昔々の話。
鳥の神が飛んでいた。目の眩むほどに大きな鳥だった。
鳥の神はとある山を目指して飛んでいた。
その山からは、カーンカーンと美しい音が鳴り響いていた。
鳥の神は音が何であるかを知りたがったのだ。
鳥の神は星の神に問い、星の神は答えた。
『つるぎを、きたえているんだよ』
『つるぎ?何じゃいそれは?』
『かたく、するどく、かがやくもの』
『儂の爪よりか?』
『うん』
『まさか!』
鳥の神は大笑した。
『テミラン、それはどこにあるんじゃ?』
『あぶないから、いかないで』
『大丈夫じゃよ』
『……あぶないよ』
『のぞむところじゃ』
『……あそこ』
『礼を言うぞ!』
鳥の神は星の神の示した所へと一直線に飛んでいった。
星の神の示した所には、一つの小屋があった。確かにそこから、カーンカーンという音が響いていた。
鳥の神は森の中から小屋を伺っていた。聞き耳を立てていた。
この美しい音に聞き惚れていたのだ。
いつしか音は止み、そして小屋から鍛冶の神が出てきた。
手には、堅く鋭く輝くものがあった。剣だ。
あれこそ剣か、と鳥の神が身を乗り出したそのとき、剣は無造作に振るわれた。
一太刀で、鳥の神の目の前の木と風とが次々に切り裂かれていく。
危ないと悟り、鳥の神は飛び立つ、しかし間に合わず、悲鳴が天を裂いた。
鍛冶の神は完成した剣を見た。まあまあの出来である。
試しに振るってみると眼前の木々の全てが切り倒された。ついでに悲鳴も聞こえたがどうでもいい。
『こんなものか。つまらん、飽きた』
鍛冶の神は剣を投げ捨てる。剣はあまりの切れ味に地を切り裂き続け、どこまでも落ちていった。
ふと、鍛冶の神が首を捻る。
いつのまにかに新たな権能が、自分に移動していることに気がついた。
『ふむ、この権能は……魂のものか!おお、面白そうだ!よし!よし!よし!次は人形でも捏ねてみるとしようかな!』
鍛冶の神は大いに喜び、自らの鍛冶場に戻っていった。
『ひ、ひいぃ、危ないもんじゃのぅ…!もうこりごりじゃ…!』
体をいくばくか失ってしまったが、神は死なない。ただ力を弱める
一回り小さくなった鳥の神は、ふらふらと飛んでいた。
『ん?』
鳥の神が目を見開く。なんとも不可思議な匂いがしたのだ。
『なんじゃろうかのう!気になるのぅ!』
鳥の神は翼で空を強く打ち、羽ばたき、匂いの元へと飛んでいった。
- 頼まれると断れない星神が可愛らしいですね。前作との繋がりも面白い。鍛冶神の徹底した没自分観の神となりはものつくりの究極みたいですね -- (名無しさん) 2013-08-30 18:30:20
最終更新:2014年07月25日 22:22