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『とある上嬢の日常とイベント』

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『とある上嬢の日常とイベント』



「はぁぁぁ、不幸だぁー」
 本日の不幸とは、何故かこの私がバレンタインのチョコレートを手作りする羽目になった。
 事の起こりは学校でのこんなやり取りからだった。


 私が何時もの様に自分の机で優雅なひと時を送っていると、

「やっほーカミやーん、今日もアンニュイな感じで寝不足なん?」
 ドカッと背中に重みを感じたかと思うと、聞こえてきたのは青髪の馬鹿声だった。

「くぉら、青髪ィ、テメェは何時になったら自分のうすらでかさを自覚するんだこのヤロー!」
 文句を言いながら肘打ちをかましてやると、

「ぐッ!? カ、カミやん……、中々鋭いツッコミやね、うぅ、お、おき、に……」
 ずるずると、私の背中から剥がれていった。
 まったくあの図体でのしかかりやがって、これ以上背が伸びなかったらどうしてくれるんだ、ったく!
 と、思ったのもつかの間、今度は頭上から何かがガッと私の頭を鷲掴みにすると、ぐぐぐっと机と顎でディープキスをする様に圧力を掛けてきやがる。
 こんな悪ふざけをする馬鹿は……、

「土御門ォ! な、何すんだこのヤロー」
「朝の挨拶だにゃーっととぉ!? チッチッ、カミやんカミやん、青ピと同じ手は食わんぜよ」
 くそ! 距離を取ってやがるから手が届きやがらねぇ!!
 仕方が無いから自分の頭を鷲掴みしている手首を掴んでぐいっと捻ろうとするがビクともしやがらねぇ!?
 それどころか土御門のヤロー、掌の力を上げて来やがった!?

「痛、いたた、つ、土御門、痛ッ! 痛い!」
「にゃーカミやん、これがカミやんと俺の実力の違いだにゃー、放して欲しけれ……ガッ!?」
 はーはー、ざけんな土御門、いくらお前でも脛を蹴り上げられたら痛いだろーが。
「っくく、さ、流石カミさん、いい右足持ってるにゃー、将来は世界を目指した方がいいにゃー」
 手を外すのには成功したみたいだが、どーもダメージは大して無いみたいだな……、ま、期待もしていなかったけどな。


「時にカミやん、今度の土曜日は何の日やか知っとるん?」
「いやいや青髪、カミやんは天然だからにゃー、はっきり言ってやらにゃ判らんぜよ」
「チョコならやらねーぞ」
 これでもかってくらい冷たく言い放ってやった。

「何でやのん、カミやん? ボクとカミやんの仲やないか~」
「えーっ!? それはつれないぜよカミや~ん」
「えぇーいい、うるさいうるさい! 何で私がオマエらなんかにチョコをやらにゃいかんのだ! むしろ私がオマエらからチョコを貰いたい位だッ!!」
 ホントこのお祭り好き男どもには呆れ返る。
 ここは一つ現実っちゅーモンを叩き込んでやろうと思う。

「だいたい考えてみろ! カミジョーさんの逼迫した経済状況の何処にチョコを買う金があるんだ!! おい、青髪ピアス! オマエ説明してみろ!」
「んな!? 堪忍してぇ~なぁ。そんなん言われたかてボクにはカミやんの家計の事なんて判らへんよ~」
 ズバァーン! と青髪ピアスを指差してやった。どうだ馬鹿ヤローが!!

「んふふふ、カミやん貢いでるからにゃー」
 土御門……、お前は今何と……、

「な、なんやて土っちー!? カ、カミやんが貢いでるって……、カミやん貢いでるってどういう事なん!?」
 ホ、ホラ大変な事になったじゃないか!! 青髪が興奮してコワヒッ!?



「お、ちょ、ちょっと待て青がっ!? オイ土御門ッ!!」
 テメ責任とって収集しろ! 何笑ってやがる……、オイ、止めろ、それ以上カミジョーさんのプライヴェートを……。

「事実は事じ、ぶぉべ!?」
 目、目の前から土御門が消えたッ!?
 で、今目の前にいるのは……、

「吹、よ、せ」
「…………」
 何だ? 声が小さくて良く聞こえない。
 顔を近づけて「どうした吹寄?」って聞いてみると、

「今の話は本当なのって言ったのよ!!」

 み、耳痛ぁ……。
 な、何だこの状況は? 何故、吹寄が興奮していらっしゃるのか?

「お、落ち着け吹寄。カミジョーさんにはさっぱり状況が飲み込めないどぇぇええええ!!?」
 胸倉つかまれると一気に持ち上げられるとは、なんつー力なんだかコイツはって、感心してるばあいじゃねぇ!?

「だ、か、ら、貴様は何処の馬の骨に貢いでるって言うのォ!!」
「ごか、ごか、ごか、誤解だぁぁぁああああああ!!」
 あわあわあわ、ゆするのは反則ですよ吹寄サン! 暴力反対!!
 ってそこにおわしますのは、キングオブ■■の

「ひ、姫神、お願いだから吹寄を止めてくれ、いや止めてくださいお願いします」
「たまに声を掛けてもらえば。そんな事ばかり。しかも。今。私の事をなんと呼んだの?」
「いやいやいや、そんな女性だからキングじゃなくてクイーンでしたねぇぇぇって、お、お願いします! 助けてください姫神さま、秋沙さまぁ」
「し。下の名前で呼ぶのは。ちょっと反則。取り合えず了解」
 何か急に頬を赤らめたりして、様子が何時もより2割り増しでおかしくなった姫神が両手をワキワキさせながら吹寄の影に入っていった?

「んにゅわ!? ひ、ひィィィィィ!!」
「ぐふぁー!! ぜー、ぜー」
 と、取り合えず何だか助かったぜ。
 で、姫神のヤツ、どうやって魔人吹寄に悲鳴ををををを!?

「相変わらず。布越しでもかなりのもみ心地で。結構結構」
 すげぇ、姫神の指が吹寄の胸に埋まってる!
 私じゃああはならねぇーよなぁ、なんて自分の胸に手を当ててみたり。

「い、いやッ! やめ、やめ、止めて姫神さんンンン!!」
 それにしても目の前で身悶える吹寄って迫力あるなぁ~、なんて思ってたら吹寄はしゃがみこんでしまった。
 見ると目の前にはVサインを示す無表情の姫神が、

「貸し一つで。よろしく」
 いやもとい、姫神の口元のニヤリとなってる。
 私はもしかして、地獄から逃げるのに悪魔に魂を売ってしまったんでしょうか?
 「体で払え」とか言われそうで怖い……。ま、私に出来るのは力仕事くらいだけど。


 そして結局騒ぎを誤魔化す為に私はチョコを配る羽目になった。
 しかも何故か吹寄と姫神にも……。
 女からチョコ貰って何が嬉しいのか? 正直彼女らのテンション高くて少し引いた。
 そして更に何故か手作りまで約束させられた。

「やーカミやん、まっさかそこいらでチョコ買(こう)て来てなんて、そっないな事思って無いやろね~?」
「こらこら青髪さん、カミやんこれでも(ぶきっちょ)なんだから、そんなに追い詰めちゃかわいそうだにゃー」
「ま、貴様の事だから、そこら辺に売ってるのをそのまま持ってきても驚かないわね」
「貴女から貰えるなら。特に何でも構わないから」
 自分の勝気な性格が恨めしい限りだ。
 ま、無駄な出費を抑えるためにも、手作りするのはやぶさかでは無い。
 そう言う訳で、私は今スーパーの買い物袋なんかを提げて帰宅途中なのだが。


 お? 御坂じゃーん。
 毎っ回毎回電撃ご馳走いただいてるんだから、たまには先手必勝と行きますか!
 私は買い物袋をその辺に置いて、すすすっと御坂の背後に、そして。

「み・さ・かぶぁ!?」
「んぎゃー!!」
 例に漏れず滑っちゃいました、ハハハ。
 ま、今回は転ばずにすんだので痛くは無かったんだけど、こけた瞬間「ブチッ」って何か聞こえたような……。
 だいたい私が顔を埋めてる場所、ムニムニって……、ずりずりっと顔を上げると……、アハハ、ここ御坂のオシ――。

「ちちち、ちか、ちか、ちか、痴漢ンンンンンンンンンンンンンン!!」
「ワギャァァァァァアアアアアアア!!」

 死ぬ死ぬ!! カミジョーさんマジあの世行きですって!!
 今、目の前に雷の柱が現われましたのことよ!?

「ま、待て御坂、私、私、カミジョーさんですよ?」
 取り合えず呼びかけてみたら御坂と目が合った。
 ずり落ちたスカートと多分中の短パンその他を押さえて顔を真っ赤にして涙目になった御坂に、流石の私もばつが悪いわこりゃ。

「ワリッ御坂ぁ、カミジョーさんちょーっと悪ふ・ざ・け・がぁ……」
「ッザケンンンンンンンンナァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!」
「ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!?」

 ひええ、御坂経由カミジョーさん行きの特急雷撃が休み無く降り注いできますって!!
 自分が悪いとは言え、ここで死ぬわけにいかんし、墓碑銘に『上嬢、女性を襲って返り討ちに遭う』なんて彫られた日には末代までの恥になるってか、ここで上嬢家が途絶えてしまう!!
 ここは一つ、

「御坂ァー!!」
「キャ!?」
 一気に飛び掛って抱きしめて……、あ、れ? 抵抗が無いな?

「御、坂、さん?」
 あの、目を瞑ってどうしましたか?

「あの……御坂?」
「ぁぇ……? しないの?」
「『しない』って何を?」
 意味が判らん? ってどうして其処で節目がちに視線を外されますか御坂さん?
 「しないんだ……」って何でそんなに残念そうなんですか御坂ァ!?
 ま、たまにはこんなしおらしい御坂もかわゆくていいんじゃないか?

「可愛いし暖かいし、ま、いっか……どうした御坂?」
 御坂が固まってしまった……、あ!?

「そうだ御坂。さっきお前のスカート『ブチッ』とかいっただろ? カミジョーさんこれでも裁縫セットは常備ですから、お詫びに直させて下さい」
「え? あ?」
 御坂は戸惑ったが、ここは先手必勝!
 一旦買い物袋を拾いに離れると、戻って御坂の手を引いた。

「そこらの公衆トイレはっと」
「え? も、いいから止めて、お願い……」
「まま、可愛い御坂タンにお詫びさせてくださいまし」
「…………(ズルイ)」
「え? 何か言った?」
「な、何にも言って無いわよ……」
「?」
 何時も思うけど、御坂ってホントおかしいよな。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 その後、一緒のトイレで御坂のスカートを直した私は――短パン履いてる癖に随分恥ずかしがって、やっぱ変なヤツ?――まっすぐ家に帰ってチョコレートの作成に入ったわけだが。

「こーらー!! イーンデーックスゥ」
「ンぐッ。何かな、とうこ?」
「何かなじゃ無いでしょうが! おま、今、そこにあるチョコ食べただろ?」
 結局こうなる訳だ。
 だから私は嫌だったんだ。
 インデックスが食べ物を目の前にして我慢できる筈が無いじゃないかよ。
 それにしても今日は目つきが違う。
 明らかに全部平らげてやるって気が満々だ。
 やっぱり女の子だけあって甘いものには目が無いんだな。

「インデックス? 後でちゃーんと別のを用意してあげるから、少しだけ待てって――コ、コラ、喰うなって言ってるだろうが!?」
 どうしたんだ今日のインデックスは? 腹ペコ度5割増ですか!?

「とうこの物は私の物、私の物は私の物――だからとうこが作ったチョコレートはみんな私のものなんだよッ!」
「んがぁっ!? な、何と潔いまでのジャイアニズム宣言!! イイイ、インデックスッ!! 私はお前をそんな子に育てた覚え……」
「最近は放って置かれてばっかりだからそこまで言われるのは心外かも」
 ああ言えばこう言うって、まぁまぁ、なんて子なんでしょうコイツわぁぁぁぁああああ!?

「だから食べるなって!? コラ、止めろ!!」
「止めてももう遅いかも。と言うか今の私はもう誰にもとめられないんだよ!!」
 あああ……、私の数時間の苦労が……。

「うう……」
「え? とうこ……?」
 折角食費を切り詰めて材料を買ってきたのに……。

「わーん!! もぉ、インデックスの馬鹿ぁ……!!」
 もうあったま来たから恥も外聞もかなぐり捨てて、インデックスをギャフンと言わせてやるのだ!!
 取り合えず、童心に帰って泣きながら手足をバタバタさせてみたりッ!
 お、インデックスのヤツ困ってるな? しめしめこれで少し反省して食費……って、オイオイどちらへ向かわれますかインデックスさん?

「…………」
 インデックスが居なくなってしまったので駄々っ子作戦は中止。
 てか、一人でこれは流石のカミジョーさんもハズい訳ですよ。
 あ、インデックスが戻って……。

「インデックス……、頭のリボンは……何?」
「とうまのチョコ食べちゃった代わりに……、その……、私を食べるといいかも」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 インデックスは取り合えず闇咲直伝の縛縄術で梱包しておいた。
 縛られてる間のインデックスが何か大人しいと言うか、熱い眼差しをこちらに送って来たのは何の魂胆があっての事か?
 後で解くのが恐ろしいが、取り合えず放置して寮を出てきた私は、インデックスに喰われてしまった分+インデックスを鎮める為に買出しにスーパーに来た。

「ん゛ー、結局こんだけ金使ったら売ってるの買っても一緒じゃねーのか? くぁー、ふっこぉーだぁぁああ」
 あ、やべ……、店の中で騒いでたら注目浴びてしまった。
 げっ!? 生クリームが無いんでやんの。えぇーどうしたもんか……、お! 天の助けとばかりにありゃ店員さんじゃねぇ?

「あっ、すいませーん、生クリームってまだありますか?」
 近づくとデカイなこの人。しかもバリッバリの外人さんじゃん!? に、日本語で通じたかしら……?

「生クリームは……、出ていないのであるか。確認してくるので申し訳ないが少し待って欲しいのだが」
「あっ、お願いしまーす」
 デカイ店員さん、体の割りに身のこなしが機敏だなぁ。
 日本語も流暢でカミジョーさん助かったぜ。
 暫くして外人さんは……、おいおい、ダンボール箱を、2、4、6、8……8箱抱えて帰って来た。なんつー力だ。
 てか私箱では買いませんよ!?

「お待たせした。銘柄がこれしかないのであるが、いくつ必要ですか?」
「2つ……、いや4つ……、いやいや6つもらいます!」
 ああ良かった。箱の梱包を開けて6つ籠に入れてくれた。
 って6つは買いすぎ……いやもういいや……。

「はい、では6つ、清算はレジでお願いするのである」
「あっ、後、ラム酒も欲しいんですが……」
「あ、それはこちらです」
 何処までも親切な店員さんだなぁー、私この店の常連になろうそうしよう。

「ありがとうございました!」
 さて、さっさと帰ってチョコチョコっと。

「お役に立てて光栄である。ああ――」
「ぅおわッ!?」
 んぎゃ!? すべ……あ、あれ?

「走ると危ないのである」
「す、すいません」
 そっと床に下ろして貰ってから、買い物籠を受け取った。
 うははは、見ず知らずの男の人に抱っこされちまった――片腕だったけど。
 その後赤面したままさっさとお金を払うと逃げるようにスーパーを飛び出してきた。
 う゛ーむ、すっかりあの店員さんのお世話になってしまった。
 いやー、ちょっと格好よかったかな?

「さぁーて、結局材料を余分に買い込んじまったし、よぉーし気合入れてチョコを作るのである!」
 なんつって。
 私は、気合を入れると買い物袋をぶんぶん振り回しながら、珍しく気分良く寮に帰るのである。
 あれ?





END


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