第0項 「たわむスキー」
症候どうこうの前にまずそもそもスキーがどうして曲がるのか。
それを知らなきゃどうにもならないですよね。
つっても僕自身も習ったわけでも、何かで勉強したわけでもないので、
自分で考えた一応それらしい理論を書いておきます。
間違ってたらどんどん訂正してください。
さて、現代のスキーは「カービングスキー」といい、側面がカーブしています。
この側面を利用してターンする技術のことを「スキーをたわませるターン」=「カービングターン」とか「カービング」というわけです。
ではどのようにしてこの「カービング」が起きるのか。従来のスキーとも比較しながら説明していきたいと思います。
カービングスキーを上から見るとこんな形状をしています。
前述のとおり側面がカーブしていますね。これを「サイドカーブ」といいます。
また、横から見るとこんな感じです。
トップが上に上がっています。
この二つの要素が合わさることによってカービングターンは可能となっています。
滑走時、カービングスキーを傾けると下図のような状態になります。
これはすなわち、スキーのトップとテールが雪に最も強く接地している状態です。
トップの先端は上に向いているため進んでいくにつれ雪の抵抗を受け、スキーはだんだんとたわんでいきます。
このとき、雪面からスキーにかかる圧は、接地の量が多ければ大きいほど強くなるので、トップに強く、逆に板の中心部でで弱くなります。
このため、スキーは先端から効率的にたわむことができるのです。
さて、曲がった状態のスキーに乗っていればどうなるのか。
ターンを形成します。
しかしながら話はこれで終わりではありません。
曲がった状態のスキーに乗っているその間もスキーには圧がかかり続けています。
しかし、板は限界まで曲がるとそれ以上曲がりません。
それ以上に圧をかけるとスキー板にかかっていた圧はスキーヤーに直接かかります。
これが「たたかれる」状態です。
どうすれば「たたかれ」ずにすむのか。
要は板に圧がかからなくしてあげればよいわけですから、板の傾き(角付け)を弱めてあげれば良い、ということになります。
板の傾きを弱めていくと、それまで板にかかっていた圧は減少し、板はたわんだ状態から元に戻ろうとします。
このとき、板のトップとテールが雪にもっとも強く接地していることから、板の反発力はそのまま推進力へと変換されるのです。これを「板の抜け」と表現します。
ちなみにこれが従来のスキーだったら。
側面はまっすぐなので、板のたわみが得られても、板の角付けが弱くなったとき、もっとも強く接地しているのはスキーの中心部になります。
すなわちスキーのたわみは推進力に変換されず、ただトップとテールがばたつくだけで終わってしまうのです。
このことからカービングスキーでなければカービングターンはできない、ということがいえます。
以上のことをふまえてまとめ。
①スキーを傾ける
②板がたわむ
③ターンする
④板のたわみを開放して推進する
という流れが「カービングターン」ができるまでの流れになります。
以降の項でも必要な知識となるので、しっかりとイメージして起おきましょう。
第0’項 「ずれるスキー」
<んなこと言ってもスキー傾けてるケド「たわみ」だとか「抜け」なんて感じたことないよ>
という人もいると思います。
その原因を説明するためには「カービング」と対をなすもう一つのターン技術について知る必要があります。
それがスキーを「まわす」操作と「ずらす」操作です。
この二つはカービングスキー以前の従来のスキーで用いられていたテクニックでもあります。
スキーをまわす操作
前述の通り、従来のスキーにはサイドカーブがないため、カービングターンはできませんでした。
ではどのようにしてターンしていたのか。
単純に言うと「滑走面を利用していた」のです。
滑走面を雪面につけていれば、力は面に分散されるため、スキーは自由に滑ることができます。
よって方向を変えることも簡単です。
ただし、この状態ではスキーの向きが変わるだけで進行方向を変えることはできません。
そこでスキーが自分の意図する方向に向いたとき、エッジを立ててあげます。
すると、エッジをたてたことによって板はエッジの進行方向に進むことができるのです。
しかし、このターン方法には弱点があります。それは何か。
スキーをまわす操作では元々別方向に向いていた力を点で新しい向きに変換しています。
このため、この点でスキー・スキーヤーにかかる負荷はとても大きくなり、
多くの場合「流される」あるいは「たたかれる」状態が生じます。
そこで続いて登場するのが、スキーを「ずらす」操作です。
スキーをずらす操作
点で力の向きを変換するのがだめなら、線で変換してあげればいい、
というのがスキーをずらす操作の考え方です。
すなわち、滑走面をもちいてスキーの向きを変えながら徐々にエッジを立てていく。
完全にエッジを立てないことによりスキーはエッジの抵抗を受け、徐々に減速していきます。
そしてスキーが意図する方向に向いたときエッジを完全に立てることでスキーはその方向へと進行していくわけです。
これらの技術、両方に共通する弱点とは何か?
それは減速要素=エネルギーロスが多いということにあります。
一方でカービングでは、スキーをたわませることによって一度は減速するものの、
そのエネルギーを推進力として利用できるためエネルギーロスは極めて少なくなります。
このため、競技スキーではカービング操作を用いる事が求められるわけです。
はじめに戻ると、スキーの「たわみ」を体験したことのない人はスキーをずらしたりまわすことでターンしています。
では、これらの技術を用いてターンするとき、板はなぜたわまないのでしょうか?
原因は極めてシンプルです
「スキーの進行方向が違う」のです。
第0項の中で説明した通り、カービングスキーはその進行方向に進んでいるときにエッジを立てる事でたわみます。
ところが横方向に進んでいるスキーを傾けてもスキーのトップに圧はかからないためスキーはたわみません。
スキーのたわみを実感したことがない、という人は
多くの場合、スキーがたわむ前にエッジに乗ることをやめ、次のターンに移行してしまっています。
スキーをまわしても、あるいはずらしてもかまいません。
大きなターンになってもいいので、スキーのエッジに乗り続けてみましょう。