【六合散華】

 六合散華


 低く垂れ込めた雲が、地を覆い尽くすほどの軍勢が焚くかがり火に照らし出されている。
 雲は血煙のように赤く揺らめきながら、徐々に夜の色へと変わっていく。くしくも、その色はその下ではためく無数の軍旗に一致していた。黒一色の旗色は、すなわち大延国皇帝が自ら率いる親征軍であることを意味している。国中から徴用された兵士たちは大陸を縦断し、南方に依拠する蛮族たちを次々と平らげていた。だが兵の消耗も激しかった。旗は裂け、汚れていかにも力ない。
 そんな旗の中にあって、汚れ一つない旗の立ち並ぶ場所がある。皇帝の陣屋である。
 その中心にしつらえられた幕屋の中では、一人の狐人が最期の時を迎えつつあった。
 男は六合霊皇と呼ばれていた。
 大延国の皇帝であるということを抜きにしても、男は天地の全てを統べるだけの力をその身に宿していた。男が命ずれば海は裂け、大地が割れた。何もないところに大火を起こし、大風に乗って瞬く間に万里を渡った。輝きと暗闇の両方を制し、従うものにはとめどない恵みを、逆らうものには容赦の無い滅びをもたらした。万有を意志一つで自在に操るその力は神にも迫るものだった。その称号は六合、すなわち地水火風明暗の全てを制したという意味を持っていた。
 だがそんな霊皇も、老いに対してだけはなす術を持たなかった。
 寝台に横たわる男が一つ息をつくたびに、命が容赦なくその体から流れ出ていった。かさかさに乾ききった身体は鳥の骨のようにもろく、今にも崩れんばかりに思われた。
 そんな骨にこびりついた芥のような肉体に閉じ込められていながら、しかし、霊皇の精神はいまだに熱く燃え盛っていた。
「――誰かある」
 男のかすれた呼びかけに応えるように、立ち現れる姿がある。輝く鎧に身を固め、兜を脇に抱えた老虎人。その表情は沈痛そのものだが、霊皇は全く頓着しない。弱弱しい中にも確かな権威を感じさせる声音で、霊皇は虎人に問いかけた。
「報告せよ」
「申し上げます。まもなく先行させた使者が戻る頃合にございます。まずは向こうの出方を探り、然る後に今後の策を」
「手ぬるい」
 ただの一言でありながら、霊皇の言葉は炎の鞭のように熱く、氷の刃のように鋭い。老練さを鎧のようにまとった虎人さえもがたじろがずにはいられぬほどである。憎しみと苛立ちの滴る舌で、霊皇はなおも言葉を継いだ。
「叩き潰せ」
「しかし」
「叩き潰せ!」
 幕屋の中で、無音の何かが爆発した。張り詰めた大気はにわかに濃度を増し、まるで飴のように虎人の体に絡みつく。虎人のめぐらした視線の先で、虚空から半透明の影が溶け出していた。風の精霊――本来ならば自由に空を駆け巡っているはずの体は硬くこわばり、瞳は煙のごとくに濁って意志の輝きを失っている。寝台に横たわる霊皇の力によるものだった。霊皇の精霊に及ぼす支配力は、常人のそれをはるかに越えていた。
 霊皇の怒りを受けて、風精が虎人の体をぎちぎちと締め上げた。呼吸すらままならぬ状況の中で、それでも虎人は屈することはなかった。膝をつき、懸命に意識を維持しながら、虎人は搾り出すような声を上げた。
「どうかお考え直しください。我々は疲弊しています。これ以上の進軍は兵を徒に死なせるだけです」
「それがどうした」
 霊皇の声は虚ろだった。深い穴の奥底で得体の知れぬ怪物が上げるうめき声のように、霊皇の言葉には絶望が滴っていた。
「兵を死なせるのが将軍たるお前の仕事ではないか。さあ行け、死を振りまいてくるがいい」
 不意に、老虎人の拘束が緩む。倒れるところをどうにか踏みとどまった虎人は息も絶え絶えに後ずさると、逃げるように霊皇の前から去っていった。
 独りとなった幕屋の中で、霊皇はまたも最期に至る一息をついた。
 霊皇は怒りに支配されていた。渇望に身を焦がしながら、何によっても満たされぬことを知っていた。
 金羅の子として生れ落ちたその時から、霊皇は全てを得ていた。皇帝の地位を約束され、卓越した知性と精霊をひきつける力は道を阻むものをたやすく退けた。栄達の道を歩み、賞賛と崇拝とを浴びながら、しかし霊皇の心は虚ろだった。得体の知れぬ不安が霊皇の中に巣食い、底知れぬ穴を穿っていた。心に開いた穴を埋めるために、霊皇は征服のための戦いに身を投じた。彼の意に従う精霊たちの力を持ってすればたやすいことだった。最強の精霊使いたる霊皇の率いる軍勢は延に逆らうものたちを容赦なく打ち倒した。
 そうして霊皇は皇帝になった。
 征服は苛烈さを増し、戦のための戦にありったけの国力が投入されて国は疲弊していった。生涯、霊皇を止めるものはいなかった。神である金羅ですら、霊皇の所業の前には口をつぐんだ。南蛮を平定するために国の男児全てを兵士として徴用すると決めたときですら、誰一人として逆らうことは出来なかった。
 そんな霊皇の命の火が燃え尽きようとしていた。
 寝台に横たわったまま、霊皇は涙を流した。深いしわの刻まれた喉から声なき声がほとばしった。戦いに明け暮れた人生の果てに、何一つほしいものを手に入れられなかったことを霊皇は知ってしまっていた。満足に動かぬ手を伸ばし、視線をめぐらせて傅いている精霊たちをにらみつける。無言の命令に精霊たちは自らの命を絶って弾けとび、だがその光景も霊皇を全く慰めることはない。闇雲に死と滅びとを願いながら、霊皇の心は絶望に飲み込まれていった。人の身を超えた力をもつが故に、霊皇の絶望もまた、人の心では持ち得ない深さを具えていた。
 その身に宿った神の力が、まるで心臓の鼓動のように脈打った。霊皇の体から流れ出した命は黒い輝きとなって霊皇を取り巻き、爆発的に膨れ上がってあたりのもの全てを飲み込んだ。
 そうして、霊皇が最期の息をついた時、そこには一体の魔物が生まれおちていた。


 巨獣。
 見る間に膨張するその体には精霊が編みこまれていた。霊皇の支配力によって意志を奪われた精霊たちを取り込み、巨獣は山ほどもある自らの体を織り上げていった。体を作りながら、巨獣は苦しみにのた打ち回っていた。その足元で、多くの兵士たちが跡形も無く踏み潰された。将軍たちは兵を組織して攻撃を試みたが無駄だった。降り注いだ矢の雨は、巨獣をとりまく風の壁がたやすく吹き散らした。突きこんだ槍はへし折れ、逃げ回る兵士たちを巨獣は口から吐いた火炎でもって焼き尽くした。巨獣が足を踏み鳴らすと地割れが生じ、無数の兵士たちを飲み込んで押しつぶした。どこからとも無くあふれ出した奔流は兵士たちに襲い掛かり、体を握りつぶしてどす黒い大河を生み出した。収束された光が兵士たちを消し炭に変えたその傍らでは、闇にまとわりつかれたもの達が音もなく死を迎えていた。精霊術師たちが総力を結集して呼びかけても、精霊たちは耳を貸そうとせず、逆に精霊術師たちに襲い掛かる有様だった。大延国最強の軍勢が、巨獣になすすべもなく蹴散らされた。
 兵士たちを砂のように吹き散らしながら、巨獣は啼き声を上げた。揺れ動く大地が軋むように、全てを飲み込む濁流が唸るように、燃え盛る炎がはぜるように、烈風が大気を切り裂くように、巨獣は吠えた。ぎらぎらと耳障りな啼き声には、夜の闇より尚暗い何かがみなぎっていた。その声は兵士たちの心をもぎ取り、精霊の力をかき乱して天変地異を引き起こした。まさしく、この世の終わりを告げる声だった。
 誰もが終焉を予感したそのときだった。
 その鳴き声に呼ばれるように、一筋の火が戦場へと降り立った。
 金色に輝く炎がほどけ、中から狐人の女が現れた。豊かな毛並みの九尾がばさりと広がり、放射された神気は荒れ狂う土ぼこりを圧して吹き払った。あたりの惨状を見回すほどに、その顔立ちは苦渋に満ちてゆがむ。すっと伸ばされた指が、そばに倒れていた兵士を指すとその身を金炎が包み込んだ。死の淵にあった兵士の肉体は瞬く間に癒え、あっけに取られる兵士を傍らに出現した仙人が助け起こした。次々と金炎とともに立ち現れた金侍三仙はおのおのが術を駆使して巨獣の攻撃を退け、兵士たちを救出しては安全な場所へと逃がしていく。その様を見守りながら、女は戦場をゆっくりと歩んだ。暴威満ち溢れる死の巷にありながら、女の歩みはいかにも力強い。
 これこそは大延国の守護神、金毛九尾の金羅であった。
 駄々っ子のように暴れまわっていた巨獣は、金羅を眼に留めると動きを止めた。死と破壊が、一時の間息を潜めた。
 巨獣は夢を見ていた。茫漠たる世界に投げ出された赤子の夢だった。赤子は苦しんでいた。寒さ、痛み、空腹、暗闇、そして孤独。絶え間なく押し寄せる不快な刺激に赤子は怒り、苦しみ、恐れを抱いて泣き叫んだ。泣き叫びながら、赤子はひたすらに手を伸ばしていた。赤子が求めているのは母だった。柔らかなぬくもりに抱かれ、乳を与えられて眠ること。ただそれだけを赤子は欲していた。
 そんな巨獣の夢の中に、一筋の光が差し込んだ。暖かな炎。暗黒の世界にあって金色に輝く炎が赤子の注意を引いた。赤子は眼を凝らした。泣き叫ぶことも忘れ、むしろあっけにさえ取られて、赤子はひたすらに炎にむけて這い寄ろうとした。
 巨獣のぼやけきった視界が澄み通った。その視線の先にあったのは金羅の姿だった。しかし、巨獣の目に映っていたのは金羅の姿ではなかった。巨獣が見ていたのは乳母の姿だった。幼き日の霊皇を育てた母だった。頑是無いころから皇帝の子としてむやみに傅き、媚を売り、あるいは距離を置こうとする取り巻きたちの中にあって、乳母だけはただ霊皇を愛していた。だが乳母はある日突然霊皇の前から姿を消した。乳母の行方を捜そうとして、霊皇は初めて精霊達に呼びかけて魔法を行使したのだった。だが乳母の消息は途絶えていた。幼い霊皇が味わった絶望と怒りは、その生涯にわたって彼の身を焼き続けた。
 しかしいま、霊皇の成れの果てたる巨獣の前には乳母がいた。いつしか金羅の姿もまた乳母のそれに変じていた。赤子が母を求めるように、巨獣はゆっくりと金羅にむけて歩みを進めた。金羅もまた、子を抱きとめる母のように両手を広げた。その身を包み込む金炎は次第に火勢を増し、巨獣にも劣らぬ大きさに膨れ上がった。燃え盛る炎に引き寄せられた巨獣は力を失って倒れこんだ。その身を暖かな炎であぶられながら、巨獣は鳴き声をもらした。これまでの破滅を呼ぶ声ではなく、母を捜す子の力ない鳴き声だった。
 歩み寄った金羅の手が、巨獣の毛並みを優しくなでさすった。その眼には涙が光っていた。変わり果てた姿であっても、霊皇は金羅の子であった。それだけに留まらなかった。霊皇を愛し育てた乳母もまた、金羅の分神であったのだ。
 霊皇を産み落としたとき、金羅は直ちに霊皇の異才を見て取った。神の血と、精霊を引き寄せる皇帝の血統が混ざり合って生まれた禁断の力を宿した子に、尋常の人生をおくることなど許されるはずもなかった。金羅は悩み、人の世に投げ込むことをためらった。だが乳母に姿を変えて霊皇を育むうちに、金羅は異常に気が付いた。姿を変じて隠してはいても、霊皇は金羅の子であった。金羅の神力は親子の絆を通して日々霊皇に流れ込み続け、霊皇は次第に変質していった。精霊に愛されるのではなく崇拝され、それどころかその意志さえ思いのままに操る力が霊皇のなかで成長しているのを見て取ったとき、金羅は霊皇と距離を置く決心をした。
 しかしそのことが、霊皇を決定的にゆがめてしまっていた。
 子犬のように声を漏らし、ふるふると震える巨獣の毛並みを撫でさすりながら、金羅はとめどない涙を流した。金羅を押し包んで守る金炎の外では、再び破壊が荒れ狂い始めていた。ほどけはじめた巨獣の体から飛び出した無数の狂った精霊たちの仕業だった。荒れ狂った風が吹き飛ばした小石が金炎を貫通し、金羅の頬を掠めて血を流させた。もはや巨獣は巨獣であることさえ放棄していた。絶望によってこの世に穿たれた滅びの大穴と化していた。
 金羅の手の中に、すっと何かが現れた。うごめく文字の刻まれた一枚の鱗だった。文字と意味の神ルガナンの体から剥ぎ取られたものだった。金羅はほどけ行く巨獣に口付け、子守唄をやさしくくちずさみながら、巨獣の体に鱗をゆっくりと押し付けた。
 一筋の光が走り、たちまち無数に枝分かれして巨獣の体に浸透した。
 巨獣の体が分解されるその勢いが弱まった。巨獣から流れ出した黒い神力の蔓は巻き戻り、自身をその内側へと畳み込んで縮んでいった。巨獣の肉体を構成していた全ての要素が自らを解体していった。ルガナンの鱗に刻まれた躍字の力だった。躍字は巨獣の存在そのものに働きかけ、その土台を打ち崩していった。時をさかのぼり、今ある現実を成立せしめるその因と果とを揺さぶって断ち切った。存在そのものを剥ぎ取られて、巨獣の真名が宙に現出した。かつては霊皇であった巨獣をあらわす真名はいまや薄れ、かすれて消え去ろうとしていた。これこそは神すら手の届かぬ力のなせる業だった。金羅は己が子を消し去るため、求めうる最高の力に頼ったのだった。
 消滅への道をたどりながらなお、巨獣は赤子の夢を見ていた。赤子はいまや満たされていた。乳母の名を呼び、その胸に飛び込んでぬくもりに甘えていた。一度は手に入れながら失った恵みだった。何もかもを失った今、霊皇は全てを手に入れていた。侵食する躍字は霊皇の意識をその存在ごと刈り取り、赤子はついに眠りについた。
 分解されきった巨獣の成れの果てが、光る雪のように輝いて大地に降り注いだ。その一つを掌に受け止めると、金羅はいとおしげに握り締めた。巨獣の欠片は神の力を宿していた。正気を取り戻した精霊達が群がり、宝石のような輝きに眼を瞠った。生き残った兵士達もまた、呆然と降り注ぐ欠片を受け止めて首を振った。
 捕らえた蝶を放すように金羅がぱっと手を伸ばすと金炎が生じ、巨獣の欠片を包み込んだ。降り注いでいた全ての欠片が同様に金炎をまとった。金羅がうなずきかけると精霊達は欠片を取り上げ、てんでんばらばらの方向へと運び去った。風に乗り、あるいは大地の裂け目に姿を消した霊皇の欠片を見送ると、金羅は金炎となって燃え上がり、その場から消え去った。


 こうして、六合霊皇と呼ばれた皇帝の名は歴史から消えうせた。無茶な拡張で獲得した国土を維持することは叶わず、南蛮の反攻を受けて世は大いに乱れた。金羅は全土を駆け巡って混乱にあえぐ民を救うとともに、命令を発して自分の子を帝位に即けることを禁じた。
 延全土に拡散した霊皇の欠片によるものか、これより後に多くの仙人となる資質を備えた子らが自然に生まれるようになったという。金羅は三仙に命じてこうした子供達を弟子として教育せしめ、これによって多くの仙人が生み出されることになったという。それはあるいは、霊皇に対する金羅なりの罪滅ぼしであるのかもしれない。


 (了)



以下に引用するレスを参考としました
これらのレスをした全てのとしあきに感謝します
なお誤まりや不適切な表現などは全て筆者に責任があります


無念 Name としあき 12/05/27(日)01:22:49 ID:XQbuwU.c No.121317239 del  

今考えてるのは六霊大王が老いてもなお遠征を続けた結果大都よりはるか彼方の地で命の灯火が消えようとする状況の話
最初は自分が生まれながらに特別で異質だったことで普通の親の愛情も友情も得ることができず
唯一それに当たる存在は物心つく頃に母だと思っていた乳母
でもその乳母も彼が12の時に亡くなる(ということにされる
そこから彼は自分の中の孤独を紛らわせようと多くの精霊を虜にし、まだ延の皇帝となる前から精霊の力を駆使して次々と延の脅威となる蛮族や怪異を征伐して延を大きくしていった
皇帝になってからはさらにそれは激しくなり
最盛期の延は現在の国土とほとんど変わりない広さにまで一代で拡大
しかし、ただ拡大するだけで支配が追いつかず延の内実はボロボロ
そして、戦いに明け暮れた大王の肉体も老いていた


無念 Name としあき 12/05/27(日)01:30:45 ID:Uiq8ypLs No.121319065 del  

孤独を紛らわせるためだけの戦い
征服してもしても満たされない心
そしてついに生まれた土地よりはるか彼方の辺境で倒れる大王
戦に疲れ果てた兵や将軍は大王の死を惜しむどころか望んでいた
彼はそんな臣下の心の内を見透かし、彼らを遠ざけ
大王が横たわる寝台のある天幕には彼の虜となった精霊だけが侍る
大王の強い力の虜となった精霊は自我さえ失い大王の言うことに従う人形になる
そんな彼らに囲まれて深い孤独と絶望の中で生涯を終えようとする大王はその命が尽きようとする瞬間その深い孤独と絶望は世界と神を憎む強烈な憎悪へとなり

辺境の地に巨大な漆黒の巨獣が生まれ世界の全てを恨むかのように吠えた


無念 Name としあき  12/05/27(日)01:47:31 ID:M0EEoHtU No.121322509 del  

前スレの続きのあらすじの続き
辺境の地で軍団を大地ごと踏み砕き噛み砕き暴れる漆黒の巨獣
それは大王の強い孤独と絶望と憎悪に彼の虜となった多くの精霊が感化され生まれた異世界の歴史上最大の魔獣
世界を恨み神を恨む神の力に限りなく近い破壊の化身
魔獣の出現で統制を失い混乱の極地と化した軍勢は散り散りとなり霧散
魔獣は周囲のありとあらゆるものを破壊するために破壊する
その様はまるで思い通りにいかず八つ当たりをする幼児のよう
しかし、その力はすさまじく金羅の僕たる三人の仙人とて止める手がない

そして破壊の限りが尽くされる大地に延の守護者たる金毛九尾の神が降り立つ


無念 Name としあき 12/05/27(日)01:54:32 ID:Xl2CgKgQ No.121323790 del  

金羅の姿を見た魔獣はまるでそれまでの暴虐が嘘のようにピタリと動きを止める
魔獣の中に残された大王の意識には金羅はあの物心つく時期に母として認識されていた乳母として写る
事実金羅は自分が産んだ子を人の世で育てたいと願いつつも完全に距離を置く決心ができず姿を変え乳母として彼を育てていた
しかし、それも限界があると感じた金羅は乳母としての自分は死んだと偽り幼い大王の前から姿を消した
それが彼の将来にとって正しいと信じて
しかし、現実はその行動が彼を孤独にし、その後の彼の人生を決定付けてしまった
それを深く悔やんだ金羅は自分の手で我が子を救済しようと一つの手段を取る

無念 Name としあき 12/05/27(日)01:58:31 ID:uMIKUDms No.121324541 del  

辺境の地へと降りたった金羅の手には世界の根幹を司る大神にして万物の名を司るルガナンの鱗があった
金羅はこれを用いて世界に干渉し、大王の因果を変えようとする
それは世界の過去現在未来に手を加えること、たとえ神とて許されない領域の所業

無念 Name としあき  12/05/27(日)02:05:01 ID:sJZVDSVM No.121325741 del  

母たる存在を求めて金羅へと近づく魔獣
その魔獣へと蛇神の鱗を突き入れる金羅
その瞬間世界の因果の一部が書き換えられ魔獣は消滅する
魔獣だった存在は無数の光の粒となり辺りに漂う
金羅はこの光の粒一つ一つに自身の力で優しく包み
これを南方大陸全土へと散らばらせた
これ以降南方大陸各地では仙人となる資質を備えた者が多く生まれることとなる



  • 大延国の歴史でそれから先の仙人の力の源として散らばった悲しい皇帝の欠片の話し染み入る。愛と想いのすれ違いが哀しく優しい。金羅の母性がとてもよく表現されていました -- (名無しさん) 2014-08-01 23:55:20
  • 国を統べる皇帝が国を脅かす脅威になるというのは強大な力を持つ国の形ゆえの危うさでしょうか。それぞれの気持ちの強さが最後に結んだ愛が悲しくも切ないですね -- (名無しさん) 2014-08-31 18:59:02
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最終更新:2012年06月27日 12:12