【とあるごっずの有閑日和】

 ここはジャパンはトーキョー23区内某所、割かし大きな都心のアミューズメントスポット。
 今日も今日とて、数多くのゲームがお互いの音も聞こえぬほどの音響を唸らせて絶賛稼働中である。 
 そんな中で、ひときわ大きな喧騒があった。

「にゃっはっは! ヌシらも大したことないのぉ! ほれほれ、このままじゃとわらわたちが『ぎゃくと』を倒すまでこの台は空かんぞよ?」
「うむ」
「それとも・・・そこで負け犬みたいに縮こまって、わらわ達のぷれいが終わるのを待つかの? にゃはは」
 それはあまりにもアンバランスな二人組だった。
 一方は、見てくれはどこぞのご令嬢といっても十分に通じるほどではあるが、態度も口も劣悪な少女。
 もう一方は、年は中年に差し掛かろうかとも、もう少し若いようにも見える、精悍で肉付きの良さ気な男。
「ほれほれどうした? 次にわらわの『むらまさぶらすたぁ』の餌食になりたいヤツはどいつじゃ? にゃふふ~♪」
 少女が座るゲーム機の画面では、少女が操る海賊の頭領を模した風体の鉄巨人が地を駆け空を翔け、相対する鉄巨人を切り伏せ打ち抜き撃破する。
 少女のプレイ画面には、ゲームとしての情報とは別に、「戦神海賊団 大頭領様ミ☆」のハンドルネームと共にいくつかのプレイヤー情報が表示されている。
「ふむ。 誰も挑まないのであれば、我等が『がんだむ』というわけだな」
 男のほうはと言えば、少女の隣で同じゲームに興じている。 男が操る機体は全身黒尽くめに二刀流にて構えた細身の鉄巨人。
 「それガンダムじゃねぇし・・・」という周囲からの冷静なツッコミを聞き流しつつプレイする男のプレイ画面には、「聖神アモン・ラー・ガンダム」のハンドルネームとプレイヤー情報。
 どちらも目を見張る戦跡が、その実力を裏打ちしていた。
「そもそもの、目で画面を見て、お味噌で理解して、次に何をするかを思考して、思考を決定して、手指を動かすための思考をして、思考がお味噌から手指に伝い、手指が動き、レバーやボタンが操作され、入力を『げぇむ』が読み取って、画面に映す。 こんなにもたっぷり暇があれば、わらわならヌシらの考えそうな手など10も20も思いつくわさ」
「・・・むぅ、『とらんざむ』が切れた。 つまらん」
「そんなに『とらんざむ』使いたいなら大人しくリチャージで何度でもザムれる『だぶるおぉ』を使えと言うちょろうに! だぁぁぁっからそんなみみっちぃ理由で勝手に落ちるなっちゅうとろうがぁぁぁ!」
 言っていることもプレイスタイルも滅茶苦茶極まりないのだが、少女は画面を見ることなく隣の男を睨みゲシゲシ蹴りながらも画面上ではきっちりしっかり鉄巨人を屠っている。
「ま、このバカはまぁよかろ。 それはともかく、どいつもこいつもフニャチン野郎ばかりじゃのぉ・・・およ、きおったな、にゃふふ」
「む、試練か」
 画面が半暗転し警告表示、すなわち相対者の登場を告げる。 ややあって、画面は戦闘開始画面に仕切りなおされ、再び戦闘が開始される。

 が、「なんでシャッフル台なのに何回乱入してもアイツら必ずタッグなんだ・・・?」という疑問を捨て置きつつ、乱入してきた相手方からやたらと騒がしいことを除き、結局は変人タッグの勝利にて幕引きとなる。
「ふむ、種無し小僧の分際で『台バン』とはの。 礼儀の何たるかも知らぬ小童には灸を据えてやらんといかんな、ウム! というわけで操作任せたぞよ」
「試練だな。 承知した」
 男が両手で2筐体のレバーを操作しスーパー回避ショーを繰り広げる傍ら、筐体の反対側では
「おい其処の種無し『すとふり』使いども! 割る種も無いくせに『台バン』とはいい度胸だな? ちょっと来やれ、少し説教してやる」
 少女が先ほど対戦で負かしたガラの悪そうな少年らを呼びつけ、便所に連れ込む。

 それからしばしして
「むぅ・・・結局不在の折を狙い撃ちで乱入されて、タイムオーバーで『げぇむおぉばぁ』とはのぉ・・・詰まらぬ」
「これも試練だ」
「ま、礼儀も知らぬ種無し小僧どもも心を入れ替えたようだしの、良しとするか」
 先ほどまでいたアミューズメントスポットを後にして、二人は少し離れたところにある小洒落た飯所で揚げ芋を合計5パックほど貪り食っていた。
「ふむ・・・揚げ芋ばかりでは詰まらぬな。 よし、わらわは肉を喰うぞよ。 ラーよ、試練以外で何か喰うものがあるなら買うてくるぞよ?」
「うむ・・・ウルサよ、揚げ芋の『える』を2パック追加で」
「御主一人で喰えよな?」
 そうは言いつつも、買うもの買って戻ってきたウルサは、ラーと共に重ね肉挟みパンと揚げ芋を貪り食う。
「ところでウルサよ、ひとつ頼まれて欲しいのだが」
「なんじゃ? わらわとヌシのよしみじゃ、何でも言うてみぃ」
「暇つぶしの余興程度で構わぬのだがな。 ひとつ、コレと手抜きして一本やってくれんか」
「ふむ、ソレか。 ヌシも今回のソレにはやけに御執心じゃの?」
「うむ、試練だからな」
「そうか、試練ならば詮方ないの。 ならば、代わりに今度活きのいいトコ少し見繕ってもらおうかの?」
「心得た」
「そうじゃ、手抜きし間違えてずんばらりと殺ってしまっても、問題なかろ?」
「うむ、試練だからな」
「流石ヌシ、話せるのぉ! さて、んではそろそろ紅玉狩りと洒落込もうかの」
「承知した」
 二人の火竜夫婦狩りは、あまりに長居しすぎたために店員に退席勧告されるまで続いたという。

EXVSやらない人には分かり辛い中身で申し訳ない・・・



  • どんな力を持った封印などよりも神を虜にして留めておくことのできるゲームは人類の誇れる武器ですね -- (名無しさん) 2013-09-29 17:55:00
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最終更新:2013年09月29日 17:51