【性態学者の聖夜】

「メリークリスマス、サツキ様」
オフィスの入り口を開けた途端、目の前に現れたのはクーリエだった。
ただし、いつものメイド服ではない。紅白に彩られたミニのワンピースを着ていた。
「なに、そのカッコ…?」
あたしは驚きのあまり、一瞬固まった。数秒して思考が回復すると、妙に落ち着いた感じでクーリエに問いただした。
「見てわからないのですか。サンタクロースです。サツキ様なら絶対興味あるだろうと思い、用意してきました」
いつも通りとでも言わんばかりの調子でクーリエが答える。おそらく、あたしに対するサプライズなのだろうが…
「あ、ありがと」
あまりにも唐突かつ予想外の展開に、あたしは苦笑しながら返すしかなかった。
「…でもなんで急に?いつもだったらこんな…」
「サツキ様がかつての学友達と共にクリスマスパーティなるものに行く事は既に把握済みです」
…あぁ、こういう事か。あたしは胸中で思わず納得の声をあげた。
「でもなんで知ってるワケ?あれってあたしらだけで決めてたんだけど…」
「最近サツキ様の態度が不審だと思ったので、しばらく外出中の様子を密かに見ていました」
「道理で…な~んかつけられてる気がしたと思ったよ」
あたしは右手で頭を抱えながら深くため息をつき、程なくしてクーリエが何をしたいのかを察した。
改めてクーリエの方に目をやり、彼女の意図を聞き出す。
「…で、要するにそのパーティに混ざりたいってワケ?」
「はい」
予想通りと言えば予想通りの返答だったが、その即答ぶりには流石に苦笑せざるを得なかった。
やれやれと思いながら嘆息すると、にんまりした表情でクーリエに向けて手を差し伸べた。
「バッカだなぁ~、置いていくワケないじゃん。ほら、もうすぐ行くから準備して」
「承知しました」
またしても即答するクーリエ。顔には出さないでいるが、よほど行きたかったと見える。
本心はどうだか知らないが、一応あたしはそう思っておく事にした。
「これで今晩の食事を大量に済ます事ができます。クリスマス様々といった所ですか」
「な、何の事カナ~…?」
「誤魔化しても無駄です。どうせ夜更けになれば明け方まで皆で盛るおつもりなのは容易に想像がつきます」
やはりそれが目的だったのか。そう思わざるを得ないほどに、クーリエの言葉には妙な力強さを感じた。
「確かに来るのは十津那時代からのオトモダチだからまぁやるっちゃやるけどさ…殆ど女の子だよ?」
「構いません。数が多いのであればまぁ何とかなるでしょう」
気軽に答えるクーリエを見て、あたしはこれから起こるであろう事態を予測し、その結末に覚悟する必要があると悟った。
「うん…じゃあ、いこっか」
「はい。良いパーティになるといいですね」

その日の晩はまさにホワイトクリスマスだった。
あたし達は夜が明けるまで、十分過ぎるという程パーティを満喫した。色々な意味で。
そして翌日、全身ガクガクの上に顔面蒼白となったあたしは、丸一日死んだようにベッドで寝込んだ。
その横で、艶やかに肌を輝かせながらあたしを介抱するクーリエの姿が見えたが、もはや何かを言う気力はなくそのまま眠りにつく事にした…。


  • 色んな意味で無法地帯!イベンターみたいな感じだったサツキ -- (とっしー) 2013-12-26 22:34:21
  • サツキ君は大学内での交友関係は広かったりする?クーリエも同伴で大学についてったら人気高そうな -- (名無しさん) 2017-04-07 22:11:14
  • 内にも外にも需要と供給と共生が成立しているサツキ君とクーリエさんでした。エルフの役割を全うするためのコミュ力に関してはレベルマックスのサツキ君が未来のエルフ達に貢献できる可能性は果たして -- (名無しさん) 2019-03-31 17:15:28
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

h
+ タグ編集
  • タグ:
  • h

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年12月25日 22:58