信じられないものを見た。
それが藤原千花の感想だった。
藤原千花の目の前で、大場結衣、天野司郎、神田あかねの3名が死んでから4時間近く経っていた。藤原本人には、何時間にも何日にも思えるような時間は、ただ単に赤く時の流れを伺わせない空のせいだけではなかった。
助けられなかった、どころか、もしかしたら自分が殺してしまったのではないか。そう思わされ続けて、冷静に絶望感と向き合うには充分過ぎるほどの時間であった。
それだけの時間、誰とも出会わず、誰にも殺されなかったことは、本来ならば幸福なことであろう。たとえ交流の機会を逃していても、危険からは遠ざかれていたのだから。
だが今の藤原にとっては、何も起こらず、誰とも出会わないことが、怖くて仕方なかった。警察や病院を探して街に出てから、何も成果がなく、ひたすらに無為な時間を過ごしている。そのことが罪悪感を増させていく。
そして次第に、自分の気持ちがわからなくなっていった。誰にも会えないのではなく、会いたくないのではないか。自分が殺したことを知られたくないから。助けを呼びに離れたのではなく、犯行現場から離れたのではないか。自分の殺人から逃れるために。
孤独な数時間は、自分自身を裁く自分を作り出す。そうして摩耗した心で、その少年と出会ったことは、まさしく奇跡だった。
それが藤原千花の感想だった。
藤原千花の目の前で、大場結衣、天野司郎、神田あかねの3名が死んでから4時間近く経っていた。藤原本人には、何時間にも何日にも思えるような時間は、ただ単に赤く時の流れを伺わせない空のせいだけではなかった。
助けられなかった、どころか、もしかしたら自分が殺してしまったのではないか。そう思わされ続けて、冷静に絶望感と向き合うには充分過ぎるほどの時間であった。
それだけの時間、誰とも出会わず、誰にも殺されなかったことは、本来ならば幸福なことであろう。たとえ交流の機会を逃していても、危険からは遠ざかれていたのだから。
だが今の藤原にとっては、何も起こらず、誰とも出会わないことが、怖くて仕方なかった。警察や病院を探して街に出てから、何も成果がなく、ひたすらに無為な時間を過ごしている。そのことが罪悪感を増させていく。
そして次第に、自分の気持ちがわからなくなっていった。誰にも会えないのではなく、会いたくないのではないか。自分が殺したことを知られたくないから。助けを呼びに離れたのではなく、犯行現場から離れたのではないか。自分の殺人から逃れるために。
孤独な数時間は、自分自身を裁く自分を作り出す。そうして摩耗した心で、その少年と出会ったことは、まさしく奇跡だった。
「神田、くん……?」
「……藤原、さん?」
「……藤原、さん?」
名前を呼びかけると、自分の名前を呼びかけ返す。
信じられない。だが、声も姿も、同じだ。ハスキーな女性のようにも聴こえる声。抜けるように白い肌。髪と同じ茶色の瞳。さっき目の前で死んでいった神田あかね本人が目の前にいた。
信じられない。だが、声も姿も、同じだ。ハスキーな女性のようにも聴こえる声。抜けるように白い肌。髪と同じ茶色の瞳。さっき目の前で死んでいった神田あかね本人が目の前にいた。
「神田くん! 神田くん!!」
「良かった、藤原さんも生きてて……ゴフッ!」
「だ、大丈夫!?」
「ハァ……ハァ……大丈夫、いつもの発作だから……」
「良かった、藤原さんも生きてて……ゴフッ!」
「だ、大丈夫!?」
「ハァ……ハァ……大丈夫、いつもの発作だから……」
藤原はあかねの背中をさすった。そして、手のひらから感じる体温に、救われた気がしてまた泣いた。
119番にかけようとして911にかけていたことも、ほとんど初対面の相手だということも関係なく、ただただ生きていることに、救われていた。
119番にかけようとして911にかけていたことも、ほとんど初対面の相手だということも関係なく、ただただ生きていることに、救われていた。
さて、この神田あかねは神田あかねではない。
正確にはこの藤原千花が助けようとしてできずに死んでいった、そして今も喫茶店で死体が転がっている神田あかねではない。
彼を便宜的に呼ぶのであれば、神田あかね(原作版)。オリジナルなのでこのような呼称はふさわしくないのだが、わかりやすく説明するためにこう表記する。
正確にはこの藤原千花が助けようとしてできずに死んでいった、そして今も喫茶店で死体が転がっている神田あかねではない。
彼を便宜的に呼ぶのであれば、神田あかね(原作版)。オリジナルなのでこのような呼称はふさわしくないのだが、わかりやすく説明するためにこう表記する。
つまり、神田あかねは2人参戦していたのだ。
藤原の前で殺されたのは神田あかね(映画版)であり、今目の前にいるのは神田あかね(原作版)である。
2人の違いは、秋野真月と付き合っているかいないかだ。関織子に彼氏ができる世界線では、彼にも彼女ができる。それが原作版の世界線の神田あかね。一方、関織子が若おかみとなるキッカケとなった事故で両親の命を奪った木瀬文太と和解した世界線では、彼は本来のタイミングで花の湯に深入りすることはない。これが映画版の世界線の神田あかねだ。
とはいえ、それは将来における比較的大きな差異。2人の参戦時期は同じ為、違いは彼の人生を変えた温泉プリンのエピソードだけである。つまり、2人が温泉プリンのエピソードについて関織子と話すようなごく限られた場合を除いて、2人は同一人物である。
ちょっと待って、ロワ始まってからの話は合わんやん!とウリ坊のようにツッコミを入れられてしまうかもしれないので、それについても説明しよう。
2人の違いは、秋野真月と付き合っているかいないかだ。関織子に彼氏ができる世界線では、彼にも彼女ができる。それが原作版の世界線の神田あかね。一方、関織子が若おかみとなるキッカケとなった事故で両親の命を奪った木瀬文太と和解した世界線では、彼は本来のタイミングで花の湯に深入りすることはない。これが映画版の世界線の神田あかねだ。
とはいえ、それは将来における比較的大きな差異。2人の参戦時期は同じ為、違いは彼の人生を変えた温泉プリンのエピソードだけである。つまり、2人が温泉プリンのエピソードについて関織子と話すようなごく限られた場合を除いて、2人は同一人物である。
ちょっと待って、ロワ始まってからの話は合わんやん!とウリ坊のようにツッコミを入れられてしまうかもしれないので、それについても説明しよう。
藤原千花は2人参戦している。
(藤原さん、こんなに泣いてる。よっぽど辛かったんだな……)
(良かった……なんでかわかんないけど、神田くん生きてる……!)
(神田くん、どこにいるんだろう……)
(良かった……なんでかわかんないけど、神田くん生きてる……!)
(神田くん、どこにいるんだろう……)
お互いにかすかに違和感を覚えつつも抱き合う神田あかね(原作版)と藤原千花(映画版)から離れること数百メートル、藤原千花(まんが版)はビルの一室に身を潜めていた。
神田あかね(映画版)と藤原千花(映画版)が出会ったのと同じころ、神田あかね(原作版)と藤原千花(まんが版)も出会っていた。そしてこの二人も襲撃を受けたのだが、誰が撃ってきてるのかもわからないグレネードランチャー的な爆破攻撃だったので、それぞれ発生した火災とマーダーから逃れるためにバラバラに逃げていたのだ。
そうとは知らず、藤原はあかねを強く抱きしめる。
たとえ今だけでも、とても救われた気分だった。
神田あかね(映画版)と藤原千花(映画版)が出会ったのと同じころ、神田あかね(原作版)と藤原千花(まんが版)も出会っていた。そしてこの二人も襲撃を受けたのだが、誰が撃ってきてるのかもわからないグレネードランチャー的な爆破攻撃だったので、それぞれ発生した火災とマーダーから逃れるためにバラバラに逃げていたのだ。
そうとは知らず、藤原はあかねを強く抱きしめる。
たとえ今だけでも、とても救われた気分だった。
【0430 『西部』住宅地】
【藤原千花@かぐや様は告らせたい―天才たちの恋愛頭脳戦― 映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
【目標】
●小目標
神田くんと一緒にいる。
【目標】
●小目標
神田くんと一緒にいる。
【神田あかね@若おかみは小学生! PART1 花の湯温泉ストーリー (若おかみは小学生!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●小目標
藤原さんと一緒にいる。
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●小目標
藤原さんと一緒にいる。
【藤原千花@かぐや様は告らせたい―天才たちの恋愛頭脳戦― まんがノベライズ 恋のバトルのはじまり編@集英社みらい文庫】
【目標】
●小目標
神田くんと合流する。
【目標】
●小目標
神田くんと合流する。