時刻は6時30分といったところ。
うずまきナルトは、うちはサスケとの通話を終えてから腕を組んで沈黙していた。
場所は警察署から少し離れた作業用品店だ。宮美三風捜索の為に動いていた彼らは、自家用車を運転した風見涼馬の提案で、仲間に許可をとってから道路などの目立つ場所に警察署への行き方を示したグラフィティを描こうと準備していた。民家を1つ捜索するだけでも手分けしたところで何分もかかるのに、この辺りにはマンションなどもある。そのどこかに三風が隠れているかもしれないとなれば、とても4人で探しきれるものではない。彼女の姉がいるから呼びかければ出てくる、というのも期待できるものではない。それは彼女の記憶を刺激し強いストレスを与える可能性がある。
惨殺されていた宮美四月とうり二つな、宮美一花と宮美二鳥を会わせることは。
うずまきナルトは、うちはサスケとの通話を終えてから腕を組んで沈黙していた。
場所は警察署から少し離れた作業用品店だ。宮美三風捜索の為に動いていた彼らは、自家用車を運転した風見涼馬の提案で、仲間に許可をとってから道路などの目立つ場所に警察署への行き方を示したグラフィティを描こうと準備していた。民家を1つ捜索するだけでも手分けしたところで何分もかかるのに、この辺りにはマンションなどもある。そのどこかに三風が隠れているかもしれないとなれば、とても4人で探しきれるものではない。彼女の姉がいるから呼びかければ出てくる、というのも期待できるものではない。それは彼女の記憶を刺激し強いストレスを与える可能性がある。
惨殺されていた宮美四月とうり二つな、宮美一花と宮美二鳥を会わせることは。
「戻りました。」
涼馬の声に、ナルトはいつの間にか俯いていた顔を上げた。この店のはす向かいにはスーパーがある。そこにある大きな冷凍庫に、涼馬は交番にあった四月達の遺体を安置していた。
宮美姉妹をこれ以上動揺させないようにと、バンの後部座席を動かして作ったスペースに、見えないように死体を載せて運んできた。その寝ているかのような死に様を疑問に思ったものの、それは東方定助という人間の手によるものらしい。ナルトは忍術か何かかと思ったが、当の本人が死者として呼ばれてしまった以上、確かめようもない。手伝うと申し出ても、宮美達を見張ってほしいと言われれば、ナルトも大人しく待つしかなかった。
そもそも、警察署への行き方を示した落書きをするというのは、半ば方便だ。妹が1人は行方不明になり、1人は死んだ宮美たちを、これ以上刺激しないために作業をさせて気を紛らわさせるための。
三風がショックを受けるように、姉の彼女たちも妹の死には当然重い負担がのしかかるのは専門家の涼馬は言わずもがな、ナルトにも目に見えていた。ナルトには家族がいないが、それでも春野サクラの死を伝えられた時の、あの感覚は忘れられるはずもない。ついさっきのことのように、何度も頭の中で、サクラの死を知った時の、その前後の記憶が、まるで今体験していることのように五感に襲いかかるのだ。
宮美姉妹をこれ以上動揺させないようにと、バンの後部座席を動かして作ったスペースに、見えないように死体を載せて運んできた。その寝ているかのような死に様を疑問に思ったものの、それは東方定助という人間の手によるものらしい。ナルトは忍術か何かかと思ったが、当の本人が死者として呼ばれてしまった以上、確かめようもない。手伝うと申し出ても、宮美達を見張ってほしいと言われれば、ナルトも大人しく待つしかなかった。
そもそも、警察署への行き方を示した落書きをするというのは、半ば方便だ。妹が1人は行方不明になり、1人は死んだ宮美たちを、これ以上刺激しないために作業をさせて気を紛らわさせるための。
三風がショックを受けるように、姉の彼女たちも妹の死には当然重い負担がのしかかるのは専門家の涼馬は言わずもがな、ナルトにも目に見えていた。ナルトには家族がいないが、それでも春野サクラの死を伝えられた時の、あの感覚は忘れられるはずもない。ついさっきのことのように、何度も頭の中で、サクラの死を知った時の、その前後の記憶が、まるで今体験していることのように五感に襲いかかるのだ。
「うずまきさん?」
「あっ、悪ぃ、なんだっけ?」
「あっ、悪ぃ、なんだっけ?」
気がつけば、涼馬の話を聞き流していた後だった。こういう時、サクラちゃんならビシッと叱ってくるんだろうなと、また意識がそちらに向きそうになってナルトは両手で頬を叩く。宮美たち四つ子のことを考えると、自然とサクラの死を思い出してしまう。
「警察署に関織子さん、和服の女の子がいましたよね。」
「ああ、んで?」
「彼女が言っていた知人と特徴が合う遺体がありました。」
「ああ、んで?」
「彼女が言っていた知人と特徴が合う遺体がありました。」
涼馬に返事を返すまでに、間があった。
なんとか「そうか」と答えたあと、涼馬が何を言っているのか、聞こえてはいるのに耳に入ってこない。ナルトは大人の遺体を車に載せていたので触れたわけではないが、確かにピンクのフリフリドレスの少女の遺体があったことは覚えている。ピンフリとあだ名を付けられているという情報と合致するほどのピンフリぷりだった。
また1人、知り合いの知り合いが死んだ。この殺し合いが始まってからそんなことばかりだ。
なんとか「そうか」と答えたあと、涼馬が何を言っているのか、聞こえてはいるのに耳に入ってこない。ナルトは大人の遺体を車に載せていたので触れたわけではないが、確かにピンクのフリフリドレスの少女の遺体があったことは覚えている。ピンフリとあだ名を付けられているという情報と合致するほどのピンフリぷりだった。
また1人、知り合いの知り合いが死んだ。この殺し合いが始まってからそんなことばかりだ。
「あ……あのさ、あのさ、スマホの使い方教えてほしいんだけど。なんかサスケに電話繋がったり繋がんなくなったりしちまってさ。どうすりゃいいの?」
「サスケさんは車で移動していましたよね。通話が安定しないということは、基地局が無いか不調な地域に入ったのかもしれません。」
「どういうことだってばよ?」
「スマホの電波というのは近くにあるアンテナに飛びます。そのアンテナから別のアンテナに飛ぶのを何度も繰り返して、相手のスマホに電波が届くんです。」
「うーん? トランシーバーを数珠繋ぎにしてるようなもんか?」
「サスケさんは車で移動していましたよね。通話が安定しないということは、基地局が無いか不調な地域に入ったのかもしれません。」
「どういうことだってばよ?」
「スマホの電波というのは近くにあるアンテナに飛びます。そのアンテナから別のアンテナに飛ぶのを何度も繰り返して、相手のスマホに電波が届くんです。」
「うーん? トランシーバーを数珠繋ぎにしてるようなもんか?」
無理矢理話を変えてみる。ただ、その内容は本当にナルトが疑問に思っていたことだ。
車の中で移動中も、何度かサスケに電話をかけていた。病院で聞きそびれたことだとか、放送についてだとか、色々と。
そして電話の向こうからサスケの声が聞こえてくる度に、ホッとしたのだ。電話越しの声は加工されたものだけれども、サスケの声が耳に入るごとに、あのスカした顔が不機嫌そうにスマホを耳に当てて自分と話しているのだと実感できたのだ。
だから、サスケに電話が繋がらなくなった時は、内心動揺していた。サスケになにかあったのか。電話に出られないような状態なのか。サスケまでサクラのように死んだのではないか、と。
車の中で移動中も、何度かサスケに電話をかけていた。病院で聞きそびれたことだとか、放送についてだとか、色々と。
そして電話の向こうからサスケの声が聞こえてくる度に、ホッとしたのだ。電話越しの声は加工されたものだけれども、サスケの声が耳に入るごとに、あのスカした顔が不機嫌そうにスマホを耳に当てて自分と話しているのだと実感できたのだ。
だから、サスケに電話が繋がらなくなった時は、内心動揺していた。サスケになにかあったのか。電話に出られないような状態なのか。サスケまでサクラのように死んだのではないか、と。
「そう……だよな。電波なんだし、離れたら繋がんなくなるよな。へへっ、悪ぃな変なこと聞いちまって。あ、それでさ、それでさ、なんの話だっけ?」
涼馬から言われたことを何度も頭の中で響かせてから、ナルトはいたずら小僧といった雰囲気で話をまた変えた。苦笑いしながら頭をかいて、涼馬に話を促す。
それを見た涼馬は、何かを言いたげに口を開いたあと、少ししてから「その前に」と言って、1人で店の奥へと入っていった。ナルトも視線で追うと、その先にいたのは宮美たちだ。彼は2人が買い物かごを床に置いて棚のスプレーを見比べているのを確認すると、店の入り口までナルトを誘った。
それを見た涼馬は、何かを言いたげに口を開いたあと、少ししてから「その前に」と言って、1人で店の奥へと入っていった。ナルトも視線で追うと、その先にいたのは宮美たちだ。彼は2人が買い物かごを床に置いて棚のスプレーを見比べているのを確認すると、店の入り口までナルトを誘った。
「宮美二鳥さんを拘束すべきかもしれません。」
ナルトは、何も言えなかった。
「うずまきさんには受け入れてもらえないかもしれませんが、彼女は山田奈緒子さんに怪我を負わせ、他にも幼児を殺害した疑いがあります。状況を考えれば、彼女の行動もわかります。ですが、このまま彼女を連れて歩くのは私たちにとっても彼女にとっても危険です。」
事前に考えていたのだろう。涼馬の説明は淀みなかった。そして、その言葉に、反論は無かった。できなかったのではない。同じことを考えていたのだ。
ナルトの知る一般人の子供というと、この間の波の国で出会ったイナリだ。波の国を牛耳るガトーたちに父親代わりであるカイザを殺された彼はナルトとの交流を通して絶望を克服して勇気を出すことができたのだが、その顛末はさておき。いま大事なことは、イナリや彼が協力を呼びかけた住人が武器を手に取りならず者を追い出したこと。
子供でも武器を持てば、人を殺せる。ナルトのような忍者でなくても、銃があれば大人の忍者も殺せる。波の国ではそんなことは起きず、イナリだって誰かを傷つけることなんてなかったが、ここでは違う、殺せてしまえる。
もし波の国にこんなにも銃があったら、ガトーたちはあんな支配をできなかっただろう。誰もが銃を持つ社会で力による支配などしようとすれば、どんな地獄になるか。それはかつての忍界にも重なる。ナルトより年下であっても、何十人と殺害できる人間が力だけが正義の世界で生きる。そのことがどんな悲劇を産んだのかは今のナルトは知らないが、とてもシンプルな一例が、ナルトに理解させる。
銃なんてもんが無ければ、忍者のサクラが殺されることなんてなかったんじゃないか、と。
ナルトの知る一般人の子供というと、この間の波の国で出会ったイナリだ。波の国を牛耳るガトーたちに父親代わりであるカイザを殺された彼はナルトとの交流を通して絶望を克服して勇気を出すことができたのだが、その顛末はさておき。いま大事なことは、イナリや彼が協力を呼びかけた住人が武器を手に取りならず者を追い出したこと。
子供でも武器を持てば、人を殺せる。ナルトのような忍者でなくても、銃があれば大人の忍者も殺せる。波の国ではそんなことは起きず、イナリだって誰かを傷つけることなんてなかったが、ここでは違う、殺せてしまえる。
もし波の国にこんなにも銃があったら、ガトーたちはあんな支配をできなかっただろう。誰もが銃を持つ社会で力による支配などしようとすれば、どんな地獄になるか。それはかつての忍界にも重なる。ナルトより年下であっても、何十人と殺害できる人間が力だけが正義の世界で生きる。そのことがどんな悲劇を産んだのかは今のナルトは知らないが、とてもシンプルな一例が、ナルトに理解させる。
銃なんてもんが無ければ、忍者のサクラが殺されることなんてなかったんじゃないか、と。
「わかるってばよ。二鳥がわざと撃ったとは思えねえ。きっと、パニクっちまっただけなんだと思う。でもそれで殺しちまったんだから、ほっとけねえよな。」
「……ありがとうございます。」
「でもさ、それって二鳥だけじゃねえんじゃねえか。オレだって、警察署で銃使ったけど、今になって考えたら、誰かに当たってたかも知んねえ。神楽だって、本当は当たったのに、黙っててくれるだけかもって、そんな気がして……」
「……ありがとうございます。」
「でもさ、それって二鳥だけじゃねえんじゃねえか。オレだって、警察署で銃使ったけど、今になって考えたら、誰かに当たってたかも知んねえ。神楽だって、本当は当たったのに、黙っててくれるだけかもって、そんな気がして……」
少しの間2人の間に沈黙が流れてから、ナルトは「お前、ちょっとサスケに似てるってばよ」と言った。
「かしこそうだしさ、ずっと隙見せねえところとか。だから。」
「一人でなんでもしなくてもいいんじゃねえか?」
「……へへっ、なんてな。こんなこと言ってっけどさ、頼みがあるんだ。ぶっちゃけチャクラ切れてて、当分忍術は使えねえ。もし、オレが動けなくなったら、アイツら連れて逃げてくれ。オレ1人ならなんとかすっからさ。それと……サクラちゃんを殺した奴を見つけたら、手を出さないでくれ。オレとサスケでぶっ殺したいんだ。」
「一人でなんでもしなくてもいいんじゃねえか?」
「……へへっ、なんてな。こんなこと言ってっけどさ、頼みがあるんだ。ぶっちゃけチャクラ切れてて、当分忍術は使えねえ。もし、オレが動けなくなったら、アイツら連れて逃げてくれ。オレ1人ならなんとかすっからさ。それと……サクラちゃんを殺した奴を見つけたら、手を出さないでくれ。オレとサスケでぶっ殺したいんだ。」
ナルトの顔は、話すうちに苦笑いから、怒りを滲ませたものへと変わっていった。目尻が上がり、牙を剥くように口が横に開く。身体からは微かに赤いオーラすら見えるようであった。
明らかに殺意を感じられた。誰が見ても明らかなほどに。生還士としては、止めるのが本分だろう。それを涼馬が口に出せないのは、ナルトの気迫がそれだけのものだからかそれとも。
明らかに殺意を感じられた。誰が見ても明らかなほどに。生還士としては、止めるのが本分だろう。それを涼馬が口に出せないのは、ナルトの気迫がそれだけのものだからかそれとも。
絞り出すように言った涼馬の言葉に、そのこれまでと違う口調に、ナルトは目を開く。そしてモゴモゴと口を動かして、何度も開きかけては閉じて、そして「縁起でもねえなあ」とまた苦笑いしながら言った。
「おう、考えてやるよ。」
お互い相手に言いたいことはある。言わなくてはいけないことも、言えないこともある。
それでもこの場では、これが最適な対応だと、互いに思っていた。
それでもこの場では、これが最適な対応だと、互いに思っていた。
「よし、そろそろ行こうぜ。病院の、誰だっけ?」
「松野さんと弱井さんです。」
「そうだったな。でもよお、なんでそいつらんとこ行くんだ? 予定になかったじゃん。」
「実は、さっき警察署に電話したときに、彼らと連絡がつかなくなったと言われました。それに……宮美さんたちを拘束するのなら、不測の事態が起きたときの為にも病院の方が良いと思います。」
「でもさ、でもさ、アイツら納得しねえだろ。」
「霊安室に遺体を安置する、と言えば断られないはずです。」
「松野さんと弱井さんです。」
「そうだったな。でもよお、なんでそいつらんとこ行くんだ? 予定になかったじゃん。」
「実は、さっき警察署に電話したときに、彼らと連絡がつかなくなったと言われました。それに……宮美さんたちを拘束するのなら、不測の事態が起きたときの為にも病院の方が良いと思います。」
「でもさ、でもさ、アイツら納得しねえだろ。」
「霊安室に遺体を安置する、と言えば断られないはずです。」
ナルトは思った。コイツの怖いとこもサスケに似ていると。そして、わざわざ10分かそこらの為に遺体を冷凍庫に入れといたのかと。
「……わかったってばよ。2人にはオレから話しとく。」
「お願いします。」
「お願いします。」
遺体を積みなおしに行く涼馬を見送ると、ナルトはさぁてどうしたものかと思いながら宮美姉妹の元へ向かった。
それから少しあと、4人は車に乗って走り出した。向かうは松野おそ松たちが消息を絶った病院へ。それぞれの思惑と、物言わなくなった4つの死体を載せて車は進んでいく。車内に会話は無い。無音が満ちるその空間を破られたのは、スマホが鳴り出した時だった。
手に取った涼馬は、画面の時計が6時30分を認めて、「一度停めます」と言った。
電話会議の時間だ。
手に取った涼馬は、画面の時計が6時30分を認めて、「一度停めます」と言った。
電話会議の時間だ。
『もしもし、みなさん聞こえますか。こちらは警察署です。私は天地神明、司会を務めます。音声の問題があるので順番に話していただきたいと思います。まずは、風見さんから、聞こえますか。』
頭の中で名前と顔を一致させてから、涼馬は応答した。
「風見涼馬です。こちらは音声良好です。現在地は警察署近辺を乗用車で移動中です。」
「青い方が見やすいかな、やっぱ白の方がええ?」
なんとかどうでもいいことを口に出す。そうしていないと良くない考えばかり頭に湧いて出てくるから。
宮美二鳥は、宮美一花に絶え間なく話しかけ続ける。
宮美二鳥は、宮美一花に絶え間なく話しかけ続ける。
「道路に落書きなんてこんな場所やなかったら絶対できへんもんね。こんな場所やなかったら……こんな……」
何度も言葉が途絶えても、その度に会話を再会する。一花が自分の手の届くところ、会話のできるところにいると確かめるように。
「……やっぱり、黄色かな。逆に緑も──」
「二鳥。」
「うわあなんや急にリアクションすな!」
「二鳥。」
「うわあなんや急にリアクションすな!」
それまで上の空だと思っていた一花から声が返ってきて、二鳥は大仰にツッコむ。そのことが嬉しいと、微かに微笑む顔が物語っている。そしてその顔が曇るのに、ほとんど時間はいらなかった。
『うずまきさんには受け入れてもらえないかもしれませんが、彼女は山田奈緒子さんに怪我を負わせ、他にも幼児を殺害した疑いがあります。状況を考えれば、彼女の行動もわかります。ですが、このまま彼女を連れて歩くのは私たちにとっても彼女にとっても危険です。』
聞こえてきた言葉に、口が閉じる。その後も聞こえてくる涼馬とナルトの言葉に、瞳を揺らしながら聞き入って、ようやく声が出た。
「それ、なんや。盗聴?」
「ここで見つけたスマホを通話したままナルトくんの持ってた荷物に入れたの。」
「ここで見つけたスマホを通話したままナルトくんの持ってた荷物に入れたの。」
事も無げに言ってみせた一花を、二鳥は言葉も無く目を見開いて見つめる。その間に一花は、二鳥の後ろに回り込むと、ツインテールを解いて素早くポニーテールにした。
「ちょ、ちょっと待ってえな。なんなん?」
「聞いたでしょ、このままじゃあなたはアイツらに捕まる。」
「聞いたでしょ、このままじゃあなたはアイツらに捕まる。」
二鳥に言葉を返しながら、一花はポニーテールを解くとツインテールを作った。そして2人の髪留めを交換する。またたく間に、2人の容姿が入れ替わった。
「まさか、アカン、そんなのアカンよ! 一花!」
「お願い二鳥、逃げて。そして三風を見つけて。」
「待ってよ、それで一花が捕まったら意味ない!」
「大丈夫、アイツらは殺しはしないはず。」
「やったら!」
「あなたにまで死んでほしくないっ。」
「お願い二鳥、逃げて。そして三風を見つけて。」
「待ってよ、それで一花が捕まったら意味ない!」
「大丈夫、アイツらは殺しはしないはず。」
「やったら!」
「あなたにまで死んでほしくないっ。」
一花は声を密やかに、しかしハッキリと言った。
「……四月の顔、見た?」
「……うん。」
「眠ってるみたいだったよね。ほら、川の字で寝たあの時みたい。」
「……」
「この世で4人だけの四つ子なの……妹が、これ以上あんな目に合うなんて……ううん、捕まるだけでも、私には耐えられない……」
「……一花。」
「……うん。」
「眠ってるみたいだったよね。ほら、川の字で寝たあの時みたい。」
「……」
「この世で4人だけの四つ子なの……妹が、これ以上あんな目に合うなんて……ううん、捕まるだけでも、私には耐えられない……」
「……一花。」
どちらともなく、抱き合っていた。気づけば自分と同じ姿の姉妹と頬を寄せ合い、2人の涙が1つの筋へと変わる。
「お願い、生きて。生きて三風を助けて。」
「……お姉ちゃん。」
「……お姉ちゃん。」
強く己を抱き締める姉に、妹は何も言えず、ただそう呼ぶだけだ。
元はといえば、自分が撃ったからなのに。撃って当たったかもしれないからなのに。
そう謝ろうとしているのに、言葉になるのは姉を呼ぶ声だけ。そんな自分が嫌で、涙と共に心の中のモヤモヤをぶちまけてしまおうとして。
元はといえば、自分が撃ったからなのに。撃って当たったかもしれないからなのに。
そう謝ろうとしているのに、言葉になるのは姉を呼ぶ声だけ。そんな自分が嫌で、涙と共に心の中のモヤモヤをぶちまけてしまおうとして。
「……ナルトくんが来たわ。一花、一花! なに泣いとんねん。」
そう言う姉の声に、妹は開きかけた口を、閉ざした。
「……そう、だね。二鳥、行こう。」
「……なんや、やればできるやない。さっすが姉妹やな。」
「……なんや、やればできるやない。さっすが姉妹やな。」
ぎこちなく笑いながら言う姉を見て、妹はさっきまでの自分もこんな顔だったのかと思った。
ナルトに呼ばれ乗り込んだ車は、心なしか冷たかった。それが後ろに積まれた四月たちの温度なのかは、二鳥にはわからない。冷ややかなのは温度だけではなく、場の空気もだ。これまで積極的に話していたナルトは何かを考え込むように静かになり、涼馬も無言でハンドルを握る。二鳥たちも下手に喋ってボロを出したくないから黙っていた。入れ替わる前から喋ってなかった、が。
やがて始まったのは、電話による情報共有だった。それぞれのグループにいる名前を呼んでいく。
途中で涼馬がナルトの知り合いについて聞いたが、男同士で視線をいくつか交わしただけで、深く聞かずに次の話題に移る。薄情だと思ったが、直ぐにそれどころではなくなった。
途中で涼馬がナルトの知り合いについて聞いたが、男同士で視線をいくつか交わしただけで、深く聞かずに次の話題に移る。薄情だと思ったが、直ぐにそれどころではなくなった。
『……こちらのグループに、その宮美二鳥さんたちから銃撃を受けたと言う方がいます。その際に小さな男の子も射殺されたと。』
それが四宮かぐやの声だと二鳥にはわからなかった。警察署で共に過ごした時間もあったが、彼女の関心は全くかぐやには向けられていなかったからだ。
しかしその内容はクリティカルに彼女の心を動かす。宮美二鳥が銃を撃った。その時小さな男の子が撃ち殺された。つまり、宮美二鳥が、殺した──
しかしその内容はクリティカルに彼女の心を動かす。宮美二鳥が銃を撃った。その時小さな男の子が撃ち殺された。つまり、宮美二鳥が、殺した──
「一花……」
不安げに伸ばされた手。それに縋り付きたくなって、しかし『一花』だと思い直して、落ち着いたフリをして握りしめ返す。
『……………わかりました。この件に関してはこちらのグループにも情報を持っている方がいるようですが、まだまとまっていません。次回の会議までに準備を整えておきますので、みなさんも情報をまとめておいてください。』
誰だかわからないが、そう言ってくれて助かった。今はとにかく、その話題から離れたかった。
「──宮美四月──」
そして死者の名前を共有する番になって、二鳥はまた耳を閉ざした。
車が動き出したのは、停まってから30分後のことだった。
随分と長く感じたが、それはこの殺し合いに巻き込まれてからずっとだ。
そこからまた時間が流れて、ようやく病院が見えてきたところで、一花は二鳥の手を改めて強く握る。そうして目を合わせて力強く頷いた途端、車の勢いが上がった。
随分と長く感じたが、それはこの殺し合いに巻き込まれてからずっとだ。
そこからまた時間が流れて、ようやく病院が見えてきたところで、一花は二鳥の手を改めて強く握る。そうして目を合わせて力強く頷いた途端、車の勢いが上がった。
「倒れている人がいました。」
車を少し離れたコインパーキングに入れてから、ようやく涼馬は言った。
「病院の入り口、駐車場の辺りです。私とうずまきさんで見てきます。宮美さんたちはここにいてください。」
「わかったってばよ。」
「わかったってばよ。」
涼馬はナルトを伴って車外に出て行く。逃げるなら、今しかない。二鳥はそう思ったが、一花は動かなかった。
「アカンで、そんなことしたら、『宮美二鳥は人を殺して逃げた』って大勢に思われる。だから、逃げるのは一花だけや。」
ここで宮美二鳥が逃げれば、先の電話会議に参加した全てのグループにそのことが共有されてしまう。そうすれば何十人もの参加者に、殺し合いに乗った人間だと誤解されかねない。そのことはわかっても、「でも」と言葉が出る。ギュッと手を強く握られて、目で訴えられている。それがどのぐらい続いたのだろう。いつの間にか、涼馬が帰ってきた。
「おそ松さんとトト子さんが倒れていました。それと……宮美さんたちと同じ制服の方も。」
そしてその言葉に、心臓が止まった気がした。
宮美姉妹の反応を見て、慌てて涼馬が付け加える。
宮美姉妹の反応を見て、慌てて涼馬が付け加える。
「宮美さんたちとは体格とかが似ていませんでしたし、片方は男の人です……それと、近くに他の女性の方も倒れていましたが、こっちも宮美さんたちとは似ていませんでした。」
「「ほんと?」」
「「ほんと?」」
姉妹の声が重なる。涼馬は頷くと、「うずまきさんと遺体を病院の霊安室へ運びました」と言って、2人を慎重に病院へと案内した。
「ちょっと、四月たちは?」
なんとか一花らしく聞いた二鳥に、「うずまきさんが安全を確認したあとで運んできます」と返ってくる。
「私は2人を護衛します。近くに危険な参加者がいるかもしれないので、離れないで着いてきてください。」
そうして案内されたのは病院の最上階にある一室だった。銃を構えて階段を登っていく涼馬の後を少し息を荒げて着いていく。そうして部屋に誰もいないことを確認すると、涼馬は2人を招き入れてから電話をかける。そしてすぐに、「写真を撮ったので、確認してください」と言われた。
「「…………」」
結論を言えば、2人は安堵した。顔が一目見て誰だかわからないほどに撃たれてはいるが、1人は男子の制服だったし、1人は女子の制服だが明らかに彼女たちとは背格好が違う。
そして安堵してから、涼馬の視線に気がついた。
そして安堵してから、涼馬の視線に気がついた。
「知り合いですか?」
「い、いや、知らへんよ、なあ一花?」
「う、うん。知らない。わからない。」
「い、いや、知らへんよ、なあ一花?」
「う、うん。知らない。わからない。」
自分たちを見比べる涼馬に、変装を見透かされているような恐怖を感じる。そして二鳥の顔に冷や汗が大量に流れているのにようやく気づいた。死体を見せられて、それも射殺されたらしいものを見せられて明らかに動揺している。一目瞭然にその体は震えている。
「お姉ちゃんにこんなの見せないで! 見るのはうち1人でええやろ!」
「ま、待って、大丈夫だから。私も見るから。」
「風見くん、ええやろ? な? ほら、顔真っ青やん、気分悪いんやろ? お姉ちゃんには見せんといて!」
「大丈夫だから! 風見くん気にしないで、ヘーキだから私。一緒にいるから。」
「ま、待って、大丈夫だから。私も見るから。」
「風見くん、ええやろ? な? ほら、顔真っ青やん、気分悪いんやろ? お姉ちゃんには見せんといて!」
「大丈夫だから! 風見くん気にしないで、ヘーキだから私。一緒にいるから。」
その押し問答は演技であって演技でなかった。
2人の視線が重なる。互いに強い意思を込めて見つめ合う。ここで宮美一花と宮美二鳥が離れれば、宮美二鳥が逃走できる。ここで宮美一花と宮美二鳥が離れれば、宮美一花が拘束される。
絶対に離れない、妹のそう思った手が姉に振り払われて、そして2人の間に涼馬が割って入った。
2人の視線が重なる。互いに強い意思を込めて見つめ合う。ここで宮美一花と宮美二鳥が離れれば、宮美二鳥が逃走できる。ここで宮美一花と宮美二鳥が離れれば、宮美一花が拘束される。
絶対に離れない、妹のそう思った手が姉に振り払われて、そして2人の間に涼馬が割って入った。
「……ひどい顔してるよ。顔、洗ってきたら。」
「……………………うん。」
「……………………うん。」
これが最後かもしれない、そんなことには絶対にさせないと。
部屋から出ていく前に一度顔を見直してから、歩いて行った。
部屋から出ていく前に一度顔を見直してから、歩いて行った。
「……おまたせ。話、続けよか。」
舞台は整った。ここからは、いかに『二鳥』を演じきるかだ。
二鳥の真似は普段から姉妹たちでしている。外見では絶対に見分けがつかないだろうが、関西弁まではさすがに真似しきれない。それに、ここに来てからのできごとは二鳥と一花で当然違う。そのあたりのボロも出さないように気をつけようと、なるべく言葉少ない会話を心がけようと思った。
涼馬は心配そうな顔で離れていく姉妹を見送ったが、部屋の奥の小部屋へと招いた。コイツにこんな顔ができたのかと少し驚くが、予想通りの展開に気を引き締める。この部屋は見たところ外から施錠できる。つまりは、取り調べてからここに閉じ込めておくつもりなのだろう。
二鳥の真似は普段から姉妹たちでしている。外見では絶対に見分けがつかないだろうが、関西弁まではさすがに真似しきれない。それに、ここに来てからのできごとは二鳥と一花で当然違う。そのあたりのボロも出さないように気をつけようと、なるべく言葉少ない会話を心がけようと思った。
涼馬は心配そうな顔で離れていく姉妹を見送ったが、部屋の奥の小部屋へと招いた。コイツにこんな顔ができたのかと少し驚くが、予想通りの展開に気を引き締める。この部屋は見たところ外から施錠できる。つまりは、取り調べてからここに閉じ込めておくつもりなのだろう。
(時間を稼げば、遠くまで逃げられる。)
ならそれに乗ってやろう。自分が囮になれば、その間に病院から脱出できるはずだ。どこにいるかわからないナルトが気になるが、警戒されているのは宮美二鳥なのだから、こちらに注意が向くはずだ。
「二鳥さん、さっきの電話で、あなたが他の参加者を殺そうとしたという話がありました。」
「……その話をしたかったんやろ。」
「話を聞かせてください。」
「……その話をしたかったんやろ。」
「話を聞かせてください。」
テーブルを挟んで、涼馬と2人でイスに座る。互いに浅く座って、いつでも立ち上がれるようにして。そして涼馬の目をしっかりと見て、口にする。
「何を話せばええねん。なんで撃ったか、誰を撃ったか。うちも突然やったし、ようわからんよ。」
「まずは……二鳥さんが、誰と会ったか。これまでにどんな人と出会ったか、話してください。」
「まずは……二鳥さんが、誰と会ったか。これまでにどんな人と出会ったか、話してください。」
そう来たかと思った。既に電話会議の為に一度出会った人間について二鳥が話している。まさか銃撃についてではなくそこの話を聞いてくるとはと思ったが、よく考えれば二鳥と一緒に撃っていたのだから関係は大いにある。
そこに関しての情報は、駅ビルで深海恭哉から聞いている。二鳥が話した内容と合わせれば、矛盾無く話せる。
「……どこで会ったんですか?」
「どこって言われても、道や。ああ、ルーミィとは、バーっていうん? ああいうので会ったわ。そこで男子とも会ったで。すぐ離れたから名前憶えてないけど、たしか、さっき一花と一緒に警察署に来たやつや。」
「……なるほど。」
「どこって言われても、道や。ああ、ルーミィとは、バーっていうん? ああいうので会ったわ。そこで男子とも会ったで。すぐ離れたから名前憶えてないけど、たしか、さっき一花と一緒に警察署に来たやつや。」
「……なるほど。」
涼馬は考え込むような顔をしながらメモをとっていく。ここまでに間違った情報は話していない。はずだ。断言できるところ以外はあやふやにしている。だいたい、二鳥本人もショックであやふやなのだから、いくらでもごまかしようはあるしそっちの方が自然だろう。そう思いたい。
「その後は。」
「……バーで、しんのすけ君とも会ったんや。みんなで警察署に避難しようってなって。それで、近くで、アイツに会った。」
「……バーで、しんのすけ君とも会ったんや。みんなで警察署に避難しようってなって。それで、近くで、アイツに会った。」
野原しんのすけといつ会ったかを話していなかったことを思い出して、なんとか付け加える。一花本人はしんのすけについての情報がないも同然なので、これからどうしようかと思いながら言葉を紡ぐ。年齢も外見もわからず、たぶん年下で、二鳥の養子時代の弟ぐらいだろうという推察しかできない。しんのすけについて聞かれたらアウトだ、なんとかごまかさなくては。
「……山田さんたちですね。その後、どうしたんですか。」
「…………銃を向けてきた。」
「…………銃を向けてきた。」
山田さんたちって誰だよと、冷や汗が出る。さっきの二鳥の話だと、山田の名前しか出ていなかった。いやよく考えればルーミィと円の名前しか出ずに、単に女に撃たれたぐらいのニュアンスだった。なんで同じ警察署にいたのに名前がわからないんだと思ったが、すぐに銃を撃ち合った2人を近くに会わせたりはしないだろうなと思い直す。だがこれは困った、肝心の銃撃戦の相手についてあまりにも情報が無い。二鳥を気遣って話を避けていたのもあって、話せることなど何もない。
「……突然で憶えてないけど、アイツら撃ってきたんや。それで、しんのすけ君が逃げようとして、待って、ちゃうかもしれへん、あの、わからんけど、とにかく撃ち合ってたら、殺されててん。」
こうなったらあやふやにしてごまかすしかない。そう思いながら話すが、自分でも思っていたよりグダグダな言葉が出てくる。当の二鳥だってたぶんこんなリアクションになるだろうが、それで疑いの目を向けられるのも嫌だ。時間稼ぎということを考えればそれでもいいのかもしれないが、それで人殺し扱いされるのは我慢ならない。
「その後、えっと、ルーミィさんたちはどうしたんですか?」
「え……?」
「え……?」
だが思ってもいなかった質問が来た。ルーミィたちはどうしたか? いやそんなもの答えられるわけがない。そういえば二鳥からそこについての話が全然出てない。なんなら死んだしんのすけについても話が無い。死体をどうしたかについても全くだ。
冷や汗がダラダラ流れる。あまりにも答えようがなさすぎる。全く何も思いつかない。なんとか声を絞り出すが、意味のある文章にならない。こうなったらごまかすしかない。
冷や汗がダラダラ流れる。あまりにも答えようがなさすぎる。全く何も思いつかない。なんとか声を絞り出すが、意味のある文章にならない。こうなったらごまかすしかない。
「あうぅ……よ、よく憶えてない……パニクって逃げたから……みんなとはそれっきりや……」
心臓がバクバクといっている。こんなに痛いのはバスケの試合でも無かった。もはや二鳥の演技もできているか怪しいが、気にかける余裕も無くなってきている。早く取り調べが終わってほしいという気持ちと、なるべく長くやって二鳥が逃げる時間を稼ぎたいという気持ちが胸の中でグルグルしている。
なんとか表に出さないようにしているのに、ビクビクとした感情が顔を強張らせているのが自分でもわかる。涼馬はあいかわらず難しい顔をしてメモをとっている。顔を上げた彼と目が合い、どんなリアクションをすればいいのかわからずに硬直を強める。涼馬はそんな彼女に気づかないのか、次の話に移った。
なんとか表に出さないようにしているのに、ビクビクとした感情が顔を強張らせているのが自分でもわかる。涼馬はあいかわらず難しい顔をしてメモをとっている。顔を上げた彼と目が合い、どんなリアクションをすればいいのかわからずに硬直を強める。涼馬はそんな彼女に気づかないのか、次の話に移った。
「その後、うずまきさんたちと会ったんですね。」
「そ、そうや、ナルトたちと会うてん。それで、一緒に警察署に行ったんや。」
「そ、そうや、ナルトたちと会うてん。それで、一緒に警察署に行ったんや。」
苦しいところにツッコまれなかった安堵から急いで変わった話に乗っていく。そして話し終わってから、不審そうに自分を見つめる涼馬に気づいて、背筋が寒くなった。
しまった、涼馬はナルトとときどき2人で話していたし、その時に情報交換をしていたのかもしれない。そうなると、ナルト周りの話でボロが出ればすぐに気づかれてしまうだろう。
どこに怪しい点があったのか、そもそも本当に怪しまれているのか、何もわからない中、また冷や汗が額や首に溢れてくる。嘘をつくことがこんなにも苦しいことだなんて想像を超えていた。ジリジリとしたものを感じながら、次の涼馬の言葉を待つ。スルーして次の話に移ってくれるのか。それとも深掘りしに来るのか。二鳥はなんと話していただろうかして飛んでくる質問に備えて頭をフル回転させて、記憶を呼び起こすと共に想像力を働かせる。おかしいことを言っても記憶違いだとごまかせるようなラインの、信憑性のある言葉を、と思っていたところに。
しまった、涼馬はナルトとときどき2人で話していたし、その時に情報交換をしていたのかもしれない。そうなると、ナルト周りの話でボロが出ればすぐに気づかれてしまうだろう。
どこに怪しい点があったのか、そもそも本当に怪しまれているのか、何もわからない中、また冷や汗が額や首に溢れてくる。嘘をつくことがこんなにも苦しいことだなんて想像を超えていた。ジリジリとしたものを感じながら、次の涼馬の言葉を待つ。スルーして次の話に移ってくれるのか。それとも深掘りしに来るのか。二鳥はなんと話していただろうかして飛んでくる質問に備えて頭をフル回転させて、記憶を呼び起こすと共に想像力を働かせる。おかしいことを言っても記憶違いだとごまかせるようなラインの、信憑性のある言葉を、と思っていたところに。
「な、なんや。」
ガコン。
「誰だ?」
音を立てて部屋のドアが開いた。倒れるように入り込んできたのは、腹に黒いナイフのようなものが刺さったナルトだった。
(刺されてる!? なんで、どうして。)
部屋の入り口で、ナルトは膝立ちになってうずくまる。腹を両手で抑えて、俯いて表情はよく伺えないものの顔は苦痛に歪み、目は固く閉じられている。ハァハァと荒い息をするばかりで、言葉を話そうとしても咳き込んでは苦しげなうめき声を上げるばかりだ。
一体なぜ、どうして、二鳥が、そんなことできるはずがない、では誰が、さっき見せられた死体を殺した奴か。混乱が深まる中、ナルトの動きに気づく。涼馬が歩み寄ったのと同時に、ナルトが腹を抑えていたその手に、小さな銃が握られているのが見えた。
一体なぜ、どうして、二鳥が、そんなことできるはずがない、では誰が、さっき見せられた死体を殺した奴か。混乱が深まる中、ナルトの動きに気づく。涼馬が歩み寄ったのと同時に、ナルトが腹を抑えていたその手に、小さな銃が握られているのが見えた。
「待って、銃が!」
「待たねえ!」
「メ!?」
「待たねえ!」
「メ!?」
そして涼馬は思いっきりナルトを殴り飛ばした。
唖然とする間にもナルトは構えようとした拳銃を取り落とし、さらに状況が変わる。ナルトの姿がグズグズと崩れていき、ピンクのスライム状の何かに変わったのだ。
唖然とする間にもナルトは構えようとした拳銃を取り落とし、さらに状況が変わる。ナルトの姿がグズグズと崩れていき、ピンクのスライム状の何かに変わったのだ。
「え!?」
更に涼馬の方にも変化が現れる。ポフンと音を立てて煙が立ったと思えば、そこにいたのは先程までうずくまっていたその姿、うずまきナルトに変わったのだ。
「えぇっ!?」
「メ……メタァ……」
「へへへへ、ナルトはオレだってばよ!」
「ええーっ!?」
「メ……メタァ……」
「へへへへ、ナルトはオレだってばよ!」
「ええーっ!?」
わけがわからない。
ナルトが妙なスライムになったと思ったら、涼馬がナルトになった。その非現実的な光景に演技が崩れる。実際は一花も二鳥も同じリアクションをするのだが、動揺したことに違いはない。そしてその隙を逃さんとばかりに、ナルトはビシッと指を突きつけて言った。
ナルトが妙なスライムになったと思ったら、涼馬がナルトになった。その非現実的な光景に演技が崩れる。実際は一花も二鳥も同じリアクションをするのだが、動揺したことに違いはない。そしてその隙を逃さんとばかりに、ナルトはビシッと指を突きつけて言った。
「んでもって二鳥! お前一花だろ!」
「な、なにを証拠にそんなこと!」
「証拠は、お前が『しんちゃん』を『しんのすけ』って言ったことだってばよ! 二鳥は1回も『しんのすけ』なんて名前言ったことねえ!」
「! ぐっ、ぐぐ……!」
「最初誰のこと話してんだって思ったってばよ。」
「な、なにを証拠にそんなこと!」
「証拠は、お前が『しんちゃん』を『しんのすけ』って言ったことだってばよ! 二鳥は1回も『しんのすけ』なんて名前言ったことねえ!」
「! ぐっ、ぐぐ……!」
「最初誰のこと話してんだって思ったってばよ。」
ぐうの音も出ないとはまさにこのことだ。ナルトの言葉に反論できず、二鳥、もとい、一花は、唸り超えを上げるしかない。
その反応を見てナルトは心中でホッとする。カマをかけたのが上手く行ったと。
実際は、ナルトは違和感を覚えていても一花だと見破れてまではいなかった。自分と違って賢そうな涼馬と話しているから、あだ名で呼ぶのを止めていただけかと思った。だが話の中で全体的に不自然さを感じる部分もあれば、歯切れの悪さもある。とはいえ、ナルトには尋問のノウハウどころか人と話すノウハウもないのと、涼馬の演技をするのに必死すぎて、自白させる方法などまるで思いつかない。そもそも何を話せばいいかわからなかったから時系列で聞いていただけなのだ。
そこに現れたのが、自分に変化したメタモンである。本物を前に現れた偽物を目にして、ここでナルトが閃く。自分や目の前の偽ナルトのように、この二鳥も誰かの変装なのではないかと。
その反応を見てナルトは心中でホッとする。カマをかけたのが上手く行ったと。
実際は、ナルトは違和感を覚えていても一花だと見破れてまではいなかった。自分と違って賢そうな涼馬と話しているから、あだ名で呼ぶのを止めていただけかと思った。だが話の中で全体的に不自然さを感じる部分もあれば、歯切れの悪さもある。とはいえ、ナルトには尋問のノウハウどころか人と話すノウハウもないのと、涼馬の演技をするのに必死すぎて、自白させる方法などまるで思いつかない。そもそも何を話せばいいかわからなかったから時系列で聞いていただけなのだ。
そこに現れたのが、自分に変化したメタモンである。本物を前に現れた偽物を目にして、ここでナルトが閃く。自分や目の前の偽ナルトのように、この二鳥も誰かの変装なのではないかと。
(へへっ! 変化の術では負けねえってばよ!)
「ナルト! 下!」
「へ? うわあああ!」
「ナルト! 下!」
「へ? うわあああ!」
一花と二鳥の入れ替わりを見抜き悦に入っていたナルトに、一花の声とメタモンの顔への張り付きがかかるのは同時だった。
メタモンにとっては大きな誤算だった。神谷薫たち一向に撃退されてから傷を癒やすことに専念してきたが、その間薫たちの追跡を続けていた。メタモンのへんしんを持ってすれば、気づかれずに後ろを着いていくなど容易である。深手を負っているので仕掛けるのは難しいが、3人もの参加者を見失うのは惜しいし、泳がせておけばもっと大きな集団になるかもしれない。殺害数による得典が追加されてからはますますそう考えていたが、結果は別のグループに出会ったと思えば直ぐに皆殺しにされ、殺した側も1名を除いて全滅。これでは脱出が遠のくばかりだ。
せめて1人だけでもと病院に姿を消した人間を追うが、距離があったのもあって見逃してしまう。そうして、傷を癒やしてから捜索しようと病院近くでコンクリートにへんしんして身を休めていたところに現れたのがナルトたちだった。
物の多い室内ならへんしんで溶け込みやすく武器も手に入って一石二鳥だ。加えて、殺し合いに乗っているさっきの人間にこの4人を殺されてしまえば脱出が絶望的に遠のいてしまう。もっと体を休めてから戦いに行きたいのが本音だが、無理をしてでも攻めに行く。そしてそれが仇になった。
メタモンにとっては大きな誤算だった。神谷薫たち一向に撃退されてから傷を癒やすことに専念してきたが、その間薫たちの追跡を続けていた。メタモンのへんしんを持ってすれば、気づかれずに後ろを着いていくなど容易である。深手を負っているので仕掛けるのは難しいが、3人もの参加者を見失うのは惜しいし、泳がせておけばもっと大きな集団になるかもしれない。殺害数による得典が追加されてからはますますそう考えていたが、結果は別のグループに出会ったと思えば直ぐに皆殺しにされ、殺した側も1名を除いて全滅。これでは脱出が遠のくばかりだ。
せめて1人だけでもと病院に姿を消した人間を追うが、距離があったのもあって見逃してしまう。そうして、傷を癒やしてから捜索しようと病院近くでコンクリートにへんしんして身を休めていたところに現れたのがナルトたちだった。
物の多い室内ならへんしんで溶け込みやすく武器も手に入って一石二鳥だ。加えて、殺し合いに乗っているさっきの人間にこの4人を殺されてしまえば脱出が絶望的に遠のいてしまう。もっと体を休めてから戦いに行きたいのが本音だが、無理をしてでも攻めに行く。そしてそれが仇になった。
「ぶもっ!? ばばべほ!!」
必死に顔に貼り付いたメタモンを引き剥がそうとするナルトだが、メタモンも必死だ。敵の仲間にへんしんして皆殺しにするはずがまさか敵もへんしんできるとは。それはメタモンのアイデンティティを揺るがせる事態である。加えて、ここまでにへんしんを続けていたのとダメージのせいで、もはやまともにへんしんができなくなっている。しばらく休むほかないが、その為にはまずここから逃げなくてはならない。だがそのためにはへんしん無しで追撃を振り切るしかない。そんな芸当がへんしんをとくいわざとするメタモンにできるはずがない。
「ももも、ブモモモ!?」
こうなったら残る手は1つ、わるあがきだ。
メタモンはナルトの顔に張り付くと窒息させにかかった。目や鼻はガードされてしまったものの、ガードの上から口まで張り付き、息をできなくする。なりふり構わない文字通りのわるあがきはメタモン自身のHPも深刻に削るが、素早さで負けている相手ににげるのは無理だ、ここで殺しきらなくては。
メタモンはナルトの顔に張り付くと窒息させにかかった。目や鼻はガードされてしまったものの、ガードの上から口まで張り付き、息をできなくする。なりふり構わない文字通りのわるあがきはメタモン自身のHPも深刻に削るが、素早さで負けている相手ににげるのは無理だ、ここで殺しきらなくては。
「どうしよう……どうしたらいい?」
くぐもった声を上げて足をばたつかせて床でもんどり打つナルトと、そのナルトの顔面に張り付くメタモンを見て、一花は戸惑う。続々と起こる怪奇現象に正体を見破られたショックで冷静でいられない。とりあえず何かしようとメタモンが取り落とした拳銃を拾い上げた。だが、それを構えることはできない。メタモンを撃てばナルトごと撃ってしまう。敵でもないナルトを撃つことなどできない。
(──本当に敵じゃないの?)
ピクリと銃口が上がった。
二鳥を捕まえようとしたナルトは、味方だと言えるのだろうか?
彼が殺すほど悪い人間でないことはわかっている。わかってはいるが、時と場合によっては殺すしかない場合もあるのかもしれない。たとえば、人を殺すモンスターに襲われてもう助からない時、とか。
このままモンスターに殺されてしまえば、ナルトの死はマーダーを有利にすることになる。だが一花がモンスターを殺せば、その結果ナルトも死んでしまえば、ナルトの死はマーダー1人を倒し更に一花が脱出へと近づくものになる。
一花の銃口がメタモンへ、ナルトへと向く。ナルトはもう助からない、引鉄を引けばマーダーを殺せる、ナルトを無駄死にさせないで済む、ナルトの死をマーダーを利するものではなく一花のためのものになる、自分のためにナルトは死んでくれる、四月のように死んで──
二鳥を捕まえようとしたナルトは、味方だと言えるのだろうか?
彼が殺すほど悪い人間でないことはわかっている。わかってはいるが、時と場合によっては殺すしかない場合もあるのかもしれない。たとえば、人を殺すモンスターに襲われてもう助からない時、とか。
このままモンスターに殺されてしまえば、ナルトの死はマーダーを有利にすることになる。だが一花がモンスターを殺せば、その結果ナルトも死んでしまえば、ナルトの死はマーダー1人を倒し更に一花が脱出へと近づくものになる。
一花の銃口がメタモンへ、ナルトへと向く。ナルトはもう助からない、引鉄を引けばマーダーを殺せる、ナルトを無駄死にさせないで済む、ナルトの死をマーダーを利するものではなく一花のためのものになる、自分のためにナルトは死んでくれる、四月のように死んで──
「死んでいいわけあるかあっ! ナルトから離れろヌメヌメ!」
ガッ!と手でメタモンを鷲掴みにすると、一花は引き剥がしにかかった。理屈は投げ捨てた。ただシンプルに、プリミティブに、やりたいことをやる。宮美一花は目の前で人が死ぬことを良しとしない、それだけだ。
「プハァ!!」
「頑張って!! 息をして!!」
「頑張って!! 息をして!!」
なんとかメタモンが顔からべリリと剥がれ始める。それに焦るメタモンだができることはない。顔の皮ごと剥がされてしまえば、打つ手は他の場所で顎などの出っ張りに引っ掛ける力を強めて、再び鼻と口を完全に塞ぎにかかることぐらいだ。そうして必死にしがみつくメタモンの耳に聞こえてきたのは、リズミカルな物音。それが足音だと気づいたときには手遅れだった。
「これは。」
「助けて! なんか気持ち悪いのがナルトの顔に!」
「助けて! なんか気持ち悪いのがナルトの顔に!」
やめろ、とメタモンが声を上げることはできない。既に拮抗状態は崩れたというのに、現れた涼馬は即座に状況を飲み込むと、デイパックからマイナスドライバーを手際良く取り出す。それを見てもメタモンにできることはもはやない。逃げるのは無理だ、疲れ果てている。殺しても意味が無い、そもそも殺害が間に合わない。詰みだ。自分は死ぬ。
涼馬が慎重に、しかし正確にメタモンへとマイナスドライバーを突き立てる。ナルトの顔の皮膚の上1cmも無い所に、ズブリとメタモンの肉体に金属棒が突き刺さっていく。へんしんで異物を避けるように肉体を動かす。そんな起死回生の手段をとれるだけの力があるならこんな絶体絶命に陥っていない。ナルトに張り付くあまり柔軟性を失った細胞が、ドライバーによって不可逆の傷を負わされていく。
涼馬が慎重に、しかし正確にメタモンへとマイナスドライバーを突き立てる。ナルトの顔の皮膚の上1cmも無い所に、ズブリとメタモンの肉体に金属棒が突き刺さっていく。へんしんで異物を避けるように肉体を動かす。そんな起死回生の手段をとれるだけの力があるならこんな絶体絶命に陥っていない。ナルトに張り付くあまり柔軟性を失った細胞が、ドライバーによって不可逆の傷を負わされていく。
(────!)
頭の中でアラームが鳴り響く。それがひんしを警告する音で、今まさに自分が致命傷を負わされているのを自覚しながら、メタモンの意識は闇に解けていった。
「ぷはあっ! ハァ、ハァ。」
息を取り戻したナルトと、硬化して顔から剥がれ落ち何かを見比べながら、涼馬は慎重にナルトの容態を確かめる。
ドライバーを阻む抵抗が無くなった途端にドライバーはピンク色の肉塊の中にあった首輪に突き刺さったようで、爆発するような光と共にドライバーを取り込んだまま急速に固まりだした。慌てて顔から引き剥がしたために大事には至らなかったが、処置があと数秒遅れていれば、顔から切除することは難しかったかもしれない。
さて呼吸の回復と顔の傷のどちらを優先するかと思案していると、ナルトは腕を伸ばして二鳥の、一花の足を掴んだ。
ドライバーを阻む抵抗が無くなった途端にドライバーはピンク色の肉塊の中にあった首輪に突き刺さったようで、爆発するような光と共にドライバーを取り込んだまま急速に固まりだした。慌てて顔から引き剥がしたために大事には至らなかったが、処置があと数秒遅れていれば、顔から切除することは難しかったかもしれない。
さて呼吸の回復と顔の傷のどちらを優先するかと思案していると、ナルトは腕を伸ばして二鳥の、一花の足を掴んだ。
「い……ちか……」
「……なるほど。」
「……なるほど。」
それで充分だった。ナルトが涼馬の目の前で己に変化したときから考えていたのだ。一花と二鳥、あの2人に入れ替われたら見分けがつかないと。
「宮美一花さん、うずまきナルトさんの救助に協力していただいてありがとうございます。」
その言葉は一花には、業務的というよりは距離を感じさせるものだった。親しみがない、親しくするわけにはいかない相手に向けられる敬語だと、涼馬の目は雄弁に語っていた。
「ですが、あなたを拘束する必要があります。理由はもちろんおわかりですね?」
「……うちは二鳥や。捕まる理由はそれでええやろ。」
「……うちは二鳥や。捕まる理由はそれでええやろ。」
たとえ事実だとしても白を切る。一花は意識して関西弁を喋りながら、涼馬の目をしっかりと見て答えた。宮美一花は宮美二鳥だ。一花はなんと言われようと二鳥だ。
そんな一花に、かける言葉は持ち合わせていない。彼女が一花なのか二鳥なのか、証明する方法など何もない。涼馬にできることは、ただ彼女をメタモンの死体と共に部屋に残して、扉に鍵をかけることだけだった。
そんな一花に、かける言葉は持ち合わせていない。彼女が一花なのか二鳥なのか、証明する方法など何もない。涼馬にできることは、ただ彼女をメタモンの死体と共に部屋に残して、扉に鍵をかけることだけだった。
「ハァ……ハァ……サンキューな。」
「悪い、遅れた。立てるか?」
「なんとかな……クソっ、油断したってばよ……変化の術が使えんのはオレだけじゃねえ。」
「悪い、遅れた。立てるか?」
「なんとかな……クソっ、油断したってばよ……変化の術が使えんのはオレだけじゃねえ。」
ナルトの足を重ね、片方の腕を脇の下からつかみ、後ろから吊り上げるようにして部屋から出した後、ドアに鍵をかける涼馬に、ナルトは小さなかすれた声で言ってきて、その回復力に驚きながら返事をした。忍者と言うのは伊達ではないのだろう、さっきまで失神寸前だったのに、数分もせぬうちからしっかりと受け答えできるようになっている。
膝立ちになって震えるナルトに肩を貸して立ち上がらせると、涼馬は何が起こったのか聞いた。まさかナルトたち以外にも擬態能力を持つ参加者がいるとは思わなかったし、明らかに人間でないようなモンスターなのも驚いたし、二鳥が一花だったのも驚いた。そうして話すうちにナルトは1人で歩けるまで回復し、皮膚が剥がれた顔の傷も勝手に止血していた。医者いらず、という言葉が頭を過るほどの健康優良児っぷりである。
膝立ちになって震えるナルトに肩を貸して立ち上がらせると、涼馬は何が起こったのか聞いた。まさかナルトたち以外にも擬態能力を持つ参加者がいるとは思わなかったし、明らかに人間でないようなモンスターなのも驚いたし、二鳥が一花だったのも驚いた。そうして話すうちにナルトは1人で歩けるまで回復し、皮膚が剥がれた顔の傷も勝手に止血していた。医者いらず、という言葉が頭を過るほどの健康優良児っぷりである。
「涼馬、一花を見張っててくれ。二鳥を追わねえと。」
「無茶言うな、歩くのがやっとだろ。お前が見張ってろ。」
「アイツに、二鳥に、妹に会わせてやるって約束したんだ。ほっとけねえんだよ。」
「がんこ者が……なら2人で行くぞ。」
「おい待てよ、一花は?」
「トラップを仕掛ける。」
「無茶言うな、歩くのがやっとだろ。お前が見張ってろ。」
「アイツに、二鳥に、妹に会わせてやるって約束したんだ。ほっとけねえんだよ。」
「がんこ者が……なら2人で行くぞ。」
「おい待てよ、一花は?」
「トラップを仕掛ける。」
そう言うと涼馬は、ドアにスマホを通話状態で置いた。そして自分のスマホをスピーカーにする。
「こうすれば扉をぶち破ろうとすれば音でわかる。」
「おお……やっぱりお前すげえってばよ。」
「おお……やっぱりお前すげえってばよ。」
全く同じことを一花にやられたことなど気づく素振りも見せず、ナルトはシンプルにたまげる。未だにスマホというものがよくわかっていないのだ。ハイテクな電話を使いこなしている涼馬に驚きながら、後ろを小走りで着いて行く。途中でフラつく度に涼馬に支えられ、ナルトは己の息の戻りが悪いことに気づいた。
(なんだってばよ、ずっと苦しい、でもこんなに動けねえわけが……)
しかし息が荒いだけでここまで動きづらいことなどなかなか無く、戸惑う。その原因はチャクラ切れだ。身体エネルギーと精神エネルギーを混ぜたものがチャクラだが、酸欠状態の脳ではどちらも充分に生み出せない。当然にあると思っているものがないのでバランスがとれない。
「こんぐらい! ふぬぬぬぬ!」
そんなもの知るかと脚に力を込める。二鳥を早く連れ戻さねばと、涼馬を追い越して病院の正面玄関から出たところで、しかしまた転び。
パァン。
ナルトの背中から腹へと弾丸が貫通した。
パァン。
ナルトの背中から腹へと弾丸が貫通した。
「! イッテェ!」
「ナルト!」
「ナルト!」
涼馬は直ぐに周囲を見渡した。上だ。病院内から狙撃された。撃ちおろしてきたのは、松野おそ松。
(なぜ生きてる──)
疑問に思いながらも駆け出す。これは涼馬の失策だ。殺人が起こっているにも関わらず、病院という施設の重要性から突入を決断した。ナルトと別れてからクリアリングしていたが不足していた。負傷者がいるかもしれないと焦った。その負傷者が、仲間だったらと。
「バカ! 逃げろ!」
「うるせぇ!」
「うるせぇ!」
そして今また間違えている。人命救助の鉄則だ、助ける側と助けられる側双方の命に危険がある場合、助ける側は己を優先すると。ここはナルトを見捨てる選択が倫理的に正しいと。それはサバイバーなら最初に習うことだ。人を助ける人間はまず自分を助けなければならない。生還士の技能はまずそれを可能とするところから始めていく。
そんなセオリーを無視して、先程ナルトを動かした時のように、徒手搬送法で背後から引っ張っていく。病院への数メートル、その数メートルがあまりにも、遠い。
そんなセオリーを無視して、先程ナルトを動かした時のように、徒手搬送法で背後から引っ張っていく。病院への数メートル、その数メートルがあまりにも、遠い。
パァン。パァン。
涼馬の腕を弾丸が貫通する。どうしても無防備な数秒、その数秒が、涼馬の命を奪っていく。消えた握力を補わんと、ナルトのジャージの襟に噛みつき、ズルズルと引きづる。その間に何発もの弾丸が掃射され、涼馬の背中はまたたく間に赤く染まった。
(──色が消えた、平衡感覚も崩れてる、血圧が、これは──)
「涼馬……お前……どうして……」
「涼馬……お前……どうして……」
なんとか入口の軒下へと転がり込んで、それきり涼馬は動けなくなった。まあそうだろうなと思う。あまりにも弾丸を受けすぎた。10発近くも喰らえばそりゃこうなると、他人事のように冷静に思う。
「……知るか…よ…体が勝手に…動いち…まったんだよ…バカ…!」
最後のバカは、誰に当てた言葉か。口から血を吹き出しながら思う。もう長くない。肺に血が回りだした。もうすぐ意識を失う。そして、涼馬は死ぬ。最期に何か言い残したいと思うが、もはやそれを考える頭も無い。
「涼馬!」
喋ろうとして血を吐く。どうやら言葉も出ないようだ。さっきのが遺言かよと自嘲しながら、涼馬は首からホイッスルを外すと、ナルトへと手を伸ばしたところで意識が消えた。
「ちっくしょう!!!」
そしてそれが、ナルトへと力を与える。
ナルトから赤いチャクラが迸り、チャクラ切れの体に力が沸き起こる。傷が急速に癒え、ナルトは涼馬をキレイに寝かせると、病院を駆け上がった。
途中で、おそ松の死体を見つけた。頭から血を流して死んでいる。さっき降りてくるときはいなかった。誰が殺した? 二鳥だ。二鳥しかいない。
ナルトから赤いチャクラが迸り、チャクラ切れの体に力が沸き起こる。傷が急速に癒え、ナルトは涼馬をキレイに寝かせると、病院を駆け上がった。
途中で、おそ松の死体を見つけた。頭から血を流して死んでいる。さっき降りてくるときはいなかった。誰が殺した? 二鳥だ。二鳥しかいない。
「一花ァ!」
ドアをぶち破りさっきの部屋へと戻る。驚き顔を上げた一花を床へと組み伏せると、ナルトはマウントポジションで拳を振り上げた。
「きゃあっ! な、なにっ?」
「涼馬が死んだ。」
「えっ……」
「病院から出たら撃たれたんだ! 二鳥に!」
「涼馬が死んだ。」
「えっ……」
「病院から出たら撃たれたんだ! 二鳥に!」
そして拳を振り下ろす。
ギュッと目を瞑った一花の横に突き刺さり、リノリウムの床が割れた。
ギュッと目を瞑った一花の横に突き刺さり、リノリウムの床が割れた。
「二鳥はぶっ殺す。」
そう宣言したナルトの目は、キツネのような瞳孔をしていた。
「あっ。」
「えっ、うわああっ!!」
「えっ。」
「えっ、うわああっ!!」
「えっ。」
松野トド松は、永沢君男に軽く、しかし確かに押されると階段を踏み外して転がり落ち、頭を強く打って即死した。
トド松は、兄たちを失った戦いからずっと病院にいた。そして一花と二鳥を見て思った。アイツらさっき殺した奴と同じ制服着てると。
だから殺すことにした。しばらく待っていたら、慌てた様子で階段を駆け下りていく。病院から出るのかと待ち構えていたら、案の定ほぼ真下に出てきた上に、盛大にズッコケてくれた。
撃て。そう兄に言われた気がした。だから撃った。何度も。何度も。そうしてまだ生きていると思ったから、階段を降りて殺しに行こうとして。玉ねぎ頭の少年に突き飛ばされた。
トド松は、兄たちを失った戦いからずっと病院にいた。そして一花と二鳥を見て思った。アイツらさっき殺した奴と同じ制服着てると。
だから殺すことにした。しばらく待っていたら、慌てた様子で階段を駆け下りていく。病院から出るのかと待ち構えていたら、案の定ほぼ真下に出てきた上に、盛大にズッコケてくれた。
撃て。そう兄に言われた気がした。だから撃った。何度も。何度も。そうしてまだ生きていると思ったから、階段を降りて殺しに行こうとして。玉ねぎ頭の少年に突き飛ばされた。
「どうして……どうしてみんな簡単に殺し合うんだよ……」
突き飛ばした永沢は、呆然と、しかしは響いてくる足音に反射的に身を隠した。彼もメタモンと同様にこの病院に来ていた。違いがあるとすれば、薫たちが戦っている間に病院に逃げ込んだことか。そうしてガタガタと震えながら、ナルトたちを信頼できる人間か確かめようと思っていたら、響いたのは銃声。そして、自分が押したら血を流して動かなくなった男性。
「二鳥はぶっ殺す。」
「家に帰して……帰しておくれよ……」
「家に帰して……帰しておくれよ……」
ナルトのドスの聞いた声が響く。永沢は病室のベッドの下で縮こまりながら、少し泣いた。
【0721 『南部』古めの病院】
【うずまきナルト@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
サクラちゃんを殺した奴を殺す。二鳥も殺す。
●中目標
二鳥の妹を探す。
●小目標
一花から二鳥の情報を吐かせる。
【目標】
●大目標
サクラちゃんを殺した奴を殺す。二鳥も殺す。
●中目標
二鳥の妹を探す。
●小目標
一花から二鳥の情報を吐かせる。
【宮美二鳥@四つ子ぐらし(1) ひみつの姉妹生活、スタート!(四つ子ぐらしシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
三風を探す。
●中目標
一花の元に三風を連れて行く。
●小目標
病院から離れる。
【目標】
●大目標
三風を探す。
●中目標
一花の元に三風を連れて行く。
●小目標
病院から離れる。
【宮美一花@四つ子ぐらし(1) ひみつの姉妹生活、スタート!(四つ子ぐらしシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
二鳥と三風と生き残る。
●中目標
二鳥として振る舞う。
●小目標
二鳥が……殺した?
【目標】
●大目標
二鳥と三風と生き残る。
●中目標
二鳥として振る舞う。
●小目標
二鳥が……殺した?
【永沢君男@こども小説 ちびまる子ちゃん1(ちびまる子ちゃんシリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
美人を殺す。
●小目標
???
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
美人を殺す。
●小目標
???
【脱落】
【メタモン@名探偵ピカチュウ(小学館ジュニア文庫)】
【風見涼馬@サバイバー!!(1) いじわるエースと初ミッション!(サバイバー!!シリーズ)@角川つばさ文庫】
【松野トド松@小説おそ松さん 6つ子とエジプトとセミ@小学館ジュニア文庫】
【風見涼馬@サバイバー!!(1) いじわるエースと初ミッション!(サバイバー!!シリーズ)@角川つばさ文庫】
【松野トド松@小説おそ松さん 6つ子とエジプトとセミ@小学館ジュニア文庫】