年末ともなると海からの寒風も強く、公共団地を間を吹き抜けていく。
多くが住む号室の扉が開くと幼児に裾を握られ赤子を胸サックに抱えた母親が出てくる。
「じゃあ
麟くん、行ってくるね。もうすぐお父さんが来てくれるから無理せず寝ててね」
「なっ、なぁやっぱり今回のミズハ行きは延期にしないか?どうせ行くなら家族全員の方が良いだろう?また年末に休み取るからさ」
「ダメダメ。クリスマス前後からフェリーも港町も混むんだから、
百呼を連れていくなら混む前じゃないとね。 それに年末は病院お忙しくなるから私は休みなんて取れなくなるんだから」
「ぱぱ、おねんねなの?」
「そうよ
明十、パパはねーお注射が怖くてズルしたからねんねしなくちゃいけなくなったのよ~。 皆ちゃんと予防接種受けたのにね~。ねぇ~?」
「ぬっく。それは鱗肌には針が通らないと思ってだな…」
「何言ってるの。今はもう鬼人や
オーガの肌も通す注射針が使われてるのに、はぁ~もぅ注射が怖くて社内検診でズルしたとか恥ずかしいわ。 かかったのがただの風邪なのが救いね」
正論で説き伏せられた情けない父親は青鱗を覆うマスクを掛け直してすごすごと寝室へと戻っていく。
「うーん、やっぱり義父さんには帰ってもらった方が良いんじゃないか?俺しかいないんじゃわざわざこっちに来るのも手間取らせて勿体無いし」
「それは気にしなくて良いよ。お父さんも
麟くんと話したいことがあるって言ってたし。私達が帰るまで世話してもらってね」
そう言って扉を閉めた一行が団地のロビーへと降りると、白髪交じりのいぶし銀が向こうからやってくる。
「おお
累、今出発か」
「あらお父さん、ナイスタイミング。部屋で
鱗くん寝てるから仲良くね?」
「あっ、ままじーじだー」
「おお!おお!
明十も
百呼も元気そうで何よりだ!大きくなったなぁ
明十、
百呼も鱗の艶が出て来たんじゃないか?」
そう言って幼児の頭を撫で、赤子の寝顔を覗き込んで満足しエレベーターへと進む。
チーン
ピンポーン
「うわっ!来たっ!」
ピンポーン …… ガチャ
「そうだった!合鍵持っているんだった!」
みしっ ぎしっ ギィィイイィィ
寝室の扉がゆっくりと開くと冷めた笑みを浮かべたまま布団に歩み寄り、傍へと座る。
「鱗君、風邪はきついかい?」
「おっ、お義父さん!気付きませんで申し訳御座いませんっ!」
「こらこら。まだ立ち上がってはいけないよ?どれタオルの代わりを持ってきてあげようか。 …と、その前にいいかい?」
「うひゃいっ?!何でしょうかっ!?」
「早くも二人目の孫の顔が見れて私はとても嬉しい。累とも上手くいっている様で家族円満結構結構」
「はい!累さんは僕には勿体ないくらいの素晴らしい女性です!」
「で。夫婦の営みで累に無理はさせていないかい?何せ鱗君は立派なモノが二本あるからね。約束した通り二本同時に…などないだろうね?」
弓道剣道を兼ねる道場と畑を切り盛りする武人然とし、老いを感じさせない圧が静かな笑顔からこれでもかと言うくらい病床の鱗人へと押し付けられる。
「…累さんは何か言ってました、か?」
「うん?子供二人毎日すくすく育っているとはよく聞くが」
「それなら大丈夫です!はいっ、大丈夫です!家族は僕がしっかり守ってみせますので、お義父さんは安心して下さい!」
「はっはっは、それを聞いて安心したよ。でもまぁその風邪を治さないことには大黒柱もしっかり立てないだろう。 どれ我が家秘伝の煎じ薬を作ってあげよう。材料は持ってきている」
「ありがとうございますっ!」
義父はすっと立ち上がり台所へと向かう ──
「本当によかったよ。もし君が良からぬことをしていたら、その二本のどちらかを斬り落としていたところだったよ」
「うひゃいっ」
ゆっくりと閉じる扉を凝視して、これからはより一層理性を保ち欲望を抑えようと心に誓う二児の父であった。
二本の竿があれば着床率も二倍!というわけでもない
- 収納式でなかったらズボンの収まりがきつくなりそうな竿二本。異世界交流で日本の人口増加傾向になってたらいいなぁ -- (名無しさん) 2020-12-14 18:24:33
最終更新:2020年12月13日 20:07