0253:Black color stomach ~ encounter ~



「――臓物(ハラワタ)をな」
森の中で力強い言葉が響く。その言葉は、殺意をも孕み、その場にいた四人の人間に届く。
友情マン
桑原和真
夜神月
そして、声を発した津村斗貴子自身にも。


「―――――なんだ、てめえら?」
最初に口を開いたのは桑原和真。突然の事態に緊張しながらも、斗貴子達を睨み付けている。
「三度は言わない――――武器を持っているなら地面に放れ」
斗貴子は威圧的な態度で言うが、その目は桑原を見ていない。視界に入れるは、異形の生物。
頭部がハート状。胸には【友情】などと書かれた紙が貼ってある。
サイズは人間と同じだが、服装は・・・全身タイツ?
蝶野公爵?
「貴様―――――ホムンクルスか?」
声をかけられた友情マンは、一瞬不可解そうな表情を見せ、「何のことか分からない」と返した。
返しつつも、彼は思考する。

(彼らは――――威嚇してきた、ということはゲームには乗っていない、か?)
今にも目の前の二人に飛び掛っていきそうな桑原を左手で制しながら、友情マンは考察する。
目の前の者達に、自分の【友達】たる資格があるかどうか。
(散弾銃・・・後ろの青年は斧を持っている。あまり力は強そうではないが。
そして、女の方はさらに剣を持っているな・・・戦闘経験も豊富そうだ)
「桑原君、とりあえず武器を捨てよう、ここで逆らうのは得策じゃあない。そこの女の子、えっと・・・」
「津村だ」
「津村さん、私達は君達と争うつもりはない、武器は桑原君の持っている刀一振りだけだ」
言って、すぐ隣にいる桑原に「いざとなればカードを使う」と小声で伝え、武器を捨てるように促す。
桑原は、渋々ながらも斬魄刀を地面に落とす。
「これでいいかい?じゃあ、僕と友だ・・・」
「次に質問をさせてもらう」

次々に威圧的な発言をする少女に、ついに桑原がキレた。
「おい・・・いきなり出てきてなんなんだテメエは?」
先ほど友情マンに向けていた怒りの矛先を少女に変え、戦闘態勢に入ろうとする。
たとえ斬魄刀がなくても、自分には霊剣というとっておきの武器がある。
友情マンもカードを持っているし、負けることはないだろう。
頭に血が上っている桑原は、目の前の少女に最後通告を――――
「ゲームに乗ってんのか?じゃあ、さっさとかかって」
「私達はゲームに乗っていない。そして、今から行う質問は君の命に関わる物だ、黙って聞いていてくれ」
少女は落ち着いた声でそう言うと、一拍おいてこう言った。
「もう一人の貴様、その桑原という男を何故殺そうとしていた?」




――――――――沈黙。


その瞬間、友情マンは一瞬思考を止めてしまった。
(―――――!!見られていたか。だが、まだ言い訳は)
とっさに言い訳をしようとする。
だが。
「ふざけんな!!!!!!」
森中に響き渡るは桑原の怒声。
(しまった、コイツは単細胞!津村の言い分をあっさり真に受けて―――)
「こいつは俺の仲間だ!そんな事する訳ねえだろうが!!」
(――――そっちに働いてくれたか)
「・・・だが現に、その者は背を向けた君に駆け寄り、貫手を―――」
斗貴子が桑原とは対照的に冷静に事実を告げようとすると、その度桑原が感情的に批判する。
それがしばらく続いた後、考えを整理して話に割り込む。
「あの・・・津村さん。私は、桑原くんを引き止めようとしたんだ」
「・・・どういうことだ?」
―――――どうやら、上手くいきそうだ。
友情マンは決して表に出さない笑顔を心の中で浮かべ、自分達の今までの経緯を語り始めた。

「つまり、そのガラという君達の仲間がブチャラティという男に殺され、ブチャラティを追うかどうかで揉めていた、と」
一通り説明を終えると、斗貴子も納得したのか、表情を緩める。
「ああ、で、俺は敵討ちに行きたいんだが、こいつは俺が死んじまうのを怖がってな。
どうしても行きたくないって言うから、俺一人で行こうとしてたんだ」
「面目ない・・・でも、本当に怖いんだ。また仲間を失うのが」
神妙そうな表情を作って俯く友情マン。
それを見て、桑原が気にするな、と友情マンの背中をばしばし叩く。
場の空気が幾分和んだのを見計らったのか、今までずっと成り行きを見守っていた月が明るい調子で提案した。
「じゃあ、こういうのはどうでしょう?
友情マンさんは僕達と一緒に来る、桑原さんはガラさんの敵を討ちに行った後、どこかで落ち合う、というのは?」
「ライト君、それでは桑原さんがあまりにも危険だ。どうせ落ち合うならみんなで一緒に・・・」
斗貴子が異論を唱えたが、桑原が「俺は一人で大丈夫だ」と言い張るので、結局月の提案通りに別れる事になった。

「じゃあ、桑原さん、午後六時までに名古屋城に来てください」
月が落ち合う場所を伝え、別れる間際。
「ちょっと待て。何で敬語なんだ?」
斬魄刀を拾った桑原は些細な疑問を漏らした。
「え?年上でしょう?」
月が不思議そうな声を上げる。
「・・・・・・お前ら、歳いくつ?」
「私は高校の・・・何年になるのかな、実際は」
「僕はついこの間大学に入ったばかりの、19歳です」
「私はちょっと君達の常識じゃ測れない年齢だね」
各々が自分の年齢を告白しているのを聞いて、桑原は何故か気まずそうだ。
「桑原さんはお幾つなんです?」
月は、少なくとも自分よりは年上だろう、との確信を持って質問した。しかし。
「・・・中学生だ」


――――――沈黙。二度目の沈黙。




閑話休題。

桑原と別れた後、斗貴子たちは大して会話もせずに、黙々と森の中を進んでいた。それぞれ、思惑を巡らせながら。

斗貴子は考える。

(仲間を失うのが怖いだと?馬鹿な。あの、貫手につなげる動作は、一流の戦士のそれだった。
迷いの無さから見て、覚悟が出来ていないなんて事はありえない。
ならばなぜ仲間の敵を討とうとしない?簡単だ、最初から友情マンはガラを仲間だと思っていなかった。
恐らく桑原――くん?――も、利用するための、道具程度にしか・・・)
だが、もし本当にそういう考えの持ち主なら、手元に置いておいたほうが安全だ。
放っておけばカズキが魔手にかかる恐れも(微弱だが)ある。
こちらにはあまり頼りにならないが月もいる。2対1なら、無謀なことはしまい。
そう斗貴子は結論付けた。今も、前を歩く友情マンには最大限の注意を払っている。

友情マンは考える。

(何とか誤魔化せたが、斗貴子さんも月くんも頭はいいようだ。桑原君と同じに考えているとミスを犯すかもしれない。慎重にいかなきゃ。
それにしても、斗貴子さんが言うケンシロウ君とやらは相当強いらしい、会うのが楽しみだなぁ。さあて、こいつらをどう使うか・・・)
友情マンは、新たな【友達】の利用法をひたすら考えていた。

夜神月は考える。

(この友情マンとかいう化け物・・・僕と同じだ。何かを隠し、大きな事を成し遂げようとしている。目を見た瞬間そう感じた。
僕と同類の存在なら、ミサと同じく、いやそれ以上に役に立たせる事ができるかもしれない。
津村斗貴子の目を盗んで、一度確かめてみるか・・・)

夜神月はポケットの中で無意識に子供用の下着を強く握り締めながら、歪んだ笑顔を必死で堪えていた。

複雑な空気を纏い、三人のBlack stomacher は森の中を進み続ける。ただ、黙々と。





【福島県南西部/日中】

【桑原和真@幽遊白書】
 [状態]:健康、怒りと悲しみ、ブチャラティのいる位置がなんとなく分かる
 [装備]:斬魄刀@BLEACH
 [道具]:荷物一式
 [思考]1:ブチャラティを追跡、怒りに燃えている。ガラの仇をとる。
    2:ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
    3:ゲームを脱出する。
    4:山側へ

【福島県南西部/日中】

【Black stomachers】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
 [状態]:健康
 [装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)@遊戯王
 [道具]:荷物一式、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ
 [思考]1:斗貴子達を利用する。
    2:強い者と友達になる。ヨーコ優先。
    3:最後の一人になる。

【津村斗貴子@武装練金】
 [状態]:健康
 [装備]:ダイの剣@ダイの大冒険、ショットガン、リーダーバッヂ@世紀末リーダー伝たけし!
 [道具]:荷物一式(食料・水、四人分)、ワルサーP38
 [思考] 1:人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)
    2:ゲームに乗った冷酷な者を倒す
    3:午後六時までには名古屋城に戻る
    4:友情マンを警戒

【夜神月@DEATHNOTE】
 [状態]健康
 [装備]真空の斧@ダイの大冒険
 [道具]荷物一式×3(三食分を消費)、子供用の下着
 [思考]1:斗貴子に同行。利用する。
    2:弥海砂の捜索。南下。
    3:使えそうな人物との接触
    4:竜崎(L)を始末し、ゲームから生き残る
    5:斗貴子の目を盗んで友情マンと接触したい
備考:斗貴子と月は友情マンの所持品を現在のところ知りません。

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218:筋の通し方 友情マン 276:太陽光は沈み消え行く
218:筋の通し方 桑原和真 265:日伊ゴロツキ対決!!ギャングvsヤンキー
218:筋の通し方 津村斗貴子 276:太陽光は沈み消え行く
218:筋の通し方 夜神月 276:太陽光は沈み消え行く

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最終更新:2024年04月03日 16:05