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【図書館事情 イストモス】

 イストモスは定住し農耕を行う西部イストモスと、移動しながら放牧を営む東部オストモスという二つの文化が存在する。
当然、図書館の在り様も東西で大きく異なる。

 西のイストモスでは、図書館は教会に付随するものである。
閉架式がほとんどであり、狗人の司書が本棚の間を駆けずり回って要求された図書を探しだす。
ほとんどは羊皮紙による巻物の形をとる。
教会らしく星人の言行録や天文観測記録、地域の歴史や主要な裁判の判例集が充実しているほか、特に巡礼のための旅行ガイドブックが利用できる。
各地の星遺物や星者の伝説、さらには景勝地や大都市、宿の情報に至るまで事細かに記され、絵図や巡礼者としての身分保障に必要な証書の類まで同梱されている。
こうしたガイドブックは、巡礼の便宜を図るために星教会が発行しているものである。
行商人や流浪の騎士は、星教会では歓迎される。

 地球人にとっても有用なものだが、巡礼でない場合にはそれなりの対価を要求されるのでご注意を。

 東のオストモスでは、各部族が独立して文庫を構える。
放牧に際してはただのお荷物であり、だからこそ富者は自らの余裕を誇示するために本を集める。
かつてのハーンたちは巨大な馬車に書籍を満載し、オストモス中を巡回させたものである。
馬車の行くところどこでも祭りになったというが、現在のハーンであるスヴォーロフは惰弱であるとして、これを取りやめてしまっている。

 特筆すべきは、部族の歴史を綴った織物である。
祖先の偉業を誇り、子孫たちに語り継ぐために作られるタペストリーは図柄といい素材といい大変に華美なものであって、一族の宝である。

 面白いことに、タペストリーの大きさは決められており、布の継ぎ足しは許されない。
三百五十年ほど前、タペストリーを巨大化させることが流行した。
一族の面子の問題とあって競争は激化し、争いの火種となった。
見かねた時のハーンは法を定め、タペストリーの大きさを制限したのである。

 一族で長年同じ布を使い続けるのであるから、一人当たりの割り当てというものが生じる。
限られたスペースに大業を編み込む苦労あり、逆に記すことのなさを抽象図案でごまかすこともあり、とかく神経を使うものであって、一族の女たちが総出でかかる大事な仕事である。

 図書とはわずかに異なるが、こうしたタペストリーは容易に閲覧できる。
まず間違いなく、一族の生き字引による微に入り細を穿った説明が付属することだろう。


 但し書き
 文中における誤り等は全て筆者に責任があります。
 千文字。

  • 余計なお世話とは思いつつ星人よりは星者のほうがいいんじゃないかと思ったり -- (名無しさん) 2014-09-01 23:41:50
  • やっぱり乙嫁な空気漂う東部はいいなぁ、一族の歴史が編み込まれたタペストリーとか実に雰囲気があって良い -- (名無しさん) 2014-09-01 23:43:30
  • 西は何となく予想できたけど東の移動図書とタペストリーは面白い。西が国所有の蔵書に対して東は個人や部族単位の所有という違いもいいな -- (名無しさん) 2014-09-02 01:53:16
  • 読むんじゃなくて見るタペストリーなら言葉が分からなくても体験できるないいな -- (名無しさん) 2014-09-04 23:27:23
  • タペストリーへのこだわりと文化性が面白い。忘れがちだけど異世界での星教会の影響って大きいな -- (名無しさん) 2017-12-08 20:19:54
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最終更新:2014年09月02日 09:26