こんなことがありえるんだろうか?
「突如として連れてこられた奇妙な場所」で「死んだ親友の姿を見る事」がありえるのだろうか……
あの場所、謎の場所で突如金髪の女の子が殺されたのを見た。
それまでの記憶がどうも抜けている。覚えているのは、ヨーロッパ行きの船に乗ったところまでだ。
その後からあの場所までの記憶が、どんなに思い出そうとしても思い出せない。
けれど、今はそんなことはどうだっていい。
その場所に、親友―――「ジャイロ」がいた事の方が重要だ。
死者が蘇ったのか、大統領のように並行世界から連れてこられたのか。
もし後者なら、彼は「今まで共にレースを走った彼」じゃないのだろう。
……それでもいい。例え僕の事を知らない彼でも、僕は彼に会いたい。
僕が―――
ジョニィ・ジョースターが再び歩き出せるようになったのは、他ならぬ彼に出会えたからだ。
だから、彼に会いたい。そして今度こそ「ありがとう」と面と向かって言いたい。
僕は歩けるようになった足で立ち上がる。
ここはテーブルや椅子が大量に並んだ、どうやら食堂のようだ。
石造りの壁は、病院かはたまた牢獄の中である事を示しているのだろうか。
とにかく外に出よう。どこかにいるジャイロに会いに行こう。
そう思って歩き出したときだ。
―――ほら!そうと決まれば…行くわよ、ヨーヨーマッ!
…了解しましたァ。ご主人様の命令には従います―――
近くの階段の上から声が聞こえてきた。
この建物に、他の参加者がいるのだろうか。
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立ち止りたくなかった。とにかく何処かへ行きたかった。
もしこの歩みを止めれば、すぐにでも不安と恐怖で窒息する。
この「石造りの海」の中で溺れ死んでしまう。そんな気がした。
蓮子はヨーヨーマッを連れて監房を出る。一刻も早くメリーに会うために。
そのためにはこの檻の中、じっとしているわけにはいかないからだ。
けれど、殺し合いにのっていない参加者に会う事も考慮すると、どうしても人の集まりそうな場所に行く事になるだろう。
無論、そうなれば危険に接触する確率も飛躍的に上昇する。
けど、だからこそ立ち止りたくなかった。そんな不安も忘れるために。
監房の目の前に1階へ降りる階段がある。
外に出るには下へ行くしかない。階段に足をかけ降りていく。
『ご主人様、待ってくだざいよォ』
ヨーヨーマッが何か言っているが気にしてられない。
早く外に出なきゃ。早くメリーに会わなきゃ。
そうこうしている内に1階に到達する。
普通ならこの階に外への出口があるはずだと辺りを見渡す。
そんな時だった。
「なぁ、君。君も参加者だろ?」
何処からか声をかけられた。この監獄に他の人間がいたって言うの!?
声のした方向を振り返ると、そこには男の人が一人。
蹄鉄の飾りがついたバンダナを頭に身に着けた、白人の少年がいた。
でも相手していられない。メリーに会わなきゃ恐怖で精神が折れそうになる。
彼を無視してそのまま出入り口があるであろう方向へ歩き出す。
「待ってくれ。僕は殺し合いにのっていないッ!」
さっきの少年が続けて声をかけてくる。
でも急がないと。こうしている間にもメリーに会える確率が減っているような感覚に陥る。
「私は、すぐにでも会わなきゃならないの。友達に。親友に」
振り向きもせず立ち止り、それだけ言い捨てる。
構ってはいられないんだ。早く外へ、外へ出なければ始まらない。
「親友……」
さっきの言葉に彼は何かを感じとっていた。
そして私は立ち止った。彼の言葉を聞いて。
「僕も会いたい親友がいる。」
思わず驚いて彼の方を振り向いた。
彼は同じだった。親友に、メリーに会いたい私と。
『ご主人様ァ、やっと追いつきました』
ヨーヨーマッが殴りたくなる声で何か言っていた。
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互いの名前を教えあった後、食堂の一角で、ジョニィと蓮子が面と向かって座った。
蓮子は先ほどまでの焦りが幾分か落ち着いた様子だ。
その近くにはヨーヨーマッが変わらぬ表情で突っ立っている。
「それで、ジョニィがさっき言った『会いたい親友』って誰なの」
「あぁ、
ジャイロ・ツェペリって言ってさ。レースの中で出会った僕の親友で、恩人なんだ」
「恩人?」
「話せば長くなるけど、僕が歩き出せるようになれたきっかけ、のようなものかな」
蓮子の問いかけに、ジョニィはなんだか楽しそうに答える。
その親友をどう思っているのか、短い答えの中にも思いが滲み出ている。
「そういう蓮子も、会いたい人がいるんだろ? 僕にも聞かせてよ」
「
マエリベリー・ハーンって言ってね、私はよくメリーって言ってる。
大学のサークル仲間で、二人でよくオカルトスポットに出かけていてね」
蓮子の言葉は続く。まるで何かの堰を切ったかのように。
「墓場に探検しにいったり、一緒に私の実家に帰ったり、行動するときはいつも隣にいてね。
私よく待ち合わせに遅刻しちゃうんだけどさ、それでも一緒にいてくれて。
よく不思議な夢を見る子で、それで……」
蓮子の言葉が詰まり始める。何も思い出せないからじゃない、その逆だ。
まだまだ壊れたダムのようにメリーとの思い出が溢れてくる。
―――思い出とともに、涙と寂しさが溢れてきたから、そこから先が言い出せない。
「……メリーに会いたい! すぐにでも姿が見たい!
あの子の夢の世界の話が聞きたい! あの子の手を握っていたいッ!
こんなところで失いたくないッ!! もう会えないなんて、思いたくない……」
涙声になりながら、蓮子は今まで強引に抑えていた思いを止められなかった。
目の前にジョニィという異性がいるのも忘れて、ただただ思いをぶちまけていた。
そんな蓮子の言葉に、ジョニィも再び口を開く。
「僕だって同じだ。ジャイロを失いたくはない。
せっかく、今度こそちゃんと礼を言えるチャンスが巡ってきたんだ。
彼に会えるまで、僕は人間として『マイナス』だった。
『ゼロ』に戻って、また立ち上がれるようになったのも、彼がいたからなんだ。」
親友への思いを蓮子と同様に言葉にする。
ただ、感情が止められない蓮子とは対照的に、ジョニィはあくまで冷静な面持ちだ。
そして、未だ涙が流れる蓮子に、彼は話しかける。
「なぁ、一緒に互いの親友を探さないか?
僕がメリーを探すように、君はジャイロを探すんだ。
危険も存在するこの場で、誰かを見つけるのには一人じゃ荷が重すぎる」
服の袖で涙を拭いながら、彼女は聞き返した。
「一緒に、メリーを探してくれるの?」
「君が望むなら、そうするつもりだ」
蓮子はジョニィの眼を見る。嘘のない、揺るぎのない光がそこにはあった。
彼を信じたい。彼とならメリーに会えるかもしれない。
そう思えた蓮子は、彼に返答する。もう涙はひいていた。
「わかったわ。一緒に行きましょう」
「よし来た。だったら、出かける前に準備をしていこう」
蓮子の答えを聞いて、ジョニィは椅子から立ち上がる。
「ここは見たところ食堂みたいだし、なにか食べ物があるかもしれない。
そうでなくても、建物全体を探して包帯やら持って行った方がいい」
ジョニィの提案に、蓮子は今までの自分の行動を振り返り、その浅はかさを反省する。
(あんなに焦って、プランク並の頭脳を自称してるのが嘆かわしいわね)
そう考えながら、何か物色するためにジョニィと共に辺りを探し始めた。
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ジョニィの提案は、総合的にみても正しかったと言えよう。
なぜなら、あのまま蓮子が外に出ていたとしたら、『彼』に出会う事になったかもしれないからだ。
C-2の中央、GDS刑務所の北。
一見すれば、そこには人っ子一人見当たらない。
だがその場所から、突如として男が一人顔を出してきたではないか!
ウェーブがかった紫の長髪に、金色のハート型の飾りが額に輝いている。
だがその瞳には、『どす黒い暗黒のクレバス』のような闇が見て取れた。
男の名は
ヴァニラ・アイス。DIOの腹心にして狂信者である。
この殺し合いにおいて、彼のスタンスなど最初から決まっていた。
目の前で小娘が爆破されたからなんだ。生き残った者に褒美が与えられるからなんだというのだ。
彼にとってはDIOこそが全て。他は自分も含め取るに足らぬゴミ同然だ。
なら行動は一つだけ。敬愛する主君のため、他のものを皆殺しにするのみ。
ゲーム開始から少しして、ヴァニラはデイパックの中にある名簿と地図を確認した。
このゲームの参加者の中に、主君であるDIO、そしてそれに刃向う憎きジョースター一行の名前が載っていた。
他には命令に失敗したホルホース、それになぜかジョセフや承太郎と同じ『ジョースター』と『空条』の姓を持つ人物もいた。
尤も、先ほども言った通りDIO以外の参加者など殺すだけなのだから、どうでもいい。
ところで、なぜ何もない場所から男の顔だけが出ているのかと言えば、これこそが彼の能力だからだ。
彼のスタンド『クリーム』は、口が暗黒空間への入口となっており、
彼と彼のスタンドを除いた一切合切を全て粉微塵にして消滅させてしまうのだ。
不思議なことに、デイパックは彼と共に暗黒空間の中で消えずに残っているのだが、彼はそこまで考察はしないだろう。
再確認した地図をデイパックに収納する。
「DIO様、あなたのためにこのヴァニラ・アイス、全てを葬り去りましょう」
男は一人呟くと再び暗黒空間に顔を引っ込めた。
仮にも主君たるDIOを粉微塵にせぬよう、不可視の球状となって飛んで行く。
最初に目指すのはGDS刑務所。主君の栄光のための贄がいる事を期待しながら。
【C-2 GDS刑務所・女子監1階/深夜】
【
宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:健康。恐怖、苛立ち、焦燥はだいぶ和らいでいる
[装備]:スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:メリーと一緒に此処から脱出する。
1:ジョニィと共に、メリーとジャイロを探す。
2:殺し合いに乗ってない人に会いたい。
3:今は何か持って行けるものを貰っていこう。
4:ヨーヨーマッはやはり気に入らない。けど、ある程度は頼りにせざるを得ない。
[備考]
参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。
ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。
【ジョニィ・ジョースター@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いに行く
1:蓮子と共に、メリーとジャイロを探す。
2:殺し合いに乗ってない人に会いたい。
3:今は何か持って行けるものを貰っていこう。
4:……ところでアレ(ヨーヨーマッ)って蓮子のスタンド?
[備考]
参戦時期はSBR24巻、ヨーロッパ行の船に乗り込んだ直後です。
まだ自分のデイパックの中身を確認していません。
蓮子とは、メリーの名前の情報を共有しました。
ヨーヨーマッについてはまだ何も聞いていません。
【C-2 平原/深夜】
【ヴァニラ・アイス@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(本人確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために皆殺しにする
1:DIO様、貴方のために全てを葬りさりましょう
2:ジョースター一行は最優先で抹殺する
3:まずは手始めにGDS刑務所に向かう
[備考]
参戦時期はジョジョ26巻、DIOに報告する直前です。なので肉体はまだ人間です。
ランダム支給品は本人確認済みです。
GDS刑務所に向かうようです。
最終更新:2013年10月19日 16:16