【けっぱれ!とつくに幼稚園】

どこかにあるかも知れない(あったかも知れない)そんな幼稚園。

「あー!もるてちゃんが年長さんのさみゅらおねーちゃん泣かせたー!いけないんだー!」
子供の鳴き声と叫び声が聞こえる。

「…ふん!さみゅらが僕の言うこと聞かないから悪いんじゃないか!」
そう言いながら泣いているさみゅらの前でふんぞり返るもるてちゃん(3才)
駆けつけた保育士の金魚先生が、シクシクと泣くさみゅらを慰めながらそんなもるてをいさめる。
「もるてちゃん、他の子を泣かせてはいけませんよ?みなさん、一体何があったんですか?」
金魚先生は周りの当事者二人だけでなくみんなにも事の経緯を聞く。
「これは試練だ!」
「知らん。忙しい(芸術的な砂団子を作りながら)」
「おう!俺も嫁に膝枕してもらうので忙しい…グェッ!(嫁に肘鉄を入れられた)」
「お腹が減ったわ~お三時はまだかしら?今日のおやつはみたらし~」
「おい!あぐーる!喧嘩見て興奮したから乳揉ませろ」
……君ら先生の話聞いてた?

そして、わいわいと騒ぐ神様幼児達の横で黙々と砂場でハニカム構造を作る石神。
ぶーん…グシャ!それをフラクタル図形の足跡をつけながら踏みつぶす嵐神。
そして天を仰ぐ石神の横で我関せず光合成をする盆栽サイズの樹神…

「…もるてが死んだインコのぴーちゃんを、かってに死徒として生き返らせようとしたから…さみゅらが止めて…それでおこったもるてとけんかになったの……」
唯一、園内を見渡す目を持つてみらんが事の経緯をわかりやすく教えてくれる。
「フフン♪僕が死徒として蘇らせたら死徒としての素晴らしい力が与えられるだけでなく、僕やさみゅらの言うことを聞く忠実なインコになるんだよ?インコも光栄だろ?」
ふんぞり返ってそう言うもるてちゃん。
「もるてさま…私そういうの望んでませんしインコが可哀想です」
さめざめと泣きながらサミュラが言う。
「もるてちゃん?いくら神様だからってそう言う風に生き物で遊んではいけませんよ?」
金魚先生もメッ!と言いながらもるてちゃんをたしなめる。

「…ふんっ!二人共、僕を止めれるもんなら止めてみろよ!!」
二人の反応が楽しいのかノリノリでぴーちゃんを死徒化しようとするもるてちゃん…と、そこへ
「おや、何かあったのですか?金魚先生」
「あ、園長先生!」
騒ぎを聞きつけて園長先生のれぎおんがやってきた。
「あ、れぎおんだ…」
「れぎおんが来たな…」
「帰れ!クソ野郎」
「そうだそうだ~」
園長先生は神様幼児達に大人気です。 …嘘じゃないよ?

額に青筋を立てながられぎおんは金魚先生に事の次第を聞きます。
カクカクシカジカで…
「なるほど…またですか?もるてくん」
「ハハン?キミら弱小神風情が死神である僕に意見かい?」
もるてちゃんは園長先生のことを舐めきっています。
園長先生はにっこり笑うと
「おやおや…我らでは君を叱るのに役不足ですか?…では、この方にご登場頂きましょう!」
いきなりマイクを取り出したれぎおんがどうぞ!という風に道を開ける。
そこには…

「わふっ!」
黒い子犬がよちよちともるてちゃん達の方へ向かって歩いてきます。
「あ、先代だ!」
「先代来たな!」
「可愛いわね~」
「俺の嫁の方が可愛い…ゴアッ!?(顔面に膝を入れられました)」

黒い子犬はわふわふと鳴きながら尻尾をふりふり、よちよちともるてちゃんの方へ向かいます。
泣いていたさみゅらと金魚先生はその愛らしさにメロメロです。
しかし、もるてちゃんはというと
「(ダラダラと汗を流しながら)な、何しに来たんだい兄さん!兄さんはもうお役御免だろ!僕がここで何しようと関係ないじゃないか!!」
黒い子犬はそう言うもるてちゃんをじっとつぶらな瞳で見た後、精一杯きりっとした顔で一声

「わふーーー!!」

と鳴きました。

……あまりの可愛さのためみんなしばらく沈黙していました。
そしてしばらくの沈黙の後…
「う、うわーーーーーーん!さみゅらーーー!兄さんが僕をいじめるよーーーーーー!!」
「「「えっ!?」」」
もるてちゃんが取り乱してさみゅらに抱きつくのをみんなはあっけに取られて見つめていました。
さみゅらは慣れているのかよしよしともるてちゃんを慰めています。

そして一仕事終えて満足した顔で鼻をフンフンと鳴らす黒い子犬の後ろでは、さわやかな顔をして「一件落着ですな!」とまとめに入った園長先生と
何となく腑に落ちない金魚先生が「これでよかったのでしょうか?」と悩んでいるのでした。


【番外編:幼稚園の隣の中学校にて】
「今日は授業中ずっと上の空でどうしたの?アニーたん。
いつもは教科書や黒歴史ノートに一生懸命落書きしてるのに今日は全然だったじゃない。ん?どうしたか彪おじさんに言ってみ?」
昼休みに中庭で彪がいつもにもまして様子がおかしいアニーにその理由を聞いてみた。
「落書きじゃないわよ!あれは高貴な私の作品よ!!後でお父様に頼んで出版するの!」
自分の妄想の産物を落書き呼ばわりされて大きな口を開けて怒るアニー。
その口にソーセージを突っ込み黙らせる彪。
「どうよ?アニーたん肉の棒の味は?おいしい?」
「…?おいひいけど?ただのほーせーじよね?」
彪の言ったことがよく分からずスコンと怒りを忘れるアニー。

「んで、今日上の空だったのは何があったのよ?アニーたん」
ああ、それね…というと食べていたソーセージをゴクリと飲み込みいつになく真面目な顔をして彪に向き直ってこう言った。
「昨日園児バスジャックというのをテレビで見たの…」
「…はい?」

TO BE CONTINUED?


  • 本質をそのままに小さくしたら何故かこんなに賑やかになるとは思いもよりませんでした。何だかんだで上手くやっている金魚先生とエロガッパ並みの扱いのレギオン先生がいい味出ていました -- (名無しさん) 2013-11-06 17:25:24
  • 小さくなっても神々の関係はあんまり変わらなかった!ピラミッドは崩れない -- (名無しさん) 2014-08-09 00:05:02
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最終更新:2013年11月06日 17:23