東の首都カヤからさらに東へと進み、切り立った海岸線に沿って北へと進む、そうするとまるで海からの侵入を拒むかのようだった険しい海岸線は次第に穏やかなものへと変わってゆき、やがて東部
イストモスで唯一の港湾都市ナルモンが見えてくる。
深く内陸に切り込んだ形の湾の奥にあるナルモンは、その湾に沿うようにして漆喰の白壁に平たく割った赤い鱗石を重ねた屋根の家々が立ち並び、湾のあちらこちらには大小無数の水中洞窟があり、こうした場所もまたこのナルモンの住人の住居となっている。
ナルモンはケルピー族を代表とした人魚や魚人などの水棲種族が多く暮らすイストモスでは毛色がかなり異なる街である。
ナルモンの主要な住人であるケルピー族は大地を踏みしめる脚の代わりに水中を自在に泳ぎ回るヒレのように変形した脚を持つ、遠い昔に海で暮らすことを選んだ
ケンタウロスの亜種とされる種族だ。
ナルモンは東イストモスでは唯一の海外航路の寄港地であり、港には国外からの交易船が多く行き交っている。
また、この港で見受けられる特異な光景として、ブルーホースと呼ばれる海上をまるで草原のごとく駆ける蒼い毛並みに純白の鬣を生やした六脚の馬達、それがまるでタグボートのようにケルピー達の指示に従って入港する船や出港する船を牽引している光景が訪れた者の記憶に強く残ることだろう。
ケルピー族は古くからナルモン近海で群れを作って暮らすブルーホースと交友を深めてきた、ブルーホース達はケルピーの呼び声代わりの歌によって集まり、彼らの指示に従って水面を蹴って船を牽き、ケルピー族はそのお礼としてブルーホースが好む海藻を振る舞うという関係が長く変わることなく続いてきたのだ。
ナルモンは製塩の街としても知られている。ナルモンの塩は岩塩とは違う風味があると珍重され、この地の特産品としてこの地に寄港した船は必ずと言って良いほど買い求める名産品だ。
ナルモン近海で大量に採れるエルテンと呼ばれる海藻、海中の塩分を大量に取り込む性質のあるこの海藻を干し、カラカラに乾いたエルテンを燃やして灰にして水に溶かし、その上澄みを煮詰めて作られたものがナルモン塩となる。
ナルモンを訪れる機会があればぜひ港で売られている海鮮炉端焼きを味わってほしい。その日採れた魚介を直火で炙るだけというシンプルな調理法ながらも、魚介に絶妙な塩梅でふりかけられたナルモンの海の香りを凝縮したような風味をもつ塩がその素材の味を幾倍にも引き立て、食したあなたに至福の時間をもたらしてくれることだろう。
- イストモスと港というのが結びつかなかったんだけど水の種族の街と読み納得。歌と一風変わった海の景色に塩と異世界でも珍しいものの組み合わせが素晴らしい -- (名無しさん) 2014-09-03 00:37:06
- 草原と騎馬の国にある港ってどんなんだろうと思ったがそうかケルピーかー -- (名無しさん) 2015-04-17 20:56:13
最終更新:2014年09月06日 22:57