「
モルテ、お客様ですよ」
異世界の一国、
スラヴィアを治めるサミュラの案内で数名の人間が通される。
恭しく一礼した一行から二人が前に出て大きなジュラルミンケースをテーブルの上に差し出した。
「フッフッフ、くるしゅうないくるしゅうない」
「まぁまぁ。モルテったら、その台詞が言いたいだけなのでしょう?中身は確認しないのですか?」
贈答品であろう地球のどこ国産のソファーに憮然と足を組んだモルテが口端を何処までも吊り上げて笑う。
「お土産付き、夜中に訪問、及第点だよネ。これで昼間にでも来てたら起きるの面倒で追い返してたとこだヨー」
「大
ゲート祭が始まってから十日、寝ずの通しで方々遊び周って疲れたから休んでいただけでしょう?四方八方へ悪い噂(事実)が流れているモルテにわざわざ会談を申し込まれてきているのですからお相手して下さいね」
「んで、ボクに何を教えて欲しいのかな?正直なとこ人間しかいない地球でどこの国の誰とかどうでもいい。目的もどうだっていい。嘘ナシで頼むヨ、そういうのすぐ分かるから」
「モルテは嘘つきさんですからね~。嘘には敏感なんですよね~」
「もっ、もんっ」
「では、異世界共通語で作成しました質問書を…」
代表者がおずおずと差し出した冊子の表紙を一枚もめくることなく隣で姿勢正しく座するサミュラへとずらし渡す。
「読んでー」
「はいはい。本当に面倒臭がりさんですね。モルテに分かり易いように言い換えますのでちゃんと答えてあげて下さいよ? それでは一つ目、【異世界の神々の力の源は?】」
「んなこと考えて力を使ったことないヨ。あぁ、でも
レギオンは国と神を信奉する人の数と思いの強さが神の力を補助するとか言ってたナー」
「でもモルテは領民の方々に迷惑ばかりかけているのに神としての力はしっかり持てていますよね。神々の力も色々あるのでしょうね」
「もっ、もんっ」
召使骸骨が用意した椅子に腰かけた面々は思い思いにモルテとサミュラの言葉を書きとっている。
「では二つ目、【神に寿命はあるのか?】」
「ふぅん。まず先に言っておくけどサ、神は人、生物とは全く違う存在なんだヨ。でもまぁ何だろう、世界に飽きたら、やることがなくなったら消えてしまうんじゃないかナ」
「神がその役目終える時、その存在も消え去るであろう…と言われることはありますけども、ことスラヴィアにおいてはモルテが真面目に役目を果たすようにならない限りは先代様がご苦労を続けているので当てはまってはいますね」
クゥーン
窓の外で誰と知れず黒犬が鳴く。
「龍神は乙姫と一緒にいれれば満足しているし、
世界樹と
ディルカカは延々種族作り込んでいるし、金羅は飯食って寝るだけの日々だし、レギオンは自身の力を強くすることしか考えてないし、
ウルサは気の向くままに暴れ回っているだけだし、
太陽神は国を見守っているのか月神から逃げ回っているのか分からないし、
テミランなんか天から民を見ているだけだし、鍛冶神は引き篭もってて何しているか分からないし、
ハピカトルに至っては何を考えているのか分からない」
「神様方々は本当に十人十色ですね。モルテは毎日遊び回っているだけでしょうか?」
「もっ、もんっ!一応それなりにたまにはやることやってるヨ!」
周囲を特に気に留めず我がままに身勝手に行動するモルテは、相性の悪い
ラ・ムール以外に広く見聞がある。行った先で迷惑を振りまくことが多いのがサミュラの悩みの種でもある。
「ではでは三つ目ですよ。【神が消えるとどうなるのか?】」
「ボクが知る限りでは神が消えたってのは遭遇したことないから分かんないなぁ。いつ聞いたか、神は理になって世界を構成するというのがあるけども、異世界の言語の理になった神がいたとかどうとか。うん、まぁ分からん」
「こればかりはそういう事象に遭わなければ何も分かりませんね」
「私達の調査では異世界で発せられる言葉、言語の源になった神がいると…」
大ゲート開通から数年は、地球側各国にとって異世界は摩訶不思議な存在であったが、それが研究対象になっていくのは異世界で様々な体験が広まれば自然な流れである。
世界各国の調査機関はあらゆる手段を講じて異世界の情報を集め精査した。
だがしかし、異世界を見聞きしたのが十数年であるがために確証も薄く実感もない為に判断材料を求め続けている。
「聞いたことはあるけどサ、そうなのかもって思うとあれもこれも神が源ってなってくるじゃん?考えるだけいつまでたっても答えも真実もないと思うヨ」
「モルテは時々はっとするようなことを言いうのですね。少し感心します」
「もんっ!それほどでもない!」
想定上に丁寧な応対と成果であったのか、一行は後日改めて礼をしますと館を後にした。
「うーん、こういう訪問って何度目だっけ?まぁボクはお土産がもらえるから良いけどネ~」
贈呈された色とりどり鮮やか過ぎるお菓子を頬張りながら御満悦のモルテ。
「モルテが食いしん坊で忘れっぽくて助かります」
「しかしなんだろね。地球の人間はなんでそんなに神のことを知りたいのかなァ」
「地球を訪れた際に色々と学問など拝見拝聴しましたが、“分からないこと”を無くして分かることを多様に組み合わせていくことで世界のあらゆる事象を紐解いていくという様な空気を感じましたね」
「ふーん。分からないってそんなに気になることかナ?」
「地球で人とは人間だけという世界ですし、種族も色々で精霊もいたりと異世界のあらゆる物事を知りたいのかも知れませんね」
途中から思考を放棄し話半分だったモルテはお菓子を平らげると、別の箱を開封する。
「おっ、これってドローンってヤツじゃないか?ちゃんと充電してあるのもポイント高いよ!今は光精霊もいないし早速飛ばそう飛ばそう」
「ほどほどにして下さいねモルテ。充電するのも手間がかかるのですから」
早速ドローンを飛ばすもあっちへフラフラこっちへフラフラと召使骸骨達にぶつかってしまう。そしてサミュラに諭される。
時の流れと共に世界の思惑も流れていくも、サミュラ邸は今日も平和であった。
- 新しいSSじゃあっ! -- (名無しさん) 2021-09-07 21:54:24
最終更新:2021年09月04日 10:23