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【私はスライム】

私はスライムである。
能力は汚物の剥離と内包、そして生体細胞の活性化である。
特徴として擬似的な単一細胞生命体であり、どんなに細切れになろうとも能力は損なわれない。
見た目は翠。多少の濃淡はある。
骨は無いので肉質の説明に移る。 寒天、ゼラチン所謂柔らかい。が、肉ほど硬くは無い。
子供の握力程度でも千切る事は可能だが、隣り合わせれば直に融着する。
思考能力は無く、根源は一つ。
私がスライムであり、ここディセト・カリマの地下水窟から水脈を経て地上の娼館の洗浄室の蛇口の元栓までを満たすその全てが、
私ことスライムである。
ちなみに課せられた職務は、地下水窟にて汚水汚物の浄化を行っている亜獣“ムトゥ”のサポートである。
私が水脈の流れを滞りないものにし、固形軽量な汚物なども円滑にムトゥへと届ける。
そして私は、触れた人肌を健康に保つのである。
と、ここまでが所謂テンプレートである。
私の創造主であるネビオラに与えられた全てである。

私が生まれた経緯などを説明しよう。
 『実験事故である。』
単純にして真実。しかし時に失敗は予想外の事象を齎す事もある。
まず実験の主題が“対象を毒まみれにするグロティッカーな蟲兵の創造”だった。
狂った自己理念と狂気じみた常識により、日々の研究や実験を進めるネビオラには、
普通の実験であった。
勝手が違っていたのは…そう、“世界樹の枝”の@@@を****した事だろうか。
…ん? どうやら“藪医者”にも公言して良い事とそうでない事の最低判断は残っていたようだ。
ネビオラが深層心理にて“言えない”事は私も“言えない”。
で、だ。ネビオラは蟲の扱いには特に通じている。 何せ自身も蟲、蟲人なのだから。
どういった経緯で娼館に落ち着いたのかは定かでは無いが、日々の行動を鑑みれば、
私がネビオラの雇い主もしくは上司であれば、出勤初日に解雇通告を出しているだろう。
話が少しそれた様だ。
ネビオラは蟲に関しては得意であるが、植物に関してはそうではない。
一度算数、数学で躓いた子供がそれっきり苦手なままでいる様に、
ネビオラは、理解しようとせずにその場の勢いや勘に任せて植物を取り扱う。
だーかーらー、失敗したのである。
世界樹の枝より採取した※※を融解させ実験蟲体の髄液に化合させる。
その課程で発生する××××を考慮していたかどうかは今は闇の中であるが、
案の定××××が過剰に発生し、蟲体を溶解するだけでは飽き足らず、
周囲に設置されていた実験設備に満たされていた@@@-@まで溶かし、融合してしまった。
その時ネビオラは笑っていた。
魔女の釜を引っくり返した騒動が治まった後に、実験施設のある“阿片窟の地下”を満たしていたのが、
私、スライムである。

最初に行ったのが、その実験施設、一度も掃除をした気配の無い実験施設の洗浄である。
器用に汚れだけを壁や床、設備から剥離させた私を見たネビオラが勢い良く飛び出して行ったかと思えば、
娼館の主であるアクナを引っ張ってきて熱心に話をしていた。
次にアクナが連れて来たのが娼館を護衛する傭兵達である。
彼女達はネビオラの指示の下で私を掻き集め、そのまま全て汚水口に流し込んだのである。
そして私は汚水をムトゥへと届ける水脈を流れ、彼女が鎮座する地下水窟へと辿り着いたのである。

一つ言い忘れていたが、どうやら私は汚物に惹かれる…いやいやいや、引かれる本能があるようで、
一旦汚物を取り込み至福の時を…いやいや、活動を弱めるとムトゥの貪欲な吸引力により彼女の元へと吸い寄せられ、
その身に蓄えた汚物を謙譲するのである。
ちなみにだが、彼女、ムトゥは…ヤドカリ?…イソギンチャク?…まぁ中身は良く分からないのだが、
娼館よりも巨大な厳めしいごつごつとした貝殻から無数の触手が伸びている生物である。
その触手の先端から、浄化による産物である清水が放射されるのである。
その清水は清水のための水脈を通り、ディセト・カリマが誇る大オアシスや娼館へと流れていくのである。
素晴らしい循環システムである。

ここまで来て何ではあるが、私は他者に意思を伝える術を持たない。
四肢も無ければ口も無く、音を発生させる器官も無い。
伝える術がないのと同様に、他者の言葉や音、行動を感知する術も持たない。
神経も無く目も無く耳も無い。
では、今こうしている私は何なのか?と問われれば、
それは意思、“心”というものなのだろう。
ネビオラの一貫した研究主題に、“創造物への心の授与”というものがある。
何故そうするかは誰にも、ひょっとしたらネビオラ本人にも分からない事なのかも知れないが、
実験や研究の最終段階に於いて、その身の魂を引き千切らんまでの凶事を行い、
その成果に心を与えて完成と成すのである。

では何故外と交わる事のできない私が、この様に心の中とは言え講釈をたれているのか?という自問に自答しよう。
 『直近に私が汚物を採取するために接触した対象の心を模倣する』
からなのである。
口癖や思考などが、それによって私の中で形成されるのである。
私が街の汚れを運んでいる間も、私が娼館で誰かの体を洗浄している間も、
私は誰かの心を写し、その心で誰にも伝えることの無い吐露を繰り返すのである。

つい最近までは、まぐわうことについてだけで心が埋まる状態であったが、
今回、私が私を語るにあたって知性的な心になっていたのは幸いである。
どうだろう、私ことスライムについて分かってもらえただろうか?
私としてはこれ以上無い成果が出たと確信している。
私はスライム。 現時刻を以って、ミッション完遂と成す。


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オアシスの街を支えるぷるんぷるんした大黒柱であるスライムの自分の中での
自分語りとでも思って頂ければ幸いです。 

  • 「ちょっとー、そんなとこにおしゃべり蟲つないで何やってんのー?」「…何でもない…」 -- (名無しさん) 2012-08-01 16:24:48
  • これはリチャードがスライムで身体を洗ったからというk(想像するのをやめた -- (としあき) 2012-08-01 16:35:58
  • 「亜獣」というのは新しい概念かな。普通の動植物と違って精霊力や神力で変異した魔獣のようなものだろうか -- (名無しさん) 2012-08-04 20:44:01
  • 地球にはいない種族を亜人と言うなら、地球にいない動物は亜獣でいいかなーという軽さ -- (名無しさん) 2012-08-05 19:11:37
  • とてもそんな有用な発明をしそうにないネビオラが偶然生み出したすばらしいECOと無数のふれあいと出会いと一個孤独に生きるスライムに感嘆しました -- (名無しさん) 2014-11-13 23:11:14
  • 勘まかせで享楽主義なマッドサイエンティストってどうなんだ -- (名無しさん) 2015-04-17 20:54:24
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最終更新:2012年08月03日 22:53