白地に青色の波が映える制帽とBOXリュックには、騒がし過ぎない程度に様々な会社名のロゴやステッカーが貼ってある。
ビル周辺のエリアは駐車場への通路以外は車両進入禁止であるが、
ケンタウロスはその制限にかからずに颯爽と人の間を駆け抜けていく。
商社ビルに自動ドアオープンギリギリ衝突寸前で突入し受付にBOXを乗せて開き中身を差し出す。
「中央商事、総務部宛のデリバリーをお持ちしましたー。確認をお願いします」
内線で先方に連絡と、再度トレイ上の料理を確認を済ませた受付はケンタウロスの差し出したスマホにサインをなぞる。
「ありがとうございました!」
パーッパッパラー
「おっ、次の配達だ。 えーと、信号二つ先の吉牛でボリューム昼定食テイクアウト6つをビル新築現場事務所まで、ね。了解っと」ポチッ
「…というのが配達の一連の流れになっています」
「成程、映像として最初から最後まで見るとよく分かりました。配達員の方は全てカメラを付けているのですか?」
「いえ、全員ではなくて ──
そう言うと
ノームの少年は記者にパンフレットを差し出すと同時にPCモニターで会社案内を開く。
社員の数名のローテーションとアルバイトの有志が制帽に取り付けたカメラ。
業務時間開始と共にリアルタイムで映像が動画サイトの会社チャンネルにて配信される。
「注文はオンラインのみなのですか?」
「そうですね。運営コストと業務システム面からもオンラインのみですね」
一見でも利用は可能であるが、会員登録をしておくことで支払いや届け先の手間がぐっと減る。
「しかし完成されたシステムですが、営業を開始してからまだ半年も経っていませんが…」
「そうですね。発想の元は九州震災の復興作業にて現場への食事配送システムなので、既にある程度は完成していたと思います。
と言っても、システムそのものは社を発案した人が1から構築してそこに利益の出る商業要素を加えたものが今現在のサービスとなっています」
地点登録とGPSを活用した店舗・配達員・客の同期計算により、注文メニュー選択時から時間と質の最適解を導き出すものとなっている。
2時間から勤めることが可能なアルバイト体制と、それを補う社員には客の注文決定から距離・種族特性・人員状態などを計算し即ベストな人選で指示が送られる。
給料は歩合が強いが、業績と業務の行く末により改定していく予定だと言う。
「お客様に最速で、かつ配達員には法の順守とNo事故を第一に心がけるように励行しています」
「分かりました。最後によろしいですか? 料金体系を見る限り、人件費などを考慮するとかなりリーズナブルと思うのですが」
「そうですね。配達そのものの料金は安い以前に黒字に届くものではありません。 が、配達員自身が広告となりサイトでの広告と認知によりスポンサー料や協賛などによってwinwinの状態であるとだけ答えておきます」
「ありがとうございます」
十津那学園からそう離れていないバス亭最寄りのアパートの一室での取材が終わる。
道具と制服の受け渡しと面接、倉庫代わりの部屋の玄関に掲げられた『十津那配達サービス』の看板。
「坊ちゃん、差し入れですぜ!」
ドラゴンドラゴンした強面のドランが洋菓子パックを摘み持って入ってくる。
「ありがとう。もうすぐシフト交替だから帰り支度するね。 …それにしてもシャーロックさん、会社立ち上げてから一度も来ずに任せっきりだけど大丈夫なのかなぁ。“観察はさせてもらっている”とは言ってたけど」
事務管理のバイトもすっかり板についたクロトは何かしら仕掛けているであろう天井を見上げて小さな溜め息をついた。
ちなみに配達動画で一番再生数が多いのは『(^・●ω●・)ノ 蜘蛛人のアクロバティック配達』である。
種族混成業務スタイルの実態はどんなもんでしょう
最終更新:2020年04月12日 16:49