【バトル大会決勝戦! 前半】

「いよいよ大会も決勝戦となりましたッッ!!解説は引き続き真っ赤な鶏冠が目印の私、“赤い山脈”(レイライン)とゲストの ──
「お師匠さまじゃ」
「もんっ」
“青の剣鬼”(ケンプファー)、青鬼師匠さんと今大会主催者であるスラヴィア統べる神“モルテ”さんです!」
闇の帳に覆われ無数の篝火が照らす闘技場もいよいよ最高潮。直始まるであろう決勝戦に観客席からの声も徐々に大きくなっていく。
「お二人はどう予想しますか?」
「どう見ても考えても狐二人が勝つじゃろ。二人同時に仕合ってもおらんし本気も出しとらん様だしの。
ちっこい嬢ちゃんがあの道具で助っ人を全員呼び出したとしても勝てる見込みはほとんどというか無しじゃな」
「んっんー。でもこれ戦闘じゃないからね試合だからね、そこんとこはシキョウはちゃーんと分かってるっぽいからネ。
今までのラニちゃんは相手を十二分に観察した上での勝ち積んでるからネー。そこんとこ期待しよう!」
「成程…それでは選手入場ですッ!」
鶏の一声から即場の上に一迅の風。シキョウとスイメイが颯爽と現れる。
終わってみればここまでの試合を危なげも一切なく勝ち進んできた実力は誰もが理解するところである。
果たしてこの難攻不落にどう立ち向かうのか?これまで登場した助っ人以外にも隠し玉が?などの期待も膨らませつつ入場口に視線が集まる。
しかし、現れたのはいつもの給仕服、ノーム少女ラニ一人であった。
「ほう、一人か」
「いいんじゃないの?いいんじゃないのー」
あくまでマイペースな歩調で舞台に上がったラニはそのままシキョウとスイメイに歩み寄る。
「何やら会話しているようですが…おっとラニ選手が懐から何か、封筒のようですが取り出しましたね。んん?ラニ選手が離れて…何か手を振っていますが?」

「ほう、本当に了承させるとは恐れ入る。では手筈通りにここからはこちらの仕事だな。 おい!三分で準備完了だぞ!急げ!」
観客席の高い場所、海賊様相のゴブリンが立ち上がり笛を吹くと選手入場口から様々な機材を持った面々が現れる。
「さっさと運ぶ運ぶ!」
「にゃふふっ。ちゃちゃっと組み立てちゃうぞっ」
続々と運ばれてくるのは料理厨房を形成するもので、みるみるうちに舞台上に二つの調理場と様々な食材が積み上げられた台座が出来上がっていく。
「よし、完成したな。引き上げだ! 用意した物と先払い金が無駄にならなくて良かったな嬢ちゃん。後は観客席から見させてもらおうか」
「ありがとうございますネモチーさんと団の皆さん! さぁ!舞台は整いましたっ!!」
「何と言うことでしょう!あれよあれよという間に舞台上に台所が完成したぞーっ!?一体何が始まると言うのか?!」

「ここまでは段取り通り…。ここから先が私の勝負です!」

 「お二人に提案があります」
 「おっ?勝負の仕方か何かか?試合たい方を選ぶといいぞ」
 「どう戦っても私に勝ち目はないと確信しています。しかし、折角の決勝戦が不戦勝というのも勿体無いと思います」
 「祭りの最後が何もナシなのは確かに、な」
 「…」
 「なので決勝戦ではお二人に勝負してもらおうと」
 「ほぅ?」
 「…」
 「勝負と言っても戦闘ではありません。そして私は勝者を予想しその名を書いた紙をこの封筒に収めています。
 私の予想した方が勝てば私の勝ち、外れればお二人の勝ち。でどうでしょうか?」
 「はははっ!面白いじゃないか。俺は構わないぜ?勿論スイメイもいいよな? 受けて立つぜラニ嬢ちゃん」
 「…」

「わぁ~たしぃ~の調査が正しければぁ~?お二人は夫婦であったと伝え聞きまぁ~す!仲も睦まじかったとも!
そ・こ・で、私はお二人に料理を作ってもらいそのどちらが美味であるかを勝負してもらおうと思います!昔を思い出して楽しく競い合ってもらいまぁ~すっ!!」
「これはこれはこれはーっ?とんでもないことになりましたァーッ!!まさかの両雄対決ッ!しかも料理ッ!どうなってしまうんだーーッ?!!」
「さぁて何を作ってやろうか。おっ、大延以外の国の食材も用意しているのか。野料理で鍛えた腕前、久しぶりに披露すっかね。
処でスイメイ、ちょっとは料理は上手くなったのか?子らにしっかり食わせてるのか? あまり想像できないけどな」
大笑いしながら食材を物色するシキョウに対して調理台を前に微動だにしないスイメイ。
「あの食える物をそれ以下にしちまう頃からどれくらい上達したのか楽しみだなァ。まさかとは思うが作れませんとかないよな?母親なんだし流石にな。な?」
「…」
かき集めた食材をぶっきらぼうながらに食べ頃の大きさへとズバズバ切り刻んでいくシキョウは悪戯気味に笑いながら香ばしいスープが煮える鍋をスイメイの方へ突き出す。
「いやはや全く予想しとらんかった展開になったもんじゃが、うぅむ胃をくすぐる香りが漂ってきたわい」
「面白くなってきた面白くなってきたネー。空気がどんどん張ってくるけど、これシキョウは確信犯っぽいなァ」
「はい?はいはい…どうやらラニ選手が持ち掛けたシキョウ、スイメイ両選手による料理勝負とのこと、その勝者の予想が的中すればラニ選手の勝利という取引とのこと。
流石決勝まで残っただけはあるラニ選手の対応力、場の支配力と言いましょうか!」 
双方自分の色を出しながらの舞台調理。それを熱い視線で見守るラニ。
ラニはシキョウの勝ちを記したのか?もしそれが当たったとして高々と勝利宣言ができるのだろうか?認められるのだろうか?
会場を様々な思惑が飛び交う中で料理勝負は着実に決着に向けて進むのだった。


四周年企画の大バトル大会決勝戦。前半

  • 確かに武力全振りっぽいのは分かるスイメイ。単品で参戦してもどっちも優勝候補レベルだよね -- (名無しさん) 2018-05-03 08:46:00
  • 戦闘にならなくてよかったねラニちゃん! -- (名無しさん) 2018-05-03 23:37:33
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最終更新:2018年05月02日 01:17