奇妙に複雑にカラクリ。その横に
ドワーフ二人。
「友よ、喜べ、完成したぞ」
「うむ、自動走行車の完成だ」
一人が紐を引くと、前方に並ぶパイプの蓋が一斉に開く。
「友よ、見ろ、風が惹かれ流れ込むぞ」
「うむ、『風精大歓迎!』『こっちの水は甘いぞ!』『超甘い!』と我らで刻んだな」
複雑に組み合わされたパイプがガタガタと音を立てる。
「友よ、聞け、風が迷宮回路を走り加速しているぞ」
「うむ、『先着限定!』『早い者勝ち!』と我らで刻んだな」
パイプは合流していく、後方の一つ太いパイプへと。
「友よ、来るぞ、精霊が感情を、力を爆発させる。すなわち爆圧が気筒で変換され、推進力となるのだ」
「うむ、『バカめ!騙されたな!』と我らで刻んだな」
瞬間。轟音。大爆発。煙が晴れれば、煤け咳するドワーフ二人と床の大穴。
「と、友よ、失敗だ、存外に精霊の怒りが大きい。期待を持たせすぎたのかも知れん」
「う、うむ、次は『超甘い!』を『まあまあ甘い…』に変えてみようか」
「友よ、興味深いものを譲りうけた」
「ほう、ただの木彫りにしか見えないが」
テーブルの上に置かれたのは、つたない木彫りの龍だ。
「友よ、聞け、なんでもこの木彫りを砕くと洪水が起こるそうだ」
「ほう、しかし、にわかに信じがたいな」
「友よ、ならば試そうではないか」
「うむ、いい考えだ」
振り上げられるハンマー。蹴飛ばされる二人。下手人はたまたま遊びに来た
ノームだ。
「な、な、な、なにやってるんですか!?」
「「実験だが?」」
「~~~~~~~~~~~ッッ!!」
再び蹴飛ばされ、しかも龍の木彫りは強奪とあいなった。
「友よ、泣いていいか? 理不尽な目にあったのだ」
「うむ、気にするな。貴奴が情緒不安定なのは常のことだ」
「んー……?動かないですね……」
ノームが一人腕を組み首を捻る。対面には一回り大きいノーム人形一つ。
「何が悪いのでしょうかね?」
それは突然。ばたん!と音響。開いたのは床。
「呼ばれて」「飛び出て」
「な、な、な……!?」
「友よ、感激に言葉もないようだ」
「うむ、ひそかに掘りすすめた甲斐がある」
「私の家に何してるんですかあんたたちはーーー!!!!」
大音声に部屋が震えたが、こんなこともあろうかとドワーフ二人は耳栓をしていた。
「掘削精霊装置の実験、……もとい」
「お前の窮状を見かねて助けに来たのだよ」
「……専門外のあんたらに何が出来るって言うんですか」
「実は異界の知識を手に入れてな」
「うむ、彼のオーベルシュタインが青年の頃極東にて習得した秘儀である」
「なんですそれ。……ま、いいですよ。好きにしてください。どうせ手詰まりですし……」
「友よ」「うむ」ドワーフ二人ノーム人形の前に立ち。
「「斜め45度にて」」「打つべし」「へ?」「打つべし」「え?」「打つべし」「な…」「打つべし」「な、」「打つべし」
「何をするだーーーー!?」閃く蹴り。吹き飛ぶドワーフ。
「信じたあたしが、あほでした………」ノームうなだれ、
「どうかしましたか、マスター」しかし差し伸ばされる手がひとつ。
「ありがとう。でも今はもう何も………って、動いてますよっ!?」
「「いえーい」」手を打ち腕組み合わせるドワーフ二人。
「そんな、アホなこと……。で、でも、よかったよーー」
感極まって泣きだすノーム一人。
歌って踊るドワーフ二人。
首を傾げる人形ひとつ。
今日もここはにぎやかである。
「友よ、貴奴の足音が聞こえるか」
「うむ、伝声管に異状なし」
「友よ、貴奴が扉を開けるぞ」
「うむ、扉の運動がルーンに最後の一画を加えたな」
「友よ、貴奴が前方に飛んだぞ」
「うむ、棚を倒したな」
「友よ、倒れた棚より零れる墨汁が今こそ水のルーンに導かれる」
「うむ、新たなルーンが書き出され火の精が集まりゆく」
「友よ、熱燗だ」
「うむ、うまい」
扉の開く音。
「すみません、マスターの所在をご存じではないでしょうか?」
「自動人形よ、そこに埋まっているから好きに掘り出していくといい」
「うむ、みやげにこの酒もどうだ」
「はい、ご丁寧にありがとうございます」
自動人形はノームを担ぎ、我が家へと足を向けた。
(……ふぅ、手のかかるマスターです)
ドワーフ二人、壁から突き出る管に顔寄せ耳を澄ませている。
「友よ、なかなか愉快なリズムだな」
「うむ、素晴らしい音色である」
そこへガチャリと扉の開く音。神妙な顔をしたノームが一人と一つ。
「「おや、こんな朝から何の用だろうか」」
「ちょっと……、そう、ちょっと挨拶に来たんです」
「殊勝で結構」「うむ、這いつくばって礼を尽くすことを許そう」
「あ、あんたらは、こんな時まで……!」青ざめさせた顔を反転赤らめ、震えるノーム。
「「まあ、それはそれとして、こちらに寄るといい。面白い音楽が聞こえるぞ」」
「えー?なんですか?
……あ、すごい。素朴で楽しげで、いいじゃないですか。このハイホーハイホーというリズムが、……って、ハイホー!?」
「友よ、貴奴め反応が遅いぞ」
「うむ、疲れているのだろうかな」
「に、に、逃げなきゃ!どこに!?わかんないです!?」
「友よ、歌声が直に聞こえてきたぞ」
「うむ、ノックも聞こえてきたな」
「お、お、終わりですー!!」
「「なあに、こんなこともあろうかと」」
ドワーフ二人が紐を引くと、ぱかりと開く床の大穴。
悲鳴が一つ尾を引いて、ぼちゃんと水音四つ立つ。
濁流の轟音にまぎれ、ノームは遠くに爆音を聞く。
- 精霊から動力への仕組みが面白いですね。ドワーフが創造に秀でた種族になるのも頷ける好奇心ヒゲをも爆発させる話でした -- (名無しさん) 2014-07-20 17:25:52
最終更新:2014年07月20日 17:24