とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第六話第三章-1

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第三章

  ▼

 夜はすべてをおなじ色に染めあげ、すべてを闇に変えてしまう。どんな物だって夜にな
れば一致団結して闇に寝返り、そうして、たった一人だけ取り残されたされた自分を隙間
なく取り囲む。
 今夜、すくなくとも私の半径数キロに、人の営みの象徴たる光は存在しない。生気のな
いビルの隙間には、破壊が通り過ぎた残滓のみが転がっている。
 風はなく、とても静かだ。
 耳にとどくのは、『跳ぶ』たびに三次元に割り込む、自分の体の風切り音だけ。
 完全下校時刻をすぎてもバカ騒ぎをやめない夜行性たちも、渋滞のありえない快適な道
路を走るドライバーもいない。
 代わりにそこにあるであろう、おびただしい数の負傷者。しかしそのために奔走すべき
救急車のサイレンすら聞こえない。

 まるで世界の機能までもが死に絶えてしまったかのように。

 八月三十一日、午後六時前。
 3か月前よりスキルアウトの巣窟と化している十九学区外縁にて、一人の能力者がスキ
ルアウト数人に対して暴行する事件を起こした。当能力者は風紀委員の資格を持ち第七学
区風紀機動隊の一員でもあるものの、これはその任務活動の内ではない。動機・意図、共
に不明。同時刻には未だ正体不明のテロリスト侵入によるコードレッド発令に伴い全風紀
委員へ召集命令がかかっていたが、これにも一度として応答していない。
 衛星映像および十九学区各所に仕掛けられた盗撮カメラによると、能力者は超絶した実
力差によりスキルアウトを圧倒し、場所をかえながら被害を拡大していく。これは個人の
暴力活動のレベルを完全に逸脱していた。これにより十九学区に住み着いていた非合法の
商売人や、武器を所有せず組織を組まない半スキルアウトは周囲の学区へ避行。しかし一
方のスキルアウト側は、対処らしい対処を行わないまま、本拠地クリスタルタウン――十九
学区中心に位置する大型ショッピングモールへ集結。その後、それに合わせたかのように
真正面から戦闘を臨んだ能力者と衝突する。
 200人弱の無能力武装集団。
 風紀機動隊所属の暴走能力者。
 結果は、後者の勝利に終わる。
 能力者はリーダーと思しき人物を行動不能にした後、戦意を失ったスキルアウトをクリ
スタルタウン内で執拗に攻撃し大半を鎮圧しつつ、業務用の豚肉や鳥肉牛肉を駐車場に積

み重ねるという奇妙な行動をとる。しかしその後駐車場にて突然強大な爆発を起こし、そ
のまま南西に向けて飛び立った。
 そして現在、とある廃ビル郡で動きを止めている。
 ストン――
 『ジャンプ』の無重力状態から重力下へ移行。
 これで何度目になるか、私は真っ暗なコンクリートに着地しつつ、ふたたび目的地の方
向を11次元的に演算分解した。
『あと、300メートルです』
 残り1キロになった時から、100メートル毎につたえられる初春の声。
『いまだ、先輩にうご――きはありません』
 言葉の途中で、残りはあと230メートル。
「目標、視認しましたわ」
 見えた。
 闇の濃淡で構成された夜の世界。
 その屋上こそが地面なのではないかと思われるほど密集した廃ビルたち。
『あと200メートル』
 縦横にはしる亀裂、そのなかでも、一際おおきな裂け目の奥。
 そこに不審火のようにぼんやりとたたずむ、赤い光。
『あと100メートル』
 夜の谷底。
 そびえ立つビルに挟まれた大型の交差点の中央で。
 その髪と眼球を赤くゆらめかせながら、とぼけたように。

「遅せかったなあ、白黒」

 黒山大助が、待ち構えていた。
  ▼

「……髪型変えたんですのね、黒山さん」
「あー、わかるかぁ?」彼は気楽そうに答える。「ビロンビロンに伸びきって鬱陶しかった
もんだからな、チカラで一度にバッサリ。2秒でさっぱりしたよ」
「先日お会いした時のあなたの頭髪の長さを知っている私としては、むしろ伸びているい
るように見受けられるのですけれど。色のほうもまた大胆に変わってますわね」
「おう。こりゃ夏休みデビューってヤツかね」彼はやはり、とぼけた調子をくずさない。

「このイメチェンにはみんなもびっくりだろうよ」
 ありふれた日常のなかでも大した意味をもたない会話。ましてやそれが、現在暴走能力
者として捕捉対称となっている風紀機動員(アンパイア)の同僚と、風紀機動員としての
命令のために対峙している自分という状況下ではなおさら空々しく響く。
 会話が消える。
 再び静まりかえる夜。本当に静かだ。ありえない静けさ。その原因である男は、相変わ
らず軽々しいようすで、しかし視線は一直線に私を貫いている。
 私もその赤く明るい目を見返しながら、こちらから沈黙を破る。
「初春から、連絡がありましたのよ。あなたがサボっていた任務中に」
 そこで知った名前。つい数時間前までは知らなかった名前。
 この死んだ夜の世界を作り出した彼の名前。
「人間爆弾――クレイモア。その者を討て。私に命令が届いたのですけれど、それってあな
たで間違いありませんのね?」
「ああ。悪かったな、個別能力名秘密にしてて――俺で間違いないよ」
 黒山大助はあくまで鷹揚に答えた。
「わたくし、今でもこの状況がよくわかっていませんの。安全ほど不確かなものがない非
日常的な状況において、情報の不足ほど不安なことはありませんわ。よろしければ、ご説
明願えませんこと?――特に、この機能の停止した十九学区と、数ある治安組織の中でも一
介のアンパイアにすぎない私が選ばれた理由、そして、“階級(グレード)”という言葉に
ついて」
 なかば愚痴に近い文句のつもりだった。
 しかし黒山大助は、少しばかり目を見開くと、「いいぞ」と、あっさり頷いた。
「初春のやつも腕をあげたなぁ。そこまで知ってるんなら、たぶん俺が教えてしまっても
いいな。じゃ、まず、俺のことから話すのがいいかねぇ」
 クイクイと指先を宙にさまよわせながら、彼は述べる。黒山大助。十六歳。誕生日は三
月三日、実はいちど留任してて今年度じゅうに十七歳になる。風紀委員(ジャッジメント)。
なおかつ風紀機動員(アンパイア)。つまりナイスガイ。五年も務めつづけてる超ベテラン。
「俺についてお前が知ってるのはだいたいそんなとこだろうが――」
「留年なんて初耳ですし、性悪と猫バカとウソブキが抜けてますわよ」
「……じゃ、それと一緒に、アーミィのセカンドウエポンって情報も追加しといてくれ」
「アーミィ……セカンドウェポン?」
 聞き慣れない語に疑問を示すと、彼は少しだけ堅い口調で説明をはじめた。
「学園都市には、闇の組織ってヤツがたくさんあるんだよ。情報の操作・隠蔽・駆除・改

 竄、公にできないイベント要員から秘密裏に行われる武力活動、そして非合法かつ非人道
的な実験――」そこで彼はギシリと噛み締めた。「――とにかく、どうして秘密にしとけるの
かってぐらいにごまんとある、構造すら不明な秘密組織――その中の一つに、俺は組み込ま
れてたんだ。その一組織――っても二人しかいないけど――の呼び名が『アーミィ』。そのセ
カンダリィである俺の識別名が『クレイモア』。他の俗称には『キリングスタッカート』と
か『ジェノサイドレッド』とか――……うん?改めて考えてみると、メチャ痛くねぇかな
……」
 それは明らかに、平和的な方向に使われる言葉ではなかった。
「簡単に言えば、俺は人間じゃなくて兵器なんだよ――戦車とかアパッチとか、その隣に黒
山大助って人間兵器が並べられるんだ。正式にいえば、対群衆鎮圧用人型兵器クレイモア
ってとこだな」
 彼は抑揚なく続ける。
「《アーミィ》に与えられる、公にするとまずい仕事は文字通り。で、ここはそのためにお
膳立てされた戦場なんだ。百害あって一利なしのスキルアウトをここでまとめて駆除され
る事になっていた。大覇星祭も近いしな。そもそも十九学区の再開発ってのも、そのため
の餌。あいつらの頭をこちらで操って、一つの学区に閉じ込めておく。十九学区の再開発
も、街じゅうに仕掛けられた盗撮カメラも、電力の通っていたクリスタルタウンも、全部
スキルアウトを十九学区から漏れ出さないようにするために仕組まれたことだ。一つの場
所に集中させた社会的害悪をまとめて叩く。そのための主兵力が、『クレイモア』――つま
り俺ってわけだな。そしてもちろんこれは秘密結社の秘密任務。いくらスキルアウトと言
ってもなぜ救急車も警備員も出てこないのかって疑問の、だいたいは、それが理由だ」
 私はただ情報を冷静に処理しつつ、疑問を口にする。「じゃあ、どうしてそれが暴走なん
てことに――」
「暴走だったからだ」黒山はあっけなく断言した。「俺の精神、昨日から危険なことになっ
てたんだよ。それでいろいろ――ストレスの発散やら気分転換やらベクトル変換やら現実逃
避やらの防衛行為――自己防衛?をなすために、そのために最適な、ここで暴れた。仕事の
計画を無視して、だ。本当は明日からの予定だったんだよ。それをメチャクチャにした。
スキルアウトの半分以上は、十九学区から逃げ去っただろうな。……そこで、だ。――ここ
からは俺の推測だが、たぶん間違っちゃいない――そこで、組織のお偉いさんは考えたんだ
ろうな。どーせならこの状況を利用して、例の計画の“実験”をしよう、と」
 学園都市の実験至上な合理主義には感心する、と彼はあきれたように言う。
「おまえの疑問の二つめの答え――能力者を軍用化する試みがあるのは、《アーミィ》だけ
に限った話じゃねぇ。その軍事計画は、ずっと大規模に、水面下で進められてきた。“グレ

ード”ってのは、その中での戦力的価値をあらわす、評価単位のことだ」
「ちょっと待ちなさい」そこで気付いて、私は声をあげた。「軍事計画の中での評価単位?
私はそれをすべての風紀委員が記載された名簿で見ましたのよ。それじゃ――」
「ああ。風紀委員を軍用化する計画――『学徒出陣』。おまえが見たのは、その一部資料だ
ろうさ」
「そんな――」風紀委員の、軍用化?
「確かに、突飛だ。しかも学園都市自身が戦争でもしかけようってんじゃないかぎり、実
行されることはない、それだけ、わりと優先度の低いものでもある。――だが、ありえない
話じゃねーだろう?」
 それに、と彼はさとすように言う。
「考えてみろよ。どうして風紀機動隊なんてものがあるのか。モラトリアムを貪るぐらい
にしか能のない、ただのガキの集まりでしかない俺たち風紀委員は、警備員より実戦的な
戦力を持ってはいけないはずだろう?――少なくとも、建前の上では。能力を治安維持活動
に使いたいんだったら、警備員の中にそういう部隊を特設するのが筋ってもんだぜ」
 それなのになぜ、一級装備の警備員すら凌ぐとうたわれる武力集団が、風紀委員のなか
に存在するのか。
 言葉をなくす私を横目に、黒山大助は続ける。
「最後。どうしておまえただひとりがここに派遣されたのか。答えは、軍用能力集団の頂
点――その“最高級(グレード5)”をはっきりさせるためだ」
 これがさっき言った“実験”のことな、黒山は思い出したように言う。
「計画内では能力の強度段階(レベル)にちなんで――大雑把だけど――六つの階級、グレ
ードが構えられたんだな。でも、その最高級を決めるとき、二人までは絞られたんだけど、
もうこの最終決定がもめにもめたんだよ。二人ともでいいと思うんだけど、『この一人こそ
がふさわしい』ってことらしい。んで結局、今も曖昧なままだったんだ」
「……それが、『グレード4+』……」
「ああ、話が早いな、そのとおり。でも、そこに、想定外とはいえなかなか適した状況が
やってきたできた。候補の一人が戦場で、見境なしに暴れまわってるんだ。じゃあそこに
もう一人を放り込んで戦わせればいいじゃないか、と、そうなったんだろうな」
 常盤台中学在籍というブランドと、十一次元移動能力という希少価値、それに大能力(レ
ベル4)の強さを重ね備えたエリート能力者か。
 不穏な組織に身を置き、本物の戦闘を数多く経験してきた、正真正銘の人間兵器か。
「つまり俺たちは、ここで潰しあわなければならないということだ」
 黒山大助は、言い切った。
 さも、当然のように。



「そんな――」理解が及ばない。「ありえませんわ、そんな無茶苦茶な理由で――」
「あいにく、おまえは自らの意志で俺と交戦せざるをえない。理由ならいくらでもあるだ
ろう。まず、俺はざっと200人以上の人間に傷害を与えた犯罪者だ。計画は無視したし、
仮に計画内であっても正規の治安維持機関にバレたら普通にブタ箱行きだからな」
 彼の言葉に、第一七七支部で見た盗撮カメラの映像が思い起こされる。そうだ。私は止
めるために来たのだ。
 恐怖に塗り潰された悲鳴をあげるスキルアウト。
 情けの欠けらもなく人間を踏み躙る、見たこともないひび割れた顔をした彼。
 しかし、私は考えてみる。今の彼はとても落ち着いて見えた。髪と目が赤い以外は、すこし口調がおかしいだけのの黒山大助だ。もうあんなことをするとは思えない。それならば――
「私は、わざわざあなたと衝突しなくとも、あなたがおとなしく投降してくだされば、そ
れですむ話だと思うのですけれど」
 秘密の組織はあくまで秘密であらねばならない。さっきの彼の話からすると、黒幕はス
テージのお膳立てや裏の情報工作はできても、陽のあたる場所での手出しや違法行為はで
きないはずだ。
「分かっているでしょう?どうせ学園都市の治安維持機関の手からは逃げおおせることな
ど叶いませんわ。……あなたの罪がどれほどの重さになるのかは察しがつきませんけど
……いずれにせよ、風紀委員である私に妨害行為を働く前に――」
「ちょっと待ちな、白黒」
 冷静に説得をはかる私を遮った彼。あろうことか、その顔はニヤニヤと笑っていた。
「おまえは、この状況が俺の自由意志に反していると思っていると思っているのかもしれ
ないが、それは違うぜ――俺がここに突っ立って待っていたのは、おまえに身柄を確保して
もらうためじゃない――俺は、おまえを潰すために、ここにいるんだ」
 ニヤニヤ笑いが、鋭くなっていく。
「俺は学園都市の手に落ちるつもりはない。よく聞け、白黒。俺はこれより、学園都市か
ら離反する。そのためには白黒、一番厄介な追跡者――空間移動(テレポート)の力を持つ
おまえを、ここで潰しておく必要があるんだよ」
 それらの言葉を、私の耳はほとんど素通りさせていた。
「それは、どういう――」
「まだわかんねぇのか。つまりこういうことだ。俺は昨日から、とある問題に直面したこ
とによりとってもデンジャーな状態だった。その八つ当りのために十九学区で暴れた。そ

して頭がスッキリすると、とある解決方法を導きだすことができた。俺はそれを遂行する
ことに決めた。だがその解決法には、とても数多くの障害があった。中でも最も大きな障
害の一つが、おまえ。取り除くにはどうすればいいか。あの計画によってここに派遣され
てくる可能性が高いおまえをここで潰しておく。その後で邪魔するものは全て壊しながら
用事を済ませて、学園都市を脱出する。そういう筋だ。俺はそのために、計画も利用した
んだよ」
 それにしても、と、黒山大助は酷薄な笑みをうかべながら、
「おまえがこんなにバカ正直に来てくれるとはな――」
 そこで、いきなり背中に回した手に拳銃を構えて、
「――ホント、大助かりだよ」
 瞳と同じ赤色のレーザーポインターのむこうから届けられるのは、軽薄な声、だった。
「んな……」
 その時私は、裏切られた、と感じた。そして驚くほどの動揺が眉間のあたりを貫くのを
感じた。風紀機動員の同僚として幾度もの任務をともに乗り越えてきた彼が、私を失礼千
万な名前で呼ぶ彼が、面倒見がよくて妙に年下受けする彼が、今まで私が彼と認識してき
たアイデンティティが、粉より細かく、液体のように崩れ、流れ去って消えていく。
 気付く。私は、黒山大助のことを、信頼していたのだ。自分で思っていたよりも、ずっ
と強く。
 しかし今目の前にいるのは、黒山大助ではない。今私がここで仕留めなければ、この十
九学区にもたらしたものをもっと広域にバラ撒くつもりの、忌むべき、犯罪者。
「……つまり、あなたは」
 私は拳を握り、赤い髪と目を見据える。
「……今まで私が知り得てきたあなたではない……」
 太股から抜き出した金属矢を指の間に挟み、突き出された銃の射線に真っ向から交錯さ
せる。
「今、黒山大助とは、私の敵の名である、ということですのね……」
 それに対して、彼はやはりフラリと笑いながら、
「気付くの遅すぎんじゃねぇ?」
 言葉と同時に、銃声を炸裂させた。

  ▼

 憧れの人ができたのは、5年前のことだった。

 かつて私は8歳という幼さにありながら、能力という絶対の価値基準から、自分という
人間の限界と価値を知り尽くしていると思っていた。
 レベル5にはとてもなれない。けれどレベル4には手が届く。そんな程度。とはいえそ
れだけでも十分に研究の対象として重要視されるし、あの常盤台中学への入学を保障され
る。どころか、二百七十万の全学園都市民のなかでも千といない大能力者の一人――しかし
私の胸の内は空虚だった。同じだったのだ。私は『外』にいた時から社会的高所に飽きる
ほど立ち続けてきたのだった。
 学園都市という、まったく別の価値基準をもつ世界に身を投じることに感じていた狂お
しいほどの心地よい不安や向上心は、一瞬にして冷え固まった。
 あまり治安のよくない地区の裏路地をよく散歩するようになったのは、私なんかに楽々
と征服されてしまう世界に対する失望からだった。今にして思えば恥ずかしいかぎりだが、
つまり私はわかりやすくて手軽な『スリル』を求めていたわけである。世界を挑発してい
たのだ。そのうちにただ歩くだけでは飽き足らなくなり、通りかかる不良学生――スキルア
ウトという言葉はまだ生まれていなかった――をこちらから挑発しながらも先に手を出さ
せ、正当防衛で痛め付けるという愚かしい遊びを楽しんだりもした。
 そして、あっさりと足元をすくわれた。
 痛苦に支配される頭で、多数の不良学生たちを横向きの視界におさめながら、私はよう
やく後悔した。同時にそれがこっけいなほど無駄な感情であることも悟っていた。
 いまさら。もう遅い。それこそ、致命的に。
 事実、その通りになるはずだったのだろう。
 頭上を覆う天幕を引き裂いて絶妙なタイミングで現われた少年が、不良学生へ垂直なド
ロップキックを炸裂させていなければ。
 奇妙な破裂音があがるたびに壁と壁をバウンドする少年の体、ボーリングのピンのよう
に次々と蹴倒されていく不良学生。眼前に繰り広げられる圧倒的な光景に、まだ混乱から
醒めない私は言葉もなく目を奪われていた。
 暴力。この世で最も直截で有効な対人・対物干渉手段。その速さ、鮮やかさ、強大さ、
すべてが大能力者である私のそれをはるかに凌駕していた。自分が何かに劣っていると思
ったのは初めてだった。
 数秒のうちに全員を伸し終えたところで、彼は私にこう声をかけた。
「ところで最近うわさの“ほとんど犯罪!極悪鬼畜のスキルアウトハンター!”ってのはお
まえなんだろうけど、でもさっきは無様に文字通り足元すくわれて殺されかけてた所だか
ら俺の行動は危機一髪で悪漢から小娘を救ったジェントルマンってことで間違ってないよ
な?ちなみにハンカチと手はどっちを貸してほしい?」

 それが、私が人生で初めて憧れを抱いた人間とのファーストコンタクトだった。
 しかし、その憧れの念はさほどの時間をおかずに単なる敵愾心へと変わり果ててしまう。
 半年後、ジャッジメントとアンパイア両方の適性試験を最短で突破した私は、彼をいつ
かは蹴飛ばして土下座させて頭を踏み付け生まれてきたことを贖罪させなくてはいけない
人間と断じていた。その時にはもう、あの完璧な理想像であるお姉さまとの邂逅を果たし
ていたのだ。当時強能力者(レベル3)でありながら私をこてんぱんにしたお姉さまに、
私は心底惚れ込んだ。ヤツを私の憧れの人などというポジションに置いておく理由などな
かった。
 当然だ。人のことを白黒なんて無礼な名前で呼ぶ男など紳士の風上にも置けない。あん
な愛玩動物を人間より優先するほどの猫バカっぷり、3秒として我慢ならない。ボケたよ
うな調子で人の話を聞き流しておきながら、嘘や誇張を平気で連射する対人手段、人間失
格も甚だしい。
 それにあいつは私を助けてくれた時のことをすっかり忘れてしまっているらしかった。
あの時にちゃんと自己紹介したのに、私をまともな名前で呼んでくれた事は一度もないの
だ。それに加えてあのあしらい。これではもう、天上人の背中を手を組み合わせながら瞳
を輝かせてただ見上げ続ける後輩の態勢なんて――そんな事を考えたことは一度としてな
いが――いまさら、できるわけがない。
 だから、そう……憧れるわけには、いかないのだ。
 いくらあいつが任務の時には自らの身を顧みず救命に命をかけるような男だとしても
――年下には慕われ、年長には信頼され、機動隊のみんなにとって不可欠な存在だとは言っ
ても――私自身、彼にはいくつもの借りがあるとしても――憧れるわけには、いかなかった。
越えなければならなかった。勝たねばならなかった。レベルなら私の方が上だ。彼のレベ
ルは二つも下の異能力。しかしそれはあの路地裏の時から――私が足蹴にされたスキルアウ
トを彼は一蹴した時から同じこと。
 決闘であいつを倒して第七学区最強の風紀委員の名を手にするというのは、それらの煩
わしい事情をどうにかする、唯一の無矛盾な解決法だった。ただ相手の生体活動を破壊す
る事だけを目的とした戦闘行為。学校のシステムスキャンではなく、危機管理能力検定の
取得数でなく、風紀委員会の成績でも評価でもなく、己の拳(その他)のみが両者の優劣
を決めるのだ。
 彼にはずっと決闘を挑み続けていた。相手とまったく同じ土俵で、完膚なきまでに叩き
のめして打ち負かす。自らの優越を証明する。誰も上手になど立たせない。ずっとそうや
って生きてきた。だが肝心の対戦相手は気乗りしない様子だった。俺の肩書きがほしいな
らやる。タコにしたいのなら死なないかぎりはいくらでもサンドバッグになってやるから

それで許せ。それでは意味がなかったが、詰め寄れば詰め寄るだけ無駄だった。勘弁して
くれ、上は3つから末は3ヵ月の子供たちが腹を空かせて待っているんだ。おまえカルシ
ウム足りてるか?おまえにもミルクが必要か?俺は猫に忙しいんだよ。猫に生まれ変わっ
て出直しな。
 しかし今。
 無音の夜の廃ビル群の底で不審火のように立つ、200の人間を蹴散らしてきた彼は、
どういうわけかこれ以上ないほどにやる気らしい。その事実に、どうしようもなく腹の底
が熱くなる。
 学園都市の暗部――クレイモアの正体――グレードという単語の意味――私がここに召喚
された理由――ハ、だからどうした。裏切られた?そりゃいきなりあれだけカミングアウト
されたんだ、今までの人物像との違和感があふれ出すのも至極当然のことだろう。だがそ
んなのは些事にすぎない。ヤツの本性が人を傷つける事をいとわないものであった事など、
どうでもいい。
 いま重要な事は、たった一つだ。
 おまえは、あいつに、勝ちたくないのか。
 あの人間に、私を認めさせたくないのか。
 そんな問い、答えるまでもなかった。

  ▼

 廃ビルに溜まった夜の底の中へ三発の銃声がひろがり、遠ざかっていくのを、私は上空
40メートルから見下ろす。多くの状況においてまず間違いなく人間の死角へと避難でき
る、有効な退避行動。あらかじめ確保しておいた8つの移動候補ポイントのうちの一つへ、
引き金が引かれると同時に『跳んで』いたのだ。

 拳銃程度の火力の銃器など、私にとっては牽制にもならない。そんなものを持たなけれ
ばならない相手には負ける気がしない。
 しかし、黒山大助はその枠内に入りはしなかった。
 バス、という音をたてて、拳銃を構えた腕が跳ね上がり、そして再びの爆発音でピタリ
と静止。
 その銃口は、正確に私を指していた。
 ――銃声、銃声、銃声。
 視認領域からの離脱、その余裕のうちに、何らかのフェイントや牽制を入れてからの一
撃必殺、または即撃破。用意しておいた私の筋書きは、いとも簡単に狂わせられた。
 あわてて『ジャンプ』、重力のなごりすら11次元ベクトル分解された浮遊感を潜り抜け、
今度は黒山大助の後方十数メートルの地上へ避難する。
 最初の場所からすれば、飛び越えて後ろをとった形になるはずだった。しかし振り向い
たそこには、またしても惑うことなく銃口をビタリと合わせる黒山の腕。
 お見通しだ――加虐的高揚に歪む笑み。
 腹の底を、捩れるような焦燥が走った。どうして、私の『跳び』先が分かる?正直、私
は黒山大助を侮っていた。いくらクレイモアとは言えども、しょせんは強度(レベル)認
定に適わない異能力者(格下)だと。あいつが私の決闘を避けつづけているのがその証拠、
200人を相手にできる力を相手にしても、私なら止められる――
 冗談じゃない。
「くっ――!」
 演算の時間がない。一瞬で稼げたのは数メートルだけだった。とりあえずそこに放たれ
た弾丸は回避したが、しかしその精一杯の『ジャンプ』は、たった一つの爆発で無意味に
なる。休みなく『跳び』続けるのに精一杯で、指の間に握ったままの金属矢を『跳ばす』
余裕すらない。
 モグラ叩きのようにでたらめな出現と消失を繰り返す私を狙う黒山の腕は、一見銃撃の
反動に暴れ、腕力が足りなくて振り回されているように見える。しかしその実、赤い揺ら
めきとともに絶え間なく起こる爆発は明らかに運動の補助として働いており、その銃口を
狂いなく私の胸のあたりへ向けつづけている。
 大型交差点のど真ん中という立ち位置も計算ずくだったに違いない。これではビルの屋
上へでも逃げないかぎり、どこに『跳んで』も丸見えだ。小刻みで反対方向へ逃げてよう
としても、たかの知れた距離では照準をあわせる時間を省かせるだけ。ビルの屋上までは
40メートルはあり銃弾を避けながらでは無理、屋内への退避は『割り込み事故』の危険
が高い。
 黒山の言っていたことが思い出される。邪魔な私を排除したあと、彼は全てを踏み潰し
ながらどこかへ去ってしまう……。

 決断した、攻撃に出るしかない。相手のペースに乗せられるわけにはいかない。あと3
回銃撃を受けたら、その直後、黒山へ至近距離から金属矢を連射、あるいは本人を『ぶっ
跳ばす』。
 レーザーポインターの赤い光が夜の底を切り裂く。それが私の体に重なる直前、右方5
メートルへ『ジャンプ』。
 銃声。あと2回で、攻撃だ。3次元と11次元では空間のとらえ方がちがう。11次元
の向こう側の座標からの11次元ベクトルを、さらに11次元分解して演算することは不
可能――つまり『跳んだ』先の地点からの『ジャンプ』の計算を、一回目に『跳ぶ』前から
あらかじめすませておくという二段行動をとる事はできないのだ。カウントダウンでの心
の準備ぐらいしかできない。
 四半秒とかからず、黒山大助は爆破とともに銃口を振り、再び私をロックオンする。

 極狭の空間に閉じ込められた化学反応が、小指の先ほどの鉛に人殺しの破壊力を与える
音。
 間一髪まで粘った時間を使っての『ジャンプ』で、ビルを二等辺直角三角形に通り越し
たむこうの路にあらわれる。いくぶん長く、奇をてらった、初めての能動的な『ジャンプ』。
 赤い揺らめきが横顔をなめあげる黒山、それを私が認識してから、やつは私をとらえた。
粘った甲斐があった、それだけの、コンマ数秒だけの時間さえ稼げれば、それでよかった。
 黒山の腕が、爆発の速さでこちらを向く――
 その瞬間、計算を終えていた私は、彼の背中にいた。
 カウントダウン・ゼロ。
 指と指の間に挟まれていた合計6本の金属矢が、3次元の壁を越え、次々と黒山大助の
11次元座標上へと『ジャンプ』していく。私は原点たる自分に二段構えの計算を行うこ
とはできないが、その代わり、一度に複数の対象を演算することに長けている。計算に時
間のかかる相対距離さえ短くしてしまえば、あとは幾通りもの転移候補座標を並列処理し
つつ、状況に応じてその時その時のリアルタイムで最も効率的な座標へ攻撃をたたき込め
る。
「――、」
 黒山の歪んだ口の端が、焦燥の色をもった。威力と連射性能でいうなら機関銃と同等の
攻撃だ、つい先日その身で味わった『割り込み』の鋭さを、知らない彼ではなかった。
 ボボボボババババガガガガ、連続して音をあげる爆発。
 貫通力の低い弾種の連射を全身に被弾したような、普通の人間ならば逆に負傷するに間
違いない無茶苦茶な動きで金属矢を回避していく黒山。見るまでもなく分かりきっている
ように迷いなく、肩にあらわれるものをどつかれたように、脛に出現するものを蹴つまず
いたように、後頭部を殴られてお辞儀するように、そしてなんのモーションもない突発的
な回転、バック転、スライド移動。

 やはり、見切られている。6本の矢は、あえなく全て不発に終わる――そう、黒山は思っ
たかもしれない。そして、それがねらい目だった。
 6本目の矢を避けた先へ、11次元ではなく、3次元を自分の足で移動してきた私の手
が、黒山の肩に触れた。
 二段行動はとれないが、並列処理ならばお手の物。すでに私の頭の中には、確実に決定
打を放つ計算式が出来上がっている。
 やはり。途中で気付いたことに賭けてみたが、正解だった。
 速すぎる運動のせいで、黒山の目にはものが見えていないのだ。
 それなのに、さっきのモグラ叩きからして、なぜ“瞬間”移動を見切ることができるのか、
思考予測のみで行動を立てられるとでも言うのか、今はそれを訝しむことに意味はない。
考えるべきはただ一つ、どうすれば勝てるのか。だから金属矢が避けられることさえ計算
済み、計算のうちだった。
 私の目論みの通りに動いてしまったことを悟ったらしい黒山は、憮然とした顔をしてい
た。
 私はその表情だけを地表に残して真下のアスファルトにめり込ませるべく、用意してお
いた計算式を、手に触れている黒山の体に適応し、

 『ぶっ飛ば』せなかった。

「んな――ッ!?」
 いい加減わけがわからない、また、なぜ?計算は完璧だった。しかし、それは黒山の体
に染み込み11次元へ引き込むことなく、するりと感覚の網を擦り抜けて、どうして、
 目の前に銃口があった。
 黒山が憮然とした顔のまま、私のこめかみへ斜めに銃を押しつけていた。レーザーポイ
ンターの赤い光が眩しくて、今まで黒かった世界は今や真っ赤に染まっていて、それ以外
は目に入ってこなくて、
 そして私は、混乱にまみれた意識の消失する音を聞いた。
 撃鉄が落ちて、空っぽの薬室が叩かれる音だった。
 我にかえった私は、かろうじて保留されていた退避用の転移候補座標を使って20メー
トル後退する。
 一瞬の無重力のあとですこしよろめきつつ地面に着地、そこで思わずつぶやきを洩らし
た。
「なんていうか、あなた、もう、メチャクチャすぎですのよ……」

 不敵な台詞だと思っただろうか。苛立っているように聞こえただろうか。
 黒山は、ただのL字をした鉄塊となった拳銃から空の弾倉をつまらなそうに抜き取りな
がら、
「お前こそ。11次元を介してなら相対性理論を無視していいのかよ」
 あまりこの場にそぐわない疑問への声。余裕ぶっこいていやがる。それにしても、さっ
きまではギラギラとニヤついていたのに、弾が切れると急に興醒めしたかのようだった。
観察しながら、申し分のない距離を持つ7つの座標を並列処理して確保。
 今、状況は膠着している。あちらが攻撃してきても、時間を得た自分には余裕で避けら
れる距離。しかしこちらの攻撃も、どうせ避けられてしまうに違いない。
 とりあえずの可能な最善は、情報の獲得。
 と、まさにそのタイミングで、
「俺の体、とばせなかっただろ?理由、知りたいか?」
 むこうから言ってきた。これがもし『教えてほしいか?』ならば私は首を横に振っただろうが、沈黙をもってイエスと答える。
 弾倉をポケットにしまいながら真っ暗闇にブラブラとレーザーをゆらす黒山は、どちら
の返答でもかまわなかった様子で、
「簡単に言えば、経験不足だ。これは俺も最近ピンときたんだけどな。おまえの能力(チ
カラ)ってさ、座標の計算よりもむしろ感覚的に一番デリケートなのは、原点であるおま
え自身と対象物をいかに同化――“つなげ”させるか、ってとこなんじゃないのか?そのため
には、対象の物質の構成に慣れるまで何回でも練習を繰り返さなければいけない。単純で
かたい物質ほどとばしやすくて、逆に液体なんかは苦手。気体にいたっては、無理。だか
ら『離れた場所にいる相手を、自分の体に触れている空気ごととばす』なんてことはでき
ない。おまえの不自然な所持品とか見てりゃ分かるよ、たとえばその無骨な得物とかな。
単体の純金属でできた特注の矢は、とばしやすいだろう?いつも戦闘中は電源を切らなけ
りゃならないあのペラペラ携帯だって、回路は規則正しい幾何学模様か、あるいは回路な
んてこまごまとしたものを使わない画期的なシロモノだったりするはずだ。アンパイアの
任務中もいつも制服しか着ていないのは、それがあの『学び舎の園』の特別製だから。年
に似合わない下着にも、きっと深いわけがあるんだろう。大変だな、もっと可愛いヤツを
楽しみたいお年ごろだろうに」
「馬鹿にしないでいただきたいですの。下着はちゃんと私の美的センスにのっとったもの
ですわ」
 からかいめいた台詞への切り返しを返答にしなければ、動揺を隠しきれなかったかもし
れない。

 その通りだった。11次元移動系の能力の開発で一番最初にぶつかる壁は、転移の原点
をいかに対象物と接続させるか、という問題なのだ。これはとにかく数をこなすしか解決
の道はない。対象を頭の中に寸分違わない立体映像としてスケッチし、その線一つ一つを
紡ぎあげた計算式で釣り上げ、自分という移動基点を介して目標地点へ11次元的に接続
する。それが11次元を移動する基本的なメカニズムだ。
 原点である私自身を移動させるのは造作ないのだが、それだけではとんでもないことに
なってしまう。だから一番練習したのは衣類で、2番目は人体だ。成人男性を安定して『跳
ばせる』ようになったのは、約一年前。
 どうして、おなじ系統の能力者でもない黒山がそんなことを知っているのか。移動の際、
実は自分の体以外は全て『ぶっ跳ば』さなければならないという都合上、いくら所持品に
工夫からのヒントがあるとはいえ。だがその疑問も今は無意味だ。
 今の私の『ぶっ跳ばし』は100パーセントと言ってよい成功率のはず、それなのに、
なぜ失敗したのか。
 人間の体を『ぶっ飛ばす』のに必要な情報程度なら、服の上からでも判断できる。体の
輪郭から骨格、筋肉、体重。肌の色つやから体温、血中成分濃度。実物の約9割ほどの値
を求めることができれば、あとは組み立てた計算式が11次元へ引き込んでくれる。初春
が言った黒山の詳細な身体情報は骨と筋肉の密度においてかなり平均を逸脱したものだっ
たが、アンパイアとしての彼を知っている私には予想外ではなかった。その程度ならば簡
単に修正して、戦闘にも支障を与えることのないはずだったのだ。
 さっき黒山の言った言葉。『経験不足』。
「ということは、あなた、バイオインプラントでも施して、」
「いや、違う」
 もっと、違う。頭をつんつんと指差して、
「ここにあるの、わかるか?」
 そう言う黒山は、なぜか嬉しそう――いや、誇らしそうに、見えた。
 目をひそめて、縮れたような癖毛の黒髪を観察する。能力による爆発で散髪したという、
しかし以前よりも若干伸びているようにしか見えない頭。ワックスも使っていないのに自
然とそれらしい髪型になるのだという癖髪。だが、特にどうということは――
 側頭部の髪の一束が、とても不自然に、ピクリと動いた。
 風ではなかった。首やらを動かしてそれらしく見せているわけでもない。小動物が潜り
込んで身じろぎしたような、明らかに肉体を感じさせる動きだった。
 もういちど、動いた。
 ピンクに近い、血色のいい肌色が、黒い髪――いや、黒い毛からのぞいていた。
 それは、確かに、
「――耳!?」
 猫の耳、だった。


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