とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-479

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 虚章 闇の魔王は裏舞台で笑う Skill_And_Magic

 学園都市には窓のないビルが複数ある。そのほとんどが農業実験用のビルだが、一つだけ他とは強度もその中身も異なるものが混じっている。
学園都市統括理事長の城だ。その中では数十万ものコードが床を這い、壁際にずらりと並べられた機械や計算機の類に繋がっている。
そして、その中心には。真っ赤な液体で満たされている筒型の水槽があった。
その中には一人の『人間』がさかさまに浮かんでいた。男にも女にも見え、大人にも子供にも見え、聖人にも囚人にも見える容姿をもつ、その『人間』の名はアレイスター=クロウリー。
この城の主にして、学園都市統括理事長でもある。

 (くくくくく……くく…くくくく……)

 彼は笑っていた。その理由はただ一つ。――“虚数学区・五行機関(プライマリー=ノーリッジ)”について、進展があったからである。
そして、さらに今日。再び進展を望めるからだ。

 (遂に、遂に、ヒューズ=カザキリの本来の性能を発揮することができる一歩手前まできた。後は、成長が不安定だった幻想殺し(イマジンブレイカー)さえ完成すれば……)

 今から、約一ヶ月前に元々の計画であった、「幻想殺し・一方通行(アクセラレータ)・最終信号(ラストオーダー)、三位一体計画」から
プランを2582~3116短縮する形で事を進めることのできる、「幻想殺し・天使憑き(エンジェルハウリング)・音声増幅(ハンディスピーカー)三位一体計画」に
方向をがらりと変更したアレイスターだったが、どちらの計画でも幻想殺しが最大必須条件であり、ぶっちゃけアレイスターの目下一番心配なことは幻想殺しの成長が不安定なことにあった。




 (…と、そろそろか……)

 そう彼が思った瞬間、どういう理屈か彼の目の前に大きな四角いディスプレイが現れる。
そこには灰色の髪を後ろに流し儀礼用の法衣を着た精悍な顔立ちの男がいた。ロシア成教、アレクセイ=クロイツェフ高司祭。
とある学園都市の中学校に在学する少女の義父である。

 『で、どうなのだ?万年逆立ち男』

 彼らは挨拶をしなかった。それは、敵だから……と、いう訳ではなく単に互いにその必要性を感じないからであった。

 「うむ、全く問題ないだろう。あれから一ヶ月、特に何も起ってはいない」

 『問題ない?だが、それは……』

 疑うような声を発するアレクセイ。
彼は心配だった。いくら、禁書目録の例(ぜんれい)があったとしても、そこは義娘(むすめ)・サーシャ=クロイツェフを溺愛し、
ワシリーサには「親馬鹿アレクセイ」と二つ名をつけられ、今やロシア成教の内部や観光客に留まらずイギリス清教やローマ正教の内部でも流行ってしまって、
顔で笑っていて心で頭を抱えている義父、アレクセイ。その不安が尽きることはない。

 「映像を渡しているだろう?それを見れば危険なことなど一度たりともなかったことが分かるはずだが……」

 だが、そこではない。アレクセイが本当に不安に思っているのは……



 『ああ、確かに見せてもらったよ、怪奇・ひきこもり男。だが、私はその映像を見て、一つ貴様に質問したいことが増えたのだが…………』

 と、アレクセイの姿がディスプレイの下側に消え、何やらごそごそごそごそと漁り始めた。そして、しばらくした後、アレクセイは、一つの写真を手に、ディスプレイの中心に戻ってくる。

 『……この少年はいったい何者だ?』

 静かなその声には普通の人が聞いたらものすごいスピードをだして逃げ帰り出すぐらいの怒気と凄味とむき出しの敵意が含まれていた。
だが、『人間』アレイスターは、“普通の人”ではなかった。なので、今までと全く変わらない人を馬鹿にしたような――しかし、堂々とした声で返答した。

 「詳しくは語らぬよ、アレクセイ。そもそも君と私はそういう間柄ではないし、どうせ私が“嘘をつこうが”もしくは“本当のことを言おうが”君は信じない、否、信じることができないことだろう…………まあ、強いていうなればその少年は、学園都市の無能力者(レベル0)の内の一人だが」

 『ふーむ……まあ、いいだろう、盗撮趣味野郎。だがしかし、覚悟しておくが良い。私は近いうちに学園都市へ義娘の様子をみるため行こうと思っている。そして、もしその時義娘の身に何か起きていれば、私は貴様をただでは済ま』

 「君に、一体何が出来るというんだ?」

 筒型の水槽とディスプレイの間に険悪なムードが漂う。……しばらくして、沈黙を破ったのはアレイスターだった。

 「ではな。私は忙しい。可哀そうな義父(おとこ)の相手などしている暇はない」

 と言い、ディスプレイを消してしまった。と、同時に三つのディスプレイが現れる。アレイスターは

 (これでいい。これでアレクセイは学園都市に来ることになるだろう)

 と、考えながらディスプレイを見る。
 一つ目には、とある少女が映っていて、
 二つ目には、物凄い量の計算式が踊っていて、そして、
 三つ目には、四角いガラスケースと、その中にあるねじくれた銀の杖が映っていた


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