「うぅぅ…折角の新酒が酢になってしまったぞぃ」
天国から一転して酸っぱい。表情を歪める白鬼ハクテン。
「腐れ神の力、トクリの力は日に日に増しているようですな。食糧庫まで余波が及んでいないか見てこさせましょう」
とりあえず盃と徳利を片付ける黒鬼ダイコク。
ここは白ノ郷、ハクテン屋敷。 酒造蔵にて心を乱した白鬼トクリによって膨れ弾けた腐霊によってあらゆるものが変異し発酵したのである。
白の腐霊は発酵を、黒の腐霊は腐敗を。 普段は酒造りのために周囲の腐霊を制御しているトクリではあるが、未だ心が昂り乱れたりすると制御を解かれた腐霊が大暴れするのである。
「トクリの力自体はそう変化はないのじゃが、どうにも周囲に寄って来る霊が増えていっとるのがのぅ。 腐霊の方に変化が起こっておるのじゃ」
強い力を持つハクテンは、力を持ちながらもそれに悩まされる者を修行し導いているのである。
「うぅむ、しかしこの酢、元が元だけに捨てるのには忍びないしどうしたもんかの」
「酢であることには変わりませんし、こうなってしまうともう酒には戻せませんし…料理に使ってみるというのはどうでしょう?」
「料理!確かに酢じゃからのぅ! よし、そうと決まれば里の知恵袋を頼ってみようかのぅ」
ここは里の子らが集い学ぶ寺子屋。ここで教鞭を振るうのは里防衛の参謀であり外との経済運営なども指揮する青鬼セイメイ。
「午前中の授業はまだ終わっていないというのに何ですかハクテン様。 …酢?料理に使えないかと?そうですね…」
「わー!ハクテン様だ!飲兵衛神だ!」
「ばっちゃんばっちゃん、また風狸で空を飛ばしてよ!」
「婆様、ぼくのねむったちからはいつになったら覚醒るの?」
「飲む前に酢になったのじゃ残念じゃ。 風狸は季節変わりで大風を起こしに南の空にいってるぞぃ。 力?東の空に明けの明星が輝く刻じゃ!」
同じくらいの背丈の鬼人やそれに混ざる獣人や鱗人の子らに囲まれるハクテンは、やめぬかやめぬかと言いながらも表情は緩んでいる。
「そうですね、では里の名物である白鬼大根料理に使ってみましょう。 酢漬け大根です」
「酢漬け大根とな!美味そうじゃ!」
「酸味と刺激臭は毒を隠すのには最適です。食事だと油断した相手を仕留めるのには素晴らしい道具でしょう」
「セイメイ、ハクテン様は純粋に料理をだな…」
「葉は酢ではなく岩塩で揉みましょう。これに岩塩に反応し食した後に胃袋で結石毒化する穴猪の腸漬けも合わせて出しましょう」
「いやだから毒から離れぬかセイメイ。あさ漬けなら簡単で誰でも作れそうじゃの。 では昼飯は皆で白鬼大根のあさ漬けを作るのじゃ!」
そう言うと子らを引き連れて大根畑へと向かうハクテン。やれやれと酢になった酒を運び寺子屋の庭に調理台などを用意するダイコク。
「飯を炊く準備を持って寺子屋に来いとハクテン様から風の便りを受けたのですけど。何が始まるんですか?」
米櫃を担いで走ってきたのは白鬼メルカ。走ってきたせいで胸がはだけ危うく乳房が大きく見えそうになる。
「おぬしも大変だなメルカ。では昼の用意の用意でもして待つとするか」
薄異本最新刊を読んで思わず想像
- 力の出方次第ではとんでもない生体兵器になってしまいそうなトクリちゃんだ。ハクテン様の頭の中は飲む食う寝るしかなさそうだ -- (名無しさん) 2016-09-16 00:56:59
- 守られているとかじゃなくてアクティブで動き回る白鬼様いいね -- (名無しさん) 2016-09-16 21:57:06
- 腐霊を通さない壺とか壁とかないのかな? -- (名無しさん) 2016-09-21 07:12:55
- 一日中飲んでるようなハクテン様だが仕事とかはしているんだろうか -- (名無しさん) 2017-03-20 16:59:21
最終更新:2016年09月14日 22:43