【鋼鉄男と猫娘】

主な登場人物
赤石ヒィ→猫人留学生。無自覚健康系ばるんばるんボディ。
銀城鋼助→筋肉応援団員。赤石のクラスメイト兼世話係。

「ねーコースケー、また先輩たちテレビ出てるよー」
「わかったからとっとと宿題やっちゃえって」
「えーつまんなーい。私もテレビ出ーたーいー」
画面に映っているのは高等部OBでネットラジオの現役パーソナリティーやってる蛇な先輩らしい。
「いーなー、アイドルやりたいなー。フリフリの服着て踊りたーい」
「いつもやってんだろチア部で」
「違うもん、あれはお手伝いで本命は陸上部だもん」
「はいはい左様でございますか」
「そうだ!今度チア部のみんなを誘ってアイドルデビュー…」
「すんな馬鹿」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ筋肉バカコースケ」
「お前もバカって言ってんじゃん」
「先に馬鹿って言ったのコースケじゃん、だからコースケが悪い」
ずびしっ、と俺を指差してふんぞり返るヒィだけどそういうのはコタツから首だけ出してやるもんじゃねーぞ。

「ねーねーコースケー、紅茶飲みたい」
「はいはい今用意するからコタツから出てこいそして宿題やれよ」
「関係ないじゃーん」
相変わらず俺の部屋のコタツを占拠し、ヒィはゴネている。
「んじゃ宿題やらない限り紅茶は無し」
「ひっどーい、ディセトの奴隷商でもそこまではしないよー?」
「知るか。俺はただの高校生でそんな時代錯誤な商売人じゃありません。つかディセトってどこよ?」
「私の国にある娼館都市だよ。コースケにも分かりやすく言うとー……トットリ砂漠にカブキモノチョーがある感じ?」
コタツから尻尾を伸ばして卓上の鉛筆を掴むと横にあったプリントに器用にラムールの地図を描きはじめるヒィ。
それは歴史のプリントであって地理のプリントじゃねーぞ。

「砂漠って言えば十津那学園が砂漠化してるんだって」
「突然なんの話だよ現実逃避したって宿題はなくならないぞ」
ラムールの地図に飽きたのかヒィは教科書の野口英世の写真をカーネルサンダースに改造している。
それが終わると隣の芥川龍之介をドナルドに改造し
『マックやない。マクドやって巨乳の委員長が言ってました』
と吹き出しを加える。
誰だよ巨乳の委員長って。武装風紀のケンタウルスな委員長のことか?
「今日の新聞部の新刊に書いてたの。カップル激減?十津那学園砂漠化の危機か、って」
「真に受けるんじゃありませんとっと宿題やらないと借りてきたビデオ観る時間が無くなるでしょうが」
一緒に観るの楽しみにしてたんだからそこは空気読んでくれよ、ヒィ。

「コースケのケチー、口年増ー、万年旗持ち止まりー」
しぶしぶコタツから這い出したヒィが不満を口にする。
「旗手バカにすんな。伝統と責任のあるポジションなんだぞ」
「そんなの世界の歴史に比べたら大したことないじゃん」
「うるせぇ。年表に起こしたらお前のチアだって大したことないだろ」
「うっわー、そういうこと言う?応援団員って紳士的であるべきじゃないの?お騒がせ不良四人組みたいなこと言っちゃっていいの?」
「宿題をしない悪い子には言います。言っちゃいます」
「じゃあコースケが応援してくれるなら宿題やる」
「ここ俺の下宿でしかも夜じゃねーか」
「ねーやってよー」
「……しょーがねぇな」
とりあえず隣近所の迷惑にならないようにエールをきるとヒィはプリントに取りかかった。

「ねぇコースケー、こんな話知ってる?」
「んー?」
宿題を終わらせて、お互いに寄っかかりながら借りてきた新作を観ているとヒィが尋ねてきた。
「あのね、十年くらい前にミズハに映画を撮りにいった人たちがいたんだって」
「外映とか言うやつだろ?ってそれも新聞部の新刊の特集からじゃねーか」
「なーんだ。コースケも読んでんじゃん」
「部室にあったやつがたまたま目に入っただけだって」
「でも気になるよね。全員が何者かに斬り殺されたとか、転送事故で今も異次元をさまよってるとか」
ヒィは瞳をキラキラさせて語る。コイツ完全に興味本位の野次馬だな。猫だけど。
「眉唾物の都市伝説だよどーせ」
「ぶーぶー、コースケロマンがなーい。そんな男は嫌われるよー?」
でもそんなことを言いながらもヒィは肩に乗せた顎をグリグリしてくる。
やっぱりこいつは、猫だ。

「間に合って良かったねー」
「そうだなー」
土曜が日曜になるかならないかの時間。
俺とヒィはレンタルビデオ屋を後にしていた。
映画を観終わったらゴロゴロするつもりだったが、ヒィが返却日が土曜であることに気づいて慌てて返しに来た。
スラヴィアンの店員がテキパキと手続きをしてくれたので幸い料金延滞にならずに済んだのはありがたい。
「あの店員さん、色んなとこで見かけるよね」
「コンビニに焼き肉屋にさっきのビデオ屋に…」
「私、ポスティングしてるとこ見たことあるよ」
「タフだなあの人、ちゃんと休んでるのか?」
ともあれ世間が週末でお休みしてるなか、休日出勤している人たちのおかげで社会は回ってい…
「コースケ、おっさんくさい」
「人の思考を読むんじゃありません」
「そんなんだとハゲるの早くなるよー?抜け毛の掃除するの私ヤだからね」
「お前だって季節の変わり目ですっげえ抜けてんじゃん」
「いーの。猫人だもん」
「コロコロ掛ける俺の苦労はどうなるの」
「私は気持ちいいからいいの」
俺の腕にまとわりついて胸を押しつけてくるヒィ。
色仕掛けで誤魔化すなよ、俺はそんなもので騙されるわけないぞ。とりあえず帰ったらコロコロかけてやろう。

「…ねぇ、コースケ」
「今度は何だよ」
「さっきの砂漠化の話だけど」
「おう」
「私たち、緑化に貢献できてるかな?」
「さーなー」
「コースケ冷たーい。頭髪砂漠化しちゃえ」
「うるさいとっと帰るぞ」


お題
  • 料金延滞
  • 学生アイドルグループ発足
  • 砂漠化
  • マックやない。マクドやって巨乳の委員長が言ってました
  • 年表
  • 紅茶
  • 休日出勤

  • オムニバス形式で全部入れてきた驚いた。 身元保証人引受人みたいな関係かな?スレ内のネタも取り入れてて感服しました -- (名無しさん) 2013-10-27 20:49:55
  • これは良い -- (名無しさん) 2013-10-28 01:58:05
  • メイン二人を置いて話を回してお題展開は流石。色んなキャラが出てきて楽しい -- (とっしー) 2013-10-28 22:55:22
  • 何でこんな裏山関係なキャラばっかり出てくるんですかぁああ!! -- (名無しさん) 2013-10-28 23:26:46
  • 猫人でナイスバディってどんなエロい!一問一小エピでさくさく読めた -- (としあき) 2013-10-29 22:07:16
  • 短くまとまってて読み易い。 一つの語句から広げて繋げてしかもイレゲってる素晴らしい -- (名無しさん) 2013-10-29 23:40:05
  • 借りてきた猫もといステイしにきた猫。 鋼助は人間と異種族をまだ完全に同一視して見ていない節があるような気がする -- (名無しさん) 2013-11-08 22:23:09
  • 異種族同士の共同生活というのは多くなってそうなイレヴンズゲートの世界なだけにこういった文化に順応した生活もあるんだろうなと思いました。銀城は責任感と自制心の揺るがない鋼の男ですね -- (名無しさん) 2017-10-15 18:01:09
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最終更新:2013年10月27日 13:11