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【お留守番】

「なんだこりゃ?」
目の前のせまい空き地にでかいダンボールハウス、そしてその前に立つちびの蟻人一匹。
昨日までは俺の通学路にこんなの無かったはずなんだが…

「何してんの?」
手に持った棒っきれで暇そうに地面にデジタルなお絵かきをしている蟻人に聞いてみた。
「…?あい、ほしょーをしていまつ!」
ほしょう?…保障?……ああ、歩哨か?
「そのダンボールハウスを守ってるのか?」
「ダンボールハウスちやいまつ。チクロ・コロニーのちきゅうしゅっちょーじょーでつ!」
コロニーって…ああ、もしかして異世界移民か!

俺はせまい空き地の横に申し訳程度に立てられている特区の看板を見て思い出した。
日本政府がいくつかの都道府県で認めた異世界との友好のための移民受け入れ政策、確か審査がめちゃくちゃ厳しい上に、いくつかの自治体なんかじゃ前からいた在日外国人なんかとの間で大規模な抗争が起きて、かなりの数の自治体が尻込みしちゃったとかいうやつ。
他も色々問題があって予算かなり減らされちゃってるらしいし、あんな制度使う奴いたんだな…

「それでお前は自分ちの歩哨してるのか?」
「あい!おかー…じょおーさまたちがごはんとりにいってうのでおうちをまもってまつ」
なんだ、歩哨というよりお留守番の子供か。

「そうか、一人でお留守番してるのか」
「コロニーのいちいんとしてとうぜんのことでつ!」
ちびっ子蟻人は胸を張って、得意そうに答える。
こいつは今まで見た蟲人より目鼻立ちと口が人間に近いので表情が読みやすいな。
触覚やでかい蟻のアゴが付いてたり肌が硬質そうなのはあるけど…

「そうかそうか、えらいなお前は…じゃあ、良い子のお前にお兄さんがご褒美をあげよう」
「…?ごほーび?なにかくれるでつ?」
首をかしげつつ人間とは微妙に作りの違う手を差し出す。
俺はポケットの中から微妙に溶けかけたりんご味のアメちゃんの小袋をつまんでその手に乗せた。
まあ、ガキのご褒美にはこんなもんで十分だろう。

「……おぉぉぉぉぉぉぉおおう!アメちゃんでつ!アメちゃんでつ!」
予想以上のえらい喜びようの蟻人のガキに微妙に心が痛む。
こいつらいつも何食ってるんだろう?
「お、おう。良かったな」
「かんしゃしまつ!かんしゃしまつ!」
蟻人のガキンチョはそう言いながらダンスを踊りだし、自分のハッピーさを体全体で表している。
それを見て、なんとなく居た堪れないようになった俺は、それじゃあなと言ってそそくさとその場から逃げ出した。


「今帰りましたよチクロ05、今日の晩御飯は雀の丸焼きです…どうしましたか?チクロ05」
しばらくして狩りから戻ったチクロ・コロニーの女王兼お母さんとほかの子チクロ達が、感謝と喜びの踊りを踊り狂うチクロ05に疑問を投げかける。
「おかえりなさいでつ!ぼく、にんげんさんからごほうびもらいまちた!」
「あめちゃんだ!」「あめちゃんだー」「あめちゃんいいなー」「あめちゃんってだえ?」
わらわらと05に群がる子チクロ達。

「地球の方から飴をもらったのですね?」「あい!」
「ありがとうと言いましたか?」「あい!かんしゃしまちた!」
「では、それは真面目にお留守番をしていた貴方のものですチクロ05」
女王チクロが05の頭を撫でながらそう言う。

女子中・高生くらいの容姿に見える女王チクロは、異世界交流型の新しい蟲人の一種であり、小さな子チクロの頭を撫でる姿は姉が小さな弟を褒めているように見えて微笑ましい。

「えー、いいなーいいなー」「わたちもほしい」
「貴方達が真面目に仕事をしていれば、地球人さんがまたくれるかもしれませんし、そうでなくても私からもご褒美をあげますよ」
「「「やったー!!」」」
その言葉にやんやと喜ぶ子チクロ達。

女王チクロは手を叩き
「ではみんな、遅くならないうちに晩御飯の支度をしましょう」
「「「あーーい」」」
皆を連れて小さな我が家へと入っていくのだった。


  • 空き地に秘密基地というだけでツボった。目茶苦茶和気藹々の女王と大勢にわむ -- (としあき) 2013-04-16 00:33:55
  • 蟲人コロニーはとかく大きくなりがちだけどこんなサイズもいいね -- (名無しさん) 2013-04-16 00:50:19
  • 最初はその辺のホームレスのほうがまだ良い住環境だろっていうのがモリモリ魔増改築されてそのうち社会問題化するところまで見えた -- (名無しさん) 2013-04-16 19:02:59
  • 大量のアメちゃんあげたい -- (名無しさん) 2013-06-08 16:30:48
  • 住所不定放浪中の在日異世界人ってやっぱりいたり問題になったりしてるんだろうか -- (名無しさん) 2014-12-12 22:32:59
  • なんかキュンとした -- (名無しさん) 2014-12-12 23:30:45
  • 交流特区であるポートアイランド以外での異種族の生活というのはあまり想像していなかったので現実的な問題も生まれているというのは複雑ながらも実感しました。蟲人も人間に見た目が近くなると感情の起伏も豊かになってくるのでしょうか -- (名無しさん) 2016-06-19 18:23:39
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最終更新:2013年04月16日 00:32