とあるやたらと肌寒い日の事だった。
「ほいほい、おまたせ~
って、準備に時間かけすぎたわぁ。
カンニンな、ユート」
生活スペースにしている店の2階の長椅子で寝転んでいると、
階下から気の抜けた炭酸飲料みたいな声を出してタヌ子があがってきた。
ちなみに厨房だけではなく精霊式ボイラーや風呂場も1階にある。
タヌ子は頬を赤く染めているのがわかった。
「遅いンだよ。まったく。どれ、早く見せてみろ。
って、何でもったいぶってンだよ。ほらファンナ。手をどけろ」
「ヤン・・・もう!あんまり見んといてや。
・・・恥ずいやん」
やたらとモジモジしてファンナは隠したがる。
「どれどれ~?
うっわ・・・こんなにプルプルなんだな。
触っただけでふるえてるじゃねェか。
こっちもプニプニしてるし・・・褐色でスベスベなんだな」
オレは思わず感動してしまった。
それほどにすべすべプルプルだったのだ。
「ウチの自慢の逸品やからね。
ずっと磨きをかけてたんよ」
「じゃあ、早速味見を」
「いやや・・・もう、すぐガッツクんやから。
味見・・・するん?」
「そりゃあもう」
「・・・どう?」
「スゲェ美味いよ。
こっちはどうかな。
ンック・・・ン・・・チュル・・・」
「あ、ちょい待ち。ユートそれ汚いから・・・
ああん!もうっ!ウチはもう知らん!恥ずいわぁ」
「照れンなよ
マジで美味いんだから」
「せやかて、恥かしいわ。
そんな風に、その、チュウチュウ吸われたら」
「んじゃあ、次はオレの番だな」
「え?まさか、アレ?」
「そのまさか、だよ。じゃ~~ん」
「え・・・ちょ・・・
ユート、これウチには大き過ぎやわぁ
ムリやって」
「ま、そう言うなって。
これでも標準だと思うぜ。
ほい、まずはクチにくわえる」
「クチにって・・・ひ・・・非常識や!
こんなおっきいの、クチにくわ・・・ムグゥ!」
「大丈夫大丈夫。
お前なら全部呑めるよ、ファンナ」
「ング・・・ン・・・ムグ・・・
ケッ・・・ケホッ!
うえぇ・・・
ユ、ユートのアホー!
こないぎょうさん、呑めるワケあらへんやろ!」
「アハハ!
ファンナ、クチの周り、白いベトベトでいっぱいだぞ」
「ホンマ酷い男やね。まったく。
ケホッ!・・・う~・・・ドロドロになってしもうた」
「で、お味の方は?」
「苦すぎや!ウチはもう二度と呑まへん!」
「あ・・・悪ィ・・・本気で怒らせちゃったな」
「呑ませ方が悪すぎなんや!もう!
普通に呑ませてくれればええやん。
ユートのやったら、呑んでもええって思っとるんやから」
「んじゃ、次はこっちで、さ」
「うん・・・ウチはこっちの方が好きや。
ンク・・・ンク・・・ン・・・
フゥ・・・あ・・・なんか体があッつくなってきたわ」
「ファンナ・・・オレも」
ガチャッ
「あ、もう試食会、始まっちゃってたんですね」
「遅ぇよ、マオ」
「マオひゃん、きたんやねぇ~
ず~~っと待っとったんやよ~~」
「お酒、ですか?」
「ファンナが作ったのが、新作の温泉タマゴ。
で、オレのが秘蔵の自家製ドブロクだ。
どっちも美味いぞ。マジで」
「私は未成年ですから、お酒はちょっと」
「ローランちゃんは~~どないしたん~~」
「先約があったそうです。友達とお出かけするみたい」
「そっか。なら今日は来られないか。
開店1周年のお祝いも兼ねてたんだけどな」
「早いものですね」
「まったくだよ。日本の連中どうしてっかなぁ。
まあ、タヌ子放ったらかして帰るワケにもいかんか。
っつーか寝てるし」
「兄さんも姐さんも、本当に仲良しですよね」
「そうか?とりあえず温泉タマゴ食ってけよ。
プルプルでチュルチュルで美味いぞ。
汁も飲んどけ。食い方が汚いとか気にすンな」
「はいっ!」
「お前らにも未成年とかあんのな」
「そりゃそうですよ」
- そりゃそうですよね!店は特に品目を統一しているとかではない創作料理店みたいな雰囲気を感じた -- (名無しさん) 2013-01-18 18:42:19
- うむ実にあざとい最後まであざとい -- (名無しさん) 2013-02-08 00:38:19
- 料理店ならではのネタというか商品開発楽しそう!太りそうだけど -- (名無しさん) 2014-05-13 22:56:47
最終更新:2014年08月31日 01:58