タルナス大泥沼、マンドアン盆地の底に広がるガス雲に覆われたこの場所もまた
マセ・バズーク百景に数えられ、奇妙でありながら幻想的な光景を目にすることができる場所である。
ブクブクとガスを吐き出し泡立つタール状の黒い泥土によって形成されるタルナス大泥沼の上空には球巣と呼ばれるタルナス氏族の居住地が浮遊している。
タルナス氏族は社会性の小型の蜘蛛型蟲人であり、彼らの作り出す糸は中空で伸縮性に富みゴム風船のような性質を有し、彼らの居住地はそうした糸の性質を巧みに利用することによって形成されている。
タルナス氏族の暮らす居住地である球巣は無数の浮力の高いガスを封入した風船状の糸と、それを束ねるより合わさって強度を高めた糸によって形成され、日々《建設者》と呼ばれる修繕や改築を専門に行う者達によって管理されている。
マンドアン盆地には球巣をこの地に固定しておくための無数の係留用の糸が張られ、そのうちのいくつかは球巣と地上とをつなぐ連絡路を兼ねている。
大泥沼には上空に浮かぶ球巣から無数の糸が垂れ下がっており、タルナス氏族の《採取者》と呼ばれる者達は夜明け前から一斉に仕事をこなすために泥沼の表面へと降りていく。
高濃度のガスの漂う沼の表面近くまで降りると彼らは腹部にある特殊な吸引器官からガスを吸い込み、それを糸の中に封入して風船状にすると、次々に上空へと向かって飛ばしていく。
主に泥沼からのガス噴出量が比較的少ない夜明け前から日の出にかけて行われるこの作業は、彼らにとっては生きるために必要な行為であるが、我々にとっては幻想的な光景を作り出すものとなる。
日の出とともにタルナス大泥沼から湧き出すガス雲が朝日を浴びて七色の輝きを帯び、ガス雲の中から次々とシャボン玉のような風船が舞い上がりながらキラキラと煌めく、その光景は実に美しいものである。
泥沼から《採取者》によって飛ばされたガスの封入された無数の風船は球巣の周囲に張り巡らされた細かな網の目の捕獲網によって捉えられ、球巣の中に回収された後は中に封入されたガスは様々な用途に利用するために細かく選別され、それぞれは厳重に管理された貯蔵嚢に蓄えられ他のコロニーとの交易物資や彼らの生活のために用いられる。
タルナス氏族はデリケートな球巣の保全に支障が出るという判断から原則として部外者の立ち入りを認めてはいないため、地球からの来訪者も受け入れてはいない。そのためこの地を訪れるには最寄の交易サイト《ミューレイカー》で現地ガイドとマンドアン盆地までの移動手段を調達して赴くのが良いだろう。
- ネーミングセンスがいいんじゃないかぁ。交流への抜け道みたいなのがちゃんとあるのも想像が捗る -- (名無しさん) 2015-07-24 21:24:36
- 立ち入り禁止の管理区域で採取されたガスの使い道は一体?最初は単なる毒ガスだと思った -- (名無しさん) 2015-07-26 16:45:20
- 空気系の燃料や素材というのをイレゲで連想したことがなかったので新鮮 -- (名無しさん) 2015-08-04 22:24:36
- 製造生産業に関しては異世界一くらいのスペックがありそうだマセバズーク -- (名無しさん) 2016-04-03 13:35:21
- ピーキーな資源地って自分達しか利用できないとかならすごい有益だ -- (名無しさん) 2016-12-23 22:14:52
最終更新:2015年07月24日 21:23