この文書は、ASAI Kyoske氏が2003年に公開した「催眠術のかけ方」というテキストの改訂版であり、著者自身が催眠術を学び、実践し、そしてその考え方を変化させてきた軌跡を記録したものです。インターネット上に情報が溢れる中、真偽不明な情報に惑わされることなく、正しい知識と実践方法を伝えたいという思いから、このガイドが作成されました。
構成と内容:
テキストは、7つの章で構成されています。
第1章「はじめに」: なぜこのテキストを作成したのかという動機と、このテキストを読む上での注意点を述べています。特に、催眠と催眠術の区別を明確にすることが強調されています。
第2章「催眠、催眠術とは?」: 催眠と催眠術の定義を提示し、催眠を「無意識とのコミュニケーション技術」、催眠術を「暗示によって人を操る技術」と定義しています。また、学術的な視点からの催眠についても触れていますが、このテキストでは実践的な方法に焦点を当てるとしています。
第3章「私の場合」: 著者が催眠と出会い、初めて催眠誘導を成功させ、催眠愛好家と交流し、最終的にミルトン・H・エリクソンという催眠療法家と出会うまでの自身の経験を語っています。この章は、著者がどのように催眠術を学び、その考え方を変化させてきたのかを示す重要な部分です。
第4章「催眠術のかけ方」: 催眠術の実践的な方法を解説しています。催眠は技術であり練習が必要であること、催眠術を成功させるためにはラポール、動機、不安の除去という3つの要素が不可欠であることを説明しています。また、催眠誘導の手順(被暗示テスト、催眠誘導、深化)や、催眠を解除する方法、催眠誘導がうまくいかない原因なども詳しく説明しています。具体的な催眠技法としては、風船テスト、指の閉じるテスト、凝視法、数字逆算法などを紹介しています。
第5章「催眠術からの脱却」: 著者が催眠術を極めようとする中で、ミルトン・H・エリクソンに出会い、催眠に対する考え方を大きく変える過程を語っています。催眠術を「人を操る技術」として捉えていた著者が、「治療」という目的のために催眠を用いるエリクソンの考え方に触れ、催眠は「目的」ではなく「手段」であるという結論に至ります。
第6章「催眠術の理想と現実」: 催眠術の理想は、人を意のままに操ることであると考えがちだが、それは現実的ではないと述べています。催眠術で可能なのは、風俗店での少し変わったプレイや、キャバクラでの「操った」という感覚程度であると指摘し、高額な講習を受ける必要はないとしています。
第7章「おわりに」: このテキストの作成経緯を振り返り、読者への感謝を述べるとともに、今後の展望について語っています。特に、エリクソニアンの要素が足りないという意見を踏まえ、今後は現代催眠に特化した新しいテキストを作成する予定であることを示唆しています。
主なポイント:
実践重視: このテキストは、難しい理論を避け、実践的な方法に焦点を当てています。具体的な催眠技法を紹介し、読者が実際に試せるように工夫されています。
技術としての催眠: 催眠術は、魔法のようなものではなく、技術であり練習によって習得可能であるという考え方を強調しています。
被験性の重要性: 催眠の成功は、被験者の被験性(催眠のかかりやすさ)に大きく左右されるということを指摘しています。
催眠の本質への転換: 著者は、催眠術を「人を操る技術」として捉えていた時期から、エリクソンの影響を受けて、催眠は「目的」ではなく「手段」であるという考え方に変化します。
現実的な視点: 催眠術の理想と現実を比較し、催眠術でできることは限られているということを伝えています。
まとめ:
このテキストは、催眠術を学びたいという人にとって、非常に役立つ入門ガイドです。著者自身の経験を踏まえた実践的な内容であり、読者は催眠術の基本的な知識や技術を習得することができます。しかし、それだけでなく、催眠術の本質を理解し、単なる「人を操る技術」としてではなく、自己成長やコミュニケーションのために活用していくことの重要性を教えてくれるテキストとも言えるでしょう。著者の視点の変化を辿ることで、催眠術に対するより深い理解を得ることができるでしょう。
最終更新:2025年01月04日 16:48