イスラム国とは、
シリアで2012年11月欧米主導の国民連合が発足した後に、国民連合に参加しなかった
ヌスラ戦線など十数組織が集まって建国を宣言した。2013年4月10日AFP通信はイスラム国の指導者をアブ・バクル・
バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)と報じている。また執行部の名前は
アル・イマラとされる。
前身は
イラク・イスラム国と呼ばれていた2006年10月にアルカイダ組織などで作る、「イラク・イスラム戦士評議会」を名乗る組織が建国を宣言した国(指導者アブ・オマル・バグダディ)と思われる。その後「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant、ISIS)」や「イラク・シャームのイスラム国」またはアラビア語での略称である「ダーイシュ」などと呼ばれていた。
2013年11月イスラム国は、
アルカイダのザワヒリ指導者が「イスラム国」の
シリアでの活動中止の指示を出したのを無視し、「イスラム国」ができたのだから「カイダ(基地)」は「国」に従うべきと主張するものもいる。同時に「イスラム国」と「ヌスラ戦線」の不和があらためて明らかになった。
2014年6月17日日経新聞は、フィナンシャル・タイムズからの情報として、イスラム国と共闘する組織を「
イラクのイスラム軍」、「アンサール・スンナ軍」、「イラク・イスラム党」傘下の民兵組織、イラク国内のスンニ派主流政治集団、サダム・フセインが率いていたバース党の旧党員、かつて
アメリカが支援した「覚醒評議会」などとしている。また専門家でも各組織の協調体制などは、ほとんど把握できていないとした上で、以前サウジアラビア情報機関長官を務めたトルキ・ファイサル王子が同月13日に「イスラム国」の兵員数はせいぜい3000人程度で他の組織の援助を受けているのは確実と語ったと書いている。
イスラム国:国家的統治 フセイン政権残党が組織(2014年09月15日 毎日新聞)
【カイロ秋山信一】イラクとシリアで勢力を拡大するイスラム教過激派組織「イスラム国」が、イラクの旧フセイン政権の残党を取り込み、単なる過激派集団の枠を超え国家同様の統治を行っていることが14日、複数の対立組織のメンバーや研究者の証言で分かった。イスラム国の
バグダディ指導者をトップに集団指導体制を敷き、評議会や支配地区を区分けして知事も任命し、イラク・シリアで次々と支配地域を拡大している。
(中略)
イスラム国の最高指導部は
バグダディ指導者と2人の元将校で構成され、イラクとシリアに分けて戦闘や支配地域の統治などを総括。最高指導部の下には10人前後からなる評議会を設置し、集団指導体制を敷く。
評議会メンバーは戦闘や戦闘員の勧誘、広報など部門別の責任者を兼ね「内閣」のような役割を持つ。全てイラク人で、元将校のほか政治・行政の経験を持つフセイン政権与党バース党の元党員もいる。さらに支配地域を区分けして十数人の「知事」を置く。
(中略)
その一人が、バグダディ指導者の「右腕」だった元将校の
ハッジ・バクル氏だ。バグダディ指導者は10年に前指導者が米軍に殺害された後、イスラム国の前身組織を率いた。この時、バグダディ氏を推挙したのが、軍事・情報部門を率いていたバクル氏で、組織内のライバルを暗殺し、バグダディ指導者が権力基盤を固めるのに貢献した。
(図より、
アブ・アリ・アンバリイラク軍元将校が今のシリア担当)
<イスラム国>建国宣言後の1カ月で6300人が新加入(2014/08/21 毎日)
◇NGO「シリア人権観測所」が分析結果発表
【カイロ秋山信一】シリア反体制派のNGO「シリア人権観測所」(本拠地・ロンドン)は、シリアとイラクで活動するイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が6月下旬に一方的に建国を宣言した後の約1カ月間に約6300人が新たに組織に加わったとの分析結果を発表した。これまでイスラム国のメンバーは数千人から1万数千人規模と言われており、最近急激に組織を拡大した模様だ。
スンニ派の大国サウジアラビアとエジプトのイスラム指導者は、イスラム国が「イスラム教の敵だ」との見解を相次いで発表。拡大を続けるイスラム国に危機感を募らせている。
(後略)
イラク情勢 「大使館が洪水から救われた」 米大統領、イスラム国からダム奪還を発表(2014/08/19 産経)
【ワシントン=加納宏幸】オバマ米大統領は18日、イラク軍と北部
クルド自治政府のクルド人部隊(ペシャメルガ)がイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」により制圧されていた北部モスル郊外のダムを奪還したことについて「米軍の支援によりイラク軍とクルド人部隊は重要な一歩を踏み出した」と述べた。ホワイトハウスで声明を発表した。
(後略)
<イスラム国>イラク最大のダムや油田掌握(2014/08/04毎日)
【カイロ秋山信一】イラクで侵攻を続けるイスラム教過激派組織「イスラム国」主導のスンニ派武装勢力は3日、クルド人治安部隊
ペシュメルガとの戦闘の末、イラク北部ニナワ県にある同国最大のモスル・ダムやアインザラ油田を掌握した。国営テレビが報じた。ペシュメルガは6月以降、撤退した政府軍などに代わって重要インフラを守ってきたが、イスラム国側の攻勢に屈した。イスラム国側は、大規模油田がある北部キルクーク県への攻撃も強めており、支配をさらに拡大しそうだ。
(後略)
<イスラム国>シリア最大「オマル油田」も制圧(2014/07/04 毎日)
【カイロ秋山信一】在英のシリア反体制派組織シリア人権観測所によると、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」は3日、シリア東部デリゾール県にある同国最大の油田などを制圧した。「イスラム国」はイラクでも油田地帯を攻撃しており、燃料確保や資金源の拡大に向けて、着々と支配地域を拡大している。
(後略)
ISIS、アジール油田制圧…イラク中部に攻勢(2014/06/26 読売)
【カイロ=久保健一】ロイター通信によると、イラクのイスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」は25日、同国中部ティクリート近郊にあるアジール油田(日量約3万バレル)を制圧した。
計300万バレルを産出するイラクでは比較的小規模の油田だが、ISISが油田を制圧したのは初めて。
(後略)
関連項目
最終更新:2015年01月30日 20:11