【工業科のノム子さん】

「派手なぶいえふえっくすで誤魔化してるけど、このアーマー可動域死んどるな」
「…パワーアップ体の説得力持たせるためのディテールアップに拘泥しすぎて、元デザインのよさが死んでる。ぶっちゃけダサい」
「駄作だな」
「異議なし」
日曜の朝っぱらから特撮ヒーローの新スーツの批評聞かせんな朝飯が不味くなる。
これだからドワーフとノームを並ばせるとろくなことにならんと……ていうかなんで俺の部屋に集まってるんだお前ら。
「お前の部屋のてれびが一番でかいし」



「よう」
ポートライナーの車内で珍しい顔に会う。
あれ、いつも自前の乗り物で帰ってるんじゃなかったっけ?
「ちょっと改造してな」
壊したんだな。
「なんでわかった」
わからいでか。昼の爆発音は俺のいた教室まで聞こえたんだぞ。



《わーいわーい》
《お、なんだー?》
《なんかたのしそうなのがあるぞー》
《のりこめー》
《わー》
《ちょ おすな おすなってー》
《むぎゅーっ》
《あ なんかいまぴしっておとg》

ちゅどーんっ

「…うーむ、エンジン強度を上げるにしても限界があるな。やはり一度に精霊が押しかけないよう整流する方法を考えるか」
そこ、考えてないで片付け手伝え。
「やかましい、邪魔するな雑用係。お前と私では時間の価値が違うのだ」
さらっとひでえ!



《はいならんでー》
《わー》
《こらー よこいりすんなー!》
…なんか保育園みたいな状況に。
「うむ、これはこれでいい方法だが瞬間的な出力は期待できそうにないな」
馬力が必要なときは二列制とか三列制とかでどうよ。
「それだ!」
冗談で言ったのに…。



いいアイディアを出した礼にメシを奢ってくれるのはいいんだが、なんだかこの店カップルばっかりなんだが。
「ああ、だから私も入れなかった」
『お待たせしましたー♪』
「きたきた、ここのきのこパスタがどうしても食べたかったんだ。ちょうどよかったな」
オレへの礼は口実ですか…って半分以上取ってるし! ひでえよお前!
「同族じゃあるまいし、男がいちいち細かいことを言うな」
はぁ……これ、デートって言っていいのか…?



「………」
お土産にと渡したガラス細工を箱から取り出すと、回したりひっくり返したりしながらじーっと眺めてる。
結構…というかかなり高かったので、感想とか感謝の言葉とかあってもいいんじゃないのか。
「………」
聞いてませんか、聞いてませんね。
まあいきなり放り投げないってことは気に入ったってことだろう。



「やる」
なんだこれ、フィギュア? こんなの売ってたっけ?
「買ったやつがあんまり泥でむかついたんで自作した」
さらっとすげえなおい、ワンフェスで金取れるぞ。
「? なんだかしらんがそれはやる。好きなキャラなんだろ?」
ああ、まあ…ありがとう。
「いい、面白かった」
…もしかしてこの間のガラス細工の礼だったのかな。



「私は別に男に興味がないわけじゃない」
そうですか。
「ただ、もっと他に興味をひくものが多すぎるだけだ」
でしょうね。
「だからこれもほんの興味だった、他意はない」
そんな必死にローター見つかった言い訳しなくても。
「他意はないんだったら!」



「うーす、入れよ」
ガチャリと扉を開けたそいつは、下着に白衣という高度にHENTAI的なスタイルだった。なんだ、なんのつもりなんだこのシチュエーションは。
「こないだ自作PCについて色々教えてもらったんで自分で組んでたんだよ。静電気よけには脱衣が一番って聞いたし…そこにお前が急にきたから白衣しか羽織れなかった」
さいですか。
「じろじろ見んな、刺すぞ」
わかったからドライバーは勘弁してくれ。

そいつはそのままこちらを無視して作業に没頭し始めた。
……白衣の間から覗くカラフルな色が無防備極まりない。
そういうデザインの着るのかこいつ。意外な。
いやいや何考えてるんだ俺。
「おい」
気がつくとそいつがこちらをにらんでいた。
のみならず、こちらの服に手をかけて脱がし始めていた。
ちょっとまって何のつもり
「これが刺さらないんだ」
メモリが突き出された。
「だからお前がやれ。ほら、さっさと脱げ」
そのまま体を押し付けてくる。なりは小さいくせに出るところが出ている体が近い近いHEY!
「……刺すのはメモリだからな。あくまで」
ちょっとこのひと何言ってるの。

メモリを差し込む俺の手元を真剣に覗き込むそいつの胸元が白衣の隙間でちらちらする。思わず力加減を間違え、マザーボードからきしっと音がした。
「っ……く、もっとやさしくしろ…」
緊張してるからって息をつめるな、へんな風に聞こえる。
「あ、入る……入っ…たぁ」
いちいち報告せんでもいい。
メモリがかちりと固定されるのを確認して、二人とも安堵の息をついて座り込んだ。
「はー、組むだけでも結構力いるん…」
なぜそこで止まる。こらそこ、どこ見てんだ。
ちくしょう、あぐらかいたおかげで見られたくないものに気づかれた様子。

組みかけのPCをはさんで無言の時間が続く。
いつもの蔑んだ……というかバカにした目で見られるかと思いきや、普通に赤面して固まってるし。珍しいものを見たが、結局気まずい。
仕方ないので、俺が沈黙を破った。
「…弁明するのも面倒だが言うぞ。そんな格好で変な声出すな、もてあます」
「さすがにそれは入らん」
「いきなり話が飛びすぎだ!?」

「話には聞いてたし想像くらいはしたことあるが、これはたしかに無理だ…死んでしまう…」
なんだろう、大きいといわれるのは本来男としては嬉しいはずなのに、馬のモノみてドンびきしてるような目で見られたら全然嬉しくないや。
ていうか俺のはたぶん標準です。
「わかってる、これは単純に種族差だ。如何ともしがたいな」
そう言いながら青くなるでもなく頬を紅潮させたままじーっと見てるのは何故なのか聞くべきなのだろうか。
「…つらそう、だな」
ええ、それはまあ。トイレ貸してくれれば自分でなんとかするから心配は…。
「それはちょっと勿体無くはないか」
なぜにじり寄ってくるのか。

「興味はあるんだと前言ったはずだな?」
こんなの入らないとも今言った。
「問題ない、入れなきゃいいんだから」
待て待てま…ふあっ!?
「おー、敏感だな」
ちっさい手でさするな背徳的な! ああ、変な声出しちまった。
「…最後まで出してもいいんだぞ」
そっちの話じゃねえ! 帰る!
「そっちは壁だぞ」
最初に逃げ場を確認しとくのはこいつと付き合う上での鉄則なのをすっかり忘れてたよちくしょう! 全部そのかわいい下着のせいだ!
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あの後、俺の金で新調したPCのマウスをカチカチと小気味よく動かしながら、ノム子はにやりと笑みを浮かべた。なんだ、今度はどんな悪巧みだ?
「この間の愛の戦士から、蟲人経由で便りが届いてるぞ。きっちりレポート付きとは、まったく律儀なやつだ」
ああ、あの時の試作品渡されてた男子生徒か。うまくカノジョさらって逃げおおせたのかな。
「どうやら逆転サヨナラホームランといった展開だったようだな。行ってみたら何のことはない、祝言は自分と彼女のものだったと書いてある」
なん…だと…?
「やつの恋はハッピーエンド、私にも実働データが手に入った。万々歳だな」
なんだそれー…余計な心配だったと知ってどっと疲れたぞ。
「この後も新婚旅行で使うから、レポートは引き続き送ってくれるとさ」
さいでございますか、末永く爆発しろ。
「爆発しろとは失敬な。今回の試作機はちゃんとエンジン内圧異常の対策済みだし、もしトラブってもマフラーから煙を吹く程度で済むはずだぞ」
トラブるのはトラブるんだな。
「何事も不測の事態はつきものだ。ある程度まではマニュアルに復旧の手順も書いてあるし、新婚旅行の間くらいはもつだろ……さて」
うん?
「次はこっちの問題を片付けようじゃないか」
あー…やっぱりその件。やめとこうぜ、俺はいまで充分気持ちいいんだからさ。
「やかましい、無理だ出来ないだというのは私の認識不足だったと教えてくれたのはお前ではないか」
いやだから、あれは単なるエロ漫画で現実に即してないと何度も…。
「なせば成る。ほれ、こっちはローターでもうかなりほぐれてるんだぞ」
なんか虫の羽音みたいのが聴こえると思ったら何やってんだー!?
「なに、別にがさ入れで出てきたアレだけを根拠にしてるわけじゃない。ノームを嫁にもらって子供をもうけた地球人も世の中にはちゃんといるらしいからな」
そ、そうなんだ…あーいやでもだな…。
「はっきりせんやつだな…実際私もそこの制汗スプレーまでは入ったんだぞ」
え…あ、あれ入れたのか…。
「…先のところだけは」
………。
「おい、なんだその目は。お前、私のはじめてをあんな鉄の筒に捧げろというつもりか」
冗談言えこの…せっかく多少でも鎮めてやさしくしようと思ってたのにパンパンにしやがって。
「いらん世話だ、硬くないと入らん」
ほんとに知らねえぞもう!
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「やってやれないことはないもんだな」
 どことなく清々しい顔のノム子と、やっちまったぜ顔の俺。対照的な二人が毛布にくるまっているところが鏡に映っていた。なんか前にもこの位置に鏡があったなそういえば。
 見れば、隣の棚にはいつかお土産にと買ってきたガラス細工が飾られていた。
「…あれ、そんなに気に入ったのか?」
「気に入ったといえばそうだな、男にはじめて貰ったものだし」
 え、そうだったの?



「おい、またシャワーノズルが上にかかったままになってるぞ」
「あ、すまん…ついいつものくせで」
「まったく、お前がうちで浴びるたびにいらない苦労をする。いっそ上側の金具を外すか」
しかし、気づけばナフの家でシャワー使うのが普通になってる俺ってどうなのよ。



そういえば、よくお前と言い合いをしてる向こうの研究室の連中だけどな。
「ん、三馬鹿どもがどうした?」
お前に対抗して精霊式バイク作るって言ってたけど、その後音沙汰ないなあと思って。
「不可能なことを期待するな」
不可能って…あいつらは個々は結構いいもの作るってお前言ってたじゃないか。
「個々であればな。だが、あいつらが三人集まるとそこで始まることは決まっている」
決まってるって…。
「空中分解だ。あいつらのことだから、いまごろ陸・海・空を制する全領域バイクの計画になってるぞ」
ああ、船頭多くして船山に登るってあれか…。
「分かれて別々に図面を引けばいいものが出来るだろうにな、だから三馬鹿だと言ってるんだ。さ、あいつらの話はいいから手を動かせ。まだ作業は残ってるぞ」
はいはい、俺もすっかり雑用係だよな。



この時期になってくるとどこもサカって…もとい賑わってるなあ。
「そういうお前はどうなんだ。勿論、私のために時間を割いてくれるのだろうな?」
そりゃまあ、な。クルス風のチーズ料理が評判のお店の予約ぐらいは抜かりなくしてあるぞ。
「そういうのは当日のサプライズにするものだろう…」
この程度はジャブだと思っててくれていいぞ。
「それは楽しみだな。ああ、こちらも相応の用意をする甲斐があるというものだ」
…そっちは頼むからお手柔らかにな、くれぐれも。
「なんだ、先日の誕生日サプライズはお気に召さなかったか?」
サプライズすぎて寿命がだいぶ縮まったから言ってんだよっ。



「そもそも、このクリスマスというのはどういうイベントなのだ?」
うーん、この世界の救星主相当の人物の生誕の日っていうのが基本だし、本来は家族で集まって静かに過ごすものなんだけど、日本だといつの間にかただのお祭りイベントになってるな。
「何処よりも早く異世界交流目的の学園などというものを設立しただけあってか、この国は本当におおらかというか節操がないというか…」
いつでも理由を見つけては酒盛りしようとする酔っ払いのおおらかさって感じだわな。
「ああ、酒場のドワーフや海賊どものおおらかさっていうのならなんとなく理解できるな」
個人的な見方で言うと、なにかと胸に秘めがちな国民性だからハレの日を利用してぱーっと解放しちゃおうって意識があるんじゃないかって思ってるんだが。
「ふむ、なるほど」
…まあ、俺達がこうしてるのはなんだかんだでいつものことだし、あんまり関係ないな。
「道理だな。んっ…ちゅ………チキンの味がするぞ」
1バーレル買ってしこたま食ったからなあ。……もう一回、いいか?
「ふふっ」


  • 最初のやり取りの印象が強すぎて笑った -- (名無しさん) 2012-06-08 01:30:14
  • 地球の文化科学に興味津々であれやこれや実行する好奇心の -- (名無しさん) 2013-06-19 17:33:53
  • 強さと体と反面して心はしっかり歳相応なのが面白かったです。押しの強さも歳相応なのか晴れて一緒になった二人の人生に興味が津々ですね -- (名無しさん) 2013-06-19 17:35:47
  • ノームなのに男勝りで研究肌なノム子さんの魅力に乾杯 -- (名無しさん) 2017-12-18 19:14:57
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最終更新:2013年12月25日 21:52