とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第六話

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だれでも歓迎! 編集
あらすじ
上条の鞄からその容量を遥かに超えてあふれ出る世界中から転送されたチョコレート。
傍観を決めるステイルとインデックス、友人を気遣いながらも同席しヤキモキする土御門。
そして青髪ピアスは美琴によってこんがりされてしまったが彼は復活できるのか?
よい子は真似しちゃいけません。 
ポッキーはグリコの登録商標です。

第6話 『とある御嬢の『告白儀式』(ハートトゥハート)』

 薄いサングラスの奥の瞳で喫茶店のウインドウから遠くに確認できる騒ぎをぼんやりと見つめながら土御門は自分の向かいの席で優雅に2杯目の紅茶を啜るステイルへ疑問を投げかける。

「なぁ、ステイル・・・・、アレ止めなくてもいいのかにゃー?、お前アレ処理するために来たんじゃないのかにゃー?」

そんな理由でもなければ科学が支配するこの学園都市にわざわざ魔術師たるステイルが出向く理由もないし、何よりこれは彼が最初に言ったことだ。

 どんどん大きくなる騒ぎも収まる気配を見せないし、もしかしてコイツは厄介ごとを俺に押し付けるつもりなのではないか?
土御門の投げかける言葉にはそういうニュアンスが含まれている。 

つまり、さっさと仕事しろこのバーコード野郎、と言いたい。

「どうせやるなら一回でドカンといきたいね、ボクは面倒なのは嫌いなんだ」
いまでも土御門が見つめる先では充分な被害が出ているのだが・・・、面倒、そんな一言で片付けられてしまった。

青いサングラスの奥の瞳が注意深く見守る少し離れた広場では騒ぎはますます大きくなろうとしていた。

特に一人に集中して、いや一緒にいる女の子にもとばっちりだろうか・・・・土御門は普段あまり祈ってないが友人の為に神に願ってみた。
(かみさまかみやま、どうかカミやんに試練を与えたまえ)


ズゥゥゥン


 腹に響くような低い音が響く。 

どうやらまた被害が増えたようだが赤い髪の魔術師はいまだにティータイムだ。

これだからイギリス人という人種は・・・・午後の紅茶は欠かさず、が心情なのだろうか? その横にいる白いシスターも同じ様にミルクティーで喉を潤している。 

 否、こちらはどちらかというと3時のおやつと言った言葉の方が良く似合う。

モンブラン、クレープ、ガトーショコラ、ミルフィーユ、ザッハトルテ、シュークリームなどなど、それこそ、メニューの端から端まで持って来いとばかりに食べまくるインデックス。 本人曰く「ケーキは別腹」だそうだ。

 ここの払いは一体誰が持つのだろうか?すくなくともこの腹ペコシスターでないことだけは確かだな。

 ちなみに土御門元春の現在の所持金3500円きっかり。 思わずツケとか利くんだろうかなぁ、そんな事まで考えてしまう。

「土御門、さきほどのアイツが鞄から出してたチョコレート何個ぐらいあったと思う?」
いきなり何を言い出すのだこいつは?といった言葉をぐぐっと呑み込んで土御門が心底どうでもよさそうに答える。

「吹寄に姫神、あとあの女の子の以外にざっと400いや、500てところかにゃー? ケーキもあったみたいだしあれはオルソラあたりかにゃー?」

「500・・・・・よくもまぁそんな数を集めれるもんだ、やっぱりそろそろ動かないといけないのかな?立場的に。 彼を助けるのはものすごく気乗りがしないんだけど」

心底嫌そうな顔をしてステイルが懐から出したオペラグラスで覗く先の広場ではなんだかすごいことが起きていた。



ズウゥゥン、ボシュウウウ、ブォォォン。

「ひっ!? うひゃ! と、ととと」
「ちょっ!なにこれ!?わったたたた」

風を切って迫り来る茶色い凶器を紙一重で避ける、飛ぶ、転がる、飛びのく。 そしてその後を茶色い棒が追う。

攻撃を空振りした目の前の茶色い物体は悔しそうなうめき声を上げて上条と美琴へ更に攻撃をくわえる。

 その手に持った巨大な鈍器。全長3m直径でいえば道路標識のポール程度はあるかもしれない『ポッキー』で。

とにかく当たったらたんこぶでは済まなそうな勢いでそんな茶色い凶器が飛んでくる。

 自販機をなぎ倒し、地面を抉り、どんどん勢いを増していく。 しかも折れない。

「もぉぉぉぉ!なんなんですか!この茶色いのは!」
叫ぶ上条の頭上を高速で『ポッキー』が通り過ぎる。 

 直後の風圧だけでも当たったらどうなるか想像に難くない。

「あぁぁ!もうッ!!なんだって私まで狙ってくるのコレ」
時折向けられる理不尽な暴力をバックステップで華麗に避けつつ美琴が文句を言う。
『コレ』を指差して。

 『コレ』―つまり目下上条当麻と御坂美琴を執拗に追い回してくる茶色い・・・・人? 正確には人型をしたチョコレート。

全長は2mぐらいで見た目はなんか寸胴なロボットみたいだ。 ドラム缶+ドラム缶+バケツみたいな容姿をしている。

少なくとも数分前まではチョコレートだった。 なんだかいきなり今のような状態に『変化』したのだけれど。

グォォォォ、と低いうめき声を上げてチョコレートは剣道の突きのように『ポッキー』を突き出してくる。

「ああ、もうウザイッ!」

「なんなんだろうなー。 いきなりチョコレートが光りだしたと思ったらコレだもんな、不思議不思議」

「なんでも不思議でかたづけるんじゃないわよッ! どうかんがえてもおかしいでしょ!」

そういって美琴は電撃をチョコレートへと叩きつけたが、電撃をマトモに喰らったチョコレートは一瞬だけ動きを止めたものの
数秒後に何事もなかったかのように再び動き出す。 まるで効いた様子が無い。 当然だ、だってチョコレートだもん。

 ちなみに上条達を包囲していたクラスメイト達も通行人達もとっくの昔に逃亡していた。 みんなトラブルは御免なのだ。 

「ちょっとアンタ。 その右手でちょちょいっとあれ殴って来なさいよ、多分壊れるわよ」

「あの『ポッキー』を掻い潜ってか? 冗談キッツイぜ、お嬢様―痛!」

「私ってば完全に巻き添えっぽいんだけど? アンタはそんなか弱い女の子を守ってくれたりしないわけ? へーそうですか・・・・私なんて結局どうでもいいわけね~、アンタにとってその程度に価値しか無い女なのね~。なんだかもうどうでもよくなっちゃったかなー・・・・五月病かしら、薙ぎ払っちゃおうかなー。 全力で。木っ端微塵に」

スカートのポケットからゲームセンターで使われるようなコインを取り出す美琴を見て上条が止めに入る。

ちなみにその間にもチョコレートの猛攻は続いてます。 (注)上条と美琴は会話しながらもしっかり回避行動をしてます。

「[超電磁砲](レールガン)とか物騒な手段はやめぃ!? あとそれ人が聞いたら激しく誤解しそうだ、なんか俺が一方的に悪い人になってるし五月病関係ない。そもそもこのSSは2月14日が舞台だから5月関係無い!!」

上条の抗議に美琴はにっこりと笑って、
「じゃあアンタ突撃ね。 大丈夫、骨は拾ってあげるし、怪我したらお見舞いぐらいは行ってあげる。突撃軍歌でも歌ってあげようか?」
と言った。

 神様、アンタどんだけ俺の事嫌いなんだよ、と上条は神様へ問いかけるが、当然答えは帰ってこない。

「姫・・・・拙者に死ねと申されるか・・・?」

「なんでそこで時代劇なのよ」

「御坂、どうか冷静に考えて欲しい・・・・・・
もしも、もしもだぞ、『あれ』で死んだら世界初『ポッキー』で撲殺された人間になるんだぞ!?
ギネスにだって乗っちまうっての!! そんな不名誉な死に方は断固御免こうむる!
っうかそうこういってるうちになんか二刀流っぽく鈍器増えてるし!やっぱり遠慮したいね、是非!」

増えた鈍器=なんだかトゲトゲの付いた鬼の金棒のような『お菓子』
「ああ、そういえばアーモンドクラッシュポッキーってあったわね、歯に挟まるのよねアレ」
「冷静に言うなぁぁぁ!! あとポッキーはノーマルが一番だぁぁ!」
「イチゴポッキーが一番に決まってるでしょうが! もうこっちくんな!茶色い物体め」
美琴がコインを左の手のひらへ乗せ狙いを定め、[超電磁砲](レールガン)を発射する。
 手のひらから伸びたオレンジ色の光条はチョコレートに突き刺さりあっさりと貫通し、その胴体部分にぽっかりと大きな穴を作った。

が。

チョコレートの目に当たる部分が怪しく赤く光るとグォォォォォと雄たけびを上げその手を天に伸ばす。

「あちゃ、もしかしてダメージになってないのかしら?」

「次あんた行け、みたいな顔をこっちに向けんじゃねぇよ・・・・俺は無能力者なんだっての、御坂センセーみたいにレーザー撃てないんだっての。 いわば初期状態のビッグバイパーでノーミスクリア目指すような難易度だっての」

「レーザーじゃなくて[超電磁砲](レールガン)だっての、って移ったじゃないのその口調!」

美琴は上条のレーザー発言をきっちり訂正しながらチョコレートが薙ぎ倒した自販機に目を向けた。
チョコレートはズシンズシンと地響きを伴って前進してくる。 「仕方無いなぁ」と区切って

「んじゃ、次はこれで・・・・ヒョイっとね」

「ヲイヲイ・・・・最近のお嬢様は随分と物騒だな」
上条の呆れた声を無視して美琴は標的へと狙いを定めた。




ヒュン・・・ドゴォォォォォォォォン

 轟音が響いて広場に土煙が上がる。

「おお、派手だなぁカミやんと女の子。 なんか自販機持ち上げてぶつけたぜぃ、念動力かにゃ?」
「まあソレぐらいしないと止まらないだろうね、アレは」

(だからアレはなんだよ)

土御門の説明希望ビームに気づいたのかイチゴタルトを口に運んでいたインデックスが顔を上げ、すぐにイチゴタルトへと戻った。

「ヲイ、いい加減土御門さんにもわかるように説明してほしいぜい、禁書」
「その略し方あまり好きじゃないかも。 イチゴタルトの相手終わったらね」

要するに貴方の相手はまた後で、と。 どこの悪役の台詞だよそれ。

このシスター甘いものに目が無さ過ぎる・・・節制とか重んじたりしないんだろうか。 紅茶をお代わりしたステイルへ助け舟を求めるがヤツは諦めろ、と言った視線を返してくるだけだ。 いい加減伝票がケーキで埋まりつつありそれも土御門の胃をきゅうきゅうと締め付ける。

 イチゴタルトを完食した白シスターが「ごちそうさまでした」とイギリス人の癖に流暢な日本語で満足そうな声を上げたのはそれからコーヒーを2杯お代わりできるぐらいの時間が経ってからであり。

その間広場ではオレンジ色の閃光が何度も打ち出され、轟音が響き、上条当麻の悲鳴も響く。
(カミやん・・・・今は、今は耐えるんだにゃー、でも女の子と一緒にピンチなんてなんかムカツク)
広場でチョコレートゴーレムと死闘を繰り広げる友人を心配しつつもどのような状況でもフラグを回収する体質をすこし羨んで絶妙な表情を浮かべる土御門。

「さて、そろそろ説明しようか? なんか文章にしづらい表情してるけど大丈夫なのかな?」
「いや、構わないから始めちゃってくれだにゃー、土御門さんは義妹だけでお腹いっぱいなんだにゃー」

紅茶のカップで口元を隠したステイルがすっごい小声で「この義妹にメイド服着せて悶絶してる変態め」と呟いたが土御門のサングラスがギラリと不穏な輝きを放ったので途端に目を逸らす。

「『告白儀式』(ハートトゥハート)はね、ある条件を満たすとね第二段階に移行するんだよ」
「第二段階?」
頷くインデックス。

インデックスは人差し指をぴーんと上に向けて説明を続ける。
「ある特定の誰かから『告白儀式』(ハートトゥハート)を通して贈られた物品を贈った本人の前で正式に受け取る意思を示すと残りの贈られてきた物品を媒介にしたゴーレムを作成して強制的に残りの品の受け取りを要求するの」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
絶句する男二人。

『わからん』と声をそろえて言う。

「そう?結構判りやすいと思うんだけど、様は『嫉妬』と『羨望』を媒介にして要求を促すのかも」
ステイルが無言で差し出してくるオペラグラスを奪い取り、友人の姿を探す。
「なぁ禁書、その受け取りってのはどういう基準なんだ? 受け取るって言えばいいのか?」
オペラグラスのレンズを通して見る限り、チョコレートゴーレムはどうみても殺人的な衝撃を伴った攻撃を繰り出しているようにしか見えない。 もっともその攻撃も上条と一緒にいる美琴が迎撃したり上条自身が右手で防いだりしてるのだが。

[幻想殺し](イマジンブレイカー)に触れた『アーモンドクラッシュポッキー』はボロボロと崩れていき、手元まで砕けると崩壊はそこで止まった。 どうやら『ポッキー』と本体は別物のようだ。

「食べ物の場合はやっぱり食べないと駄目なんじゃないかな」

食べる・・・・あれをか? アスファルト製の地面を容易く抉っても折れないあのチョコレート菓子をか?

「でも14日限定の魔術だからね、今日だけ凌げば問題ないよ」
「なんだと!? じゃあほっといても大丈夫なのかにゃ?」
「まあいま発生してるあのゴーレムは倒せばなんとかなるだろうね。 これ以上うかつに食べなければの話だけどそしたら14日過ぎるまで大人しくしてれば解決かも」

 紅茶を啜るステイルもオペラグラスを覗く土御門も判っていた、もちろん得意げに話すインデックスにだって。

上条当麻に限ってそれだけは無いな、と。





「御坂、俺が防ぐから」
「え、あ、うん」
ごにょごにょ

回避行動しつつ器用に内緒話をする二人は顔を見合わせて頷くと二手に分かれて疾走した。
上条は猛ダッシュでチョコレートへ、美琴は後方に下がって距離を取る。

接近する上条を危険分子と認定してチョコレートゴーレムは迎撃を開始する。
 飛来するハート型のチョコレートに上条の右手が突き刺さり、チョコレートは粉々に砕けちって破片を撒き散らす。
頭蓋目掛けて飛んでくるポッキースティックを裏券で粉砕し、足元から跳ね上がる鋭いパラソルチョコレートへと右手を振り下ろす。
上条の右手に触れた瞬間、そのどれもが只のチョコレートと化し、ことごとく茶色い欠片になる。

「これでどうだぁぁぁぁぁ!!」

美琴の裂帛の気合と共にチョコレートゴーレムを囲うように鉄パイプや鉄柱等の金属が地面へと突き刺さり、その光景はさながら金属の檻といった感じだった。
 続いて美琴の髪がバチンと青白いスパークを発し頭上へと電撃を発し、
「必殺!プラズマリーダーァァァ!」
美琴が叫んで指を金属の檻目掛けて振り下ろす。

 途端に頭上に立ち込めた暗雲は電撃を吸い込みバチバチと放電し、眩い閃光が閃き。
続いて起こったバシンという音と共に雷雲が渦巻き、地面に突き刺さった鉄柱目掛けて天空より本物の雷が飛来した。

ドゴォォォン!

轟音が鳴り響き、空気が震える。 うっすらと目を開けて上条が口を開く。

「ここまでするか?普通」
「し、仕方ないじゃないの! アンタが突撃してくれないから私がやるしかなかったんでしょ」

焦げ臭い匂いとパチパチと帯電した空気が支配する空間で美琴と上条の声が響く。
避雷針さながら雷を受け止めた鉄骨やらの金属の檻は電子レンジのように機能したのだろう。
中に居たチョコレートのゴーレムは完全に溶けてなんだか山型の塊へと姿を変えていた。

上条と美琴は互いに顔を見合わせるとうんうんと頷き両手を構えた。
そして上条が振り上げた両手を勢いよく振り下ろす。 
それを美琴が下から受けて「パン!」
今度は美琴が振り下ろした両手を上条が受けて「パン!」
でもって最後に向かい合って二人で「パン!」
二人はスポ根ドラマのワンシーンのようなノリで手と手を打ち合わせる。

『おっしゃー!俺たち(私達)は無敵だぁぁ!!』

なんだかテンションがハイになってる二人はぴょんぴょんと飛び跳ねながら叫んだ。


 そして広場の有様を見て我に返る。
倒壊したベンチ、引っこ抜かれた時計台、薙ぎ倒された樹木、見るからに廃墟と化している。
その上ぼっこぼこになった自販機からは大量の缶ジュースが溢れ、微かに警告音まで聞こえる。

多分さっきの電撃が原因だろう、以前にも美琴が自販機に電撃を加えた結果同じような警告を聞いたことがある、そのときは警備員が現れて大変な目にあった。 

 つまり[警備員](アンチスキル)や[風紀委員](ジャッジメント) が押しかけてくるのは時間の問題ということだ。

「あちゃー、これってやばいかしら?」

「やばいかしら?、じゃねぇよ、どうかんがえてもいい様には見えんな」

上条は自分のと美琴の鞄を拾って空いた手で美琴の手を掴むと全力で駆け出した。

「ひゃ」

「なんか以前にもこんなことあった気がするぞ!!とにかく今は何も考えずに走れ!」
上条達が去った広場には自販機から聞こえる警告音だけが広場に響き渡るのだった。

次回に続くかもにゃー。第6話完



次回予告
「結局あのチョコレート、どうすんのよ・・・・食べるの?」
「御坂、食べ物で遊ぶのイクナイ―痛ッ!? グーでなぐんじゃねぇよ」
「やかましい、アンタが貰ったチョコレートでしょうが、アンタが責任を持って食べなさいよ」
「うう、勘弁してくださいよー・・・もうチョコレートは見るのもイヤです」
「気持ちはわからなくもないけど、それよりアンタ、ちゃんと私のメッセージカード読んだの?」
「読んでません!(きっぱり)」
「・・・・・・・・(無言で肩とか髪から青白いスパーク)」

次回は最終回
    とある空白の『告白儀式』(ハートトゥハート)


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