【ドニー・ドニー 七大海賊団の戦い】

 独立の戦いに勝利し異世界列強に国として認め並び立った頃より月日は流れ、戦いの熱はやがてドニー・ドニーという国の覇権を巡る方へと移っていく。
 かつての戦いで協力し合った海賊団も代を経ることでそれぞれの目的へと漕ぎ出すことで繋がりにも変化が生まれてくる。
 そしてドニー・ドニー独立後に方々より集まってきた海賊や水団などの思惑、巨大化していく異世界海運事業や商業輸送への関与から海賊行為まで、海賊国はかつてない“人の争い”の渦に巻き込まれていく。
 有力な海賊は中小の海賊を吸収しまとめ上げ大きな勢力を形成していく潮流の水面下では、策謀や暗計などが横行することになっていた。
 国としてのまとまりが薄まることで他国や大商会などからの介入も見えるくらいに露見してくるあたりからドニー・ドニーに危機感が強まることになる。
 しかし、あくまで国の主導権を争い合う勢力同士であることから解決策を見出すのは難航も難航するが、“強き力”という国の根幹から特筆して有力、他勢力も認める団のいくつかが合議制により国を動かすという方針に決着する。
 いくつかの、という点の始まりは
 一つが、となれば乱れた際に止めることができずに滅ぶ
 二つであれば、話し合いの折りが付かない場合に延々と流れるかも知れない
 三つであれば、内二つが結託することで国を掌握されかねない
 となると偶数ではなく奇数で、様々な意見主張が混ざり合うことが理想とされ、結果七つの勢力を選定することになったのである。
 そして、当時のドニー・ドニーで多くが認める強勢力が出揃うことになった。

独立の戦いの最前線にあり主導したオーガ“ガルガド”が率いた力を引き継いできたオーガ海賊団。 強大な武力を持ちながらも防衛を主とする国の大黒柱、保守派である。
独立の戦いにて異世界各地より集まったのも含め最大船員数を誇り団結力も強いオーク海賊団。 あらゆる状況に対応できる豊富な戦力を持ちながら、戦いよりも結びつきを広げていく行動力派である。
独立の戦いでも並み居る海賊団の中でも特に勇猛果敢に獰猛に戦闘を繰り広げた魚人海賊団。 海賊たる海賊として各海域で海賊と戦闘行為を行う真っ先に刃を抜く開戦交戦派である。
独立の戦いを金の力により縁の下で支え、その後もあらゆる方面を利用して異世界各地に金の網を広げたゴブリン海賊団。 戦う前に戦いを収める腕力ではない商業の力を前面に押し出す策略派である。
独立の戦いの最中にミズハミシマよりドニー副長“ナゼフ”が招聘し渡ってきた鬼人達により形成された鬼人海賊団。 少数勢力ながらも独自力を持って他勢力に協力することもあり一個の戦力も高いが根は対立を望まない友好派である。
何時の頃からかは定かではないが、頭角を現した時には既にドニーのみならず異世界勢力の情報を掌握し規模不明な情報網を持つスキュラ海賊団。 表舞台に出ることは少なく動きも見せることはほとんどない静観派である。
ドニーが異世界の海で注目され始めた頃に大延国から特殊任命により海練教導団として活動する獣人海賊団。 強力な水術士を有し海戦を追求しいざ戦いが発生すると参戦してくる冷静な好戦派である。

当初は独立後に造船技術を修得し研鑽するためにドニーに渡ってきたドワーフ造船技師団が推薦されたが、多くの艦船に関わることで各海賊団のアキレス腱を握るという立場とそもそものドワーフ造船技師団が七大入りを拒否したために話が流れたという一幕もあった。
そうして決まった七大海賊団による合議制であるが、やはり海賊の国ドニー・ドニーであるせいか合議により決まった方針に従うまでも長く浸透も遅かった。
まだ脆さがある海賊国家、それが一つの海賊国家にまとまった、まとまざるを得なかった大きな災難が発生する。
“人の争い”の次にやってきたのは“海との戦い”であった。

異世界の北端に位置するドニー・ドニーであるが、そこから未踏破海域はそう遠くはない位置に広がっており豊富な水産資源と共に強大な海洋生物もやってくるのだった。
未知の海域に生息する生物も無闇矢鱈に食物連鎖の争いを起こしているわけではなく天災規模の争いになる巨大生物同士は縄張りとする海域や回遊路を上手く重ならないように自然の本能めいたもので実現している。
しかし、未知数の事態が発生する。
切っ掛けは北東極海域で海底資源を採掘していたドワーフ・オーク共同船団が“船喰い”に襲われたことである。
その海域は今まで一度も船喰い級の生物が目撃されたことがなかったのである。ドニーではそういった細かな調査と情報によって作られた海図によって様々な活動を行っていた。
時々海図違いの出来事も発生するが、船喰い出現は規模が大き過ぎた。
しかも日を置かずに二匹目が出現するのである。
二匹は番いであったのかどうかは分からないが、一匹が追走する形でドニーを目指し進行したのである。
港にまで到達すれば甚大な被害になるのは明白であり、緊急招集された七大会議で二匹の船喰いの撃退が決定し海賊団全ての力を結集されることになった。
ドニー本島まで二島範囲まで船喰いがやってきたところで戦闘が勃発。
この時活躍したのが多くのオーク船員と鼓舞歌舞踊の鬼人が搭乗する黒鉄鋼の巨大銛を船首に持つ高速突撃船“黒銛”の十艘船団による波状攻撃であった。
突撃により船喰いの体に銛を突き刺しオーク達がそのまま取り付き零距離戦闘を行い、海に退避した鬼人を魚人が回収し次の突撃船団へ送り届けるという。
見事な連携攻撃から血気最高潮になった魚人海賊団とオーガ海賊団の猛攻により船喰い二匹は撃破されたのである。
ドニーは勝利の熱気に包まれ一致団結した結果を受けてまとまりもよくなり、勢力ごとの特徴なども把握が進んだのである。
そんな流れの中、温な季節の訪れにより雪が溶け始める頃に第二の災難が訪れることになるとは誰も予想してはいなかった。
辺境島で観察任務にあたっていたエルフの遠見からの飛び文によりドニー全土が揺れる。
“島喰い”の出現、ドニーへの接近であった。
海中に潜っていることが常である島喰いが何故発見されたのかというと、見ている先で島が食われていたからである。
大きさは船喰いを優に超え、巨大な口は開けばあらゆる対象を丸呑みにする。
遭遇するのも未踏破海域で稀にというほどでドニーの管轄する海域で出現したことはなかった。
巨大災害の接近に再度七大会議は撃退を決定し前回よりも大規模な撃退船団が編成され出撃する。
まだドニーより遠い海域での海戦だが、結果は見るも無残な惨敗であった。
船喰いに通じた兵装のほとんどが効果がなかったのである。
これにドワーフ・ゴブリン・オークの三勢力が主となり新兵装の開発を急ピッチで進めた。
黒銛を更に巨大化し一撃目に続きその黒銛船体そのもに突撃し銛を更に突き刺すという二次三次追撃船。
禁止されていた火精霊による大投撃放火器も獣人と鬼人勢力の協力によって使用可能なまでに構築される。
建造された前面衝突要塞艦も完成しいざ決戦へと全戦力が島喰いへと臨むのだった。
新兵装と新戦術は島喰いにダメージを与えるもすぐに決着とはいかず、止まらぬ進行に対して要塞艦をぶつけることで対抗し一大上陸作戦が結構された。
火勢で弱めた体表から内部の脳まで掘り進み、独立の戦いよりオーガ海賊団が受け継いだ巨大帆柱戦槍を突き立てることで島喰いは大海に沈んでいったのである。
戦後、大きく疲弊したドニーはその戦力を回復するために商業方面が大いに活躍し、異世界各地より戦力物資を補充することで急速に進むのであった。
誰もがドニーの新たな門出をを予感したその時、北東の水平線から恐るべき衝撃波が港にまで届く。
すぐさま偵察隊が派遣され、空前絶後の巨影発見が報告されることになる。
島喰いよりも更に巨大、全容は掴めず、進路にある島々は触れるだけで粉々になる。
島喰いを越える超存在を、巨大生物の総称である“鯨”と名付け対処することになった。
進行速度は島喰いよりも遅いながらも予測される到達地点はドニー本島であり、数度差し向けた船団もその足をゆるめることすらできなかった。
七大会議は出来得る限り戦力をドニーに集結させ立ち向かうことを決し、背水の陣にて鯨と対峙することになる。
無数で巨大な罠礁をドニー近海に張り巡らし廃棄や古艦を防壁として配し、足をゆるめた鯨の内部に突入するという特攻戦。
圧倒的質量の鯨はあらゆる策を意に介さず進み、艦壁をも容易く砕く。
ドニーの目の前にまで接近しようとする鯨に向けて飛び出したのは獣人海賊団の全船団であった。
全水術士による水精霊事象変異により“重たい水”と化した海域で鯨は歩を遅らせ、そこに質量を増加させた余剰船団の全てを楔として突撃させた。
かつてナゼフと盟約を交わした海竜も加わり高高度からの艦そのものを投擲することで鯨に衝撃を与えることに成功する。
攻撃態勢に入り全てを飲み込む巨大な口が開いたのを勝機と、一斉に武装船団が突撃する。
鯨の体内は無数の自衛生物や細胞により蠢く地獄だったが、魚人海賊団は団長を先頭に一切臆することなく突撃する。
島一つとも言える巨大生物迷宮を進む上陸戦団が奮闘する間も鯨はドニーへと迫る。
鯨の体内で奮闘する海賊団に転機がやってきたのは内臓部まで達したスキュラ達が吐き出し続けた“毒”が巡り鯨が異常を来したことであった。
それにより過剰な自己防衛物質を生み出す鯨は自らの体を内側から溶解崩壊させていく。
そして遂に複数ある心臓の全てを貫き破壊したことで鯨は行動停止。その巨体は自らの細胞により溶けて海に還ったのであった。

多くを失ったドニーであるが、その結束は確かなものとなり緊張感を持ちつつも誰もが国を思い行動するようになった。
鯨の足止めに戦力のほぼ全てを消費した獣人海賊団は解散を決定。大延国へと戻ることになる。
空いた一席に復興にも尽力したドワーフ造船技師団が推されたが、彼らが依然固辞したことで七大海賊団最後の一席は空席のままである。
重責と実力を試されるその一席につく海賊団が果たしてこの先出てくるのかはまだ分からない。
後から朧気に分かったことであるが、未踏破海域からの鯨達の進行の原因はウルサが彼の海域で暴れ回ったために鯨の回遊路が変異したり逃げるための移動であったということなのだが、
その真相は未だに確証に至っていない。


ドニー・ドニー七大海賊団と国の結束の経緯を想像して一本

  • モンスターどころじゃないハンター。ウルサが最後に襲ってこなくてよかった -- (名無しさん) 2017-07-24 00:52:39
  • 海賊連合vs超巨大生物いいね映画みたい -- (名無しさん) 2017-07-25 16:27:37
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最終更新:2017年07月24日 00:00