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【戴冠式の取材に来ました】

「今日、が期日最終日なのよね?」
ルーン染料で“記者”と書かれた腕章を提げてカメラを手に周囲を見渡す。怪訝な面持ちの彼女の名は守屋てゐ。神戸新聞異世界部出向員。
近年地球各国での国家首脳の交替は珍しいことではないが、こと異世界各国においてはその歴史を見るにつけてもその交代劇は時代の転換点や国を挙げての一大イベントとも言えるくらい。
ラ・ムールにて国王、カーとして正式に成る為の戴冠式が行われると異世界と地球に知らされたのが一か月ほど前。
私含め数名が「これは取材で歴史的瞬間を収めて来るべきでしょ!」と企画を挙げたものの、何と言うか社内は盛り上がりもないというかどちらかと言えば冷めていた。
「うんまぁてゐさんはあっちこっち行ってて有給も取れてなかったから丁度いいね。希望者募って十名程で行ってくると良いよ、ラ・ムール
上司の一言ですんなりラ・ムール行きが決まったのである。

ゲート祭のゲート移動フリーを活用し日本淡路ゲートから一気にラ・ムールへ飛び乗り込んだ一同は早速王宮へ向かい取材手続きを済ませたが、周囲は妙に和気藹々、緊張感の無い空気に包まれていた。
何故か今日より三日後からの一週間内に執り行われるというアナウンスを受けて一抹の不安と疑問を抱きつつ皆それぞれ思い思いに取材するということになり戴冠式まで自由行動となり今に至る。
「そもそも何故一週間内なんだろう??一週間かけて、というのなら分かるんだけど…」
「やぁやぁ揃ってるな。皆ラ・ムールを満喫しているようで何より」
王宮の迎賓ホールに集まった取材陣の面々。そのほとんどが観光浮かれ気分の様相であり、交わす話もカーについてではなく王都の名所や名品やらの体験談や情報交換会になっている。
「なんだなんだてゐ君!真面目に記者みたいな恰好して!」
「いやいや…私達、記者なんですけど」
「んん?ひょっとしてお知りでない?人の集まるところへいけばすぐに得られる情報だぞ?」
「そう!戴冠式にカーはやってこない!(多分) 前回、その前回もというか戴冠式の最初からずっと式が執り行われたことはないのだ!」
「それが分かればもう我々は戴冠式の期間中にラ・ムールを楽しみ尽くすしかないじゃないか!」
何となくそうではないかと思ってはいたものの、一国の王と成る者が式をすっぽかすなどとは…というか今まで一度も、と言うのなら仕方がない。
出発前の上司の言葉を理解した。思えば取材班は休日出勤連続や有休未消化の者ばかりである。
「う~ん。でもまぁひょっとしたらひょっとすると今回はカーがやってくるかも知れませんよ?」
と言ったものの、やはりカーがやってくる気配はなく集まった人々は王宮観光や役人職員への取材に切り替えて散り散りになっていく。
果たしてカー、未来王ディエルは戴冠式の終わるまでにやってくるのであろうか?

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最終更新:2021年07月03日 01:53