「『見知らぬ場所』だ。急に呼び出されたから驚いたが……」
A-2エリアとA-1エリアの中間地点。
藍色のセミロングヘアの女性が辺りをゆっくり見回し、佇んでいた。
まず目を引くのが、背中に取り付けられた大きな注連縄の輪。
他にも頭、腰、腕など、至る所に注連縄が巻かれている。胸には古代風の装飾の鏡が輝いている。
その奇抜とも表現できる威容は、20歳前後の若い女性にしか見えない彼女が、
『人ならざる存在』であることを表現する為に自ら考案したものなのだろうか。
「私が噂に聞いていた幻想郷とは、随分と話が違うな……」
八坂神奈子が呼び出されたのは、信仰心を求めて幻想郷にその居を移してから間もない頃のこと。
幻想郷の神社、博麗神社に使いとして派遣した早苗の帰りを待っていた時のことだ。
『この土地の信仰を頂く』と聞いたら、博麗神社の巫女が私の元に殴りこんでくるかも知れない。
そう予想して、幻想郷で広く行われていると聞いた
『スペルカードルール』による戦いの準備に余念がなかった神奈子。
彼女が『来るべき戦い』に備えて『スペルカード』の開発を行っていた時、突如ゲームの開始が告げられた。
(聞いた話と随分違うが……これが幻想郷の『定め』か。
……この国にまだ人身御供の習わしが残る土地があったとはな)
神奈子の脳裏に蘇るのは過去の記憶。
神々が今よりずっと栄えていた頃の記憶。
その頃、人の命は今よりもずっと軽かった。
神の気紛れとされていた天災を鎮めるため、生きた人間を火で焼いたり、
水に沈めたり、土に埋めたりといったことが当然のこととして行われていた。
……神のために生命を捧ぐ儀式は確かに存在していたのだ。
(こうして我々を知らぬ間に連れ出すとは……。
まさか『神隠し』に遭わされる側に回るとは思わなかったが……
それだけの事を為すあの男たちが、幻想郷の最高神なのだろうな……
我々は、その神々への生贄として捧げられた、ということか)
そしてしばらく彼女は目を瞑って思考し……。
「行くか」
と、短くつぶやいたのだった。
神奈子がデイパックの中から取り出し、ガチャリと右肩に担ぐのは、オンバシラ、ではなく、
いくつもの砲身が束ねられた機関銃……いわゆるガトリング銃だ。
外界のある国で歩兵用の機関銃として試作されたが、
反動が強すぎて人間には取り扱い不可能とされ、お蔵入りになっていたシロモノだ。
口紅のような弾丸がずらりと並んだ給弾ベルトを肩に掛け、神奈子は歩き出した。
「これが幻想郷のしきたりだというなら……私もそれに従わねばな」
未だ幻想の残る地、幻想郷。
それを維持するためのシステムが、こうした『生贄の儀式』であるのだろう。
『郷に入れば郷に従え』。新参の神奈子も、それに従うだけのこと。
『つい最近』までは日本のそこかしこで行われていたことだ。そこまで抵抗は感じない。
ただ一つ、気がかりがあるとすれば……名簿にも記されていた、『家族』の名だ。
(
東風谷早苗。
風祝の家系に生まれたというだけでこの様な仕打ちに遭うのは、
この時代に生まれた彼女にとっては少々過酷だろう。
せめて、私の手で苦しませずに葬ってやらなければ。
そして、
洩矢諏訪子。
思えば長い付き合いだったが……
『あの時』の決着をつけるべきが来たのだろうな)
この殺し合いが幻想郷に生きる上で避けられぬ物だというなら……
せめて家族同然に生きてきた二人だけはこの手で逝かせてやりたい、そう思う神奈子だった。
時間軸のズレによって、幻想郷のシステムを誤解してしまった戦神、八坂神奈子。
彼女に果たして幻想郷の『正しい姿』を知る機会は与えられるのか?
それとも……
【A-2エリア北端・草原/深夜】
【八坂神奈子@東方風神録】
[状態]:健康
[装備]:ガトリング銃@現実(残弾100%)
[道具]:基本支給品、不明支給品1個(ジョジョ・東方・確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者への捧げ物として恥じない戦いをする。
1:洩矢諏訪子を探し、『あの時』の決着をつける。
2:東風谷早苗を探し、苦しませずに殺す。
[備考]
※参戦時期は東方風神録、オープニング後です。
※参戦時期の関係で、幻想郷の面々の殆どと面識がありません。
東風谷早苗、洩矢諏訪子の他、彼女が知っている可能性があるのは、妖怪の山の住人、結界の管理者です。
(該当者は、
秋静葉、秋穣子、
河城にとり、射命丸文、
姫海棠はたて、
博麗霊夢、八雲紫、
八雲藍、橙)
支給品紹介
<ガトリング銃@現実>
6本の砲身を束ねることで銃身にかかる負荷を軽減し、連射力を向上した機関銃。
このガトリング銃は、アメリカ軍の試作品・XM214を元にしたものである。
但し現実に開発されていたXM214と違い、駆動用のバッテリーは必要としない。
だがそれでもなお、重量過多、反動が大きすぎるなどの理由で、人間が取り回すのは困難な代物である。
最終更新:2014年01月22日 00:54