737 :■■■■
31日目
第7学区のアーケードを眠そうな目つきで闊歩する男がいる。
猫背気味の背を小さく揺らしながら時折欠伸を漏らす。
しかしいつもとは少し違うのか、その目には確かな光が宿っていた。
夏休み最終日、
闇城降魔は出かけていた。
できれば道中くらいは一人でゆっくりしたい、
と思う彼だがそういう時に限って無駄に知人に会ってしまうものだ。
それを不幸と嘆くか、夏休みの間に築き上げたコミュニティに感心するかは人によりけりだろうが、
間違いなく闇城にとっては後者であった。
闇城の夏休み 最終日
闇城「あ~だりい」テクテク
闇城「なんで、最終日に限ってこんな猛暑なんだよ」
闇城「くそ、最近は気温も下がってきたから油断してたぜ…」チクセウ
??「あれ、降魔さんじゃないですか!」
闇城「ん?その声は…」
738 :■■■■
闇城「そんな顔とは失礼な」ムッ
闇城「別に、今日はちょっと会う約束があるだけだ」
美坂「へえ。珍しいですね降魔さんに用事があるなんて」
闇城「なんか今日俺にきつくない!?」
美坂「別にぃ、気のせいですよー」
美坂(降魔さん。私よりも他の人と用事ですか)ムゥ
闇城「それじゃあ、またな。遊園地また行こうぜ」
美坂「…!」
美坂「いいですよ!できれば早めに!」
闇城「おう。予定空けとけよ!」
美坂「…」
美坂「…」
美坂「もう、なんだかんだで憎めない人なんですよね」
【美坂未琴】
常盤台のエースと同姓同名。セブンスミストで闇城に半裸の状態を見られたことがきっかけで出会った。
遊園地や合コンなどを通して闇城との距離を縮めていくが、当たらず触らずの関係で終わる。
夏休み後も、友達としての交流はあるようだ。
739 :■■■■
闇城「朝飯、おにぎりだけはきつかったな」テクテク
闇城「お、近くにファーストフード店あるじゃん。そこでなにか…」
千住蓮鹿「むぅ…こんな身体に悪そうなものを食べているのか」
天寺「ふふふ…美味しいからいいのですよ。千住ちゃんも鳥のササミなんて筋肉のつくものばっかじゃなくてこういうのも食べたらいかが?」ニコ
闇城「!!」ゾクゥウ
闇城「なにかトラウマの権化が潜んでいたような気がする…」
闇城「ここはやめておこう」
千住「…ふん。私は食べないからな」
【千住蓮鹿】
男よりも男らしい常盤台の強面少女?
闇城に対しては言葉より先に手が出るようだ。そのため闇城の恐れる数少ない人物の一人。
しかし花火を見てすこしだけ心を動かされるような少女らしい一面も残している。
740 :■■■■
破輩妃里嶺「でな、そのこと言ったら闇城の奴、しどろもどろになって面白かったぞ」ケラケラ
焔火緋花「なななな、なにいってるんですか~!も~!」
破輩「いいじゃないか。嘘でもないんだし」
緋花「本当だからって言っていいことと悪いことがあるんです!」ムムムゥ
【破輩妃里嶺】
風紀委員159支部のリーダー。風輪の騒動の収拾に向け闇城に協力を頼んだ。
騒動は無事解決したが、彼女にとっての闇城の存在はそこまで大きいものではないらしい。
攻略最難関人物。
【焔火緋花】
風紀委員176支部の正義のヒーローを志す少女。
男性は
三ゴリ川先生くらいしか意識していなかったが
その夢を認めてくれる闇城に少しずつ意識を向けていく。
夏休み後、闇城が付き合い始めたという情報を聞き入れ少し凹んだようである。
741 :■■■■
コソ
闇城「ん?」クルッ
闇城「視線を感じたけど…気のせいか?」
??「…じょ」ジッ
鉄砲町「しぁ…ゎ…せに…なって」
鉄砲町「ゎたし、の分…まで」ニッ
【鉄砲町大筒】
恵みの大地で出会った暗部のもとで働く少女。
闇城を助けたことから暗部を追われる身になった。
しばらくは路地裏生活で身を潜め続けるが夏休み後、ある日を境に忽然と姿を消す。
闇城の寮には出所不明の千円が届けられたようだ。
742 :■■■■
~少年院
囚人「おい、なにぼうっとしてるんだ」
囚人「奉仕活動の時間だぜ?」
網走「…闇城を近くに感じた」フフ
囚人「はぁ、またその闇城とやらか?上手くそそのかされてここにぶち込まれたってのにそれに気づかないとは幸せな奴…」
囚人「ま、仮初とはいえ希望があるだけマシなのかもな」
【網走逸見】
暴食部隊で数々の血を流してきた元サイコキラー。
闇城と出会い、自らの罪を認め自首をした。
セキュリティの高さからかそれとも彼女の意志の強さからか、
その後彼女は二度と少年院から出ることはなかった。
743 :■■■■
一善「俺をこんな所に叩き込んだクソどもを…」
一善「まとめてぶち殺してやるョ!!」
一善「はははは…」
一善「せいぜいつかの間の平和ってやらを甘受してやがれ…俺は絶対にこの糞貯めから出てやるからョォ!!」
【木原一善】
風輪騒動の首謀者の一人。
闇城と出会ってしばらくはその本性を抑えていたが、騒動終盤になってその頭角を現した。
木原一族の手回しがあってかその後少年院のデータからも一善の記録は抹消されている。
746 :■■■■
闇城「はぁ…しばらく歩きっぱなしで疲れたな」
闇城「ん…いいところにベンチが。先客がいるようだけど断って隣に座らせてもらおう」
闇城「すいません。隣座っても」チラッ
闇城「」
闇城「そうだよな。なんでこんな奇っ怪な恰好をしてるやつを普通の人間だと思ってたんだ俺」
闇城「それで、こんどは何の真似だ?日光浴で太陽エネルギーの貯蔵でも行ってんですかい」
啄「傷ついた戦士の僅かながらの休息といったところか」
闇城「なるほど、暇してるんだな」
啄「クク、そうともとれるか。だがしかしそれではこの真髄を理解したことには」
747 :■■■■
闇城「おう、そんなことより明日から学校だろ。お前課題とか終わらせてあるのか?」
啄「愚問だな、友よ」
啄「そのような救済委員会の活動の障壁になるものは一日目で終わらせてやった」
闇城「なんだかな、お前阿呆だけどそういうところは真面目というかなんというか」
闇城「ま、いいや。あのカオスな集団の手綱はちゃんと掴んでおけよ。ほっておくとろくな事にはならなそうだし」
啄「ククク・・・恐れているのか闇城」
闇城「まあ色んな意味で怖いな」
啄「案ずるな、奴らはそれぞれの領分というものをわきまえている」
748 :■■■■
啄「それでもなお不安が残るというのなら」ジロ
闇城「・・・?」
啄「貴様も救済委員に入ってしまえば良い」
啄「この夏休み、久方ぶりに貴様と再会し、その様子を見守っていたが」
啄「やはり貴様は己の求める“正”と“義”によって動いている。だからこそ、かつてのように私とともに戦うことがあるべきあり方のように感じるのだ」
闇城「・・・」
闇城「悪いな。啄」
闇城「俺は何かに縛られたりするのは性に合わないんだ」
闇城「もし何かをするんであれば俺は俺として動きたい。仲間だのチームだのの考えに引っ張られて動かされるなんてちゃんちゃらごめんさ」
闇城「でも、もしお前らのしたいことと俺のしたいことが一致した時があれば俺はいつでも力を貸すぜ?」
啄「クク、貴様ならそう言うと思っていたさ。そうだ闇城降魔。お前は自由を求め羽ばたく鳥のごとく、何にも縛られていないほうが良い」
闇城「ならなんで聞いたし」
啄「なあに貴様という人物を再確認したまでのことさ」
749 :■■■■
啄「さて、今日もまた助けを求める声がする。俺はそろそろ旅立つとしよう」スクッ
啄「またいつの日か会おう」ダッ
闇城「あ、おい・・・」
闇城「もう行っちまった。相変わらずよくわからない野郎だ」
【啄鴉】
かつて闇城とともに自主的な慈善活動を行っていた厨二病患者(現在進行形)。
現在は救済委員の中で一二人委員会というものを結成し、そのリーダーを務めている。
夏休み中は闇城のコネから二回のコンパを開催するもどちらも救済委的には収穫はなかったようである。
夏休み後もちょくちょく闇城とコンタクトを取り、共闘をすることもあった。
750 :■■■■
魔術師「くそ・・・くそ・・・!!あいつらのせいで我々の計画が・・・!!」
ドンッ!
魔術師「ひぃ!?いきなりコンクリから杭が!?」
黒丹羽「わかってる」
アルジュナ「よぅしナイスだ。良からぬことを図る魔術結社の末端も漏らさず確保っと」
魔術師「一体何だ・・・何なんだお前! 火、水、風、土の四元素をなんの霊装もなく、切り替えて扱うなど・・・一体何の術式を・・・」
黒丹羽「悪い。俺には何を言ってるのかさっぱりなんだが、どういうことだアルジュナ」
アルジュナ「つまりやっこさんはお前の力を魔術だと思っているらしい。学園都市に関する情報には疎いってことさナ。ま、こんな僻地の山奥でこっそり活動してたんだ。それもしかたないんじゃねえの?」
黒丹羽「ああ、そう。んじゃこう名乗ればいいんだな?」
黒丹羽「俺は黒丹羽千責。超能力者だ」ニィ
【黒丹羽千責】
風輪学園に巣食う不良のリーダー各であったが闇城の説得に応じ、足を洗う。
それを認めない木原の反乱も乗り越えたが、今までの所業が明るみになり学園都市外に逃亡。
現在は逃亡を手引したアルジュナの手伝いということで各地を放浪し、
悪事をはたらく魔術結社を追ったりしている。
【アルジュナ】
たまたま学園都市に来ていたがひょんなことから
第六天魔王の存在と企みに気づき闇城と共闘する。
第六天魔王との死闘は苛烈を極め大きな深手を追ったが数週間の治療の末完治し、学園都市を後にする。
その際、追い詰められた黒丹羽と白高城を同情心からか連れ出してきた。
もちろんその後
クリシュナに激怒されたことは言うまでもない。
751 :■■■■
闇城「ん~・・・さて俺もそろそろ行くか」
闇城「まだ時間はあるけどもしかしたらあいつも早めに来てるかもだからな」
男の子「わ~!!急げ急げ!!」ドタドタ
闇城「おぉう!?」サッ
??「こら~待ちなさい!」
闇城「前から走ってくるのは・・・」
対馬影華「はぁはぁ・・・ホント、男の子ってすばしっこいんだから・・・!」ゼェゼェ
闇城「対馬ちゃん?どうしたんだいそんな子ども引き連れて」
対馬「や、闇城さん!?」
女の子「わ~誰誰?もしかして影華ちゃんの彼氏さん?」
対馬「こ、こら。違います!///」
752 :■■■■
対馬「」コホン
対馬「いつも私がお邪魔している幼稚園で今日はみんなでお買い物しようってことになったんです」
対馬「私はその引率ということなんですがご覧の有様でして」ハハ
闇城「なるほど。大変そうだな」
対馬「あの・・・も、もし闇城さんがご迷惑でなければなんですが・・・」チラチラ
対馬「これからセブンスミスとまでご一緒しませんか。に、人数多いほうが子どもたちも喜ぶというか管理が楽というか・・・///」
闇城「・・・ああ。」
闇城「悪い。この後用事があるんだ。この埋め合わせはまたいつかするよ」
対馬「・・・!」
対馬「・・・そ、」
対馬「そうですよね。私も急に思いつきの提案をしてしまって、すいません」ペコッ
753 :■■■■
対馬「では、また今度」
女の子「え~!!」
女の子「いいのぉ?大勢のほうが楽しいよぉ」
対馬「いいから。いきますよ」
女の子「あ、待ってよぉ~」
タッタッタ…
闇城「うーん、なんか罪悪感を感じてしまう」
闇城「まあ、仕方ないよな。こっちもこっちで外せない用事だし」
【対馬影華】
常識人。かつて闇城に助けてもらったことから憧れと秘めた思いを抱き続けていた。
IFの世界では無事闇城とゴールインし、幼稚園での手伝いをともに行うようになる。
こちらでは後に闇城が別の人と結ばれたということを知り、
しばらく落ち込むも陰ながら応援をするようになっていった。
754 :■■■■
闇城「さて、そろそろ待ち合わせの時計台だけど・・・」キョロキョロ
闇城「さすがに15分前は早すぎたかな?無駄に気合入ってるみたいに思われたら恥ずかしいんだが」
??「おっそ~い!!」
闇城「ぬぇ!?」
崎野ヒナミ「まったく45分も私を待たせるなんていい度胸してるじゃない」プンスカ
闇城「え?言っとくがまだ待ち合わせ時間の15分前だぜ?」
闇城「45分って・・・お前まさか1時間も前にここに?」
崎野「・・・///」カーッ
崎野「うるさいわね!ただ時計がぶっ壊れて一時間先に進んでいただけだから!///」
崎野「別に、早起きしすぎてお弁当作ってもまだ時間があるし、家にいてもそわそわしちゃうから仕方なく一時間も早く出てきたとかそういうわけじゃないんだからね!?///」
闇城「いや、お前ってそんなコッテコテのツンデレキャラだっけ!?もはやキャラが崩壊を通り越して再生していくレベルなんだが」
崎野「うるさいうるさいうるさい!」ムキーッ
755 :■■■■
ギュッ
闇城「わ、ちょっと。手・・・」
崎野「さっさと行くわよ。夏休み最後の日なんだから時間だってないでしょ」
闇城「・・・そうだな」ニッ
闇城「めんどくさい夏休みの最後の集大成だ。最後くらいおもいっきり楽しむとするか」
崎野「ふぅん。私としちゃ目の前に一番めんどくさい人物がいるのが最大の不安要素だけど」
闇城「その言葉まるっきりお前に返すぞ」
<ナンデスッテー! <オワ!?オマエドコカラソンナド゙ンキヲ!?
<マジカルハートニイグニッション! アシキタマシイヲイマココデウガツ!!
<ヤメロー!!
【崎野ヒナミ(完全武装少女ヒナミン)】
夏休み、闇城が一番最初に出会った人物。
最初は痛々しいコスプレ姿で町を闊歩していたが本名バレからしばらくは自粛した。
性映像屋や
ペイントなど危険な所に突っ込んでいくたびに闇城に助けられ、
段々と闇城を意識をしていくようになる。
また胸部が唯一にして最大の弱点(本人談)であったが
無事?治験に成功し立派な胸部アーマーを獲得した。
最終日前日、闇城に思いの丈をぶつけ、その後、交際へと発展していく。
お互いが考えなしに突っ込んで行くタイプゆえ周りからは自滅系カップルとして評判?の的。
756 :■■■■
俺は退屈をしていた。
何も起こらない平凡な世界と漫然と過ぎ去っていく時の流れに。
それを本来は求めていた。
だるいことを回避していった終着点でもあり、それが俺らしい生き方とさえ思っていた。
しかし世界は平凡じゃない。時は漫然とは流れていかない。
ただ終着点に立った俺からはそう見えていた――見えてしまっていただけだ。
何も起こらないことが平和であり楽ちんだ、そう考えていたのはいつの頃か。
逆に俺は損をしている気分になっていた。
こんなのは「生きている」と本当に言えるのか。
人生が無駄になっているような気がして・・・不安になっていた。
だからこそ変化を求めた。
退屈ではなかったあの時、それはどんな世界だったっけ?
思い出のアルバムを振り返るようなつもりで昔のような立ち振舞いをしてみたくなった。
その先がかったるいことでも、危険があろうとそれだけ俺は変化を欲していたんだと思う。
そうしてみたら変化はあっという間だった。自分の行動が変わるだけで毎日が非日常。
めんどくさいことのオンパレードだ。
だけど、それは以前よりも強く俺に「生きていること」の証明を与えてくれたように感じる。
そして今、俺はここにいる。色んな奴らに出会い色んな事件を乗り越えて、今ここで「生きている」
恥ずかしくて他の奴らには言えないけれど、今の自分になれてよかったと思っている。
そして俺は当分はこの世界で生きていくことだろう。
この―――
めんどくさくて非日常な最高の世界で。
最終日 完
最終更新:2015年12月31日 00:12