「俺、今日非番なんですけど」
「知っている」
「何が悲しくて隊長と一緒にお祭に行かなきゃなんないんですか」
「先日の出動でやらかしたろ、“命令無視(トッカン)”。 あれの罰だ」
“命令無視(トッカン)”
現場にて隊員が命令を無視して行動する事。
一つ間違えれば二次災害などに繋がるため、厳罰に処される。
「俺は間違った事やったとは思ってませんよ…」
「あぁ、結果としては救助者も助けれた。
しかし、一歩間違えればお前も救助者も炎の中で終わっていた
司令の方針は全員生還なんだ。少しは分かって行動しろ」
愚痴を垂れる男とその前を行く男。
やがて六甲アイランドに建設され、完成したばかりの巨大アミューズメントタワーがその全容を現す。
「巨大建造物における救助活動の課外講習だな」
「分かりましたよ。クビになるよりゃマシですし、やりますよハイハイ」
眼下、と言っても最上階展望台からは地上の様子は分からない。
「うわー!たっかーい!」
「たっかーい!たっかーい!」
開場イベントのコンサートまでは立ち入り禁止であるはずの展望台に訪れたのはハーピーが三人。
「余り長く居ては怒られるから、ちょっとだけよ?」
「うん、フルルちゃんのおっかげー」
「うん、歌手の役得ー」
バックコーラスにせがまれて関係者IDでこっそり入った空に最も近い場所。
青空はもっと蒼く。 白い雲と目線が被る。
故郷の世界とは違った空だが、ハーピーの胸にはあの空が浮かぶ。
「もう少しで開場だぞ!早く仕込みを終わらせろー!」
「鍋が足らないわ!湯が沸いた先から持ってきて!」
10フロアに跨る地球と異世界の食文化を集めたイベント。
人間も亜人も己が腕を振るうための準備に大わらわである。
「ん、何だ?火力が弱いな」
「コンロのツマミはしっかり“強”なんですけど…」
各店舗に割り当てられたスペースには料理に関するあらゆるが整備されている。
されているはずなのだが。
「ちょっと元栓見てくるー」
店でテーブルを拭いていた子供が勢い良く店外に飛び出す。
「迷子にはなるなよー」
「開店までには戻ってくるのよー」
華々しいセレモニーと共にタワーの扉が開く。
地上555メートルにも及ぶ巨大な文明の結晶。
日本政府が主導で多国籍に企業が参入し建造された。
土台は六甲アイランドの半分を埋める程の規模であり、内部には様々な施設が入っている。
人の壁が動く入り口から各フロアに分散する人、人、人。
しかし、それぞれのフロアにも人が溢れている。
「あっ!」
様々な遊戯を紹介し体験できるフロアの真ん中で波に押された少女がつまづく。
「っと、大丈夫かい?」
鬼人の太い腕が少女を支えた。
「あ、ありがとうございます」
黒いミニドレスを着飾った少女はぺこり丁寧にお辞儀をする。
「人多いからねぇ、ちゃんと前向いててもぶち当たってしまうわねー」
同じくフリフリのドレスを着飾っている鬼人。
しかし大人以上の背丈に筋肉ではちきれそうな様相は少女と対照的である。
「で、何?迷子にでもなったの?」
「いえ、姉と逸れてしまって… あっちも面白そう!とか言って駆け出したので
同じフロアにいるとは思うのですが…」
「人探しか~。うちもそうなんだよな。
一緒に来た馬鹿共もはしゃいでどっかいっちまってね、探している最中なんだ」
「図面と構造が変わっているとはどういう事ですかッ!?」
米某企業の一室で竜人が吠える。
「まぁ落ち着き給えよ。
事後報告になってはしまったが、工事には何ら問題は無いよ」
「くッ…では最新の図面をいただきたい」
「その必要は無いでショウ」
剣幕の間に扉を開けて割り行ったのは
ゴブリン。
「この度の工事で貴方がデスクから出てこない間に現場を勤めさせて頂いた後任の者でスヨ
今になって騒ぐとは…いやはや呑気というカ」
「分かっているのか?555メートル高の質量と圧力を支える構造を最初の設計から変えるという意味を!」
「現場を舐めるナッ!」
突如恫喝するゴブリン。 怒気が部屋に充満する。
「いちいちややこしい構造に意味の分からない連結!
私が手を加えなければどれだけ作業が遅延したこトカ!」
「まぁそういうワケでね。 各国の足並みを我が国が乱すのは如何ともし難いのでね
彼に入ってもらったというワケだよ」
決着を待たず外へ飛び出したのは竜人。
「話にならない!
塔の根幹を支える下階なのだぞ!
構造?連結?私の設計は全ての建築ストレスを計算した上でのものだ!」
誰かが手を抜いたのではなく
素材が悪かったと言う事でも無い
誰もが工事に真剣に取り組み
やっと完成させた賢人の塔
しかし、その崩壊は
全ての偶然を集約し
タワー中腹のライフライン瓦解という形で
始まる
「開かない!扉が開かない!」
「開かない!こっちも開かない!」
「一体どうしたと言うの…」
「さっきから電気が復旧しないわ…
あの子も帰ってこないし…」
「いざとなれば非常電源に切り替わると説明にあったんだが」
「痛っ!」
「ちょっ、あいつぶつかっといて謝りも無しかよ!
お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「いえ…暗いから仕方がありません。
足は少し、挫いてしまいましたけど…」
「とりあえずうちが肩車するからお姉さん探そっか」
「何…これ… 駄目よ、駄目よ…!
これではタワーが…持たないッ!」
「隊長ちゃーん、聞こえるー?」
「何だ?何か起こったのか?」
「六甲アイランドからアラームが鳴りっ放しなんだけどー
最新鋭の災害通知システムってヤツ」
「確かタワーの建造に合わせて災害情報を国レベルでリンクさせるというのですよね」
「あれ?トッカンちゃんもいたんだ。 丁度良いから見てきてよー」
「おいおい、見てくるも何も二人ともそのタワーの前 ──
タワーの中腹から下部へかけて吹き上がる炎。
激しい大気の振動は地面と海面を揺らす。
紅く燃える空からは弾け飛んだ建材が粉々になり降り注ぐ。
「緊急出動だ!全員タワーに集めろ!
こいつはとんでもないミッションになりそうだ…」
命の燃える中、一つの嘘も無く
唯真実のみが人を動かす
崩壊の結末は果たして ──
“紅天の唄”、近日公開!
(全てフィクションかつ妄想です)
- セットにかかった費用がリミットブレイクしてそう! -- (としあき) 2012-08-26 15:20:10
- え?CGじゃないんですか?本物を建てて爆破ですか? -- (とっしー) 2012-08-29 15:57:23
- 絵だけは見たことあったけどSS読んだのは初めてだった。うん。 -- (名無しさん) 2012-12-29 02:04:15
- スクリーンの中で異種族が活躍するのはイレヴンズゲートの世界では遠くない未来なのでしょう。SFXやメイクの分野から費用の使い方まで変化が起こっていそうですね -- (名無しさん) 2014-12-14 17:18:52
最終更新:2012年08月26日 05:06