アットウィキロゴ

【図書館事情 大延国】

 大延国の図書館は二つの系統に分かれている。
官営の公文書館である簡林院、そして民営の蛇言宮である。

 簡林院はあらゆる躍書を蔵し、分類する。
官僚制には書類がつきものであり、また躍字それ自体も扱いに注意を要するものであるから、簡林院は最低でも郷試及第を果たした人材を書記として育成し、管理に当たらせる。
多くの場合、簡林院は各所に書記官を派遣し、各役所ごとに専門化した文庫を作成させて業務に役立てる一方、任意の蔵書から写しを取り保管する権限も認められている。
役所の側でこれを嫌うことは言うまでもなく、また他者の秘密を確保することは容易に権力闘争や腐敗につながることから、簡林院は独自に覆面の監査人を任命して書記官を見張らせている。

 大延国らしい図書館としては、薬事と料理に関する書物だけを集めた「菜事総集館」が名高い。
ここに収められているのは名高い医者の著した医学書や薬師の調薬法、古今東西の料理や食材の総覧、そして何より歴史に名を遺した金炎厨師たちのレシピである。
毎年の食神祭で認められた金炎厨師だけが、レシピを奉納することを許される。
特に料理人にとっては文字通り宝の山であるから、むやみに立ち入ることは許されない。
菜事総集館から流出した「秘伝」なるものは巷間に数多見られるが、ほぼすべてが名を借りただけの詐欺でしかない。
侵入や蔵書の持ち出しは死刑に値する重罪である。

 このようにとかく庶民には閉ざされがちな簡林院とは対照的に、蛇言宮の扉は常に開かれている。
庶民向けの平易な読み物や技術書などを中心とした蔵書は、すべて蛇言宮の司祭たちが躍字で記された元本から簡字へと書き下したものである。
蛇言宮では早くから簡字による活版印刷を実用化しており、これには墨で作り出した躍字をそのまま活字として用いる『活写転輪』の技法が一役買ったとされる。

 蛇言宮はこうした事業を通じて識字率の向上に努める一方、躍字に関する在野の専門家として各種のトラブル解決に乗り出すこともある。
不慣れなものが行った潜書の治療や、記された内容が制御不能の現実となって顕現するいわゆる「災躍」の処理に至るまでこなす彼らは書士と呼ばれる。
書士の技能は極めて高度なものであり、多くの信頼を集めている。

 あるいは蛇言宮こそ、地球でいうところの図書館にもっとも近いものであるかもしれない。
大延国を訪れた際には、簡字の書物をいくたりか借り出してみるのもいいだろう。


 但し書き
 文中における誤り等は全て筆者に責任があります。
 千文字。

  • 言葉や文字に起こりや神が関わっているというのはイレゲでも好きな部分。蛇言宮は威厳や戒律とかよりも世情に合わせ変化し広く浅く波を広げていくような。でもその向こう側にある真意は一体どういうものなのだろう -- (名無しさん) 2014-09-17 03:23:59
  • 金羅のお膝元の大延国における食の殿堂は大いに気になる -- (名無しさん) 2014-09-27 00:32:48
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る
-

タグ:

i
+ タグ編集
  • タグ:
  • i
最終更新:2014年09月07日 00:05