0191:大蛇vs妖狐
昼の放送の前に、
大蛇丸は南へと足を進めていた。
朝に
ヤムチャと闘ってから6時間近く、幸いにも誰とも会うことなく体力の回復に努めることができた。
もうこれ以上一箇所に留まる必要は無い。
(そろそろ動き始めないとね…)
できれば弱い相手を狙い、アイテムや情報を奪いたいところだ。
大蛇丸は慎重に周囲を警戒しながら、それでもかなりの速度で南下して行く。
しばらく南下したところで放送が聞こえてきた。
大蛇丸は歩きながらそれを聞き、地図に禁止エリアのチェックをしているところで、街を見つけた。
地図には大阪と書かれている辺りだ。
「少し、街を調べてみましょうか…」
音も立てずに駆ける
大蛇丸の姿は、あっという間に街の中へ消えていった。
しばらくの間。
「…………ふぅ」
大蛇丸の少し後ろの藪に隠れていたその少年は、ほっと息をついて藪から現れた。
「危ねぇ…『絶』が完璧じゃなかったら見つかってたかもな…」
ツンツン頭のその少年、キルアもまた、大阪を調べるためにここに来ていた。
先に街の周りを調べていたところで
大蛇丸を発見し、相手の様子を見るために『絶』を使って隠れたのである。
「それにしても、かなりヤバイ雰囲気の奴だな。側に居ただけで蛇に睨まれてるみたいだった…」
これから自分もあの街に行くのだと思うと、キルアは少し気後れしてしまう。
――あんなヤバイ奴に関わる必要はない、逃げてしまえ。
(って、なに考えてんだ!俺は早くゴンを探さなきゃならないんだ!)
キルアは一つ大きく深呼吸すると、大阪の街へ向かって駆け出した。
妲己は先ほど見たビデオをどう使おうかと考えながら、カズキたちのところへと戻ろうとしていた。
つい今しがた流れた放送では、
太公望も
趙公明の名前も呼ばれなかった。
(ふふ、そんなすぐに死んだらツマラナイわん…もう少し頑張ってもらわないとねぇん)
と、そこへ、後ろから何者かが現れる。
その相手は気配を隠しているようだが、妲己とて数千年を生きている妖怪である。
すぐにその気配に気づき、相手の方を向く。
そこにいたのは長髪で白い肌をした男、
大蛇丸。
「ふふふ…やはり私の見立てでは、ただの人間ではないようね」
「あらぁん、買いかぶりだわぁん。わらわはただのか弱い乙女よぉん」
「ふ、それはすぐに分かるわ……火遁・豪火球の術!」
素早く印を結び、術を発動する
大蛇丸。
口から発せられた火球が周囲を赤く染める。
しかし、妲己はそれを難なく避けると近くの家の屋根の上に跳び乗っていた。
「いやん、汗かいちゃうじゃない」
カズキたちに黙って1人で行動していた妲己は、今ここでこの男の相手をするつもりはなかった。
色仕掛けでも口車でもいいから、なんとか戦わずに切り抜けようと思っていたのだが、どうやらそれは難しいようだ。
「随分と余裕じゃない…これでどうかしら!」
大蛇丸は妲己をそれなりの実力者と読んで、チャクラの無駄な消費を抑えるために体術で仕掛ける。
息をつく間もない連続攻撃に、妲己は相手と戦わざるを得なくなる。
「殴り合いなんて乱暴だけど…それっ!」
妲己は
大蛇丸の突きを魔甲拳で受けると、その勢いで回転しつつ
大蛇丸の頭部を魔甲拳で殴りつけた。
「ぐぅっ!」
「悪いけどもう一撃いくわよぉん」
「…霧隠れの術」
「あらん?」
妲己の視界が霧で遮られる。
その隙に
大蛇丸は体勢を立て直すと、鞭のようにしならせた腕で妲己の背後を狙う。
が、その攻撃が当たる寸前に妲己が何かを振るった。
「えいっ!」
「…なにっ、風遁!?」
打神鞭によって発生したつむじ風で霧はかき消され、
大蛇丸も体勢を崩してしまう。
「そこよぉん!」
さらに追い討ちで真空波が襲い掛かる。
…が、それは
大蛇丸の身体をかすめるに留まった。
そして
大蛇丸が妲己から距離をとる間も、妲己が追撃をする様子はない。
「どういうつもりかしら?手加減するなんて…」
「あなたと遊ぶのもここまでってことよぉん。残念だけど、そろそろ戻らないといけないのぉん」
くねくねと身をよじらせながら悲しそうに目を伏せる妲己。
自分が優位に立った状態であえて手を抜くことで、相手の注意を引くことができると判断しての行動だ。
妲己の読み通り、そのわざとらしいポーズに思わず苦笑しながらも、
大蛇丸はひとまず攻撃の手を止めた。
「…フフ、そういうわざとらしいのがあなたのやり方なのかしら?」
「まぁ、そういうことよぉん。それで、こっちにも都合があるから遊びはもう終わりにしたいのん。
…あなたがこのまま去ってくれるならそれでいいんだけど、もしまだ闘うなら…」
「……っ!」
妲己の目を見た瞬間、
大蛇丸は彼女の本性を感じたような気がした。
大蛇丸の居た世界にも存在していた、ナルトに宿る九尾…あの禍々しさに似た力を。
大蛇丸の知る九尾と同一ではない以上、全力を出せばあるいは倒せるのかもしれない。
しかし、それでは自身も力を使い果たしてしまうことは明白だった。
このゲームに勝ち残るには、ここで無駄に体力を減らすわけにはいかない。
「……わかったわ。ひとまず戦いは終わりにしましょう」
「わらわも力を無駄に使いたくないから助かるわぁん」
「ところでひとつ提案なんだけど…どうかしら、私と手を組むというのは?」
「あらん、残念だけど、わらわにはもう可愛い仲間が二人もいるのぉん。
それにその子たちはとっても純粋だから、あなたとは合わないと思うわぁん」
妲己は
大蛇丸の提案をにべもなく断ると背を向けた。
「…じゃ、縁が有ったらまた会いましょうねん。自己紹介はその時まで楽しみにしておくわん」
まるで戦闘などしなかったかのように、余裕の態度のままでその場を後にする妲己。
大蛇丸は妲己を見送ると、彼女とは反対の方向へと歩き始める。
「……どうにもやりにくい相手だったわね、それにしてもあの力、やはり九尾なのかしら…?」
もう少しこの街を調べたら、またあの女に出会わないうちに早く移動した方がいい。
大蛇丸はそう判断し、足早に街の探索を始めた。
【大阪府(市街地)/1日目・日中】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]:健康
[装備]:打神鞭@封神演義、魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(一食分消費)、黒の章@幽遊白書、霊界テレビ@幽遊白書
[思考]:1.仲間のところへ戻る。(大蛇丸と戦ったことは報告しない)
2.太公望、竜吉公主、趙公明から自分の本性を明かされるのを防ぎたいが、
本性がバレても可能ならば説得して脱出のため協力し合う。
3.どんな事をしてもゲームを脱出し元の世界に帰る。
可能なら太公望や仲間も脱出させるが不可能なら見捨てる。
【大蛇丸@NARUTO】
[状態]:全身に火傷(ある程度は治療済み)、かすり傷数ヶ所、チャクラを小程度消耗
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(一食分消費)、岩鉄斬剣@幽遊白書
[思考]:1.まず大阪、その後東へ移動しながら他の参加者(できれば弱い相手)からアイテムや情報を入手。
2.多くの人間のデータを集め、場合によっては誰かと共闘する(もちろん利用する形で)。
3.生き残り、自分以外の最後まで残ったものを新しい依り代とする。候補としてダイを考えている。
【キルア=ゾルディック@HUNTER×HUNTER】
[状態]:少々のダメージ(戦闘に支障無し)
[装備]:なし
[道具]:爆砕符×3@NARUTO、荷物一式 (食料1/8消費)
[思考]:1.ゴンを探す。
2.隠密行動を取り、ヤバイ雰囲気の男(大蛇丸)に警戒しながら大阪周辺を探索
3.『選別』について悩んでいる
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最終更新:2024年02月14日 00:28