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【スラヴィアから賑やかしをお届け】

 スラヴィア、サミュラ邸。
「んん~?コレってスイッチとかどこにもないけどサ、どうやって動かすんだっけ?サミュラ~サミュラぁ~」
モルテ、いただいた説明書は読んだのですか? その情報粘菌画面端末さんはパソコンとは違いますと表紙に書いてあったでしょう?」
「あ~本当だ。よーし、いくぞー 端末起動!」
大きさにして凡そ20インチ程の画面から羽音の様な唸りが鳴ると、それを覗くモルテの顔が映し出される。
「お~映ってる映ってる。 よーし、それじゃあチャンネル開始だーっ!」

大まかな外観はふた昔以上前のCRTモニターではあるが、画面を囲むのは虫の甲殻であり、何なら画面ですらも虫羽を覆う甲殻の様に膨らみ反っている。ブラウン管か。
モニターの後方には虫の腹部が繋がっているものの、脚は生えておらず、そのものから生物としての意義を薄くしている。
それはマセ・バズークゲート開放後からの地球研究より開発され、試験運用を兼ねて各国に一台づつ貸与された代物。
蟲人の間で構築しているディルカカネットワークを介し拡張する情報粘菌を内蔵し情報を伝達し合う有機構造体、モニターバグ、画面蟲と呼ばれるものである。
今現在では異世界各地に設置されている情報粘菌塔を中継して異世界各地のみならず、ゲートを越えての情報のやり取りまで実現している。
地球側の情報粘菌塔から通信帯域に入ることでインターネットへの介入までもが可能になっている。
ただし、使用している何もかもが有機物、生物であるために定期的な栄養補給や休養、交替が必要である。

「モルテ、端末さんが疲れたら終わりですからね。 後、もう始まってますよ?」
「なにっ! よっし、“モルテチャンネル”はっじまっるぞぉーーっ!」
「あれれ?何ですかソレ、PCじゃないですか凄い凄ーい」
「ちょっと待ちなさい優衣。いきなり部屋に入るなんて失礼よ。 嗚呼、モルテ様サミュラ様、申し訳ございません」
モニターを見つけるや否や部屋に走り入って来た人間とエルフの女性。であるが二人共スラヴィアンである。
「アデーレさん、優衣さんこんばんは。今日は領地の運営成果の報告でしたね。 ゆるやかではありますが右上がり成長を続けているのは素晴しいですね」
「ありがとうございます! ラケル畜産の拡張を一旦止めまして、飼料の自領栽培を各方面からのアドバイスを受けて充実させております」
「ラケルの数を増やすんじゃなくて一頭一頭の質を上げていこうって決めたのよね!」
画面蟲にはサミュラとその前に傅くアデーレと優衣が映っている。
「えぇっと、こほんっ、この様にスラヴィアでは“饗宴”による勝利以外にも国に貢献することで評価されるのですね」
「んんっ?どしたのサミュラ、突然の説明なんかして」
「え?この放送は世界の皆様にスラヴィアを知ってもらうためのものでしょう?」
「あー!そういや何にも考えてなかったナー。とりあえずインターネット放送ってのをやるゾ!ってことしか考えてなかったよボク」
「モルテ様は放送するのがスタートなのにゴールなんですか? あっ、そう言えば以前に地球に来てた時にYouTubeでVチューバーになってチャンネル放送してましたっけ」
「そうそう…あれは屈辱だったヨ。ボクをあんなにコケにしたおバカ共を見たのは初めてだったヨ」
「見た目も名前も違っているのに喋りと内容ですぐに中身バレしてチャンネル廃止と別アカウントで新チャンネル開始を繰り返してましたっけ」
「そう言え去年の大ゲート祭で地球に行ってた時に何かしてましたね」
「最後は新チャンネル開始三秒で『お前モルテだろ』とコメントされて終了させてましたっけ。あれ伝説になってましたよ」
「あー!その話はするなするな!」
ふと画面蟲から低周波が響く。
画面のレイアウトに枠が出現しコメントが流れて行く。
「おっ、やっと繋がったか」
「え?!このPCって本当にネットに繋がってるんですか?!」
「優衣さん、この方はPCではないですよ?情報粘菌端末さんです」
「成程ー、…でもキーボードもないのにどういう仕組みなんだろ?全部音声入力とか??」
枠に流れて行く無数のコメントはモルテが最初にはしゃいでいた頃のもので、5~10分程度のタイムラグがある。
「それは私が説明しましょう!」
ガララっと勢いよく窓が開かれると、獣の如く逆立つ毛並みが飛び込んでくる。
「皆さん、今晩は!」
「今晩は。そう言えばバンビーナさんも饗宴の報告に来る予定でしたね」
まだ活動を維持している画面蟲は差し出された皿の栄養水を尻ではなく後部端にある口から摂取している。
賑やかなスラヴィアの夜はまだ続き、コメント欄は流れ続けるのであった。


マセ・バズークの技術革新は異世界一(だと思う

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最終更新:2022年11月26日 22:03