かまちが小島直樹ことエロエースたち4名を殺害してからこれまで6時間ほど。そのツケを払う時が来たと言わんばかりの状況に、人間ならば冷や汗を流していただろう。毛皮はその代わりに総毛立ち、彼の緊張を言葉よりも態度で示している。察しているのだ。これはまずい、これはしくじれば死ぬ、と。
(くっそ〜、なんでお前もいるんだよ!)
妖怪の己がいるのならば、他の妖怪がいるのもおかしくない。そんな当然の前提などなんの気休めにもならない。
毛羽立つついでに傷口が開く痛みを感じながら、自分を睨むもっけをどうしたものかと、かまちは脳をフル稼働させた。
竜堂ルナを狙い養護施設を襲ったかまちと、竜堂ルナを守るために彼と戦ったもっけ。当然ながら同じ妖怪同士手を取り合って頑張りましょう、とはならない。むしろ逆、殺し合いなど関係なく戦うことになる。
勝てるのか。これだけ手傷を負った状態で、万全であろう相手に。いや、無理だ。妖怪を相手にするにはダメージが深刻すぎる。ならばどうする。限られた時間の中で、必死に考えるかまちがとったのは、経験のある方法だった。
毛羽立つついでに傷口が開く痛みを感じながら、自分を睨むもっけをどうしたものかと、かまちは脳をフル稼働させた。
竜堂ルナを狙い養護施設を襲ったかまちと、竜堂ルナを守るために彼と戦ったもっけ。当然ながら同じ妖怪同士手を取り合って頑張りましょう、とはならない。むしろ逆、殺し合いなど関係なく戦うことになる。
勝てるのか。これだけ手傷を負った状態で、万全であろう相手に。いや、無理だ。妖怪を相手にするにはダメージが深刻すぎる。ならばどうする。限られた時間の中で、必死に考えるかまちがとったのは、経験のある方法だった。
「これがかまち様の逃走経路だっ!」
「きゃあっ!」
「なにっ!?」
「きゃあっ!」
「なにっ!?」
かまちは成り行きを固唾を呑んで見守っていた立花紗綾を引っ捕まえると、マンホールの蓋を開けて下水道へと逃げ込んだ。馬鹿の一つ覚えと言われそうだが、一度やったことのある人質戦法である。
「お前汚いぞ! アナホリフクロウじゃねえんだぞオイラはチクショー!」
頭が通れば狭いところでも入り込めるというのはかまちも同じだ。一方のもっけは翼が邪魔になる上そもそも体の構造が違うのでどうしようもない。
「クソッ! 音は聴こえてんだ、出てきたところを狙ってやる!」
もっけは音も無く羽ばたくと、高度を上げてからかまちが移動している下水道の上をゆっくりと飛び始めた。さすがに誰かに見られては妖怪という己の存在を知られてしまうため避けなければならないが、それはそれとしてルナを思い起こさせる幼い女の子を攫ったかまちを野放しにはできない。それに妖力での探知もまだできている、逃しはしない。
「て思ってんだろうな、アイツ。どうすっかなぁ。」
一方のかまちも、もっけの妖力がピッタリとついてくるのを感じて移動しながらも嘆息していた。彼にとっては幸いなことに、下水道は思いの外広く、壁を這って進めば傷口に汚水が触れることもない。そのまましばらくして、開けたエリアにまで出ると、上がった息を整える為にもサーヤを置いて一休みすることにした。
「……いや、コイツ置いてけば逃げられるんじゃねえか?」
ここで逆転の発想を思いつく。別にかまちはサーヤに用があるわけではない。とっととサーヤを解放してしまえば、もっけは彼女の保護の為に動くだろう。奴とは短い付き合いだが、そういう性格をしていることは予想ができる。
「おい、お前、もういいぞ。どっか好きなところに行け。」
「えっ、ええ?」
「ほら行けよ、しっしっ……あ、そうだ。それとさっきのフクロウには気をつけろよ、人食うから。」
「えっ、ええ?」
「ほら行けよ、しっしっ……あ、そうだ。それとさっきのフクロウには気をつけろよ、人食うから。」
ついでにもっけの悪評も流しておく。言うだけならタダだ、信用されるとは思っていないが、嫌がらせをすると心がちょっとスッとなる。
「もしかして、その怪我も……」
「いやこれは別のガキに撃たれた時のだ。ったく、目があったら直ぐ撃つとか人間のガキは道徳ってもんがねえ。」
「……あの、ありがとうございます。」
「あ?」
「いやこれは別のガキに撃たれた時のだ。ったく、目があったら直ぐ撃つとか人間のガキは道徳ってもんがねえ。」
「……あの、ありがとうございます。」
「あ?」
ペコリと頭を下げたサーヤに、かまちは頭上にはてなマークを浮かべた。なぜありがとうございます? なぜ感謝?
「……まあ、気にすんな。」
とりあえずそう返すが、いったいぜんたいどうなっているのか?
(かまちさん、悪魔とは違うみたい。)
それはかまちとサーヤの初対面の時に答えがある。かまちは悪魔ではなく妖怪だと名乗った。何より破魔のマテリアルに効果がない。サーヤ自身それにどんな効果があるのかいまいち把握しきっているわけではないのだが、悪魔に効くはずのものが効かなかったということは、悪魔ではないということなのだろう。
加えて、かまちは下水道を移動する時もサーヤが汚水にかからないように庇っていた。実際は単に本人が汚水に触れるのを避けていただけだが、光も無い下水道でそこに気づくことなどサーヤにできはしない。
そしてなにより、サーヤはかまちに、定春や銭形を無意識に重ねていた。下水道を移動中に放送で2人の死を聞いて、自分の怯えから定春を、自分の誤解から銭形を失った。彼らがどんな犬であり人だったのか、サーヤは知らない。これから知ることもできない。残ったのは、自分を助けようとしてくれた者たちが死んだという事実だけだ。
加えて、かまちは下水道を移動する時もサーヤが汚水にかからないように庇っていた。実際は単に本人が汚水に触れるのを避けていただけだが、光も無い下水道でそこに気づくことなどサーヤにできはしない。
そしてなにより、サーヤはかまちに、定春や銭形を無意識に重ねていた。下水道を移動中に放送で2人の死を聞いて、自分の怯えから定春を、自分の誤解から銭形を失った。彼らがどんな犬であり人だったのか、サーヤは知らない。これから知ることもできない。残ったのは、自分を助けようとしてくれた者たちが死んだという事実だけだ。
(もう……誰かを疑って見殺しになんて……)
生来のお人よしな部分が、かまちへの疑念を反転させる。己の直感に従い仲間となるはずの参加者を2名も失った彼女は、三度目の正直を願う。
(……なーんかよくわからんが、もしかしてめちゃくちゃ都合のいい展開になってないか?)
一方のかまちは突然にしてようやく転がり込んだ幸運に笑いをこらえていた。
思えばこれまでやたらハチの巣にされかかってきたが、運が向いてきたようだ。明らかに怪我をしている自分と無傷なもっけ、どちらがサーヤに信頼されるか怪しい部分はあったが、彼女は判官びいきするタイプなのか? 弱っている己になんか肩入れしてくれているので、これは乗るしかない。だいたい、これまでに話した内容はもっけについて以外は事実を述べている。銃で撃たれたというのは本当であり、返り討ちで4人殺したという部分を言っていないだけだ。
思えばこれまでやたらハチの巣にされかかってきたが、運が向いてきたようだ。明らかに怪我をしている自分と無傷なもっけ、どちらがサーヤに信頼されるか怪しい部分はあったが、彼女は判官びいきするタイプなのか? 弱っている己になんか肩入れしてくれているので、これは乗るしかない。だいたい、これまでに話した内容はもっけについて以外は事実を述べている。銃で撃たれたというのは本当であり、返り討ちで4人殺したという部分を言っていないだけだ。
「……その、怪我を治しませんか?」
「……心配ねえ、ゆっくり寝てれば治る。それより、お前はここから逃げな。あー……もっけの狙いはお前じゃねえからな、今なら逃げられんだろ。」
(いけるか……さすがにダメか……?)
(かまちさん……また私を守ろうとして。)
「ありがとうございます……! 私、包帯とか持って戻ってきますね。」
「おう頼む。」
(なんかいけたぞ!)
「……心配ねえ、ゆっくり寝てれば治る。それより、お前はここから逃げな。あー……もっけの狙いはお前じゃねえからな、今なら逃げられんだろ。」
(いけるか……さすがにダメか……?)
(かまちさん……また私を守ろうとして。)
「ありがとうございます……! 私、包帯とか持って戻ってきますね。」
「おう頼む。」
(なんかいけたぞ!)
意外となんとかなるものだ。
正直、あまり長く一緒にいるとバレそうなのでとっととどっかに行ってついでにもっけの悪評を広めてくれたほうが助かるのだが、これはこれで良しとしよう。
正直、あまり長く一緒にいるとバレそうなのでとっととどっかに行ってついでにもっけの悪評を広めてくれたほうが助かるのだが、これはこれで良しとしよう。
(どのみち、もっけはここに入ってこれない。もっけはな。)
あとはとっとと妖力を使って傷をなんとかすることだ。もっけはともかく、スネリやルナに合流されれば詰む。そうでなくとも、サイズを本来のように変えられていただけでかなり危険だったのだ。こんな狭いところで戦えば相討ちは必至だっただろう。
「そういえば、お前、名前は。」
「……立花紗綾です。」
「そうか、サーヤ、長生きしろよ。」
「……立花紗綾です。」
「そうか、サーヤ、長生きしろよ。」
我ながら心にもないことを言っていると思いながらも、かまちはサーヤの長生きを半ば本気で願う。こんなにも都合の良い存在は滅多に出会えないのだから。
「……まだ近いな。」
一方、かまちともっけ、そしてサーヤのやりとりの一部を見ていた参加者がいた。
タイは、自分の首輪が外れたことで己が勝利条件を満たしたことを察した。
タイは、自分の首輪が外れたことで己が勝利条件を満たしたことを察した。
(今は妖力をおさえておくか。)
2つに別れた首輪を手に取って見ながら、タイはこれからどうするべきかと考える。タイの視点で確実に殺したと言えるのは、森嶋帆高、小黒健二、大木登、ノルの4名。いずれも名前は把握していない。寺から敗走する時にぶつかった武市変平太、木本麻耶の2名に関しては認識していない。よって死んだ人間81名から考えると、タイ本人が殺していない77名を1人最大3人殺したと考えると、最低でも26名はマーダーがいることになる。
(これ以上殺してもメリットはないけど、もっけがいるならルナもいるはずだ。)
この殺し合いにどれだけの人数がいるのかわからないが、閉鎖された空間に30人の殺人者がいる、ということは念頭に置いて行動しなくてはならない。その上で、タイの双子の姉にして怨敵であるルナを己の手で殺すにはどうすべきか。神楽や岡田似蔵といった名を知らぬ手練も徘徊しているこの戦場でどう動くべきか悩む。
(まずはここから離れるか。もっけのいないところで妖力を使って傷を治す。その前に。)
タイは適当な民家に入り込むと、物色を始めた。民家というものに縁のない人生を歩んできたタイだが、なんとか目当てのものを見つける。セロテープである。
タイは、2つに別れた首輪の断面にセロテープをそれぞれ巻くと、首に首輪をつけなおしてから貼って繋げた。よく考えたら、首輪が外れているということは殺し合いに乗っているとバレバレである。なんとかごまかせないかと考えるが、なにぶん小学校にも通ったことのない身なので、これが思いつく精一杯である。
タイは、2つに別れた首輪の断面にセロテープをそれぞれ巻くと、首に首輪をつけなおしてから貼って繋げた。よく考えたら、首輪が外れているということは殺し合いに乗っているとバレバレである。なんとかごまかせないかと考えるが、なにぶん小学校にも通ったことのない身なので、これが思いつく精一杯である。
「……いけたな。」
意外といけた。
首輪がカッチリとハマると、セロテープで接着すれば、とりあえずくっつく。その後軽食をとっている間に外れてしまったが、安静にしていれば十何分かは持つ。何分か持つならごまかしようはある。
本当はこんなものをつけていたくはないのだが、ひとまずは首輪を身に着けているようにしたほうが良い。
首輪がカッチリとハマると、セロテープで接着すれば、とりあえずくっつく。その後軽食をとっている間に外れてしまったが、安静にしていれば十何分かは持つ。何分か持つならごまかしようはある。
本当はこんなものをつけていたくはないのだが、ひとまずは首輪を身に着けているようにしたほうが良い。
「まだ飛んでるのか。」
さて、首輪もなんとかなったところであらためてどうするか。
上空を変わらず飛ぶもっけをやり過ごすように気をつけながら歩き続けて見つけたのは、男女の二人組だった。藤原千花と神田あかねのグループである。同じ会場西部を舞台としていたもののこれまで微妙に距離が離れていたために出会うことの無かった彼らを目にして、タイは考える。
タイとしてはルナを討つことが第一ではあるが、己と同じ伝説の子である彼女に正面から挑んで勝利できるのは己のみだ。雑魚がどれだけ集まろうと削り役にしかならない。そう思っていたが、寺での神楽や似蔵との戦いでそうとは言い切れないと悔しいが認めざるを得ない。ここには自分に匹敵する妖怪変化が練り歩いている。それに銃もあるのだ。多勢に無勢ならばルナすらも殺しきれるかもしれない。
上空を変わらず飛ぶもっけをやり過ごすように気をつけながら歩き続けて見つけたのは、男女の二人組だった。藤原千花と神田あかねのグループである。同じ会場西部を舞台としていたもののこれまで微妙に距離が離れていたために出会うことの無かった彼らを目にして、タイは考える。
タイとしてはルナを討つことが第一ではあるが、己と同じ伝説の子である彼女に正面から挑んで勝利できるのは己のみだ。雑魚がどれだけ集まろうと削り役にしかならない。そう思っていたが、寺での神楽や似蔵との戦いでそうとは言い切れないと悔しいが認めざるを得ない。ここには自分に匹敵する妖怪変化が練り歩いている。それに銃もあるのだ。多勢に無勢ならばルナすらも殺しきれるかもしれない。
「……………………ちっ。」
だがそれは雑魚の発想。タイはそんな決着を認めない。ルナは自身の手で討つことに意味がある。
タイは発見した参加者をどう利用したものかと思いながら、彼らを追跡することにした。
タイは発見した参加者をどう利用したものかと思いながら、彼らを追跡することにした。
【0615 『西部』】
【かまち@妖界ナビ・ルナ(1) 解かれた封印(妖界ナビ・ルナシリーズ)@フォア文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する。
●中目標
傷が癒えるまで休む。
●小目標
サーヤの勘違いを利用する
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する。
●中目標
傷が癒えるまで休む。
●小目標
サーヤの勘違いを利用する
【もっけ@妖界ナビ・ルナ(5) 光と影の戦い(妖界ナビ・ルナシリーズ)@フォア文庫】
【目標】
●大目標
ルナを守り、殺し合いを止める。
●中目標
ルナと合流する。
●小目標
かまちを監視しつつ、少女(サーヤ)の救助を図る
【目標】
●大目標
ルナを守り、殺し合いを止める。
●中目標
ルナと合流する。
●小目標
かまちを監視しつつ、少女(サーヤ)の救助を図る
【立花紗綾@魔天使マテリアル(1) 目覚めの刻(魔天使マテリアルシリーズ)@ポプラカラフル文庫】
【目標】
●大目標
脱出する。
●中目標
巻き込まれてたら仲間と合流したい。
●小目標
かまちの怪我を手当てするためのアイテムを探す
【目標】
●大目標
脱出する。
●中目標
巻き込まれてたら仲間と合流したい。
●小目標
かまちの怪我を手当てするためのアイテムを探す
【0615 『西部』】
【タイ@妖界ナビ・ルナ(5) 光と影の戦い(妖界ナビ・ルナシリーズ)@フォア文庫】
【目標】
●大目標
優勝したのでルナを狙う。
●中目標
妖力を回復させて傷を治す。
●小目標
少女(藤原千花)と少年(神田あかね)を監視する。
【目標】
●大目標
優勝したのでルナを狙う。
●中目標
妖力を回復させて傷を治す。
●小目標
少女(藤原千花)と少年(神田あかね)を監視する。