線は止むどころか更に強くなってきたような気がしないこともないけどとりあえずスルーすることにする。この感情を向上心へと変換してくれることを願うばかりだ。
寅之助ほどではないものの、好奇心から顔を覗かせてこちらを伺っているほかの猫たちの相手をしてやる。着ている入院服の中に猫達を7匹ほど入れてみた。結構良いな、うん。至福だ。猫達磨だ。なんか『後で覚えとけよこの猫馬鹿野郎、とミサカは喉まで出てきた言葉を飲み込みます』とか聞こえたが気のせいだろう。飲み込んだのなら聞こえはしないはずだ。うん。
ミサカの非難の視線は止むどころか更に強くなってきたような気がしないこともないけどとりあえずスルーすることにする。この感情を向上心へと変換してくれることを願うばかりだ。
寅之助ほどではないものの、好奇心から顔を覗かせてこちらを伺っているほかの猫たちの相手をしてやる。着ている入院服の中に猫達を7匹ほど入れてみた。結構良いな、うん。至福だ。猫達磨だ。なんか『後で覚えとけよこの猫馬鹿野郎、とミサカは喉まで出てきた言葉を飲み込みます』とか聞こえたが気のせいだろう。飲み込んだのなら聞こえはしないはずだ。うん。