鋼鉄がひび割れ引き裂かれるけたたましい音が獰猛な獣の声と共に霧の海に響き渡る
常識を遥かに超える力で軍艦が引き千切られ噛み砕かれる。
それを彼らはただただ無力に凝視することしかできない
彼らは光の向こう側で怪物に遭遇した。
「あの時のことですか?えぇ、よく憶えていますよ」
そう私のインタビューに応じたのは当時在日米軍佐世保基地に所属していたピーター・ジャクソン氏
1991年1月17日に当時佐世保を母港としていた第7艦隊強襲揚陸群にある作戦が通達された。
その内容とは神戸沖に出現した謎の発光現象の日本政府ならびに自衛隊との共同調査というもの。
長期の取材交渉の結果1994年9月、現在は米国アリゾナ州で暮らす当時第7艦隊強襲揚陸群に所属する軍曹だったピーター・ジャクソン氏に当時のことを話せる範囲で話してもらえる機会を得ることができた。
ピ「17日に日付が変わってすぐに、私の所属する部隊の指揮官から召集がかかり、休暇を取っていた私も含めてほぼ全ての人員が集められ、そのまま長崎から神戸まで移動することになりました」
茅「そして翌18日の深夜にあなたの部隊は神戸沖に到着したわけですね」
ピ「そうです。自衛隊とはすでに日米両政府間での共同作戦の了承を得ていたので、我々は装備を整えて光の柱の周囲の調査を始めました」
茅「冷戦時代に開発された防護服が支給されたという話もありますが本当でしょうか?」
ピ「防護服が配られ、我々がそれを装備して調査したというのは事実です。何が起き何が発生してるかも不明な場所を調査するのですから当然の対応だったと思います」
茅「光の柱に貴方の所属する部隊の船が突入することになったのはどういう経緯からでしょう?」
ピ「トラブルです。細かく注意していたのですが船のスクリューに魚網か何かが絡まり一時的に操舵不能になりました。そしてそのまま潮流に流され光の柱の中に入ってしまったんです」
茅「トラブルが同時に3隻の船で発生した?」
ピ「・・・そういうことです」
茅「・・・なるほど、わかりました。この話はここまでにしましょう。そして光の柱の中に入った貴方達は最初の異世界接触をすることになりますね」
彼は明らかに嘘をついていると私は感じましたが、ここでその部分に言及するのは彼の機嫌を損ねてしまうと判断し、私はインタビューを続けることにしました。
ピ「えぇ・・・あの体験は今でも鮮明に覚えています」
茅「何があったんですか?」
ピ「霧の海でとてつもないモンスターと遭遇したんですよ」
茅「モンスター?それは一体どんなものですか?」
ピ「鋭い牙が生えそろった巨大な顎、全体の姿は巨大すぎて把握できませんでした。とにかく巨大な怪物が私たちを待ち構えていたんです」
茅「当時の神戸沖は多少波は荒かったが霧などは発生していなかったと記録されています。しかし、あなたの船が光の柱に入った後に見たのは濃い霧の海だった?」
ピ「そうです、光の中から脱出して視界を取り戻した我々が見たのは霧の立ち込める海と、我々のすぐ近くに居た巨大すぎる怪物の姿でした」
茅「貴方の船もかなり大きな船だったと資料を見て思ったのですが、その怪物はその船と比べても相当巨大だった?」
ピ「えぇ、私が確認できるだけでも我々の乗っていた船全てより巨大でした」
茅「1993年にアメリカ上院に提出されたこの時のアメリカ軍の損害報告書によれば不測の事態に陥った3隻の船は異世界存在と交戦し3隻のうち2隻が大破沈没、残る1隻も各所を破壊され1992年に解体処分が決定したとありますが、この不測の事態とは何があったのですか?」
ピ「誤射です」
茅「誤射?何に向かっての?」
ピ「怪物に向かってです」
茅「それはつまり、貴方の部隊の誰かが怪物を攻撃した?しかもそれは本来の意思とは違う形だった?」
ピ「そうです。さすがにあの状況では瞬間的にパニックに陥って銃の引き金を引いてしまったのでしょう。いくら訓練をしても想定外の状況が発生するとそうなる者はいます。しかし、その時の私にはその発砲音はまるで死刑宣告のように聞こえました」
茅「その発砲を引き金に貴方の部隊は怪物に向かって攻撃を行ったのですね?」
ピ「そうです。一種の狂騒状態に近い状態に陥っていたと今では思います。しかし怪物にこちらの攻撃が通じているという感じはまったくありませんでした」
茅「そして、どうなったのですか?」
ピ「こちらの攻撃で敵対する存在だと認識した怪物に瞬く間に3隻のうち2隻の船を破壊されました。巨大な牙とさらに巨大な爪に船が噛み砕かれ握りつぶされ引き裂かれる光景と音は今でも目と耳にこびりついて離れません」
茅「圧倒的ですね」
ピ「圧倒的でした。鋼鉄製の船がまるで紙細工のようにいとも簡単に破壊されてしまう。本当に悪夢とはまさにあの光景のことです」
茅「しかし、公式記録によればこの事件での死者は0ですね。重軽傷者は多数とありますが」
ピ「そうです、まったく信じられないことですがあれだけの破壊が起きたにも拘らず我々は誰ひとりとして命を落としていません。これは本当に奇跡だと思います」
茅「たしかに」
ピ「しかし、沈む船からなんとか脱出し波間を漂うしかなかった私達をその巨大な怪物は船の残骸ごと飲み込もうとしました」
茅「ほぉ・・・それで」
ピ「我々はすでにその怪物の圧倒的な力に抵抗する力を奪われていたので、私も飲み込まれると思った瞬間神に祈り家族のことを思い浮かべて死を覚悟しました」
茅「しかし、貴方と貴方の部下は助かった。誰一人犠牲になることなく光の向こう空戻ってこれた。何があったんです?」
ピ「女性です。一人の女性が我々の前に姿を現し怪物を止めたのです」
茅「・・・女性?」
ピ「はい、とても美しい日本人のような顔立ちをした女性でした。
茅「その女性は突然貴方達の目の前に姿を現した?」
ピ「そうです。それだけではなく彼女は足場も何もない水の上に立っていました」
茅「その女性は怪物の前に現れて何をしたのです?」
ピ「怪物を殴り飛ばしたんです」
彼の言葉を日本語に訳してくれていた通訳が困惑し私への通訳が遅れる
茅「もう一度聞きますが、その女性が巨大な怪物を殴り飛ばしたんですね?」
ピ「そうです。これは事件後の調査でも話したことで、その時も私や私の部下は散々叱責されましたが、全員が同じ証言をしていることです」
茅「なるほど・・・話を戻しますが貴方の前に現れた女性というのは我々のような大きさだったのですね?」
ピ「そうです。すぐ目の前に現れたので距離感がおかしくなって大きさを間違えたということはありません」
茅「わかりました。ではその女性が怪物を殴り飛ばして貴方達を助けたと、それからどうなったのですか?」
ピ「我々も何が起きたのか理解できず呆然としていると、女性が我々のほうに振り返りました。彼女は我々一人一人の頭の中に語りかけてきたのです」
茅「貴方の頭の中に直接?それはつまりテレパシーですか?」
ピ「私は、そういうものに詳しくないのでたぶんとしか言いようがありません」
茅「なるほど、その女性はあなたになんと語りかけてきたのでしょう?」
ピ「短く「ごめんなさい」と、それだけです」
茅「それだけですか」
ピ「えぇ、それだけです。その直後に我々は突然浮遊感に包まれ意識が途切れ、気がつくと辛うじて沈没することを免れた船に乗って光の柱の外に浮かんでいました。その後のことについては日本で報道されていた通りです」
茅「なるほど・・・今日はいろいろと答えていただきありがとうございます」
ピ「えぇ、久しぶりにナイスジョークと笑わずに私の話を聞いてくれる人にこの話をできて良かったです
茅「この記事ができたら英訳したものを送らせてもらってもいいでしょうか?」
ピ「もちろんです。楽しみにしています」
こうして私の彼へのインタビューは終了したわけだが、私はなぜか彼が全てを話してくれたとは思えないでいる。
もちろん軍事機密の点などから話せないこともあるだろうが、それだけではない別のひっかかりを感じている。
彼は嘘はついていない、だが本当のことも話していない、私はどうしてもそう思えてならない。
1991年1月16日のあの光の柱の向こう側で一体何が起きたのか、私は引き続き調査していこうと思う。
月刊アトランティス1994年11月号 茅野澤雄一郎取材ルポより抜粋
- 本当にそう動いたのではなかろうかと思える軍のリアルさと乙姫のインパクトと奥ゆかしさがたまりませんね -- (名無しさん) 2014-04-27 17:45:32
- 圧倒的破壊力とそれを勇める圧倒的乙姫力を一度に目の当たりにしてしまうと完全白旗するしかないじゃないですか -- (名無しさん) 2014-05-29 22:48:00
最終更新:2012年04月09日 23:16