(まただ)
また自分がいる場所が変わっている。
花京院は重苦しい悪夢から目が覚めたような気分でいた。そう、夢から覚めたような――これは現実なのだ。
花京院は自分の顔をまさぐった。思い出すだけでも、ぞっとする。若い女の悲鳴と、彼女の母親の血の臭い。
そして、水のスタンドが、文字通り目前に迫ってきた瞬間のことを。
「ある意味、助かったと言うわけか…」
その代わり、殺し合いのゲームに連れて来られてしまった訳だが――。

辺りを見回すと、自分が気味の悪い街中にいるらしいことが分かった。物陰から今にも何かが飛び出してきそうだ。肌寒さすら感じる。
一刻も早くここから立ち去ろうとして、ふとあの男の"名簿"という言葉が頭に浮かんだ。
現状を把握するためにも、デイパックを開ける。

なるほど、名簿には名前がずらずら並んでいる。ざっと数えて80人以上はいるだろう。
自分の名前のほかに、ジョセフやアヴドゥル、ポルナレフ。会って間もないイギーの名前まであった。
両親の名前が無かったことに安堵したが、花京院は2つの違和感に捕らわれた。
1つは、死んだはずのエンヤ婆J・ガイルの名前があること。
そして――承太郎の名前が妙な位置に書いてあること。
花京院は自分の名前にそっと触れ、その指をずっと下方にある"空条徐倫"の名に滑らせる。
そして、名簿中央付近の日本人の名がいくつか並んでいる部分をなぞった。
そこに、なぜか承太郎の名前がある。

自分の名前の付近に知っている名がある。他の人間は知らない。
つまり、これは関連性がある人間の名が並んでいるということだろうか?
血縁であるジョセフと承太郎は離れて暮らしていたし、他の仲間はそれまで承太郎と会って間もない。
そして、この名簿の中でも数少ない日本人だが、自分は転校してきたばかりだ。
承太郎の名が自分やジョセフと離れた日本人の名の中ににあるのは、承太郎がこの"東方仗助"らと何らかの関係があるからかもしれない。例えば高校の学友だとか、近所の人間だとか……。
(しかし、だとすると、このジョースターの姓を持つ人間や、空条徐倫という名は……?)

* *


考えながら姿勢を崩したとき、デイパックからチャプンという音が聞こえた。
思わず身を引くのと同時に、自分の喉がひどく渇いていることに気が付く。
飲料水を取り出そうとしたが、「いや、待てよ…」と手を止めた。
「ひょっとしたら、毒が入っているかもしれないな…」
あの荒木という男は、"殺し合い"のゲームだと言った。しかし、自ら女性に手を下したり、爆発する首輪を強要している。
奴はただ、"殺し合う姿"よりも、"死ぬ姿"を楽しんでいるのかもしれない。
だとしたら、荒木が参加者を殺すための罠を仕掛けている可能性は、十分に考えられる。

慎重に荷物を確かめると、紙が入っているのに気が付いた。
何かの資料かと思い、そっと開くと、何の変哲もない布きれが入っていた。
怪我をした際の止血に使えるかもしれないと考えたが、これにも毒が塗られていないとは言い切れない。
(とりあえず、今は必要ないので仕舞っておこう)

地図を見、現在地を確認する。名前と雰囲気から判断するに、"食屍鬼街"だろう。
とりあえずここを抜けるとしよう。途中で他の参加者に会えるかもしれない。
ジョースターさん達や、ゲームに参加しない人間なら良いが、もし襲ってくるような人間に遭ったらその時は…。

* *


「あれは花京院じゃないのさ…。目を怪我して入院したって聞いたけど……?」
歩き出した花京院を、目を細くして物陰から見ている人物がいた。

「まったく、どうなっているんだか…。あのビチグソどもを追い詰めたと思ったら、自分が追い詰められていた。そして――」
タバコを咥えなおし、マライアは髪を掻き上げた。
「運の良さを、せいぜい喜ぶことね」
自分に対してと花京院に対して皮肉を言い、不満そうに周囲を見渡す。
ここには古臭い木造の街並みが並んでいるだけで、鉄製の物はあまり見当たらない。

マライアは地図を広げ、口の端を歪める。
「見れば見る程ふざけた地図だこと…」
とにかく、武器になる鉄製の物が必要だ。自分のスタンドが、直接攻撃や防御に優れていないことくらい分かっている。
丸腰状態の今、襲われたら一溜まりもない。
磁力を利用しようにも、目立っては罠を張れない。広い場所で、且つ隠れられる場所となると……。
"繁華街"の文字に目が止まる。ここなら、鉄で出来た、持ち運べる日用品も数多くあるだろう。

マライアは喉を鳴らして笑った。もし誰かが側にいたら、猫がいるのかと思ったかもしれない。


【G-6 食屍鬼街(オウガーストリート)/1日目 深夜】
花京院典明
[スタンド]:『ハイエロファントグリーン』
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前(目、顔に傷なし。恐怖を乗り越えていない)
[状態]:とても喉が渇いている。周囲を警戒。慎重になりすぎて、疑り深くなっている。
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ(ジョナサンの名前入り)、支給品一式。
(※残りのランダム支給品は、有るのか無いのかさえ気付いていません。あるとしたら1つだけのようです)
[思考・状況]
1.早くこの薄気味悪い街から出たい。
2.仲間と合流しなければ…
3.安心して飲める水が欲しい。

※水のスタンド(=ゲブ神)の本体がンドゥールだとは知りません(顔も知りません)
※マライアには気付いていませんが、周囲に誰かがいる可能性は考えています
※支給品を確認しましたが、ジョナサンの名前、残りのランダム支給品の有無には気付いていません。
水や食料、肌に直接触れるものを警戒しています。
※4部のキャラ全員(トニオさん含む)を承太郎の知り合いではないかと推測しました。
現在は名簿の並び順、死人が参加していることは頭から離れています。
※現在移動中です。(どこに移動しているかは不明)

【G-6 食屍鬼街(オウガーストリート)/1日目 深夜】
【マライア】
[スタンド]:『バステト女神』
[時間軸]:ジョセフとアヴドゥルに押し潰される直前
[状態]:気配を極力消している。自分が不利である現状に、少々の苛立ちを感じている。
[装備]:リサリサのタバコ(咥えているだけで、火は点いていません)。
※ポケットの武器は没収されたようです。
[道具]:リサリサのタバコ、支給品一式。(残りランダム支給品0~2)
[思考・状況]
1.死にたくないので、一人でも多くの参加者を陥れたい。(特にジョセフとアヴドゥルには、たっぷり"お礼"をしたい)
2.そのために、ここよりかは鉄が多いであろう繁華街で罠を張る。
3.ガチで戦っても勝てないので、なるべく他のスタンド使いに見つかりたくない。
4.ステキな男がいたら協力してあげなくもないかな…なんて思ったりして。ウフフフ。

※マライアはゲームに乗りました。ステキな男が現れても、協力する気はあまりありません。
※支給品の中身を確認しました。
※現在【E-5 繁華街】に向かっています。マライアは繁華街を1989年のものだと思っています(1930年代のものだとは夢にも思っていません)
※バステト女神に制限があるとしたら、まだその事に気付いていません。

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花京院典明 52:深まる疑心
マライア 79:「バステト女神」のマライア

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最終更新:2008年10月29日 16:11