とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

後日談

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だれでも歓迎! 編集
□2月14日―午後10時 IN 学園都市

 暗くて冷たい――。 
上条当麻が引き連れてきた1万体近いの茶色い人形に吹っ飛ばされたところまでは覚えているが、その後の記憶が全く無い。
ズキズキ痛む体を起こそうとしたがまるで動かなかった。 それどころから浮遊感が感覚を支配すると
スルスルッと空へと舞い上がるような感覚を覚える、相変わらず目を閉じたままなので世界は暗闇のままだが後頭部が何故か心地いい。 額の辺りに冷たい感触が触れた。
 死神のお出迎えってヤツかな――。
 僕、もう、つかれたよ・・・・・インデックス、もう休んでも・・・・いいよね――。
手に暖かい何かが触れて誰かに持ち上げられるようなそんな感触を感じた。
やっぱり天使かぃ?――。
ああ、死ぬ前にタバコ。 せめて一本でいいから吸いたかった、きっと天国、いや僕が行くなら地獄かな。
そこにはニコチンもタールも無いんだろうな・・・やだなぁそんな世界――。
「――じょうぶですか」
そういえば、人は死ぬ前に神の声を聞くとか聞いたことがあるな、これは結構貴重な体験かもしれないぞ――。
「大丈夫ですか!? 起きなくては駄目なんですよー!!」
今度ははっきりと聞こえた。 どうやら僕のイメージはあの先生らしい。 
 どうせ死ぬのなら神様の姿ぐらい見てからでもいいだろう、とステイルはゆっくりと目を開いた。
ステイルが見た神様の姿は声だけじゃなくて姿まであの先生だった。 
「はは、これはまた・・・・」
力なく笑うステイルへ神様はにっこりと笑ってくれた。
随分とサービスがいい――。 こんな女神だったら崇めてもいいなと思った。
「気が付いたみたいなのですよー。 先生はとても嬉しいのですよー」
あれ?女神様、似すぎですよ?それじゃまるで本物の月詠小萌みたいですよ。
「何を言ってるんですか?先生は月詠小萌なのですよー。 大覇星祭以来なのですよー神父ちゃん」
知らない間に心の声が口に出てたみたいだ、女神様は本物だと仰っている。
「まだ動かないほうがいいのですよー、頭を強く打ってるみたいですから、しばらく先生の膝枕で休むといいのですよー」
膝枕・・・・なるほど頭のやわらかい感触は膝枕なのか・・・そうか膝枕・・・・ん?――。 本物の膝枕。
「なんですとーーーー!!」
「ひゃぁ、突然起き上がったら血流が、ああ、だめなんですよー」
背景に集中線を背負い絶叫し上条当麻に吹っ飛ばされた炎の魔術師ステイル=マグヌスはとりあえず復活した。


 とりあえずステイルは小萌先生と共に夜中でもやっているレストランへと移動した。
路上だったこともあるし、何より夜風の冷たい季節だ、カーディガンを羽織っているとはいえ女性には少々堪えるだろう。
介抱してもらったお礼も兼ねて食事でも奢って適当にあしらうつもりでもあった。
「神父ちゃんは何を頼むのですかー? 本来なら先生が奢ってあげるところなのですが・・・財布を忘れてきてしまいました」
「いや気にしないで結構。 僕を介抱してくれた礼のつもりですのでなんでも好きな物を頼んでください」
店内の壁に掛かった時計に目をやれば時刻は11時に差し掛かるところだ。 上条当麻達は多分まだ『告白儀式』(ハートトゥハート)に
追い回されているだろうが・・・・まぁこの先生を放っておく事は英国紳士としてしてはならない。
ステイルだって立派なジェントルメンなのだ、女性に対する礼儀は弁えている。
「ま、どうせ彼がこの程度でくたばるとは思えないし、大丈夫だろう。くたばったならそれはそれで・・・・」
「何の話ですか?神父ちゃん」
「いえ、こちらの話です、おっと失礼、灰皿を戴けますか」
そう言ってテーブルの一角に置いてあった銀色の灰皿を取ろうと手を伸ばす。
ガシ。
「・・・・・・・」
「えっと、手を離してもらえませんか?」
「駄目なのですよー、神父ちゃんは14歳だと上条ちゃんから聞いてます、未成年の喫煙は成長期の体に多大なる影響を――」
ああ、なんか大覇星祭の時もおんなじこと言ってた気がする。 
「なんですか、その手・・・・」
「タバコ、没収します」
ニコリと笑って女神様は残酷なお告げを下さった。 ありがたくて涙が出そうだ、ていうか出た。
「ニコチン・・・・」
力なく呟く。
「また珍しい銘柄ですねー、おいしいのですか?」
ステイルが渋々と差し出した赤い箱を奪い取った彼女はしげしげとタバコの箱を観察し始めた。 
イギリスの銘柄だから学園都市には売ってない銘柄だ。
しかしこの人元気だな。 それになんだか逆らえない。 
 他の人に上げる頭があっても、この人だけには下がってしまう、これは予感だが一生上がりそうに無い気がする。
絶妙なタイミングでウエイトレスが来たのでコーヒーと地獄ラザニアを注文する。 メニューに深い意味は無い。
ただ地獄というのがヒドク今の自分に似合っている気がしただけだ。 
「先生はこの必殺オムライスとドリンクバーをお願いします」
なんだそのおいしそうな料理――。 料理に「必殺」というネーミングをつけるセンスを疑う、これだから日本人というやつは。
「あー、先生としたことが・・・・ライターを忘れてきたのですよー」
わたわたとカーディガンのポケットを探る見た目子供な彼女。
「自分だけ吸うのは少しズルイと思うんですが?」
「あ、大丈夫なんですよー。先生はこう見えても大人ですから。20歳超えたら吸ってもおーけーです」
「没収したタバコを本人の前で吸うのもどうかと思う・・・」
「最近はタバコも値上がりが激しくてですねー、先生はがっかりなんですよー。 神父ちゃんライターとか持ってませんか?」
聞けよ、話――。 その言葉はステイルの心の引き出しナンバー13の引き出しにそっと仕舞われた。
「僕はライターは使わない」
「ほぇ、じゃあどうやって吸うんですか?」
ステイルは不思議がる小萌の顔の前に懐から出したルーンのカードを見せた。  どうせ客もほとんど居ないし、この人は魔術知ってるし――。
「K(カノ)―炎よ」
ステイルの指先に小さな炎が点り彼女が咥えたタバコの先端を焦がす。 
「おお、神父ちゃんは[発火能力者](パイロキネシスト) なんですかー? 完全に制御してますね、あのカードは燃えちゃいましたが
自己暗示用ですか? とりあえずありがたく、すぱー。 ふう、落ち着きます」
 彼女が吐き出す紫煙が小さな輪っかを作ってレストランの虚空を漂う。
「実は先生の専攻もですねー[発火能力]なんですよー。奇遇ですねー」
この人と一緒だと調子が狂う――。
どこか拗ねた顔でステイルは嘆息した。


「ごちそうさまでした」
彼女は行事よく手を合わせて頭を下げた。 じっとその様子を見ていたステイルの視線に気が付いて彼女は「こうするんですよー」と
ステイルに「ごちそうさま」をレクチャーしだした。 
「では神父ちゃん、先生に続けて言ってくださいね、ご馳走様でした」
「ご、ごちそうさまでした」
よくできました、と頭を撫でられた。 不思議な気分だ、そんなに悪い気がしない。
 会計を済ませて外に出るともう日付が変わっていた。 『告白儀式』(ハートトゥハート)も沈静化しただろうから後はイギリスに戻って封印する
だけで完了だ。 その前にインデックスを探す必要があるな、神裂やアニェーゼ、オルソラもついでに。
「神父ちゃん―」
「ステイルだ、ステイル=マグヌス」
神父ちゃんと呼ばれるのはやはりこそばゆい、せめて名前で勘弁してもらおう。
「じゃあステイルちゃんです」
前言撤回、名前もこそばゆい。 
「先生の家はここの近くですから」
そう言って近くに見えるマンションを指差した。 なるほど確かに近い。
「では僕はこれで―」
立ち去ろうとしたステイルの服の裾が引っ張られた。
振り返れば小萌先生がニコニコして裾を掴んでいた。
「ステイルちゃん、ちょっとここで待っていて欲しいのですよ、5分ぐらいで戻ります」
「ちょ、あ、足早・・・・」
バビュン、と猛ダッシュでマンションへ駆けていった後姿が見えなくなるのにそんなに時間は掛からなかった。
5分後―。
息切れ一つ起こさずに月詠小萌が戻ってきた。 その手には5センチ四方のラッピングされた箱が握られている。
「もう過ぎちゃいましたが、タバコの代わりにどうぞですよー」
「あ、えっと僕はそういうのは」
「貰ってくれないと先生も困るのですよ?」
ふむ、女性を困らせるのは紳士としてそして男としてもっとも忌み嫌われる行為だ――。
ステイルは渋々ながら箱を受け取った。
「ではありがたく頂いて置きます、後日お礼の手紙を送りたいので住所を教えていただけますか?」
紳士スキルを全開にして懐から片側が何も書かれていないカードとサインペンを差し出す。
「あはは、律儀ですねー、そういう子は先生嫌いじゃないですよー、さらさらさら、はい、これでおーけーですよー」
カードとサインペンを再び受け取って書かれた内容を確認して懐に仕舞い、「それでは」とくるりと背を向けステイルは
歩き出した。 小萌先生がその背中に声を掛けた―「また会えますかー?」と
無言で右手をひらひらと掲げてそれに応えた。
 いずれまた――。 



□2月15日 イギリス―。

「あぅー、めっちゃしんどかったですぅ」
「シスター・アンジェレネ、だらしがありませんよ、もっとシャキッとしなさいシャキッと。 あと原作とキャラが違いすぎます」
必要悪の教会(ネセサリウス)の男子寮と女子寮の中間に位置するカフェテラスでそばかす混じりのシスターと切れ長の瞳のシスターが
話しながら歩いてくる。 着ている修道服はいろいろと擦り切れたりして損傷しているようだ。
「おかえりなさい、シスター・ルチア、シスター・アンジェレネ。 私が留守の間に苦労をかけちまったみたいですね」
その二人の姿を認めてテーブルで紅茶を飲んでいたアニェーゼが二人を迎える。
「いえ、そちらも随分大変だったと聞きましたが、なんでも1万体近いゴーレムと耐久戦だったとか」
「倒してもすぐ復活するらしいですねー、神裂さんでも抑えるのが精一杯って聞きましたー」
「・・・ええ、そりゃもう・・・・・しばらくチョコレートは見たくありません」
「うわッびっくりした!?神裂さんどっから現れるんですか」
「最初からいましたよ、只居るような描写が一個も書かれていなかっただけで多分作者の陰謀です」
ウフフフフ、と壊れた笑みを浮かべる聖人様を横に置いておいて3人の視線はカフェテラスの一角でせっせと書き物をする
赤い髪の少年に注がれる。 なんだか一生懸命書いてるみたいで彼女達の視線に気づいていない。
「先日はどうも・・・・違うな。 もっとダイレクトに」
わっせわっせ、わっせわっせ。そんな効果音を背負って真剣に書面に向かう少年の姿がいつもと違うような気がする。
「あれ?ステイルさんの雰囲気がなんか違いません?」
「貴方もそう思っちまいますか」
「何かが足りないんですよね・・・・・あっ」
ポンっといい音をさせて頭に電球を浮かべ手を鳴らしたルチアといまだに分からない二人。
「ステイル、禁煙でも始めたのか? 何だソレ」
いつの間にか現れたシェリーがステイルの口元の[シガレットチョコ]を指差して言うが
「ほっといてくれ」
と間髪入れずにステイルが切り捨てた。 
 ほんとに・・・・ほっといてくれ――。

                                           とある炎の『告白儀式』(ハートトゥハート) 終


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