『勝者の混迷(下)』 塩野 七生 著
前巻に引き続き、本巻もマリウスとスッラの時代から始まり、スッラの後に頭角を現すポンペイウスの時代までが描かれている。相も変わらずこの時代は混迷していたのだが、スッラとポンペイウスの二人の活躍は目覚しかった。
スッラ、彼にはビジョンがあったと言うのが相応しいだろう。ローマの混迷に秩序を回復するための行政改革は的を射ていた。制度を立て直すために制度を破る行動は、一見矛盾するようだが、的確な判断だったように思う。しかし、漸く成し遂げた秩序を見方に破壊される様子はいかにもスッラらしい皮肉であった。とは言え、やはり彼の構想は素晴しいと言うほかないだろう。
一方、ポンペイウスはスキピオ・アフリカヌス以来の天才と言われる逸材であった。軍事、政治の両面で優れていたため、読み進めるうちに「内臓の成長」の最終段階を仕上げる人物かとも思ってしまった。しかしながら、世の中には偉人の上に偉人がいるらしい。
ローマ史上の「偉大なる個人」がいよいよ登場するようだ。今から楽しみで仕方がない。