【五人組、ゲート通過】

 シベリア海 元石油プラント現ゲート監視所 取り調べ室
「本当に何も知らないんですよ!私はただの雇われパイロットなんです!」
ゲート監視所に不時着したエアバスのパイロットはそう返すしかなかった。本当に唯のいちパイロットであり、機内で発生した騒動には全くの無関係なのだから。
しかしこのテロ氾濫のご時世で爆発こそ無かったものの航空機によるゲートへの突撃。ここ十年は収まったものの、交流反対勢力によるゲートへの破壊活動の記憶はまだ古くはない。
「騒動に紛れてゲートに入っていったこの者達に関しては?」
「それも何度も言っているじゃないですか…唯の乗客ですよ!客のリストは会社から提出されましたでしょ?!」
提出された書類には『ドニー・ドニー港町日帰りツアー』の参加者と関係者が記載されている。国際空港内で参加できるお手軽なツアーである。
海上大型構造物のプラントには大ゲート発生当時、ウルサが出現し大暴れしたこともあり軍隊軍事関係者が駐留し警戒と任務にあたっていたが
大ゲート所在地であり大勢の渡界者を捌くために現在は多くの民間旅行社の人員も勤めるようになっている。
経営実務を優先する色も出てきたことで緊張状態と防衛意識に変化が生まれる結果となった。
「ドニーに渡ったのは日本人一人、異種族四人か。家族?そうは見えないが…」
「受付が『ユウキュウショウカ!ユウキュウショウカ!』『カゾクサービス!』という言葉の勢いに押されて通行を許可してしまったということですが」
「仕事中毒日本人にとっては休みは命と等価なのかもな。それで、機内で銃を乱射した馬鹿はどうしている?」
「機内で乗客に張り倒されて縛られたまま大人しくなっているようですが、気絶していますね」
厳重に手錠と拘束ストラップで固められた男は一見するとどこにでもいる中年男性である。
他の乗客の証言から、プラントへ向かう上空で突如銃を椅子より取り出して発砲したという。
しかし、すぐさま乗客の中から飛び出した青鬼人によって手足を刺し貫かれ体勢を崩したところを日本人が木刀にて銃を斬り飛ばしたという。
銃を失った男は以前狂ったように訳の分からない言葉を発していたが口内より爆発物を取り出し躊躇なく作動させた。
が、それを血色の悪いオーガが両手にて圧封。爆発を抑え込んで事なきを得たという。
しかし機体は乱射により制御を損ないそのままプラントへ不時着したのである。幸い軽傷者は出たが被害はそれだけであった。
「乱射犯の素性は?事前に機内に準備されていた火器も気になるところだが」
「一昨日までは普通に会社勤めしていた独身男性ですね。所在不明になっていた昨日に何があったのか…特に怪しい交友関係はないようです」
男は生気を失ったように気絶したままである。


 ドニー・ドニー。国土はそう広くはないが異世界に広がる海を処狭しと活躍する海賊海商の国。
北海の寒風も吹き飛ばす荒くれ者達の熱気で満ちる港町に飛び込んだ五人。
「何とか商船とかを持っている人と話ができればミズハミシマへの道も開けるんだけどね」
港に降り立って周囲を見回しても誰もが同じ様に海に通じる者に見えてどうしようもないという現状。
試しに誰かに話しかけてみようかという案が出たが、あくせくせっせと働いている人にいきなり話かけるというのも難しい。
だがしかし彼らに時間の猶予は少ない。機内での襲撃もあってか影の組織の関与がいよいよ実感を増してきた。
悩む一同の足元に一枚の紙が飛んできて引っ掛かった。
『楽しく美味しい酒と料理のフタバ亭!どうぞいらっしゃいませ!』
「異世界にも印刷とかあるのか」
「活版印刷くらいならあるところにはあるよ。商売に宣伝は付き物だからね」
 ぐぎゅるるる~
誰かと誰かの腹の虫が鳴り響く。 何かと忙しい騒がしい道程で日本を発ってからろくなものを食べていないことに気が付く。
飯を食う場所なら何かと情報も得られるだろう。一同は全員一致でチラシの店へと向かうことに。
ドニーでも有数の繁華街として海上に浮かぶ人工島デジマへ。


  • 色々通関関係がゆるいっつか安心しちゃってる時代? -- (名無しさん) 2017-10-18 01:00:49
  • ギャグ空間とシリアスが肩組んで走ってるような雰囲気やな -- (名無しさん) 2017-11-09 08:22:36
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最終更新:2017年10月15日 23:04