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ヴェブレン
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『ソースタイン・ヴェブレンが描く野蛮な世界』 R.L.ハイルブローナー 著
19世紀のアメリカ、まさにそこは新世界であった。資力だけでは到達できない社会階級が存在するヨーロッパの旧世界とは異なり、この国では富こそが上流階級に入るための一番の近道であった。そのため、たとえ暴力的な手段によってその富が作り上げられたとしても、それが上流階級へのパスポートであることに変わりなかった。このような現状を経済学者たちはヨーロッパの古典派経済学に当てはめて考えようとしたが、新しく出現した世界を全くと言っていいほど捉えていなかった。時代は新しい考え方を必要としていた。現実と距離を置き、客観的にアメリカ経済を見つめることができる人物を。そこで登場したのがソースタイン・ブンデ・ヴェブレンであった。
ヴェブレン、一言で言えば変わり者である。本文中にあるように「同時代の人々にはごく自然に見えた人間の行いが、彼にとっては人類学者の目に映る未開社会の儀式のような、魅力的かつ異国風で奇妙な行為に映った。」のだから。普通の人間ならば躊躇うことなく常識として蓄積される人間の行いを奇妙に感じてしまうその感覚、これこそが彼に備わった才能であろう。
さらに、彼は「どうして事態がうまく収拾していくのか」ではなく「そもそも現状がそうなっているのはなぜか」を突き詰めて考えることによって次々と物事の本質を見極めていった。時に彼の主張は「実業家は制度の破壊者である」や「経済行動の動機は心の奥の不合理性に基づく」など常識と真逆なものであり、常識に捉われていない様子を多々うかがうことができる。
彼の人生を眺めていると、的確な物言いには精神的な客観性が必要であることを感じずにはいられない。常識に捉われないということは、容易なことではないが、常に思考を対象の外側に置いて物事を客観的に見ることがその第一歩であることを彼の人生が物語っているようだ。