概要
hackTechは、Torネットワーク上の.onionドメインで運営されていた日本語IT系匿名掲示板である。運営者は「たいやきくん」とされており、アクセスにはTorブラウザが必要だった。掲示板内ではハッキングやセキュリティに関する高度な技術情報が盛んに交換され、特に匿名性や暗号化技術に関する議論が多く見られた。
利用者も多く、技術情報の共有や知識収集の場として重宝されていた。匿名掲示板であることからプライバシー保護への意識が高く、自由な議論が行われていた点が特徴であった。
開設と閉鎖
hackTechの明確な開設日は不明だが、少なくとも2020年3月以前から稼働していたとみられる。2020年12月10日にサイト上の書き込み機能が停止し、同年12月12日に管理者の判断でサービスが閉鎖されたと伝えられている。閉鎖後はアクセス不能となり、その後再開されていない。閉鎖に至った背景や経緯は明らかにされていないが、ダークウェブ上のサービスは一般に持続が難しく、管理者の意向で終了する例も少なくない。
Kirasen(掲示板ソフト)
概要
hackTechでは、管理者のたいやきくんが開発したオープンソースの掲示板ソフトウェア「Kirasen」が使用されていた。KirasenはMITライセンスで公開されており、ソースコードはGitHub上で入手可能である
w.atwiki.jp
。軽量かつ高速動作を目指して設計され、投稿の保存にはSQLiteを利用することで高い性能を実現している。メニューやデザインはシンプルで、主にCSSのカスタマイズで外観変更できる仕様となっていた。JavaScriptの有無にかかわらず動作する設計で、Cookie不要という軽量な構成も特徴である。
主な特徴
UTF8MB4のサポート(4バイトUTF-8文字の扱いに対応)
ぜろちゃんねるプラス風のユーザーインターフェースと互換トリップ文字列
コード貼り付け向けのPRE(プリフォーマット)機能
TAB文字を視覚的に表示する機能
引用(QUOTE)の可視化機能
リンク先のリスク警告表示機能
Hypothesis連携とSSL対応機能(暗号化通信サポート)
Cookie不要(JavaScript利用時にさらに便利になる設計)
画像URL貼り付けによる画像展開機能
レスポンシブデザイン対応(画面サイズに応じたレイアウト)
CSSのみで柔軟にカスタマイズ可能
投稿データの高速保存にSQLiteデータベースを利用
荒らし対策・管理機能
ボットやスクリプト対策用キャプチャ機能
不正な文字コード(例: 特殊制御文字など)の投稿ブロック
連続投稿によるなりすまし防止のため、投稿数やスレッド作成数のユーザー別制限
スレッドの一括削除や個別投稿のロールバック機能(管理者用)
「タイムマシン」機能による過去状態への復元(誤操作や荒らし対策)
Telegram連携による投稿通知機能
簡易マークダウンチートシート
Kirasenでは簡易マークダウン記法が利用でき、以下のような書式がサポートされていた:
QUOTE:行頭に「>」を付ける
IMAGE:画像URLの前に「!」を付ける
BOLD:文字の前後を「***」で囲む
DEL:文字を「~~」で囲む(取り消し線)
PRE:ソースコードを「```」で囲む(プログラムコード表示)
MORE:改行を「---」で区切る(以下折りたたみクリック展開)
他の掲示板との関係
hackTechは日本語Tor上の技術系匿名掲示板として、ほかのダークウェブ掲示板と並び称される存在だった。例えば、
Onionちゃんねる(通称:玉葱板)や、KIRASEN/KARASEN/BLACKといった匿名掲示板群と並び、日本語ダークウェブ文化を支える一翼を担っていた
w.atwiki.jp
。それぞれ専門性や雰囲気が異なり、hackTechは技術・セキュリティ情報交換に特化していた点で特徴的だった。 ** ダークウェブ文化における意義
高い匿名性を保持した環境で自由に技術情報を議論できる場として、hackTechは日本語圏のダークウェブコミュニティで重要な役割を果たしていた。ネット上でセンシティブな技術(暗号化・セキュリティ対策・ハッキング手法など)を扱う場合、プライバシー保護の徹底が不可欠であるため、Torの匿名掲示板という形態は大きな魅力であった
vpn.ooaks.co.jp
。また、Kirasenがオープンソース化されたことで、同様の掲示板ソフトを使った派生運用や小規模サーバーでの再構築が可能となり、ダークウェブ上での技術系情報共有基盤の多様化に寄与した。
派生事例
公開されたKirasenソフトウェアは、その後の日本語ダークウェブ掲示板でも利用例が見られた。特に、同じくTor上の匿名掲示板である「BLACK板」では、開発者不在状態となった既存掲示板をKirasenベースで再構築した形の「BLACK2(BLACK板改め)」が登場し、一定の利用実績を残している。
その他、個人運営の小規模掲示板などでもKirasenをベースにしたシステムが採用され、匿名性と高機能を両立した掲示板文化の維持に貢献している。
参考リンク
最終更新:2025年05月25日 14:52