【西のどこかにて】
地に軍が敷かれている。騎人と狗人の軍勢だ。
いま、先頭にある将軍が槍を振り上げる、天の星へとまっすぐに。
一拍の後、ザッという音。皆が姿勢を正したのだ。
「諸君!天蓋に坐す導星に問え!諸君の夢の行き先を!諸君の戦の終着点を!!」
声に従い、おのおのが持つ武器を、盾を、旗を、振り上げる、天の星へとまっすぐに。
「「「おう!!問おう!!天蓋に坐す導星よ!!我らが夢の行き先を!!我らが戦の終着点を!!」」」
星が強く輝いた。
『あそこだよー』
全軍に等しく星が響く。ある一点が同じく示される。
「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
その一体感により、ガンガンと武器を打ち鳴らし、意気を上げていく。
将軍が一声をもって、熱気はそのままに、場を鎮めた。
そして、問う。
「諸君!見たか!天の星の輝きを!」
「「「おう!!!我らが頭上に星はあり!!!」」」
「今こそ道は示された!星の導きはここにあり!諸君が道に迷い無し!!」
「「「星の導きは我らにあり!!!我らが道に迷い無し!!!!」」」
「ならば諸君!いまこそ一丸となり!地における流星となろう!行くぞ!全てを終わらせてくれ!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」」」
いま、地の星の軍勢が駆けはじめる。一等星の輝きに導かれて。
【東のどこかにて】
地に軍が敷かれている。騎人と狗人の軍勢だ。
いま、先頭にある将軍が槍を振り上げる、天の星へとまっすぐに。
一拍の後、ザッという音。皆が姿勢を正したのだ。
「ここに命ず!天蓋に坐す導星に問え!俺が野望の行き先を!俺がための晴舞台を!!」
声に従い、おのおのが持つ武器を、盾を、旗を、振り上げる、天の星へとまっすぐに。
「「「おう!!問おう!!天蓋に坐す導星よ!!我らが将軍の野望の行き先を!!我らが将軍の晴舞台を!!」」」
星が強く輝いた。
『あそこだよー』
全軍に等しく星が響く。ある一点が同じく示される。
「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
その一体感により、ガンガンと武器を打ち鳴らし、意気を上げていく。
将軍が一声をもって、熱気はそのままに、場を鎮めた。
そして、問う。
「答えよ!見たか!天の星の輝きを!」
「「「おう!!!我らが将軍に星はあり!!!」」」
「今こそ道は示された!星の輝きはここにあり!俺が道に迷い無し!!」
「「「星の輝きは将軍に!!!我らが将軍に迷い無し!!!!」」」
「ならば!いまこそ俺は!地における流星となり駆け抜けよう!遅れるな!魅せてやるぜ!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」」」
いま、地の星の軍勢が駆けはじめる。一等星の輝きに導かれて。
【西か東かのどこか、あるいは双方のどこかにて】
壮年の騎人が、青年の騎人に声をかけた。
青年はうつむき、青い顔をしている。
「どうした?浮かない顔をして」
「ああ、先輩。いまさらですけど怖くなってしまって……」
「なに、大丈夫だ。星の導きは示されただろう?」
「ええ。ですけど、勝敗までは示してくれません。それにどうやって進めばいいかも……」
「それなら、地の一等星に付いていけばいいのさ。ここに在るってことは、あのヒトの輝きを認めたんだろ?」
青年の脳裏に、いつかどこかの思い出がよぎった。
確かに、輝いていた。あの輝きに憧れ、そしてここにいるのだった。
「ああ、そういえば……そうでした。なんで忘れてたんだろう?あんなにも大事なことだったことに……」
「足下に必死すぎただけさ。いまこそ顔を上げて、星をみようじゃないか」
「……ありがとうございます、先輩。もう、迷いはありません」
「よし、いい顔だ。なら早くお前の従者達に顔を見せてこい。随分と心配してたぞ」
「はい!」
「忘れるな!従者達にとっては、お前が唯一の導星だってことを!」
「はい!わかりました!」
青年は従者たちのもとへ駆け寄り、手を振り上げ、意気を示す。
従者達の顔から憂いが祓われ、歓声が上がった。
【ある視点より】
地に数多の星がきらめく。中でも西と東の二つの星は、ひときわ強く。
いま、二つの星が流れてゆく、一点に、数多の星を引き連れて。
地の星々は一点にて火花を散らし、ますます輝きを増していった……。
- 星は善悪や感情の理念なく道を求める者に等しく行く先を示すものということでしょうか -- (名無しさん) 2013-08-30 18:04:22
最終更新:2013年08月30日 18:02